一抹の不安
ファビオ達はレールムを通り過ぎジュリアが住んでいた森へと進んでいた。
ファビオはうろ覚えではあるもののレールムから東に向かって進み続けているとファビオには見覚えのある大きな森が見えてきた。
(……あそこだ!何となくだか覚えているぞ……確かあんな感じだったはずた……。)
森が見えてくるとファビオは2人を呼び止めた。
「すまない!ちょっと止まってくれ!」
ファビオのその言葉にレイシアとジャックは馬を止め、その後ファビオの方を見た。
ファビオは馬で2人の方に近付くと話を始めた。
「おそらくあの森の中にジュリアという女の屋敷があるはずだ。ここな来たのは随分昔だったから心配だったんだが何となくこの場所は覚えている……。これから何が起こるか分からない。心しておいてくれよ。」
するとジャックがファビオの方を見て言った。
「ああ、分かってる。あの森の中に入ればいよいよもう戻れないかもしれないって訳だ……。それで?あの森の中で何か気を付けなきゃならない事とかはあるのか?」
ジャックのその言葉にファビオはとっさに何かを思い出したかのように言った。
「……そうた!お前には言っていたがレイシアさんには言っていない事があった。レイシアさん……ジュリアという女の周りには全く同じ姿をした人形のような者がいるんです。彼等は人形なんですが人間と同じように意思を持って行動するんです。」
レイシアはファビオのその言葉に驚いた。
「……!全く同じ姿ですか……?」
ファビオはレイシアの質問に対して話を続けた。
「ええ……私は当時牢の中に閉じ込められていたんですがその人形達が牢の鍵を開けてくれたおかげで逃げる事が出来ました。まぁその後彼等に捕まったような形で大変だったんですが……。ジュリアは私にこう言っていました。あなたが死ねばポールも死ぬ、だからあなたの事は殺さないと。その代わり私には一生牢の中で生活してもらうと言っていました。そして私があの森の中にある牢の中に閉じ込められているとその人間達が私の下に来たんです。彼等はジュリアがいない間に元の体を探していると言っていました。そして私が何故牢の中に入れられているのかを聞いてきて、私が魔法をかけられて入れ替わったというと牢の鍵を開けてくれたんです。それで私に魔法をかけられた場所まで案内しろと……。」
ファビオが一旦話すのを止めたのでレイシアは続きが気になったのか質問した。
「あの……それで、その後はどうなったんですか?」
するとファビオはその時の事を思い出しながら話を続けた。
「ええ……それで私は牢から出たんです。それで人形達に周りを囲まれながら歩いていた。しかし私は彼等の体が置いてある場所なんて知らなかった。私が体を入れ替えられたのはあの森の中じゃなくて別の場所だったんです。私が体を乗っ取られたのはあの森の中ではなくてレールムから少し離れた場所にある小屋の中でした。……あれは私が他国に王位を継ぐ挨拶のために何人かの兵を連れてレールムから出発した時の事なんですが……その時関所への通り道にある森の中に身を隠していたポールとポールが雇っていた傭兵のような男達に襲われたんです。それで私はポールに捕まりその小屋の中でジュリアという女から魔法をかけられて入れ替えられたんです。」
「……そうなんですか……。」
レイシアは申し訳ないと思ったのか黙ってしまったが、しかしファビオはちゃんと話しておかなければいけないと思ったのか話を続けた。
「それで……私はその時人形達と一緒に川の近くを通りかかった時、とっさにその川に飛び込んで何とか逃げてきたんです。もしあの時あの人形達が牢の鍵を開けてくれなかったら私はずっと牢の中にいたでしょう。……そういう意味では彼等は恩人なんですが……。しかし彼等は目的があって私を助けていた。そして彼等は私を牢の中から出した後も決して逃がそうとはしなかった。もし奴等がジュリアの近くにまだいるとすればこれ程危険な事はない。何か策を考えないといけないでしょう……。」
