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クロスチェンジ  作者: 緑ラン
13/33

逃げ出したファビオ

ある日ジュリアが屋敷から出ようとしている時、人形達を呼び寄せて言った。

「私はこれから用事があってここを離れるけどあなた達はここで待ってなさい。……いい?あなた達の体は私の部下が常に見張っている。あなた達が余計な事をすればあなた達自身も無事じゃ済まないわよ?分かったらここで大人しくしてなさい。いいわね……?」

「……ああ。分かった。」

ジュリアは人形達との話を終えると屋敷から出てレールムへと向かった。

人形達はジュリアが屋敷を出てから少し経って話し合いを始めた。

「……おい。あいつがいなくなるなんてこんなチャンス滅多にないぞ。どうするんだ……?ここで動かなきゃ俺達ずっとこのままなんじゃないのか……?」

「……ああ。でも仮にあいつが持ってる魔術書とやらを手に入れても俺達じゃどうする事も出来ない……。それに見つかったら酷い目に合わされるだろうな……あいつの言う通り大人しくしておくしかないんじゃないか……?」

すると人形達は意見がまとまらずに黙ってしまったが、1人の人形が神妙な面持ちで話し始めた。

「……なぁ……俺達がこのままずっとあいつの言いなりになったとしてあいつが俺達を元に戻す保証なんてどこにもなくないか……?もしかしたらあいつは俺達を最初から戻そうなんて思ってないのかもしれないし……それにあいつの目的が済んだら俺達一体どうなるんだ……?俺達は用済みだろ……?元に戻したら俺達はあいつを攻撃すると思ってるかもしれない……そんな奴等をわざわざあいつが戻すのか……?」

それを聞いて他の人形達は黙ってしまったが、その人形は話を続けた。

「……動こうぜ。これからの事が上手くいくかどうかじゃない。俺達は自分の手でどうにかしないときっとこの状況からは助からない。」

それを聞いた人形達はある程度納得する事は出来たが、完全に賛同するとまではいかなかった。

確かにその人形の言っている事ももっともだがジュリアが手がかりを残しているとは考えづらかった。

それに見つかった時の事を考えると身がすくんですぐに了承する事は難しかった。

しかし暫くすると1人の人形が言った。

「……そうだな。このままじっとしていても始まらない……やろう。とにかく見つからなかったらいいんだ!それに……そいつの言う通りだ!俺達はこのままじゃずっと戻れない……。やろう……!あいつがいない今がそのチャンスなんだ!」

