見つかったアラン
ファビオ達は屋敷の中に魔術書があると考えて屋敷の中にどう忍び込むのかを話し合っていた。
「魔術書があるとしたらそのジュリアって女の部屋だよな、きっと。問題は気付かれないようにどうやって屋敷に忍び込むかだよな……。」
ジャックが寝そべって考えているとレイシアがジャックに言った。
「あの……もしジュリアがいるんだったら私がジュリアに頼むわ。その方が安全だしそうでなければその屋敷の中に入るのは危険すぎるわ。」
するとジャックが起き上がりながら言った。
「……まぁそのジュリアがいればいいんだけどいない場合だってあるんだよな……それに仮にいたとしてもファビオさんが元に戻ろうとしてんだ……素直に渡すとは思えない……。まぁどっちにしても奪うしかないって事だ。」
「……そうね……あなたの言う通りね。ごめんなさい。」
はっきりとどうするか決まらないままただ時間だけが過ぎていった。
夕暮れに差し掛かった頃、何か思いついたのか突然ジャックが言った。
「……まぁ相手がどう出てくるか分からないんじゃこの手しかないよな……1番ありきたりな手なんだけど相手が寝静まった頃に屋敷に忍び込むってのはどうだ?」
するとファビオが納得した様子で言った。
「……なるほど……まぁ確かに相手がどう出てくるか分からないこの状況なら出来るだけ相手に見つからないようにした方がいい……。確かにこの状況ならそれが1番いいかもしれんな……レイシアさんはどう思われますか?」
「……ええ、そうですね。確かにこの状況ならそれが1番いいかもしれませんね。」
するとジャックが立ち上がりながら言った。
「よしっ!じゃあそれで決まりな!まぁどっちみちいくら考えたって完璧な答えなんて出ねーよ。その場所に行ってみなきゃ分からない事だってあるんだしさ。とりあえずは夜中に決行で決まりだな。それでどうなんだよ、じいさん?その同じ格好をした人形とやらは夜ちゃんと寝たりすんのか?」
するとファビオがはっとした表情をして言った。
「!……いや、待て!……知らんぞ、私は。何も知らん。……レイシアさんはその人形達について何か知っている事はないですか?」
するとレイシアは困った様子で言った。
「……いえ、私は何も……。私が作ったのは魔術書だけでその人形達については何も知らないんです……。おそらくジュリアが自分で作ったんだと思います、その人形は。」
「そうですか……。」
2人が黙ってしまうとジャックが開き直ったように言った。
「あーもう!色々考えても仕方ねーよ。とりあえず夜中に決行だ。それ以外に有力な方法はないんだ。」
「ああ、そうだな……。」
「……。」
3人はその後も色々考えたが結局いい考えは思いつかず、結局最初にジャックが言った夜中に屋敷に忍び込むという方法になった。
ファビオ達は日がなくなって辺りが見えなくなる前に森の中に入ってジュリアの屋敷を探す事にした。
ファビオ達が森の中に入って森の中を道沿いに馬で走り続けてしばらく経った頃、森の奥に屋敷のような物が見えてきた。
「……おい!あれ!」
ジャックが声を抑えながら2人を制止するとファビオに聞いた。
「おい、じいさん……あんたが言ってた屋敷っていうのはあの屋敷の事か……?」
するとファビオが1度うなづいた後、緊張した様子で言った。
「……おそらくな……私もあの屋敷に直接行った事がある訳じゃないんだがこの森の中で他にそれらしい物は見た事がない。……まぁこんな森の中だ。あそこでおそらく間違いないだろう……どうする?近くで夜中になるまで待つか?」
「ああ、そうだな……じゃあとりあえず隠れる場所を探すか……。まぁどっちみちこんなに暗くなってちゃ他は探しようがないもんな……よし!奴等あの近くだったらうろうろするかもしれない。あの屋敷の場所が分からなくならない位の出来るだけ離れた場所を探そう。」
「ああ、分かった。」
ファビオ達は屋敷から離れても場所が分かる出来るだけ離れた場所に行って、そこで夜が更けるのを待った。
一方アランはというとファビオ達に気付かれないように付いて来ていて、ファビオ達から少し離れた場所でファビオ達の事を観察していた。
(……どうなってるんだ⁉︎ずっとあそこでじっとして……もしかしたら今日はここで休むのか……?……こんな森の中で夜を過ごさなきゃいけないのか……もう姿を現した方がいいかもしれない……。……どうする……?行くか、もう……?)
