第6話 目覚め
早くにギルドマスターとの会話が終わると思ったんですけどまさかの終わらなかった。すみません。
「俺でよければセカンドになろう」
夜のその言葉にルノアは嬉しそうに笑うと
「そう、ありがとう」
「いや、別にあんたに従ったわけじゃない。今無一文の俺にはいい話だと思っただけだ。それに、あんたらは俺を必死になってこの国に留めたいようだしな。」
(まぁ、別の国より裏が酷いことになってないからな別にいいけど)
夜は今この世界のすべての知識があり当然国の裏事情もすべて知っていた。王国を拠点にしたのは裏事情を知った上で他よりマシだったからだ。
この王国の名前はミスティル、この世界の三大国の一つなのだ。
他の二つはアルマス帝国、カムトス商業国となっている。
王国と帝国は仲がかなり悪い。
何か小さな事がきっかけで戦争が直ぐに置きそうになるほどだ。
(まぁ、もしもこの国に俺がつくなら敗北は有り得ないだろうな)
敵の情報など今の夜の知識でどうとでもなるのだ。ただし未来のことはわからない。
だが今までの情報はすべて知っている。
だからこそ夜はどの国での最大戦力にもなるが、最大の敵になる可能性もある。
この世界で夜は最も危険な人物なのだ。
(そう思うとバレるのだけは絶対に阻止しないとな)
そんな事を心の中で強固に決意すると続きを話そうとルノアの顔を見ると、夜の発言に驚いた様子と警戒の色を見せていた。
「どうした?目の前に解明もされていない謎の魔法を使える者がいるのだぞ?そう考えるとどの国だってほしがる。当たり前のことだろ?それぐらい考えているさ。今更驚くことないだろ?どうせ、騎士にでもこの国引き抜けるなら引き抜けとか言われてるんだろ?勘違いされたら困るからな言っておくがこの国に所属する気は無い」
それを聞くとルノアの顔が少し不安そうな顔になる。
「どうしてかしら?ここを拠点にするのでしょ?ならこの国に所属するのは必然でしょ?」
「あのなぁ、その気になれば所属なんていくらでも変えることは出来る。特にこの国に恩義などない。どの国が自分にとっていいのかなど自分で決める。安心しろ、基本的にこの国の味方はしてやる。この国に所属することによって行動制限がかかるのが嫌なだけだ。」
それを聞いてルノアは何度かの安堵感を覚えた。
それからルノアから話を切り替えた。
「とれあえずは、このギルドでセカンドとしてやっていくということでいいのかしら?」
ルノアは用心深く夜に問いかける。
夜は何を今更、と思いながら答える。
「あぁ、セカンドになると先程言ったばかりだからな。しっかりと働くさ敵対もしない」
「良かったわ。それとあと二つほど聞いていいかしら?とは言っても一つはとてもどうでもいいことなのだけれど。」
ルノアのそんな言葉に夜はうんざりしながらも頷く。
「じゃあ、一つ目その子のことについて聞きたいのだけれど?」
ルノアは少女を指さしながら言う。
(そう言えば何があったかを後で聞くとか最初に言ってたな。だけど、この少女について知りたいのは俺なんだけどな。)
そんなことを思いながらあった事をありのままに話し始める夜。
「俺が、まぁ「魔の森」でワイバーンと戦った後のことだ。森から出た俺は商人が盗賊に襲われている所に出くわした。商人は助けられなかった、それでも盗賊を殺して馬車をどうしようか考えているところで荷台の中から気配がしてな。その中にいたのがこの子だ。ボロボロになって座っていたよ。恐らくは非正規奴隷だと思われる。で、この子からしたら不審者丸出しの俺はこの子に襲われたんだ。落ち着かせるために気絶してもらった。という事があり、今に至るわけだ。」
「そうだったの…その子だけど、どうするの?」
「愚問だな、俺はこの子を保護する。俺が助けたんだ俺が責任を持つのは当たり前だろ」
夜の言葉にルノアは安心したようににっこり笑って言う。
「そう、良かった。この子はこのままだと正規奴隷になる所だったから、あなたみたいな人になら任せられるわね。」
夜はその言葉に驚く。
「驚いたな、俺が信用されてるなんて、最初からタメ口に試すようなものいい。嫌われこそすれば信用されるようなことはしていないと思うが?」
「私はこれでもギルドマスターなのよ?今まで何万という人を見てきたわ。これでも見る目はある方なのよ?そうそう、先ほど最初からタメ口だったと自覚していたようだけど、どうしてかしら?」
ルノアはどうでもいいような事を夜にたずねる。
実は二つ目の質問がこれだったりする。
そのことを聞いて夜は少しだけ自分の過去を語る。
「ん?その事か。まぁ、昔から人の顔色を伺って生きてきた俺だからな。口の使い分けはする。あんたはこれでもいいと思ったからそうしただけだ。敬語は苦手なんだよ。」