するとそれを聞いていた他の人形の1人も言った。

「……ああ、そうだな。皆んなやろうぜ!とにかく待ってたって始まらない。あいつが帰って来るまでに何か手がかりだけでも見つけるんだ!」

すると他の人形達もお互いの顔を見渡した後、少し笑みを浮かべながら覚悟を決めたように一斉に口を開き出した。

「そうだな!やってみようぜ!大丈夫さ‼︎何か見つかるかもしれない!」

「……ああ……それに上手くいけばあいつと何か交渉出来るかもしれない。分かった、俺も付き合うよ。」

皆それぞれ思うところはあったが、だだこの状況を一刻も早くどうにかしたいという気持ちだけは同じで、その共通の願いを頼りにこの場は協力して手がかりを探す事にした。

人形達はまず屋敷の中から探す事に決めて、ジュリアの部下に気付かれないように辺りを警戒しながら行動を始めた。

彼等はまず自分達の体を探そうと思い屋敷の中をくまなく探したが見つからなかった。

そして屋敷の中に体が無いと分かると、人形達はせめて魔術書だけでも見つけてジュリアとの交渉の材料にしたいと考えた。

人形達はジュリアが使っていると思われる部屋をしらみつぶしに探した。

するとジュリアが使っている部屋で書斎と思われる部屋を見つけた。

しかしその部屋には本がたくさんあり、人形達はその部屋の中の本をしらみつぶしに探したがどれが本当の魔術書か分からなかった。

「……どうする?どれが本当の魔術書か俺達には分からないぞ……。それに間違った本だけ持って行ったら……これは大きな賭けだな……。」

「……ああ……どうするんだよほんと……?」

人形達は半ば諦めた態度で適当に書斎の中を探し回っていた。

すると暫く経った頃、人形の1人が部屋に飾られている絵画を手に取った。

その人形が手に取った絵画を見回しながら額縁の中を開けてみると、額縁の中に鍵が入っていた。

「……おい!ちょっと来てくれ!」

その人形の慌てた様子に他の人形達が急いで駆け寄ると、人形は手に取った鍵を見せた。

「……何だそれ……?何かの鍵じゃないのか……?……おい!それってもしかして……⁉︎」

「……ああ!俺達の体が置いてある場所の鍵かもしれない……!」

人形達は皆その事に一瞬喜んだが、彼等はすぐに我に帰った。

「……でもあいつの部下が俺達の体を見張ってるんだよな……?それにあいつがいないと自分じゃ元に戻る事は出来ないし……やっぱり魔術書を見つけて交渉の材料にした方がいいんじゃないか……?」

「……。」

皆黙り込んでしまったが暫くすると人形の1人が言った。

「……でもここでじっとしていてもどうにもならないぞ。それにあいつがいつ帰って来るかも分からない……。とりあえず体がどこにあるかを把握しておいた方がいいんじゃないか?今度いつ探せるかも分からない……魔術書はその後だっていい。」

その言葉を聞いて他の人形達も賛同した。

「……ああ、そうだな。俺も同じ考えだ。探そう。自分達の体を。」

「……ああそうだな。よし!俺も行くぞ!」

人形達はお互いの顔を見渡して決意を確認しあった後、自分達の体を探す為に行動を始めた。

人形達は屋敷の中はもうほとんど確認し終えたので今度は屋敷の外を探す事にした。

「この中にはもう何も無いはずだ。外を探そう。この屋敷の近くにも何かあるかもしれない。」

「ああ、そうだな。あの女が帰って来るまでどれ位時間があるか分からない……急ごう!」

人形達は屋敷を出て外に向かった。

人形達は外に出ると出来るだけ急ぎながら自分達の体を探した。

しかし屋敷の近くは森になっているだけで体を隠しているような場所は見当たらなかった。

彼等は屋敷の近くから森の奥へと進んで行ったが、ただ森だけがひたすら広がっていた。

「おい、どうする……?このまま進んで行ったら屋敷に戻れなくなるんじゃないか……?」

彼等は屋敷の場所が分からなくなる事に恐怖を感じて1度そこで立ち止まってしまった。

しかし少し時間が経つと、人形達の中の1人が言った。

「行こう……もう決めたじゃないか。俺達に迷っている時間なんてないはずだ。早く行こう!」

「……ああ、そうだな。行こう。」

彼等は皆不安に思いながらも自らを奮い立たせながら前に進んだ。

そして森の中をひたすら歩いていると前方に森の中にあるには不自然な牢屋のようなものを見つけた。

「……おい!あれ!」

その牢屋を見つけた瞬間、皆息を飲みながら立ち止まった。

「……おい、見張りがいるかもしれない……。慎重にな……。」

人形のは焦る気持ちを抑えつつ、出来るだけ静かにその牢屋に近づいた。

牢屋の近くまで来ると1人の人形が他の人形達を手で静止して、自分だけで牢屋まで近づいて中を覗き込んだ。

牢の中を覗いて見ると男が1人ただじっとそこで座っていた。

牢の中を覗き込んだ人形が後ろを振り返って他の人形達に出来るだけ遠くへ行くようにジェスチャーをした。

そして、その場から離れると牢の中を覗き込んだ人形が言った。

「……おい……牢の中に人がいた……。」

すると他の人形達がお互いの顔を見た後、その人形を問い詰めるように聞いた。

「おい……!誰だったんだ⁉︎もしかして俺達の体があったのか……⁉︎……それともあの女の部下か⁉︎」

すると牢の中を見た人形が少し間を置いて話をした。

「……違う。どちらでもない……俺達の体はあの牢の中にはなかった……。それにあの女の部下は確か女だったろ……?どちらでもないんだ……知らない男が1人で座ってた……。」

