始まりの日
それから多くの時間が経ち魔導師達は誰からも気付かれる事無く、フサンダールで平穏な暮らしを送っていた。
レイシアとジュリアという少女達がフサンダールに住んでいた。
少女達は共に15歳で、生まれた時からフサンダールで生活していた。
ある日レイシアが見せたいものがあると言って広場にジュリアを呼び出していた。
ジュリアが先に広場に着いて待っていると、レイシアが猫を抱き抱えて走ってきた。
「ジュリア!ジュリア!見て!新しい魔法が出来たの!」
するとレイシアは魔術書を上着の中から取り出してジュリアに見せた。
「どうしたのレイシア?また何か見つけたの?」
ジュリアはいつもの事なので少し呆れた様な顔をしていた。
するとレイシアは、手に持っている猫をジュリアの方に突き出しながら言った。
「あのね!私がこの猫になるの……!信じられないかもしれないけど……本当に猫になるんだよ!」
「猫⁉︎……」
ジュリアはレイシアの言っている事がとても信じられなかったが、とりあえずレイシアに詳しい事を聞いてみる事にした。
「猫ね……それで?一体どうやってやるの?」
するとレイシアが凄く嬉しそうに言った。
「あのね、あのね。私がこの魔術書を使って猫と自分に魔法をかけるの!そうしたらね……私とこの猫が何と入れ替わるの!」
「入れ替わる⁉︎」
「そう!入れ替わるの!でもね、ちょっと問題があるの……。」
「問題……?」
ジュリアは少し不安気にレイシアを見ていた。
レイシアはジュリアに分かってもらう為に魔法の説明をしだした。
「あのね……私が猫になるって事は猫が私になる……つまり私は人間じゃなくなるの……。だから私を動けない様にしないといけないからジュリアに魔法をかけてもらうしかないの……。」
ジュリアは少し話が理解出来ない部分もあったが、冷静に聞いた。
「なるほどね……それで?この魔法を使った経験はあるの?」
「ええ、あるわ。1度動物同士で試してみたけど入れ替わったわ。」
「そう……大丈夫なのね……。」
ジュリアはレイシアの事は疑っていたが、その魔法の事は気になったのでレイシアに魔法をかけるか聞いた。
「それで……?今からその魔法を使うの?」
するとレイシアは不安そうにジュリアの方を見て言った。
「うーん……でもまだ怖いんだよね……人間にかけた事ないし……でも成功したら村のみんなもきっと喜んでくれると思わない……?」
レイシアがそう言うとジュリアは軽く微笑んで言った。
「そうね、喜んでくれると思うわ。でも……。」
ジュリアは一旦口に出しかけたのを止めたが、気になったので気遣うふりをして聞いた。
「あなた戻れなくなる可能性もあるんでしょ?大丈夫なの、本当に……?」
するとレイシアは不安そうな顔をしていたが話を続けた。
「分かってる……でも私が作った魔法だからこの魔法が使えるかどうかは私が確かめたいの……。それに私が戻れなくなったとしてもジュリアだったら後でどうにかしてくれそうじゃない……あなたを1番信用しているからあなたに頼みたいの……。」
ジュリアは困った様子だったが、やはり自分には無理だと思ったのか断った。
「私には無理よ……まだ未完成の魔法を扱うなんて……他の誰かじゃダムなの……?」
するとレイシアがジュリアに食ってかかる様に言った。
「でも……!他の大人達に言ったらきっと反対される……それに私はこの魔法を完成させたいの……!あなたじゃなきゃダメなの、ジュリア!お願い!私に力を貸して!」
ジュリアはあまりにも事が大きすぎるので返事が出来ずに黙ってしまった。
するとレイシアが意を決した様子で言った。
「私に魔法をかけて……お願い!」
「勘弁してよ!私には無理だわ……。」
ジュリアはうつむいて黙ってしまった。
そんなジュリアをよそにレイシアは魔法陣を書き出した。
そして2つの魔法陣を書き終えると笑顔でジュリアに言った。
「大丈夫……私なら心配いらない!だからジュリアは安心して私に魔法をかけて!
