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クロスチェンジ  作者: 緑ラン
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罪の償い

レイシアはラグダナの町に着くとアランから聞いた橋の下にいた老人を探すために橋へと向かった。

レイシアが橋に着くとファビオが昨日と同じように橋の下からただじっと川を見つめていた。

レイシアはファビオに話しかけるのが怖くて遠くからその光景をじっと見つめていたが、やがて意を決したのかファビオの下へ近付いて行った。

レイシアはファビオの近くまで行くとおそるおそる話しかけた。

「……あの……ちょっとお伺いしたい事があるんですけど……。」

するとファビオがレイシアの方を見て言った。

「……何か用ですかな……?」

レイシアは一瞬聞くのをためらったがこのまま黙っていても仕方ないと思ったのか思いきって聞いた。

「あの……あなたが昔レールムの王子だったという事を聞いて……それでその事についてお話ししたい事があって来たんですが……。」

「……どこでその話を?それであんた冷やかしか何かで来たのか?」

レイシアは本当の事を言っていいかどうか迷っていたが、しばらく考えてファビオに対しての申し訳なさから真実を話す事にした。

「……あの……あなたの姿を変えた魔術書を作ったの……実は私なんです……。」

ファビオはその言葉を聞いた瞬間とっさにレイシアの方を見てしまい、あまりにも信じられない出来事が起きたので動揺してしまった。

「……な、何を言ってるんだ……そんなはずがない……。そんな都合のいい事が今更起きる訳ないじゃないか……。……待てよ……あんた今魔術書って言ったな⁉︎どうしてあの魔術書の存在を知っている……⁉︎」

「……え、ええ……あの……。」

「ちょっと待て‼︎あんた私が入れ替わっているというのが分かってて魔術書の話をしているのか⁉︎……じゃああんたの言っている事は本当なのか⁉︎」

「……ええ……あの魔術書を作ったのは私です……。それで私があの魔術書をジュリアという幼馴染みに渡してしまったんです……。」

レイシアはジュリアから王子を入れ替える事を聞いたと言おうか迷ったが、それを言えばファビオに何をされるか分からないと思い、その話は伏せて話を進める事にした。

「……それで……もしかしたら私が渡してしまった魔術書であなたが入れ替わってしまったんじゃないかと思ってここに来たんです……。もしそうだとしたら私は取り返しがつかない事をしてしまったと思って……。」

ジュリアが黙ってしまうとファビオも話そうとはせず、しばらくの間辺りは沈黙に包まれていた。

ファビオは怒りに震えレイシアの事を殺そうかとさえ考えたが、ここでそんな事をしてしまってはようやく訪れた手がかりを無くしてしまうと思ったのか思いとどまり、怒りを収めて出来るだけ冷静に対処するようにした。

「……もしあんたが言ってる事が本当だとして……それで……俺は元に戻る事が出来るのか⁉︎」

「分かりません……私はあなを元に戻すお手伝いが出来ないかと思ってここに来ました。虫のいい話かもしれませんが私にはそれ位しか出来ないと思って……。」

ファビオは徐々に怒りがまた込み上げてきたが、それと同時にようやくちゃんとした対応をしてくれる人間に出会えた事への嬉しさとで、怒りと喜びが入り混じった何とも言えない複雑な心境になっていた。

そしてファビオは少し黙ってしまっていたがこの状況をどうにかしたいという前向きな気持ちになれたのか、出来るだけ冷静になるよう努めながらレイシアにこれからの事を聞こうとした。

「……それで……もしあなたが魔術書を作った本当だったとして……私の事を元に戻す事は出来るんですか……?」

するとレイシアは少し黙った後、申し訳無さそうに言った。

「……それなんですが……ごめんなさい……。今は戻す事は出来ないんです……。随分昔に作った物だからもうあの魔術書の作り方を覚えてなくて……。でも……あの魔術書さえ手に入れられれば元に戻す事は出来ると思います。それには魔術書のありかを見つけるのと……今のレールム王を捕らえる事が必要になると思うんですが……。」

「……。」

その話を聞いてファビオはしばらく黙っていたが突然何かを思い出したかのように話を始めた。

「……待てよ……‼︎魔術書‼︎そうだ‼︎あの魔術書がある場所なら分かる‼︎……いや失礼……。実は私そのジュリアという女が住んでいた場所が分かるんです。あの女は確かレールムから随分と東に行った森の中に屋敷を構えていました。私はあの女に捕らえられてその森の中の牢の中に入れられていたんです。まぁその後運良く逃げてこられたんですが……。」

「まぁ……それじゃあ魔術書がある場所は分かるという事なんですか?」

「ええ……まぁまだあの屋敷に住んでいればの話なんですが……。しかしあそこから逃げ出して随分と長い時間が経ってしまった。まだあの屋敷に住んでいればの話なんですが……。」

「……そうですか……。」

「……ええ……しかしこの場所でじっとしているよりはずっといい。……あなたにこんなお願いをしていいかどうかは分からないんですが……私と一緒にあの屋敷へ行ってもらえませんか……?」