夜の意外な発言にルノアは驚く。
これ程までに強い夜が人の顔色を伺っていたなんて信じられなかった。
ルノアはこの強さ(剣術以外)が異世界に飛ばされた故に手に入れたものだとは知らない。
「そういう事だったのね。最初からなめられてるのだと思っていたわ。この話はお終い、それではギルドカードを下の受付嬢から受け取って帰っていいわよ。あ、そういえば換金だったわね。面倒だからこの場でやりましょうか。」
「は?この場でか?」
「そうよ?これでも元は冒険者だったのよ?それに受付嬢の上に立つんだからそれぐらい出来ないと。」
「そういうことなら頼む」
夜はそう言うとアイテムボックスからワイバーンの尻尾を取り出す。
ルノアは何回目かわからない驚きを体験していた。
(あれが、アイテムボックス。長年ギルドマスターをやっているけれど一度だって見たことないレア物、そんな物が目の前にあるなんて実感がわかないわね)
ルノアはアイテムボックスを珍しそうに見ながらも尻尾を受け取る。
一瞬冷たいとビックリするが直ぐに冷静になりマジマジと鑑定をし始める。
「そうね。凍っているからとても新鮮で傷も目立っていない。本当にすごいわね氷魔法。あとこの切り口あなた剣術も使えるのね。もう何でもありなのね。因みに家事や読み書き、算術はできるの?」
「そうだな。家事は昔から自分でやっていたから大抵のことは出来る。読み書きも問題ない。算術はかなり出来ると言っておくよ。」
(最も算術はこの世界での基準だがな)
そう魔法という物があるこの世界では技術があまり発展していない。
科学などもっての外だ。
算術は買い物ができる程度しか学園でも習わないのだ。
学園の話はまたの話になる。
「決まったわ。100万オーロでどうかしら?」
「あんたが少なくするとは思えない、というより基準より多いのでは?」
「そこはあなたがセカンドとして将来的に活躍して欲しいということで応援金とでも言えばいいかしら?」
「なら、大舟に乗ったつもりでいろ。」
「ふふ、期待してるわ。」
そうして夜は少女を抱えるとルノアと軽い挨拶をして出ていく。
そうして1階に降りてルノアに言われた通り受付嬢からギルドカードを貰う。
その際に説明はいるかと問われるが必要ないと断る。
ギルドカードには名前とランクが書いてあるだけの普通のカードだ。(ギルドカードは身分証明になったりする)ただ裏にはバーコードらしきマークがある。そこからモンスターの討伐数などが表記されると思われる。
とりあえずは自分の身分証明とお金が手に入ったので騎士団所によるとガルムという人はいるかと聞いてみるがいないと言われたので、とりあえずはお金などを払って仮入国からは脱出できた。ついでに騎士の人からある程度の条件をつけた宿を聞いて教えてもらったその宿に行くことにする。
そうして夜は宿についた。そこは程よく立派な宿だった。騎士の人には安いところで内装がしっかりしている宿屋と聞いたところ、ここをおすすめされたのだった。
宿名は「小鳥の鳴」という宿だったとりあえず少女を一刻も休ませたく思い入る。
そこには1人の太ったおばさんがいた。
「おや、お客さんかい?どうしたんだいその子?まぁあまり聞かない方がいいのかもね。その子の様子だと別々にするのは辞めた方が良さそうだね。一部屋にベット二つでいいね?何日泊まるんだい?」
そう言って少女の様子から察してくれたおばさんは有難いことに提案してくれた。
「とりあえずは一週間で頼む」
「あいよ!食事はどうするんだい?うちはそういうのやってるけど?」
「ならそれも込みで頼む。いくらになる?」
「一週間で2人分で食事ありとなると1万5千オーロになるよ」
そう言われて懐から2万オーロを出して
「お釣りはいらない。とりあえずは案内してくれしばらくしたら軽い食事を頼む。出来ればガッツリしたものじゃなくスープ物で。」
「その子のためだね。分かったよ!」
「ありがとう。」
そう言って番号の書いてある鍵をおばさんから受け取るとそそくさと部屋に向かっていった。
部屋につき少女をベットの上に寝転ばせて布団をかけると近くにあった椅子をベットのそばに持ってくる。そうして寝顔を少し見ているとだんだん眠くなり布団の側で寝てしまった。
今日は転移させられてワイバーンと戦いギルドでセカンドになるといったとてつもなく忙しく疲れが大分あった。
流石の夜も寝落ちしてしまった。
ー夜が目を覚ますと少女がフォークを夜の首に突きつけていた。
何とか少女のお目覚めまでは行けました。夜の運命はいかに!
少女)やっと起きる事が出来た
作者)起きてすぐにこれか……
夜)同感だ、勘弁してくれ…