「待ってよ……!……本気なの?」
レイシアはジュリアの目を見たまま視線を逸らそうとしなかった。
するとレイシアは背負っていたリュックからロープを取り出して言った。
「私の事なら心配いらない。それにここでやらないとこの魔法は完成しないから……とりあえずこのロープで私の事を縛って。魔法がちゃんとかかっても私の体がどこかに行ったら後で探すの大変だから……。」
そう言うとレイシアはジュリアにロープを手渡した。
「……本当にやるの……?」
ジュリアはとても困った様子で言った。
するとレイシアは笑顔でジュリアに言った。
「大丈夫!怖いから早くやっちゃおう!さぁ早くこのロープで私の事を縛って!」
レイシアはジュリアにロープを手渡した。
ロープを受け取るとジュリアはレイシアに改めて聞いた。
「いいの……?本当に?」
「大丈夫だよ!こういうのは勢いが大切なんだから!さぁ早くやっちゃお!」
レイシアが魔法陣の中心に移動するとジュリアは1つ溜め息をついて、レイシアの体をロープで縛った。
体が動けなくなるとレイシアがジュリアに魔法の説明をしだした。
「その魔術書の呪文を唱えたら魔法陣が光り出すと思うわ。魔法陣が光ったら私が合図するからその猫を反対の魔法陣の中心に投げ込んで。」
「えぇ……それはいいんだけど……本当にいいの……?止めるなら今よ?」
「大丈夫!早くやって!上手くいくから、きっと……!」
ジュリアは仕方ないと思ったのか魔術書を開いて呪文を唱え出した。
するとレイシアが書いた魔法陣が突然光り輝き出した。
魔法陣が光り出して少しすると、レイシアがジュリアに大きな声で言った。
「今よ、ジュリア!猫を魔法陣の中に投げて‼︎」
するとジュリアはレイシアに言われた通り猫を反対側の魔法陣の中心に投げ込んだ。
魔法陣の光が消えた頃ジュリアは閉じていた目を開いてレイシアと猫の方を見た。
すると猫がジュリアの方を見て言った。
「ジュリア!私の方は大丈夫よ!猫の方はどう⁉︎」
「……ちょっと待って……。」
ジュリアは驚きを抑えながら冷静に猫の方を見た。
「フーッ!フーッ!」
レイシアの体はまるで本当の猫かの様に動物の様な反応をして興奮していた。
「大丈夫みたいよ……あなたの体にも猫が入っているみたいだわ……。」
ジュリアのその言葉を聞くと、レイシアは安心したのか声を震わせながら言った。
「……そう……良かった……。じゃあその魔術書に書いてある呪文をもう1度かけて……。そうしたら元に戻るはずだから……。」
「……分かったわ。かけるわよ……。」
そう言うとジュリアはもう1度魔術書の呪文を唱えた。
すると魔法陣がまた光り出した。
魔法陣の光が消えるとジュリアはレイシア達の方を見た。
すると猫が驚いていたのか、慌てて走って逃げていった。
すると今度はレイシアの体が少し身を起こしてジュリアの方を見て言った。
「ジュリア!私どう⁉︎人間に戻ってる⁉︎」
「……。」
ジュリアは少し安堵したのか笑ってレイシアの方を見ながら笑って言った。
「フフッ……大丈夫よ。元に戻ってるみたいよ……。」
ジュリアのその言葉を聞いてレイシアは不安から解放されたのか、涙ぐみながら言った。
「良かった……本当に良かった……。本当はもう戻れなくなるかもしれないって思ったりもしたんだけど……。」
そう言うとレイシアは泣いてしまって話す事が出来なくなってしまった。
ジュリアはレイシアの前まで言って優しく言った。
「待って……今ロープを解くから……。」
そう言うとジュリアはレイシアのロープを解き出した。
レイシアは泣きながらジュリアにお礼を言った。
「……ありがとね、ジュリア……。あー本当に怖かったよー!」
ジュリアはそんなレイシアをなだめる様に言った。
「上手くいって良かったわね……でももうこんな無茶に付き合わされるのはもうこりごりよ。」
するとレイシアは鼻をすすりながら言った。
「分かってる……ゴメンね迷惑かけちゃって……。もうこれっきりにするから……。」
そしてジュリアはレイシアのロープを解き終えた。
レイシアはロープが解き終わると起き上がり、疲れた様子で言った。
「あーあ……あの猫にも悪い事しちゃったな……。」
するとジュリアがレイシアの方を見て言った。
「今日はもう帰って休んだら……随分疲れた顔してるわよ……。」
するとレイシアがジュリアの方を見て、申し訳なさそうに言った。
「うん……そうだね……。ゴメンね……今日は本当に帰った方がいいかもしれない……。ゴメン……また今度ちゃんとお礼するから……。」
「いいのよ。早く帰りなさい。気にしなくていいから早く帰って休みなさい。」
「うん、そうだね……。分かった。それじゃあまたね。また今度お礼に行くから。」
「ええ、分かったわ。それじゃあね。」
挨拶を終えるとレイシアは自分の家に向かって去って行った。
ジュリアはレイシアがいなくなった後、先程の出来事について考えていた。
(あの魔法……どうやってあんな事思いつくのかしら……。まぁいいわ。レイシアの持っているあの魔術書……どうにかして手に入れなきゃいけないみたいね。)
ジュリアは先程使用した魔法陣の辺りを1度見渡して、少し考え事をした後家路へと着いた。




