第3話 一目惚れ
今回は夜の心情が多いですね。毎日更新ができたらいいと思っています。
ー俺はその時初めて一目惚れというのがあることを知った。
俺は今まで人に好意を抱いたことはない。
だからといって、俺が一人だったということは無い。 大抵は誰かが話しかけてくるだのしていた。
でも自分から人に好意を寄せることはなく、誰もが赤の他人としか思わなかった。
人としておかしいと言われればそうなのかもしれないが、親からの愛情でさえ知らない俺は好意を抱くなんてことは全くありえないのだった。
だからこそ今は目の前にいる少女に一目惚れしている自分に驚いた。
似ている。
その少女はみすぼらしい白い服を着ていて傷が生々しく体中にあり、目はこの世に絶望しているかのように光を映していなかった。
自分の目と似ている気がした。
誰も信じない、愛情など知らない、過酷な環境で体に傷を増やす。
この少女に惚れたのは自分に似ているからなのかもしれない。
同情のようなものなのかもしれない。
そう思った。
でも、俺は目の前にいる少女が愛おしく思えてならない。
俺は、この子となら………
夜はそんな事を少女を見た瞬間思った。
今にも死にたそうな少女に夜は柄にもなく優しく話しかけることにした。
「君、大丈夫か?」
夜が心配するように言うと少女は光を照らさぬ目でゆっくりとこっちを向いて脱力するかのように、こくり頷いた。
大丈夫か?などと聞いたはいいが全く大丈夫そうには見えない。
とりあえずは魔物に襲われないように安全を確保する必要があると考え、少し遠いが元の目的地王国に一緒に向かうことにする。
夜は荷台に乗り込むと警戒心を解く、ゆっくりと少女に近づく。
すると、
「なっ!!!」
「………!」
少女が無言で夜に襲いかかって来た。
(くっ!失敗した!今考えてみれば、いきなり扉をこじ開けてきた男なんて不審者丸出しだ!)
夜は荷台の少女を助けたつもりでも少女からしてみれば完全に盗賊などに思えていただろう。
この少女は殺されるかもしれない。死にたくないという一心で武器もなしに夜を殺しにかかっていた。
逆に言えばこの世界に絶望していてもまだ生きたいと思っているのだ。
完全に不意をつかれた夜だが内心でホッとしながらも飛びかかってきた少女を上手くいなし首の後ろを手刀で叩き気絶させる。
(やっちまったな。とりあえずはこの少女を運んでいこう。……後で謝らなきゃな)
襲いかかってきたのが相手だったとしても今のは完全に自分が悪いと感じ後で謝ることを心の中で誓うと少女を抱えて王国へと歩き出した。
歩くこと1時間とちょっと、やっとの事で門近くまで来ていた。日本で自転車などを利用する現代っ子の夜だが重力が少ない分体が軽く1時間歩いてもあまり疲れなかった。
王国は高い壁に囲まれており、門もそれなり大きい。
とりあえずは門の方へ行こうと近くまで歩いていくと、
「止まれ!貴様何者だ!」
といきなり騎士らしき人に怒鳴られた。流石に、失礼な奴だと夜は思うがここは穏便にいきたく思っている。
今腕の中には少女が眠っているのだ。一刻も早く寝かせてやりたかった。
「何者と言われても…旅人です。この子が盗賊に襲われていたので助けたんだ。」
そう言うと騎士は少しだけ警戒を緩めると、
「身分証明書はあるか?」
と驚きの発言を聞いた夜。つい数時間前にこの世界に来た夜にそんなものはなくどうすればいいと考えていた所に
「お前、もしかして無いのか?」
明らかに怪しまれている言葉に夜は内心焦る。
(どう、誤魔化す?旅の途中、魔物に襲われて逃げている最中に落としたとか?)
咄嗟に思いついた嘘で誤魔化そうとする夜
「旅の途中で魔物に襲われてしまい、逃げている最中に落としてしまったみたいで」
「そうか、お前も大変だったな。こっちに来い、身分証明書を発行してやる。そういえば、金は持ってるのか?持ってないなら発行できない。だが、仮入国書を作ってギルドで素材とかあれば換金して、そのお金を持って騎士団所に来てくれれば身分証明書が発行できるぞ」
と騎士のおっさんが助言してくれた。今お金を持っていない夜は証明書が発行出来ないと聞いて物凄く焦ったが1度入国ありならなんとでも出来る。
「それじゃあ、仮入国でお願いします。期限の方はいつになりますか?」
「そうだな、今から明日の夜までだな。ちなみに払えなかった場合は奴隷になるからな、注意しろよ!」
「わかりました。今日中に返せる目処があるので今日中に行きます。ちなみにいくらですか?」
「ん?あっ!言ってなかったな!1000オーロだ」
オーロと聞いて内心何それ?と一瞬だけ思ったが別世界なんだなと改めて認識する
「わかりました。ちなみにギルドってどこにありますか?」
「真っ直ぐ、大通りを進めば突き当たりにあるぞ。……すまんかったな」
突然謝られた夜はなぜ謝られたのかわからず聞き返す
「何がですか?」
「最初怒鳴ってしまったことだ。何分ボロボロの少女を抱えている奴だったので見た目から判断してしまった」
「大丈夫ですよ。開口一番怒鳴られた時はビックリしましたが、それが貴方の仕事ですし仕方が無いと思います。それに、それぐらいやってくれないとこっちとしても不安になります」
「そうか、そう言ってくれると有り難い。それじゃあ、また後でな!」
そう言って仮入国書を渡してきたオッサンに夜は軽く挨拶をすると、おっさんから突然自己紹介をされた。
「おっと、忘れてたぜ。俺の名前はガルムだ!」
「そうか名前は互いに言ってなかったな。俺の名前は夜だ、よろしく頼む」
「お!敬語が無くなったな。敬語は話せていても喋りずらそうだったからな。そっちでいいぞ、仲良くしてこうや!」
こうして夜は軽く会釈をするとギルドへと足を運んでいった。
今、夜はとても居心地の悪い状況にいた。
そう腕の中にいる少女が目立つのだ。銀色の髪に整った顔立ち小柄で華奢な体、胸は大きくもなく小さくもない。そんな美人な少女がボロボロでいるということ、銀色の髪が気になるのか注目を集めている。
そしてそんな少女を抱えている夜に嫌悪、憎悪、好奇な眼差しで周囲が見てくるのだ。
もう居心地が悪いなんてものじゃないこの状況を一刻も早く抜け出したい一心でギルドに早足で向かった。
ーそこで夜はかなりの有名人になることを知らず
ヒロイン即刻退場ですみません。しばらく名前出てこないです。次回の話はギルドでの話と宿に行ってからのヒロインとの話です。というよりヒロインは話しません。