「座ってた……?」

「……ああ、意識はあるみたいだった。俺達の体だったら抜け殻みたいになってるだろ?違う、そいつはそんな感じじゃないんだ……普通にあの中で座ってた……。」

「……。」

皆期待が大きかった分落胆してしまい黙り込んでしまったが、少し経って人形の1人が聞いた。

「なぁ……あいつの部下はいなかったんだよな……?」

すると中を見た人形が返事をした。

「あぁ……。」

話を聞いていた人形の1人が少し黙り込んだ後、周りを見回しながら言った。

「なぁ……そいつ何か知ってるかもしれないぞ?とりあえず話だけでも聞いてみようぜ?」

すると他の人形達も同じ事を考えていたのか皆その言葉に賛同した。

「ああ……そうだな。とりあえず話を聞くだけ聞いてみよう。何か分かるかもしれない……。」

「ああ……そうと決まったら早く聞こうぜ。あの女がいつ帰って来るかも分からないんだ。急いだ方がいい。」

人形達は恐る恐る牢屋に近づき、また牢屋の中の様子を確認した。

すると牢屋の中にいる男が足音に気付いたのか人形達の方を見た。

何と牢屋の中に捕まっていたのはファビオだった。

ファビオは人形達の方を見て言った。

「ああ……これは夢か。まさかあの女意外が俺の目の前に現れるなんて……。」

すると人形達の中の1人がファビオに聞いた。

「……なぁ、あんた。そこで一体何してる?」

その言葉を聞いたファビオは人形達の姿をしっかり見たが、それは人間程の大きさの人形が全く同じ姿で5体立っていた。

その光景はとても異様で、普通の人形がただ人間程大きくなっているだけで現実とは思えない程だった。

ファビオはその異常な状況に黙り込んでしまったが、少し経つと人形の1人がファビオに聞いた。

「なぁ、あんた……ここで一体何してるんだ……?」

ファビオは人形に恐怖を感じて返事をする事が出来なかった。

ファビオは黙っていたが、人形の1人が待っていても仕方ないと思ったのか仕方なくファビオに聞いた。

「なぁ……自分の事が答えたくないならそれでいい。他に1つ聞きたい事があるんだ。いいか?」

するとファビオは人形の方を見て小さな声で返事をした。

「……ああ。」

ファビオが返事をするとさっき話していた人形が話を続けた。

「俺達は今自分達の元の体を探しているんだ。あんたここに閉じ込められる前に何か見なかったか……?」

ファビオはその言葉を聞いて驚いた。彼等はおそらくジュリアの魔法で魂だけ入れ替えられたのだと察しがついた。あの魔法が人間だけではなく生きていない物にまで使う事が出来るのだと思うとジュリアがとても恐ろしくなった。しかし改めて考えてみるとジュリア意外にこの場所に来る事がある者なんてもういないかもしれない。ファビオは牢の中から逃げ出す為にこの人形達を上手く使う事が出来ないか必死に考えた。

そして考えがまとまるとファビオな人形達に恐る恐る聞いた。

「自分達の体というのは……もしかして君達もあの魔法をかけられて入れ替わったのか……?」

すると人形達は驚いた様子でお互いの顔を見回した後、慌てた様子でファビオに聞いた。

「あんた……!何か知っているのか⁉︎」

その人形達の慌て方を見てファビオは彼等が本当に魔法をかけられて入れ替わったのだと思った。

しかしこの場はそんな事を考えている場合ではなく、どうやって牢屋から出るかの方が重要だった。

ファビオは人形達に話を合わせながら打開策を探る事にした。

「……ああ。いや、私もその魔法をかけられて入れ替えられたんだ……。実は私は元々別の人間でね……その魔法で入れ替えられた後この中に閉じ込められてずっと生活しているんだ。

その言葉を聞いて人形達は一旦ファビオの下から離れた後、ファビオに聞こえないように小声で話を始めた。

「……どうする?人間同士でも入れ替えらるなんて知らなかったぞ俺は……。あいつの言ってる事は本当かどうか分からないがあの女が帰って来るまでどれだけ時間があるか分からないぞ……ここはあいつから詳しく話を聞いた方がいいんじゃないか……?」

すると人形達の中の1人もその意見に賛同した。

「……ああ、俺もそう思う……。ここで疑ってたって始まらないさ。とりあえずあいつが何か知ってるんだったらここで聞き出すしかない。問題はそれをどうやって聞き出すかだな……。」