レイシアは少し黙ってしまったが、その後すぐに返事をした。

「……分かりました。私でよければお手伝いします。」

「本当に……?良かった……本当にありがとうございます……。」

ファビオが感慨に浸っているとレイシアは肝心な事を聞いていなかったと思ってファビオに聞いた。

「あの……それで、魔術書を取り返しに行くのはいつになさるおつもりなんですか?」

それを聞いてファビオは気を取り直したのか冷静になって言った。

「ええ……そうですね……。まだいつかは決めてませんが……あなたの準備が出来たらここに来てもらえませんか?あなたにも何かと都合があるでしょうから……私はここで待ってますから。あなたの準備が出来た時にここに来て下さい。」

「私が決めていいんですか……?」

「ええ……私はここで待ってます。この場所にだいたいいると思うので準備が出来たらここに来て下さい。」

「そうですか……分かりました……。」

レイシアは少し考えた後ファビオに自分の事を話していなかったと思い、ファビオを安心させるために自分の事を話す事にした。

「あの……自己紹介がまだだったのですが……私レイシアといいます。カムルの村からここに来ました。カムルの村では夫が牧場をやっているので村の人に聞けば私の事はすぐに分かると思います。」

ファビオは自己紹介をされた事に驚いたが、レイシアの気が変わらないようにここは余計な事は言わずに合わせておこうとした。

「そうですか……別に私にそんな話はしなくても……あの、私は信じてますので……。どっちみち私にはあなた以外頼れる人がいないですから……。」

「……ええ……でも私もずっとあの魔術書を作った事を後悔していたんです……。だからあなたの話を聞いた時あなたの事を元に戻さないといけないと思って……本当です。信じて下さい。」

ファビオはレイシアの事を完全に信用する事は出来なかったがその言葉は嬉しかった。

そして気を使ったのかレイシアをあまりここに長居をさせてはダメだと思って言った。

「あの……分かりました。あなたの言っている事を信じます。それに……こんな風に味方になってくれる人が出来るなんてもう考えてなかったものですから……たから……あなたの準備が出来たらここに来て下さい。私はいつでもいいですから。ここで待ってます。」

「……はい、分かりました。」

するとファビオがレイシアに気を使ったのか、気を取り直して言った。

「さぁ、もう行って下さい。いつまでもこんな所にいちゃいけませんよ。」

「……いえ……あの……。」

「……ここで待ってますから。準備が出来たらここに来て下さい。」

「……はい……分かりました。」

レイシアはこれ以上ここにいたらファビオに気を使わてしまうと思いこの場から離れようとした。

ただこの場所を離れる時ファビオを不安にさせないように言葉をかけた。

「あの……それじゃあ私は行きます。あの……またすぐ来ますから……準備が出来次第必ずすぐに来ますから……。」

ファビオは笑顔を作って言った。

「ええ、分かりました。待ってます、ここで。さぁ、もう行って下さい。」

「分かりました……じゃあもう行きますね。すみません、準備が出来たらまたすぐに戻って来ますから。」

レイシアが去って行くのをファビオは手を振りながら笑顔で見送った。


レイシアがいなくなった後、ファビオはいつもの橋の下に座ってその日はなんとも言えない心境で過ごしていた。

(あの女のせいで俺はこんな風になったのか……いや、あの女は魔術書を作っただけなのか……。もういい、こんな事考えたって仕方がない。とりあえず今はあの女と手を組むしかない……元に戻れるかは分からないが……このままこんな生活を送るしかないならどのみちやるしかないな……。)

ファビオが色々と考えている間に夜がやってきた。

そしていつものように橋の下に座っているとジャックがやって来た。

ファビオはジャックが来ると今日起きた事を話した。

「へー……それでその魔術書が手に入ればあんたは元に戻れる訳だ?」

「……ああ。」

ファビオは仲間は出来るだけ多い方がいいと思ってジャックを仲間にしたいと考えていた。

「それで……お前さんに手伝ってもらえないかと思っている……。もちろん何もないとは言わん!……すぐには無理だが……私が元に戻れた時は出来る限りの事をするつもりだ……。信じてもらえないかもしれんが……手伝ってもらう事は出来ないか……?」

するとジャックが笑いながら言った。

「……はっは。いいよ、そんなの別に。」

ジャックはファビオの言っている事を全く信じていなかったが、この場所でずっとこんな生活を送るのかと考えるとファビオの言っている事は信じられなかったがそれに賭けてみたくなった。

「……分かった。いいよ、じいさん。いや、ファビオさんか……あんたの言ってる事はよく分からねーがこのままここにいたってどうにもならないんだ。俺で良かったら力を貸すぜ。」

「……‼︎本当か⁉︎」

「ははっ……ああ、本当だよ。俺で良かったら力を貸すよ。あんたの体元に戻るといいな。」

「……ああ……すまない……恩に着る。」

「はっは……何言ってんだよ。気にすんなよ。困った時はお互い様だろ?……さぁ、それより今日の分の晩飯持ってきたんだ。早く食おうぜ。」

「……ああ……いつもすまないな、本当に……。」

ファビオとジャックは食事を取ってその日は橋の下で床に着いた。

ファビオはレイシアがやって来るのをただ祈りながら待つ事しか出来なかった。






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