「……。」
レイシアはしばらく黙っていたが突然何かを思い出したかのように話し出した。
「あの……もしかしたらジュリアはもういないかもしれません……。」
レイシアの言った事に驚いてファビオは質問した。
「……ジュリアがいない⁉︎どう言う事なんですか⁉︎」
「ええ、……私の昔住んでいた村にレールムの兵士が来た事があったんです……お2人はご存知ないかもしれませんがフサンダールという名の魔導師だけが住んでいた村です……。」
「……魔導師だけが住む村⁉︎」
ジャックが驚いて声を上げたがレイシアは話を続けた。
「ええ……その村は私達の祖先が各地にいる隠れて暮らさなければいけない魔導師達のために作った場所でした。フサンダールは大陸から離れた島でその存在は村の人々以外知っている人は誰もいませんでした。」
レイシアは一瞬黙ってしまったが気を取り直して話を続けた。
「ただ……30年以上前の話です……私がまだフサンダールに住んでいた頃私の家にレールムの兵士を名乗る者が訪ねて来たんです。その兵士は私にジュリアの事を知らないかと尋ねてきました。それで私はジュリアの事は知っているが村を出て行ったきり知らないと答えたんです。その時レールムの兵士達はそのまま立ち去ったのですが……私はあの時ジュリアの身に何かあったんじゃないかと思ったんです。そうでなければ村までレールムの兵士が来るなんて事はなかったでしょうし……。……私はその後身の危険を感じて娘を連れてカムルの村に逃げたんですが……。……私がその時ちゃんと村のみんなに話していればあんな事にならずに済んだのですが……私が1年近く経ってフサンダールに戻った時フサンダールは滅ぼされていたんです……村も人も家も……私が戻った時には全てが無くなっていました……。」
ファビオもジャックもあまりの事に驚いて黙ってしまったが、しばらくしてジャックがレイシアに少し気を使いながら聞いた。
「……全てってのはあれか?全員殺されたって事か……?」
するとレイシアはうつむきながら答えた。
「……ええ……。」
全員黙ってしまったが少し間を置いて、ジャックが気持ちを切り替えさせるためかわざと空元気な態度を取って言った。
「まぁ、何だ……みんな色々あるんだよな、やっぱり。誰だってそうさ!たからよ……あの……。」
ジャックが2人の顔を見てみるとどちらも元気がなさそうに見えたのでこれから屋敷に乗り込むのにこれではダメだと思ったのか2人の気合を入れるように言った。
「何だよ、何だよ!これから1番大事な仕事が待ってるってのに何沈み込んでるんだよ⁉︎そんな話に浸るのは魔術書を手に入れてからにしな!まずは魔術書を手に入れるのが先だ。それ以外の話はその後だ。」
ジャックのその言葉に少し元気づけられたのかレイシアとファビオが笑顔で言った。
「ええ……そうね。あなたの言う通りね。」
「ああ……そうだな。じゃあ魔術書をどう取り戻すかを考えよう。ジュリアがいないかもしれないとなると人形達はさらに危険だ……彼等を抑えつけているものがない。とりあえず移動して話し合いたいんだが……このまま馬に乗りながら話し合うという訳にもいかんしな……どうする?どこか落ち着いて話せる場所に移動したいんだが……?」
「それだったらこの近くに馬を止めて話そうぜ。まだ何も決まってないのにこのまま森の中に入るのは危険だ。森から離れた場所で話そう。なぁ、レイシアさんもそれでいいか?」
「ええ、私は構わないわ。じゃあ移動しましょうか?」
3人は森から少し離れた場所に移動してこれからの事を話し合う事にした。
その様子を遠くから見守っていたアランは不思議そうに見ていた。
(……何だ……?何で止まった……?おいおい、今度はどこに行こうってんだ?)
アランは前の3人に気付かれないように後方から距離を測りながらそっと付いて行った。




