少年アラン
多くの月日が流れて気付けばアランももう15歳になっていた。
アランの日課はエミーの父親のおじいさんの下で毎日馬の世話をする事だった。
しかしアランはそんな代わり映えのしない毎日にずっとうんざりしていた。
アランは自分はこの小さな村でずっと暮らし続けないといけないのか、本当にこれでいいのかと毎日のように自らに問いかけるように暮らしていた。
アランはそんな毎日をどうにか変えたいと思い、村の外の事を調べるような事ばかりしていた。
ある日の朝、アランはいつものようにおじいさんの手伝いをする為に牧場に向かった。
アランが牧場に着くとおじいさんとエミーはすでに仕事を始めていた。
エミーはアランを見つけると、遠くからアランの方に向かって叫んでいた。
「来たわね……アランー!何やってるのー!いつまでご飯食べてたのよ!早くこっちに来て手伝いなさーい!」
「ちっ、うるさいな……。」
アランはエミーに聞こえないようにそう言うと、嫌々エミー達の下へ向かった。
アランがやって来るとエミーはアランに少し激しい口調で言った。
「何やってるの!朝はちゃんと起きなさいってあれほど言ってるでしょ!ちゃんと夜寝ないからいつも仕事に遅れるんでしょ!」
アランは朝からエミーの説教を聞くのが嫌だったのか話を流そうとした。
「ああ……分かった、分かったよ。それで?何から始めればいいの?早く仕事始めたいんだけど。」
エミーはアランのその態度に半ば呆れた様子で言った。
「……本当にこの子は。一体誰に似たのかしら……全く。」
エミーがぶつぶつと文句を言っていると奥の方からおじいさんの声が聞こえてきた。
「おーい!まだ終わらないのか?早くこっちへ来て手伝ってくれー!」
するとエミーがおじいさんに返事をした。
「はーい!ちょっと待ってー!今行きますからー!」
エミーはそう言った後、今度はアランの方を見て言った。
「ほら、早く来なさい。早く終わらせないと晩ご飯の時間に間に合わなくなっちゃうわよ。」
「ああ……分かったよ。」
アランはエミーに連れられておじいさんの所へ行き、いつもの仕事を始めた。
それから夕方になりアラン達が仕事を終えて帰る時間が近づいてきた。
するとエミーがおじいさんに言った。
「お父さん。そろそろ帰って夕飯の準備をしたいんだけど……後頼んでいいかしら?」
するとおじいさんは作業する手を止めてエミーに言った。
「ああ、構わんよ。早く帰って準備しなさい。後の事はワシがやっておく。……アランも明日は遅れるんじゃないぞ。」
するとアランは気の抜けたような返事をした。
「はーい。」
エミーはアランの頭を軽く叩いて言った。
「本当にこの子は……じゃあお父さん、後よろしくね。明日も同じ時間に来るから。それじゃあね。」
「ああ、気を付けて帰るんだぞ。また明日な。」
「ええ、じゃあ行くわね。」
エミーは挨拶を終えるとアランを連れて家路についた。
家に着くとエミーは急いで晩ご飯の支度に取り掛かった。
アランは家に着くなり自分の部屋にすぐ戻って、ベッドに倒れ込んだ後天井を眺めながらボーっとしていた。
(面白くないな、毎日毎日……また明日もあんな事やらなきゃいけないのかよ……。)
アランは晩ご飯が出来るまで自分の部屋から出る事は無く、ただベッドの上に横たわっていた。
晩ご飯の時間が近くなるとアランの父親が仕事から帰ってきた。
「ただいまー!今帰ったぞー!」
その声を聞いてエミーが台所から返事をした。
「あっ、お帰りなさーい!ちょっと待ってて。今食事の支度をしている最中だから。」
アランの父親はその言葉を聞くとリビングにあるソファーに座って、晩ご飯が出来るまで新聞を読みながら時間を潰していた。
アランの父親はカムルの村出身の男だった。
