変わり果てた王
ラグダナに着くとアラン達は市場まで行って馬車に積んである荷物を下ろし始めた。
アラン達が荷物を下ろし終えるとアランの父親が市場の人間と話を始めた。
そしてひとしきり話を終えるとアランの父親がアランの近くに来て言った。
「よし!アラン、お前はもういいぞ。後は俺達でやっとくからお前は町を回ってちょっと遊んでこい。」
そう言うとアランの父親はアランにお金を渡した。
「えっ……いや、いいよこんなの……。それに手伝う為に来たんだからさ……こんなお金受け取れないよ……。」
困惑しているアランを気にせずアランの父親は強引にアランを町に行かせようとした。
「何遠慮してるんだ。ほら早く行って来い!お前は町に来る機会も滅多にないんだ。今日位気にせず思いっきり遊んでこい!」
アランは本当は行きたかったのでここは素直に言う事を聞いておこうとした。
「……分かった。じゃあ行ってくるよ。本当にこのまま行ってもいいの……?」
「いいって言ってるだろ。ほら早く行って来い!」
「分かった……じゃあちょっと行ってくるよ。」
そう言うとアランは父親達の下から離れて別の場所に向かった。
アランはとりあえず町の中を歩いてどこに行くかを決めようと思い、町の中を適当に歩き回っていた。
アランが食事を済ませてひとしきり町を見て回って橋の近くを通りかかった時、1人の老人が橋の下でただじっと川を見つめていた。
アランは何をしているのかと不思議に思いしばらくその老人を見ていたが、あまり関わらない方がいいと思い、そのままその場を立ち去ろうとした。
するとアランが立ち去ろうとした瞬間、男が近くに来て話しかけてきた。
「おかしいだろ?あのじいさん。いつもああやってずっと川の方を見続けてるんだぜ。
アランはその男の方を見て言った。
「えっ?……いつも?」
「ああ……だいたい毎日あんな感じだよ。何かもう人生諦めてるっていうの?無気力っていうか何がしたいのか分かりもしねーよ。」
アランがその男の方をじっと見ていると男がそれに気付いて言った。
「ああ、悪い。自己紹介がまだだったな。俺はジャック。よろしくな。」
アランは面倒事に巻き込まれるのは嫌だったのですぐにでも立ち去りたかったが、挨拶されて返事をしない訳にはいかないので仕方なく言った。
「ああ……俺はアラン。よろしく。」
「アランか。よろしくな。」
「ああ……よろしく。」
アランはその場から早く離れようと思ったが突然いなくなったらジャックに失礼だと思ったのか、しばらくその場でただじっとしていた。
すると少し時間を置いてジャックが話しかけてきた。
「あのじいさんさ……自分の事何て言ってるとおもう?」
「……自分の事を何て言ってるか?」
アランはその質問の意味がよく分からなかったのでとりあえず質問してみた。
「……さぁ?よく分からないな。何て言ってるの?」
するとジャックが少し間を置いた後笑いながら答えた。
「……ははっ。あのじいさんさ、自分の事昔どっかの国の王子だったとか言ってるんだぜ。確かレールムか何かの王子だったとかで今は姿を入れ替えられてあんな暮らしをしているんだと……笑っちゃうよな。」
アランはとても信じられなかったがここで話を止めて立ち去るのもどうかと思い、とりあえず聞き返した。
「……入れ替わった?入れ替わったってどうやって……?」
するとジャックはアランの方を一緒見て言った。
「ああ……何かあんまりよく分からないんだけどな。とりあえずあんまり関わらない方が身のためだぜ。」
「……ああ、そうだね。」
アランがそう言ってしばらく黙っているとジャックが自然な態度で質問してきた。
「……そういやお前、歳は?」
「歳?……15だけど。……。」
「そっか……年下だな。俺は18だ。そういやこの町では見かけない顔だな……何?どこから来たの?」
「ああ……カムルの村から来たんだ。」
「カムルの村⁉︎へー、あんな田舎から……何?今日はどんな用で来たの?」
「ああ……親父が商売やっててさ。それで今日はその手伝いなんだ。」
「ああ……そっか。大変だな。あんな遠い所から。」
話を終えるとジャックは1度背伸びをした後アランに言った。
「悪かったな、突然話しかけて。じゃあ俺はもう行くよ。……まぁまたこの町に来たらその時はまた会おうぜ。」
ジャックはそう言うとその場から立ち去ろうとした。