すると人形の1人が何かを思い出したように言った。

「……おい……!あのジュリアとかいう女の部屋で見つけた鍵……!あの鍵この牢屋の鍵じゃないのか……⁉︎」

人形達はその言葉に何かを納得した様子で、1人の人形が全員に言った。

「……なぁ……その鍵が本当にあの牢屋の鍵だったとしたら……1度あいつをあの牢屋の中から出したらどうだ……?あいつが何かを知ってるんだったらそこまで案内させて用が済んだらあいつをまた牢の中に戻せばいい。どうだ……?」

すると人形達は黙り込んで少しの時間考え込んでいたが、しばらくすると1人の人形が言った。

「……ああ……それしかない!それにあいつに俺達がここに来た事はバレちまったんだ。このまま戻ったって無事じゃ済まないさ……とにかくやろう!時間がないんだ……!」

「ああ、そうだな……考えている時間はあまりないな……よし……!急ごうぜ!」

話を終えると人形達は牢屋の前まで戻った。

そして牢の前に来ると人形の1人がファビオに聞いた。

「なぁあんた……あんたが魔法をかけられた場所っていうのはどこなんだ……?」

するとファビオは少し考えた後、出来るだけ早く返事をした。

「……ああ。確かここから大分離れた場所だったな……どうしてだ……?」

するとさっき話を聞いた人形が再び聞いた。

「……もし俺達がその場所に案内して欲しいと言ったらあんたはどうする……?案内してくれるか?」

その言葉を聞いてファビオはこの人形達が本当にジュリアに魔法をかけられたのだと確信した。

考えてみれば全く同じ姿をした人形が5体も人間と同じように動いているという事自体が普通じゃない。とにかくここは人形達に話を合わせて牢屋から出るしかない。

ファビオは本当は魔法をかけられた場所等知らないが、本心を悟られないようにしながら人形達を信頼させようとした。

「ああ……それは問題ない。私が魔法をかけられた場所なら大体覚えている……。1つ聞きたいんだが君達はあのジュリアとかいう女とどういう関係だ?」

すると人形達はお互いの表情を1度確認した後、1人の人形がファビオに返事をした。

「ああ……俺達はあの女にこの場所まで連れてこられて無理矢理この姿に入れ替えられたんだ。だから俺達はあの女がいない間に元の姿に戻りたいと思っている。あんたは……?どうして入れ替えられだんだ……?」