アランはしばらくどうするかを考えていたが暗くなってきていて1人でいるのが怖くなったのでファビオ達の前に姿を現わす事にした。
アランはファビオ達の方へと近づいていった。
静かな足音だったが馬の足音が近づいてきている事に気付いた3人は足音がする方を見た。
すると足音はどんどん近づいてきて暗くても姿が見える所まで近づいて来ると3人の目にアランの姿が映った。
「……‼︎アランッ⁉︎」
レイシアは驚いていたがファビオにとっては何が起きたかさっぱり分からずレイシアに質問した。
「……あの……知り合いですか?」
するとレイシアが気まずそうな雰囲気で言った。
「ええ……あの、孫です。」
「孫⁉︎……。」
するとその様子を見ていたジャックが何かを思い出したかのように言った。
「……お前……!確か昨日ラグダナで会ったやつだよな⁉︎何でお前がここに……?」
「よっと!」
するとアランが馬から降りて馬を近くに繋いだ後ジャックの近くまで来て言った。
「ああ……確かジャックだったよな?俺も付いて来たんだ。だってその人レールムの王子だったんだろ?だったらその人助けたら何かいい事あるかもしれないしさ。」
「お前……それで?お前の目的は?じいさん助けた後の褒美か?」
「ああ、そうだよ。朝窓の外眺めていたらおばあちゃんが凄い勢いで村から飛び出していったのが見たたからさ。それに俺がおばあちゃんにその人の話教えてやったんだぜ。」
「そうなのか……?」
「ああ……だから俺もその人の手伝いをしようと思って付いて来たんだ。まぁ今はどっちかって言うと来なきゃよかったって思ってるよ……。」
そしてアランは少し黙った後これから何をするかをジャックに聞いた。
「それで……?これからどうするんだ?って言うか何でこんな所でじっとしてるんだよ?」
「ああ……言っていいよな?」
ジャックがファビオ達の方を見るとファビオはレイシアの方を一瞬見た後に言った。
「ああ……そうだな……。私はこれは何も言えんぞ……レイシアさんに聞いてくれ……。」
レイシアは黙って聞いていたが、ショックだったのだろうか怒りを抑えながら声を振り絞るように言った。
「アラン……何やってるの本当に……⁉︎どうしてこんな事するの……?」
「いや……あの……王子様の手助けをすれば何かいい事があるんじゃないかって……。……それに俺はあの村でずっと同じ事ばっかりやらされてるのが嫌だったんだよ!だから……もしかしたらこれで何か変わるんじゃないかって思ったらさ……そう思ったらさ付いて来ちゃったんだよ……。」
レイシアは余程ショックだったのか黙り込んでしまった。
アランはそれを見て話を変えるためにジャックの方を見てさっきの話の続きを始めた。
「それで……?さっきの話は?これからどうするって?」
「ああ……。」
ジャックはレイシアの方を見たがレイシアはうつむいて黙っていた。
それを見て黙っていても仕方ないと思ったのかジャックがアランに説明しだした。
「これから俺達で夜中になったら魔術書を取りに行くんだ。屋敷の中のやつらが寝静まったらな……ただお前は来るなよ。どうやらあの屋敷の中には何だかヤバいやつらがいるらしいんだ。それに俺達もレイシアさんに迷惑かけたくないからな。お前はこのまま帰りな。後は俺達だけでやるから。」
「いや……でもそれだったら仲間が多い方がいいだろ?俺だって何かの役に立つかもしれない。」
アランはジャックの話を聞いて少し怖気付いていた。
ジャックはそれを見かねてレイシアへの気遣いもあったのかアランに言った。
「ダメだ!お前は来なくていい。何、俺達だけで何とかするさ。それにお前がいたってあんまり変わらねーよ。気にしなくていいからさっさと帰りな。」
「でも……せっかくここまで来たのに……。これじゃあ何のために来たのか分からないじゃないかよ!」
するとずっと黙って聞いていたレイシアが意を決したように言った。
「ダメよアラン!早く帰りなさい!」
「いや、でも……それにもう周りも暗いしさ……1人じゃ危なくて帰れないよ……。」
「……。」
レイシアの怒りを察したのかファビオとジャックは口を開く事はなかった。
するとレイシアがアランに諭すように話し出した。
「いいアラン?もしあなたがここから動けないって言うんだったらこの場所で待ってなさい。おばあちゃん達はこれから屋敷の中に入るけどあなたは絶対に付いて来ちゃダメよ。もしおばあちゃん達の帰りが遅いと思ったら危なくても急いでこの場所を離れなさい。何かあっても遅いからいつでも馬に乗る準備をしておくのよ?分かった?約束出来るわね?」
「ああ……分かった。じゃあここで待っとくよ……。」
アランはその後も度々皆に帰るように言われたが1人で帰りたくないと言って聞こうとしなかった。
そして夜が更けてファビオ達は屋敷の中に入る準備に取り掛かり出した。
皆の準備が済むとジャックが言った。
「……よし、行くか。」
するとレイシアが出発する前にアランの方を見て釘を刺すように言った。
「いいわねアラン?何かあったらすぐ逃げるのよ。おばあちゃん達の帰りが遅いと思った時もよ。分かったわね?約束しなさい。」
「……ああ。分かった、約束するよ。」
レイシアはアランの方を見て溜め息を吐いたが、この状況なのでこれ以上言うのは止めておく事にした。
ジャックもレイシアに気を使ったのかアランに釘を刺すように言った。
「本当にヤバくなったらすぐ逃げるんだぞ。お前がいたって別に何も変わらねーんだ。ここで帰ったって誰も文句は言わねーよ。」
するとアランが少し不機嫌そうに言った。
「ああ、分かってるよ。自分でそうした方がいいと思ったら勝手にそうするよ。」
ジャックはアランのその態度に苦笑いをしながら言った。
「ああ、そうかよ。じゃあ俺達は行くぜ。よし!じゃあ準備は出来てるか?準備出来てるんだったらさっさと行こうぜ。」
ジャックがそう言うとアラン以外の3人は屋敷に向かって歩き出した。
屋敷に向かっている途中、レイシアは1度アランの方まで戻って言った。
「いいアラン?何かあったら本当にすぐ逃げなさい。分かった?おばあちゃんを心配させないの。」
アランはレイシアのその言葉に合わせるしかなかった。
「ああ……分かった。約束するよ。」
「本当ね?約束したからね?ちゃんと守りなさいよ。いいわね?」
ジャック達は少し離れた場所でレイシアを待っていてレイシアが戻っても誰もその事について話そうとはせずそのまま屋敷へと向かった。
アランはレイシアに何かあったら助けないといけないと思っていてその場所からいなくなる事は考えていなかった。