アランの父親とエミーは歳が近いという事もあり、エミーがカムルの村に来た時からアランの父親が何かと世話を焼いていた。
アランの父親の仕事はカムルの村に外から色々な物資を持って来て売ったり、またカムルの村の名産品や村で取れた野菜や果物を外に売りに行って生活していた。
晩ご飯の支度が整うとエミーがアランを部屋まで呼びに来た。
エミーはアランの部屋のドアをノックした。
「アラン、ご飯が出来たわよ。早く降りて来なさい。」
「……ん……ああ……分かった。すぐ行くよ。」
アランはエミーから呼ばれてベッドから起き上がり食卓に向かった。
アランは食卓に向かう前に洗面所で手を洗ってそれから食卓に向かった。
アランが食卓に行くとテーブルの上にすでに食事が並べられていて、アランの父親とエミーがアランの事を待っていた。
アランが椅子に座るのを確認するとエミーが言った。
「じゃあ食べましょうか?」
「ああ、そうだな。食べようか。」
するとエミーが全員の準備が整ったのを確認した後号令をかけた。
「じゃあ頂きます。」
「頂きまーす。」
食事の挨拶を終えると皆が箸を取って食事を始めた。
食事の最中エミーがアランの父親に話しかけた。
「ねぇ、今日はどこまで行ったの?」
するとアランの父親が食事を取るのを止めて答えた。
「ああ、今日もいつものように隣町まで行っていた。最近は少し忙しくてな……。あーそう言えば明日村から運んで行く荷物が多くてな……アランを明日こっちの手伝いに回してくれないか?」
「アランを?ええ……私達の方は別に私とお父さんだけでも何とかなるけど……。ちょっと待って。アラン、どうするの?」
するとアランは食事を取りながらエミーの方を見て言った。
「いいよ、別に。毎日同じ仕事ばっかりでうんざりしてたんだ。明日俺は父さんの方に行くよ。」
エミーはその言葉を聞いてアランの父親に言った。
「もう、この子は……。ねぇ、聞いてよ。アランったらまた今日も朝遅れてきたのよ。朝起こしてもちゃんと起きないし準備だって早くしようとしないし……ねぇ、あなたからもちゃんと言って聞かせてよ。」
するとアランの父親は苦笑いをしながら言った。
「ははっ……まぁいいじゃないか。アランもそのうちちゃんとやるようになるさ。それよりもアラン、明日の朝はいつもより早いぞ。ちゃんと起きれるか?」
アランはその言葉を聞いて明らかに嫌そうな態度を取った。
「ええー……そうなの……?じゃあどうしようかなぁ……それ俺行かないとダメ?やっぱり止めとこうかなぁ……。」
するとエミーがアランの方を見て怒りながら言った。
「こら、アラン!ダメでしょ、ちゃんとお父さんのお手伝いしなさい!いい?ちゃんと明日は遅れずに起きるのよ。分かった⁉︎」
「……ああ、分かったよ。」
そんな2人の様子を見てアランの父親が2人をなだめるように言った。
「まぁまぁ……アランだってちゃんとやるようになるさ。なぁ、アラン。明日は父さん達本当に人手が足りないんだ。ちゃんと手伝ってくれよ。いいな?」
アランはその言葉に仕方なく返事をした。
「ちぇ……分かったよ。明日は朝からちゃんと起きて手伝うよ。それで?明日は朝どこに行けばいいの?」
「ああ、店の前で荷物を積み込むからそこに来てくれ。明日は荷下ろしが多くて大変そうだから今日は早めに休んでおけよ。いいな?」
「ああ……分かったよ。」
エミーは先程の事でアランにまだ少し不満だったが、これ以上叱っても仕方ないと思ったのかアランに言い聞かせるように言った。
「いいアラン?ちゃんと父さんの言う事聞いてしっかり働くのよ?分かった?」
「ああ……分かってるって。」
エミーはそれ以上アランに説教をするよう真似はしなかった。
食事を終えると全員明日の身支度を整えた後、明日の事を考えて早めに床に着いた。




