不安の的中
フサンダールに到着するとポールはうろ覚えではあったが昔ジュリアと行った家の方へ向かった。
覚えている家の辺りまで行くとポールは兵士の1人におそらくこの家だと思われる家を指差して言った。
「おい、この家の者にジュリアという者を知らないか聞いてきてくれないか?」
「……ジュリアですか……?……はっ!この家の者にその名前の者を知っているか聞いてくれば良いのですね⁉︎分かりました!」
兵士はそう言うとポールに言われた通りその家の者にジュリアの事を聞きに行った。
兵士がその家のドアをノックすると家の中から返事が聞こえてきた。
「はーい!ちょっと待って下さいねー!」
するとレイシアが家の中からドアを開けて出てきた。
兵士はレイシアが家から出て来ると先程ポールから頼まれた事を聞こうとした。
「あの……すみません。ちょっとお伺いしたい事があるんですが……。突然で申し訳ないんですがジュリアという人の事をご存知ですか?」
レイシアは初めて会ったばかりの人間に突然ジュリアの事を聞かれて驚き、恐怖を感じたのか話をはぐらかす為に逆に質問した。
「……あの……どちら様ですか?……あのお名前を伺ってもよろしいですか……?」
すると兵士はしまったというような態度を取り、レイシアの質問に答えた。
「おっと、これは失敬……私レールム王家に仕えている者です。この度王の使いでジュリア殿の事をお聞きしたいという事で伺った次第です。……何かご存知ありませんか?」
「……レールム……?……!」
そのレールムという名前を聞いてレイシアは昔ジュリアと話した事をとっさに思い出した。
(……確かジュリアはレールムを乗っ取るって言ってたはず……それに王様を入れ替えてレールムを操るとかも言ってたわよね……。もしかしてジュリアがこの男を家まで来させたの⁉︎……でも何かジュリアの事を聞いてるみたいね……?もう!一体何がどうなってるの⁉︎)
レイシアはおそるおそる兵士の後ろの方を見渡した。
すると兵士の後ろの方に大勢の男達がいた。
(何なのあれ⁉︎まさかあれ全員レールムの兵士なの……⁉︎……1人格好が違う人がいるわね……もしかしてあれが偽の王様……?……まずい……あいつなら私とジュリアの関係を知っているかもしれない……。ここは出来るだけ怪しまれないようにしないと……。)
するとレイシアは平静を装いながら兵士の質問に答えた。
「ええ……確かにジュリアの事は知っています。……でも彼女はずっと昔にこの村を出て行ったきり帰って来ていないので今どうしているか分かりません。.私が知っているのはこれだけです。他の事は私には分かりません。」
その言葉を聞いた兵士は冷静な態度で言った。
「そうですか……ではちょっと王に聞いてきますのでそこで待っていてもらってもいいですか?」
「……ええ……。」
兵士は急いでポールの下に行きレイシアから聞いた事を報告した。
「陛下……あの女ジュリアという者の事は知っていると言うんですが……どうにもそのジュリアという者この村から1度出て行ったきり戻って来てないという事です。……どうなされますか……?」
ポールはしばらく考え込んだ後兵士に返事をした。
「……帰ってきてないか……。」
その時ポールの頭の中にある考えがよぎっていた。
(……そう言えばジュリアにあの魔術書を渡したのもこの村の人間だったな……。……!もしかしたらジュリアは私が入れ替わっている事をこの村の人間に話しているんじゃないか……⁉︎……まずいな……そうだとしたらこの村の人間は全員始末するしかない……。あの女を殺してここで騒ぎを起こせば村の全員に警戒されて逃がしてしまうかもしれない……この人数で村人全員を相手にするという訳にはいかんか……。)
するとポールは兵士の方を見て指示を出した。
「分かった。邪魔したと伝えろ。もうここに用はないとな。」
「……はっ!分かりました!」
兵士はポールのその言葉をレイシアに伝えに行った。
「どうやら王の用事はもう済んだようです。お手数かけて申し訳ない……では我々はこれで失礼します。」
「……ええ……。」
レイシアは兵士がいなくなった後ドアを閉めると恐怖心でその場に座り込んでしまった。
(……どうしよう……?あいつらいなくなるなんて言ってるけどまだ近くにいるかもしれない……。村のみんなに知らせる……?いいえ……そんな時間ないわ。そんな事してたらきっと間に合わなくなる……今ならあいつらも油断してるかもしれない……。早くエミーを連れて逃げなきゃ……!)
レイシアは家を出る準備をさせようとすぐにエミーの下へ向かった。
エミーを見つけるとレイシアは出来るだけ外に漏れないようにしながらエミーを急き立てるように言った。
「エミー!早く家から出る準備をしなさい!早く部屋から必要な物だけ持ってきなさい!早く!急いで、エミー!」
エミーはレイシアの様子を見て不安になり、とりあえず何があったのか聞こうとした。
「……どうしたの……?何かあったの、お母さん……?」
するとレイシアは危機迫る様子でエミーに言った。
「早くしなさい!お母さんを困らせないの!」
レイシアのその様子を見て、エミーは急いで自分の部屋まで荷物を取りに行った。
レイシアが荷物をまとめているとエミーは自分の部屋から必要な物だけリュックに入れて戻ってきた。
レイシアも必要な物だけをバッグに詰め込むとエミーを連れて急いで家から出ようとした。
レイシアは家から出る前に念の為に窓からさっきの兵士達がいないかだけを確認した。
そして窓の外に誰もいない事を確認するとエミーを家の中で待たせて、更に念を押すように家の周辺を確認しに行った。
家の周りに誰もいなかったのを確認すると急いで戻って、今度こそエミーの手を引いて家を出た。
レイシアは辺りを見回しながら船が停めてある方向までエミーを連れて駆け足で歩いて行った。
「……お母さん……?何があったの……?ねぇお母さん⁉︎」
「……静かにしてなさい!黙って付いてくればいいの!」
エミーはレイシアのその様子を見て黙る事しか出来なかった。
そして船が停めてある場所に着くとレイシアは周りに誰もいない事を確認して、周りに誰もいない事が分かると急いでエミーを船に乗せてフサンダールを後にした。




