期待と信頼
アラン達が馬を走らせて随分経つとジュリアの屋敷が見えてきた。
ファビオは屋敷の近くに馬を止めるとアランに聞いた。
「……どうするんだ、これから?私はこの近くで待っていればいいのか?」
するとアランがファビオの上着のポケットから身を乗り出して言った。
「……うん、そうだね。でも今はとりあえずここから降ろしてよ。地面に置いてくれなきゃ俺は歩く事も出来ないんだ。」
「ああ、すまん……。ちょっと待っててくれ。今下に降ろすから……。」
そう言うとファビオは馬から降りてポケットの中からアランをそっと手に取って地面に置いた。
「……ふー……よし!じゃあ行って来るよ!何かあったらまたここに戻って来るからさ。」
「ああ……決して無理はするんじゃないぞ。もし私の力が必要だと思ったらすぐにここに戻って来なさい。いいね?」
「ああ、分かってるよ。じゃあ行って来る!」
話が終わるとアランは屋敷の方に向かって走って行った。
アランは屋敷の前まで来ると屋敷の中に入れる場所を探し出した。
しかしアランが屋敷の周りを歩いているとアランが入れそうな場所はほとんどなく、唯一入れそうなのが屋敷の床下の通気口から位だった。
「……大丈夫かよ、ここ……?……中真っ暗じゃねーかよ……。どうする……?他に入れそうな場所も見当たらないし……仕方ない!ここから入るか!まぁ文句言ってても始まらないもんな!……さぁ、中に進もう!」
アランは嫌々ながら通気口の中に入り真っ暗な床下を進んで行った。
(……うわっ!……何だよ、これ⁉︎クソッ!息苦しいな、ここ!……しかし真っ暗だよなぁ……本当にここちゃんと出口あるのかよ……。)
アランは不満に思いながらも出口になりそうな場所に向かって、ただひたすら進んでいた。
アランが通気口の中を歩いてしばらくして、前方に明かりがある場所が見えてきた。
(……明かりだ‼︎……よし!あそこが出口だな⁉︎さっさと出よう、こんなとこ。……ちゃんと屋敷の中に通じてるんだよな⁉︎……ちゃんと通じててくれよ!)
アランは不安を感じながらも明かりがある場所を潜り抜けた。
するとそこには屋敷の中と思われる景色がアランの目に映った。
(……ここだよな……?……まぁ合ってるよな……?他に通じてるような場所もなさそうだし……。……とにかく早くジャックを探そう……早くあいつを見つけてこんな所からはさっさとおさらばだ……。)
アランはジャックを見つけるために屋敷の中を歩き出した。
アランはドアの下の隙間から部屋に入り、屋敷の中の部屋を1つずつ見て回った。
ジャックは見つからなかったが、アランはジャックを探している最中にリビングで人形の1人を見つけた。
(うげっ!……何だこいつ⁉︎……はー、結構よく出来た人形だな……こいつらか?入れ替えられたっていうのは……。かわいそうだな、こいつら……人形なんかにさせられて……。おっと……今は同情なんかしてる場合じゃない!とにかく早くジャックを探さないと!あいつに近付いたら危ないな……よし!反対の方に行こう!)
アランはリビングとは逆の方向に進んで行ってその間もまだ入っていない部屋に1つずつ入って見ていった。
しかしどの部屋でもジャックは見つける事が出来ず、アランはジャックを見つける事が出来ないまま1番奥の場所までたどり着いた。
その1番奥の場所には物置小屋があり、アランはその部屋にも隙間から入ってジャックがいないかを確認した。
するとその物置小屋の中にはジャックが繋がれて座っており、アランはジャックを見つける事に成功した。
(……ジャック⁉︎……おい、あれジャックだろ⁉︎)
アランはジャックの姿をしっかり確認した後、ジャックだと分かると急いで目の前まで駆け寄って行った。
そしてアランはジャックの目の前に行ってジャックに話しかけた。
「……おい、ジャック!俺だ!アランだ!」
ジャックは目をつぶっていたが突然小さな声が聞こえてきたので、目を開いてその小さな声が聞こえてくる方に視線を向けた。
するとジャックの目の前には小さなネズミの姿をしたアランがいた。
「……ん?……何だ‼︎今ネズミがしゃべったよな……⁉︎おい!どうなってるんだよ⁉︎何だ!このネズミ⁉︎」
ジャックが動揺しているのを見てアランはジャックを落ち着かせないといけないと思い、ジャックに状況を説明しようとした。
「……おい、ジャック!落ち着け!俺だ!アランだ!」
「何だって⁉︎アランだと⁉︎」
ジャックはとても驚いているようだったがアランは急がないといけないと思ったのか説明を続けた。
「いいかジャック⁉︎説明する。ちゃんと話を聞いてくれ!」
「……ん……あぁ、分かった……。」
「今俺はおばあちゃんの魔法でネズミと入れ替わってるんだ。お前を助けに来た。今この屋敷の前でファビオさんが馬を連れて待っている。いいか?ここからそこまで逃げ出すんだ!まず俺が先に行って誰もいない道を探してくる。お前は俺の後に付いて来てくれ!」
「……ああ……分かった……。それで?俺はどうすればいい?まぁこの縄で縛られている状況じゃどうしようもないんだけどな……。」
「……ん……ああ、そうだな……。」
アランがジャックを見てみるとジャックはロープで縛られて身動きが取れない状態だった。
アランとジャックはしばらく黙ってどうするかを考えていたが、やがてジャックが何か思い付いたのかアランに言った。