アランは遠のいて行くジャックを見ながら後ろから大きな声で言った。
「……また会おう!またここに来るからさ!」
するとジャックは苦笑いした後アランの方を振り返って言った。
「ああ、また会おうぜ。それじゃあな。」
ジャックはそう言うとその場から去って行った。
アランはジャックがいなくなった後川の下にいる老人の事を見てみたが、やっぱり関わらない方がいいと思ったのかそのまま父達がいる市場の方へと向かった。
アランが市場に着くと父達は荷物を馬車の中に積み込んでいた。
アランは馬車の近くまで行って荷物の積み込みをしている父に話しかけた。
「父さん!もう町の中を見て回ったよ。どうするのこれから?この荷物を積んだら村に帰るの?」
するとアランの事に気付いた父がアランの方を振り向いて言った。
「おお、アラン。何だ?もういいのか?」
「ああ、もう十分見て回ったよ。」
「そうか……じゃあ荷物を積み込むのを手伝ってくれ。これが済んだら村に帰るぞ。」
「ああ、分かった。」
アランは父達と一緒に村に運ぶ荷物を馬車の中に積み込んでいった。
荷物を積み終えるとアランの父親が市場の人間に挨拶に行った。
挨拶を終えた父が戻って来て全員に言った。
「さぁ村に帰ろうか。今日の仕事はこれで終わりだ。」
アランの父親がそう言うと全員馬車に乗り込んで馬車はカムルの村に向けて出発した。
馬車が村に向かっている最中、アランの父親がアランに話しかけてきた。
「アラン、今日はどうだった?町ではどんな事してたんだ?」
「……どんな事?いや、別に何も……。」
しかしアランはしばらくすると何かを思い出して父親に話しを始めた。
「そういえば今日橋の下でずっと川を眺めているじいさんを見たんだよね。それで他のやつらが言うには何かそのじいさん昔自分は王子だったとかいうんだよ。あのレールムとかいう大きな国の。」
「レールムの王子⁉︎」
父は驚いた表情をした後、店で働いている男達の方を見て言った。
「なぁ、初めて聞いたな。何か知ってるか?」
その男達も何の話だか分からずおどけながら答えた。
「さぁ……?何の話だか。だいたいレールムの王子が何でそんな所にいるんだよ?それにじいさんなのに王子ってよ。まぁどうせ人生に疲れて頭おかしくなっちまったんじゃないの?」
「ははっ、違いねーや。俺もそんな夢見てみてーな。そしたら人生楽しいだろうな。」
「ははっ、本当だな。のん気なもんだな。本当によー。」
その話を聞いていた父親がアランに言った。
「ははっ……まぁ何にせよそういう得体の知れない人間には近づかない事だ。いいな、アラン?絶対に関わっちゃダメだぞ。」
アランは父の真剣な態度を察して仕方なく話を合わせた。
「ああ、分かってるよ。それに俺は橋の上からそれを見てただけで関わろうなんて思ってないよ。何があったか聞かれたからその話をしただけだしさ。」
「そうか、ならいいんだ。まぁとりあえず念の為にな。」
そう言うと父は話すのを止めて他の所を見ていた。
アランも話すのが面倒になったので窓の方を見て、村に着くまで外の景色をずっと眺めていた。
アランが昼間みた橋の下の近くにその時いた老人はまだいた。
その老人は橋の下で橋を風除けにしながら座ったいた。
すると昼間会ったジャックが橋の近くから老人の下へ近づいてきた。
「よう、何やってんだよ?じいさん。」
すると老人がジャックの方を見て言った。
「おお……ジャックか。今日はなかなか会わなかったな……どうしてたんだ?」
「別に……いつもと何も変わらねーよ。」
するとジャックが老人の隣に座って食料を並べた。そこにはパンや缶詰などが並べられていた。
すると老人がジャックの方を見て言った。
「いつも悪いな……お前さんには感謝してもしきれんよ……。」
するとジャックが照れ臭そうに少し笑いながら言った。
「何言ってるんだよ。困った時はお互い様だろ?それに似たような境遇の者助け合わねーとな。だからそんな事は言いっこなしだぜ?ファビオさん。」
「そうか……済まないな、本当に……。」
「いいって事よ!さぁ食おうぜ!」
「……。」
ファビオは生きていた。ずっと元に戻れないまま時が過ぎファビオは心身共に疲れて果てていた。
ファビオはもう元に戻る手がかりさえ見つけようとしていなかった。
ファビオにはもう世の中の事がどうでもよく映っていて、レールムがどうなっているかさえ考える事はなかった。




