作られた男達
ジュリアはというとポールにすら自分の住処を教えずに、ただひたすら勢力の拡大を図っていた。
ジュリアは自分に対して忠実な部活を揃えるべく色々なところを探し回っていた。
そしてそれが難しいと分かると方法を変えた。
ジュリアはある物を作り上げた。それは人間の姿をした全く同じ姿の5体の人形だった。
その人形に人間の魂を移し元の体を人質に取る事で完全にその人間を操れると考えた。
ジュリアは人形に魂を移す為に金を必要としている人間を自分の屋敷に連れて行き、魔術書を使って魂を人形に移した。
ジュリアに魔法をかけられた男達は自分達を元に戻せるのはジュリアだけなので、ジュリアの言う事を聞くしかなかった。
彼等は全く同じ姿をしていて見分けはつかなかったが、お互いに呼び合う時は口調等で見分けながら昔の名前で出来るだけ呼び合うようにしていた。
しかしジュリアには見分けはつかなかったので彼等の名前を呼ぶ事はなかった。
しかしジュリアにとって嬉しい誤算は生き物ではなくとも人間の魂を移せるという事だった。
ジュリアはこの人形を出来るだけ多く作り、自分に忠実な部活を出来るだけ増やして勢力を拡大させようと考えていた。
ジュリアは表面上はポールに頼るように見せながら裏では人形になる為の人間を探す為に奔走していた。
これは2年前、人形達が作られ出した時の話だ。
「おい……お前……何するんだ⁉︎止めろ……止めろー‼︎」
男の周りが光で包まれていた。
「ふぅっ……これで完成ね。さぁ……彼はちゃんと動くかしら……?」
ジュリアが倒れている男ではなく鎖に繋がれている人形の方を見ていると、人形は動き出した。
「うっ……ううっ……。」
「良かった。上手くいったみたいね……。」
そう言うとジュリアは鎖に繋がれた人形に近づき声をかけた。
「意識が戻ったみたいね。さぁ新しい体になった気分はどうかしら?」
すると鎖に繋がれた人形が意識を取り戻して言った。
「んっ……?何だ⁉︎どうなってる⁉︎何で俺が目の前にいるんだ……⁉︎」
人形は声を荒げて動揺していた。
するとジュリアは人形に笑みを浮かべながら言った。
「そうね……質問に答えましょうか?あなたの魂をその人形に移させてもらったの。でも安心して。私の用事が終わったら元の体に戻してあげるから。」
人形になった男はジュリアの言葉を聞いても状況が理解出来ずにいたのか、声を荒げてジュリアに食ってかかった。
「貴様……一体何者だ⁉︎俺にこんな事して一体何になるっていうんだ……⁉︎」
「あなたの力が必要なの。」
「何だと……⁉︎何を言っているんだ貴様‼︎俺はお前を絶対に許さんぞ‼︎」
するとさっきまで笑顔だったジュリアの表情がみるみる変わっていき、人形の方を睨みつけるようにして言った。
「あら、怖いわね。どうなるって言うの?」
すると人形はジュリアの表情を見て身動きが取れない状況を気にしたのか、うつむいて黙ってしまった。
それを見てジュリアは人形に今度は落ち着いて聞いた。
「手伝ってもらえるかしら?」
人形はジュリアのその言葉を聞いて顔を上げると、少し萎縮しながら聞いた。
「もし……それを断ったら俺はどうなるんだ……?無事じゃ済まないんだろ……?」
「あら、察しが良くて助かるわね。もちろんあなたは逆らったら元に戻る事は出来ないしそれにあなた自身も無事では済まないわね。それに私があなたの体を持っている限りあなたは私の言う事を聞くしかないの。あなたの体に何かあればそれはあなた自身に返ってくるからね。繰り返すけどあなたは私の言う事を聞くしかないの。それがあなたにとっても1番いいはすよ。」
「……もし手伝って……あんたの目的が果たせたら、その時は本当に元に戻してくれるのか?」
「約束するわ。私も用が済んだらあなたをその姿にしている意味がなくなるから。」
人形はジュリアの言っている事をとても信じられなかったが、それでもこの場はジュリアに意見を合わせるしかないと思って言った。
「分かった……手伝うよ。だから約束してくれ……本当に目的が果たせたらちゃんと元の体に戻してくれるって……。」
するとジュリアは笑みを浮かべながら言った。
「約束するわ。ちゃんと元の体に戻してあげる。」
人形は観念した様子で言った。
「分かった……手伝うよ。」
ジュリアは人形のその様子を見て鎖を解いた。
すると次の瞬間、人形が突然ジュリアに殴りかかった。
「貴様っ‼︎」
ジュリアは鎖を解いた後すぐに人形の元の体の前に移動していて、人形のその様子を見た後すぐに元の体の腕をナイフで刺した。
「ぐわぁー‼︎あっ、あー!」
人形が突然倒れて苦しんでいると、ジュリアは人形の近くまで行って言った。
「言わなかったかしら?あなたがもし逆らえばあなたは無事じゃ済まないって。私はあなたにどんな痛みも与えられるし殺す事だって出来る。まぁとりあえずあなたの体は私が預かっておくから。……いい?あなたの命は私次第なのよ。これに懲りたら大人しく言う事を聞きなさい。そうすればいずれあなたの事も元に戻してあげるから。分かったわね……?」
人形はジュリアのその言葉を聞いて観念するしかなかった。
「……分かった……手伝う!……だからもう止めてくれ!」
するとジュリアはナイフを倒れている男の腕から抜いた。
「分かってもらえて嬉しいわ。でもあなたにまた襲われたらたまったものじゃないし少し大人しくしててもらえるかしら?」
するとジュリアは周りにいた他の人形達に言った。
「繋いでおきなさい。」
「……ああ……分かった……。」
人形の1人がジュリアに言われた通り先程繋がれた場所まで運んで鎖に繋いだ。
「じゃあ私は屋敷に戻るわね。そこのあなた。あなたは私が今から言う場所までその男の体を運びなさい。早く!」
人形の1人が男の体を肩に担ぐとジュリア達はその場から立ち去って行った。
男を担いでいる人形は1度振り返ったが、ジュリアには逆らえずそのまま何も言わず立ち去って行くしかなかった。
鎖に繋がれている人形を他の人形達はただじっと見つめていた。
「なぁ……俺達本当に元に戻れるんだよな……?」
すると周りにいた別の人形が言った。
「バカ言え……戻るしかないんだよ……。だからあいつと一緒にいるんだろ……。」
「……。」
そして人形の1人が話を続けた。
「さぁ……とりあえずこいつも今日から俺達の仲間だ。歓迎してやろうぜ。俺達はこれからみんな同じ目的を果たさなきゃいけない仲間なんだ。」
「……ああ、そうだな。とりあえずこいつが目を覚ますまでここで待っててやろうぜ。こいつとは長い付き合いになるかもしれないからな……。」
「……ああ。そうだな。」
人形達は気を失っている仲間が目覚めるのをその場所でただじっと待っていた。新たな仲間が出来たというのに素直に喜ぶ事が出来ない複雑な感情を抱きながらその場で待つ事位しか出来なかった。