「……おい、お前その歯は使えないのか……?」
「……歯……?」
「ああ……ネズミって言ったら歯が丈夫だろ?だからその歯でこのロープを噛み切ってくれないか?このロープを切らないと俺はどうする事も出来ないからさ……。」
「ああ……そうだな。分かった!じゃあやってみるよ!そうか……この歯でロープを切ればいいんだな……。」
するとアランはジャックの方に近付いて行った。
「おい……届くか?」
「いや……それじゃちょっと届かない……。どうしようかな……?」
するとジャックが何かを思い付いたのかアランに言った。
「……ちょっと待ってろ……ほら、俺の体を登ってこい。それで俺の上の方を縛ってるロープを切ってくれ。」
そう言うとジャックはアランがロープに届くために寝転んでうつ伏せになった。
「ああ……よし!これなら届く……じゃあロープを切るぞ!」
アランは寝転んだジャックの体を登るとジャックの上半身の所まで行ってロープを噛み切り出した。
アランがロープを噛み出して少し経つとロープは少しだけ切れた。
そしてアランがロープを噛み続けるとロープは徐々に解れていってロープはあと少しで切れそうになっていた。
するとアランがジャックに言った。
「……よし、そろそろ自分で切れそうだな。ちょっと離れててくれるか?」
「……ん……あぁ、分かった。」
アランはジャックに言われた通りジャックの体から離れた。
「……くっ‼︎」
「ブチッ!」
ジャックは上半身を縛っていたロープを力ずくで引きちぎった。
ジャックは上半身が自由になると今度は足を縛っているロープを手で解き、体が自由になるとアランに言った。
「……よし……!もう大丈夫だ!これで自由に動けるぞ。……悪かったな……助けてもらって。ありがとな。」
するとアランは少し照れ臭そうに言った。
「……何だよ⁉︎急に……⁉︎……いいよ、別に。それよりファビオさんが屋敷の前で待ってるんだ。早く行こう!見つからないうちに早く逃げるんだ!」
「ああ、分かった。それで?俺はどうすればいいんだ?さっきお前が先に行って道を見てくるみたいな事言ってたろ?俺はそれまでここで待ってていいのか?」
「ああ、お前はここで待っててくれ。俺が先に行って様子を見てくる。俺が戻ってきたらその後俺に付いて来てくれ。じゃあちょっと行ってくる。」
「ああ……おい!気を付けろよ。」
「ああ……分かってるって。じゃあ行ってくるぞ。」
「ああ……。」
アランは物置小屋から出て1階の様子を見に行った。
アランが屋敷の1階の中を見て回ると1階にいるのはさっきリビングにいた人形1人だけだった。
アランは何度も念入りに1階の様子を確認したが1階にいるのはやはりリビングにいる人形だけだった。
アランは急いでジャックの所に戻ってその事をジャックに伝えた。
「ハァッハァッ、ジャック……リビングに人形みたいなのが1人いるだけだ……1階には他に誰もいない。今がチャンスだ!リビングと反対の方向から逃げれば誰にも見つからないで逃げ出せる!早く逃げよう!」
「そうか……!それで⁉︎俺は付いて行けばいいのか⁉︎」
「ああ……!俺が案内する!付いて来てくれ!」
するとジャックが物置小屋のドアを静かに開けた後、アランがリビングの反対の方向に向かって走り出した。
ジャックもそれに付いて行っていると行き止まりになり裏の勝手口の所に着いた。
「……ここは……最初入って来た所だな……。おい、ファビオさんはどこで待ってるんだ?」
「ああ……最初に俺達が会った場所があったろ?あの辺だよ。とにかく屋敷の正面の方だ。」
「……あの辺か……よし!お前は俺の上着の中にでも入ってろ!俺が走った方が早い。ほら、早く来い。」
「ん……ああ、分かった。」
するとジャックはアランを手に取って上着のポケットの中に入れた。
アランを上着のポケットの中に入れるとジャックは勝手口のドアを開けて屋敷の正面の方まで走り出した。
「はぁっはぁっ……こっちで合ってるよな?確かこのまま進めばよかったはずだ。」
ジャックが何か言っていたのでアランはポケットの中から身を乗り出したが、ジャックは気付かずに走り続けていた。
ジャックは覚えている辺りの場所に向かうと、そこにはファビオが馬を止めて待っている姿があった。
「はぁっはぁっ……!ファビオさん、話は後だ。とにかく馬を出してくれ!早く!」
「……ああ、分かった!」
ファビオは急いで近くに繋いである馬を解いてジャックに言った。
「乗ってくれ……行こう!」
「ああ……!」
ファビオとジャックは馬に乗り込むと森の外に向けて急いで馬を走らせた。
馬を走らせている最中にファビオがジャックに言った。
「……すまなかったな……君1人たけ置いていってしまって……。私は君にあれだけ良くしてもらっていたのに……君には借りを作ってばかりだな……。本当にすまなかった……。」
するとジャックが少し笑ってファビオに言った。
「……はっ。何言ってんだよ!俺はあんたが王様になるかもしれないと思ったから助けたんだ!それによ……終わった事を言うのはもう無しだぜ……別に気にしちゃいねーよ。」
「……そうか……すまない……。ありがとう……君のためにも元に戻れるように頑張るよ……。」
「……ふっ。……あぁ、頑張りなよ……。」
ファビオ達を乗せた馬はレイシアが待つ岩山に向かって走り続けていた。