するとファビオはうつむきながら言った。

「ああ……私はある男と入れ替えられたんだ……。……私はその男達とは面識はなかったんだが突然襲われてね……。それで入れ替わった後はずっとこの中さ……。」

「あんた何で入れ替えられるのか心当たりはないのか……?」

「……さぁ……詳しくは話してもらえてない……。もうこの牢の中に入れられて3年になるんだがね……私はもう人生を諦めたよ……。」

「……。」

その話を聞いた人形達はまだ少し疑っていたが、ファビオの話を大体信じているようだった。

「……なぁ?この男の言っている事は本当なんじゃないのか?そうじゃないと牢の中になんか入れられないだろ……?」

「……ああ……それにあまり時間がない。とにかく今はこの男の言う事を信用するしかないんじゃないか……?」

人形達は鍵を開けるかどうか迷っていたが、1人の人形が覚悟を決めたように言った。

「……鍵を開けよう!とにかく俺達には迷っているヒマなんてないんだ……!後の事はその後に考えればいい……!」

その言葉に他の人形達も賛同した。

そして鍵を持っている人形が牢屋に鍵を差し込んで回してみると牢屋の鍵が開いた。

「……おい!開いたぞ!」

そう言って鍵を開けた人形が牢屋の扉を開くと牢屋の扉は開いた。

ファビオは扉が開いたのを見た瞬間慌てた様子で牢屋の外に出た。

すると牢屋から出たばかりのファビオを慌てて人形達が取り囲んだ。

「……さぁ扉を開けたぞ!お前が魔法をかけられた場所まで案内しろ!」

人形達が急に威圧的な態度になるとファビオはまずいと思ったのか人形達に話を合わせるようにして言った。

「……ああ、分かった。ちゃんと案内する。私はどうすればいいんだ?君達の前を歩けばいいのか後を歩けばいいのか……?決めてくれ。」

すると人形達は相談を始めたが、しばらくすると1人の人形が言った。

「……そうだ。俺達が取り囲むようにしながら歩けばいいんじゃないか?そうすればこいつは俺達から逃げられない。」

「……そうだな。じゃあそうしよう。皆んなはそれでいいか?」

「ああ……それなら大丈夫だろ。気を抜くなよ。とりあえず時間もないんだ。さっさと出発しよう。」

人形達はファビオを真ん中にして歩く事になった。

ファビオは人形達に周りを取り囲まれているので逃げる事が出来なかったが、とりあえずここは言う通りにして逃げる隙を伺う事にした。

「さぁ、いいぞ。どっちに進めばいいんだ?」

人形がファビオに聞くと、ファビオはある方向を指差しながら言った。

「ああ……向こうだ。行ってくれ。」

ファビオが指差した方向に全員が歩いて行った。

しかしその方向にいくら歩いても森の中を歩くばかりで人形達の体を置いてありそうな場所は何一つなかった。

すると1人の人形が業を煮やして言った。

「……おい!いつまで歩くんだ⁉︎場所が分かってるんじゃないのか⁉︎」

ファビオは場所が分かってない事を出来るだけ悟られないように言った。

「……ああ。はっきりと覚えている訳じゃないんだが確かこっちの方角のはずなんだ……。もう少し進めば何か思い出すかもしれない……少し待ってくれ。」

「……そうか……分かったよ。」

人形達はファビオの言う通りそのまま進み続けた。

しかしいくら歩いてもそんな場所はどこにも見当たらなかった。

すると人形の1人が突然怒鳴り声を上げてファビオに言った。

「……おい!どうなってるんだ⁉︎いくら歩いても何も見つからないじゃないか⁉︎本当に覚えているのか⁉︎まさか俺達を騙したんじゃないだろうな⁉︎」

するとファビオが人形をなだめるように言った。

「……待ってくれ!本当にこっちの方角のはずなんだ!もし何もないんだったら私をどうしてくれても構わない……!私だって元に戻らなければ何の意味もないんだ!信じて付いて来てくれ……!」

人形達はお互いの顔を見渡した後、ここでファビオを疑っても仕方ないと思ったのか1人の人形が言った。

「……行こう。ここで立ち止まったって仕方がない。今はとにかく時間がないんだ。」

「……ああ、そうだな。」

人形達はファビオの言う通りそのまま前へと歩き始めた。

しかし先程とは違いファビオの事を疑っているのか逃げられないように慎重にファビオを見張っていた。

ファビオが指差した方向へひたすら歩き続けると川が見えて行き止まりになった。

「……おい!行き止まりだぞ!どうなってるんだ⁉︎」

次の瞬間ファビオが突然走り出し川の中へ飛び込んだ。

「……おい!あいつ……!」

人形達は急いで川の前まで行ったが人形の体では川の中へ入る事は出来なかった。

「……おい!どうするんだ⁉︎追いかけなくていいのか……⁉︎」

「……どうするんだ?誰が行くんだよ、この体で……。」

「……。」

人形達が話をしている間にもファビオは川の流れに乗ってどんどん先へと進んで行った。

人形達はその光景をただ呆然としながら見ている事しか出来なかった。

しばらく経ってファビオの姿がほとんど見えなくなると1人の人形が言った。

「おい……あいつ牢の中に入れられてたよな……?あいつがもしあの女にとって大事な奴だったら俺達どうなるんだ……?」

人形達はようやく事の重大性に気付いたのかしばらく誰も口を開く事が出来なかった。

そしてしばらく経った頃1人の人形が開き直るように言った。

「……もういいんじゃないか……?別に最初から助かるかどうか分からなかったんだ。どうなったって構いやしないさ。覚悟を決めようぜ。」

すると他の人形達も少し強がりながら笑って言った。

「……はっそうだな。なるようにしかならねーな、もう。」

「違いねーや……。おういいぞ。逃げろ逃げろ。」

「ははっ……!もうどうにでもなれだな……!」

人形達はその場で見えなくなるまでファビオの姿をただ呆然と見つめていた。




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