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プロローグ

訪れる混沌の時代。

その世界は恐怖と哀しみに満ちていた。

そこで光り続けるのは一輪の青いバラ。

戦い続けるは青きバラの紋章を刻む者たち。

凛々しき彼らは平和と言う名の光を求めて…。


戦火に染まる空。

柘榴の実のような、禍々しい色をした真っ赤な空が今のこの世界の空だった。

その下に広がるのは、無ざんな姿をさらす大地。

木々は枯れ果て、川は干上がり大地はひび割れていた。

それだけでない。

そのひび割れた大地に転がるのは目も当てられぬ姿と化とした「それ」

かつては叫び声をあげ、武器を手に、勇ましく敵に向かって行った「それ」は、今となってはピクリとも動かない。


そんな中。


一つの動く影が現れた。

フラフラとあっちへこっちへ。

おぼつかない足取りでその場を彷徨う。

人影はどうやら女らしい。

長い黒髪がそれを象徴するのだが、その髪のせいで表情は見えない。

手に握られているのは鈍い光を放つ剣。

装備は比較的軽装備で、この場を歩くには少々頼りない身なりだった。


その女はしばらく、そのまま歩き続けていたが、やがてピタリと立ち止った。

その瞬間、そばにある岩陰からはシャンッという、金属の擦れ合う音が幾つも響く。

それらはわらわらと女を地面に転がる「それ」にさせようと、女を取り囲んだ。

だが、彼女には怯える様子も、迎え撃とうという気もないようで、僅かにのぞく暗い瞳でジッと襲撃者達を見つめていた。

そして、ついに女に死神がはいよる。

襲撃者達の長と思われる男の手がゆっくりと持ち上がっていった。


「うおおっー!」


そして、その手が止まった時、取り囲む襲撃者達は剣を片手に一気に、女に飛びかかっていった。

女はそのまま動かない。

と、襲撃者達の刃が女にぶち当たる寸前でことはおこった。


「グアッ。」


カエルの潰れるような声と共に吹っ飛んだのは女の方では無かった。

襲撃者達の方だ。

男達はそのまま数メートル吹っ飛ばされると、そのまま地面に頭を打ち付けて、気を失ってしまった。

女のそばには、何故か冷気が立ちのぼり、あっという間に敵は襲撃者達の長だけとなった。


「フッ、体が勝手に反応してしまうとは。思いもしなかったな。」


女は自虐的な笑みを浮かべて、髪をかきあげる。

その声は透き通るような美しい声で、露わになった顔はとても整っていた。

まだうら若き少女ではあるが、美人、の一言では済まされない位に美しい顔立ちに、男は刹那、見とれていた。

しかし、すぐに我にかえり、顔をしかめる。


「貴様、只者ではないようだな。何者だ。一人も殺さずに、気を失わせるだけなど、この戦場では甘い考えだ。」


そういいながら、男の方も剣を構える。

女…否、少女は力を抜いた態勢のまま、小さくため息をついた。


「俺にはここで生きようという考えは無いからな。死んでも構わない。」


憎らしいほどの落ち着きように、男は苛立ちを覚えた。


「死んでもいいだと?そんなこと…。」

「お前も、生きたければ、そのお喋りを控えた方がいい。」

「…っ!」


男はいつの間にか、背後を取られていた。

そして、あっという間に首元に剣を突きつけられてしまう。


「覚悟はあるか。」

「ここは戦場だ。当たり前だろう。」


少女は再び自虐的な笑みを浮かべて、「それもそうだな。」と答えた。

そして、剣を握り直す。


「では、な。」


少女は少しずつ、剣を男の首元に近づけてく。

僅かに刃が当たると、一筋の赤い滴が伝った。


ついに、それが深く食い込もうとした時だった。


「うっ…。」


ドカリ、という剣で斬った音には相応しくはない音と共に、男は倒れた。

その下に広がるはずの赤い海もいつまでたっても、現れない。


「バカめ。強がりやがって。ブルブル震えていやがった。」


もちろん、少女の剣も汚れていない。

かわりに左手は拳が握られていた。

そう、つまり殴ったのだ。

それも気絶するピンポイントを狙って。


「敵が俺で助かったな、お前。」


少女はその場に胡坐をかくと、疲れ果てたように呟いた。

そして、男の手に握られた剣を遠くに放り投げた。


「せいぜい頑張ることだな。次はないぞ。」


少女はおもむろに立ち上がって、辺りを見渡した。

彼女が現れた時と変わらぬ、大地と空。

地面に横たわる「それ」も変わらない。

少女は少し歩いてから、ふと「それ」の一つに目を止めた。

何をするでもなく、ただただそれを見つめていた。


「やはり、俺はいるべきではないのにな。」


ポツリと呟く彼女。


「いるべき場所など…必要とされることなど…。そんなもの。」


少女は一度しまった、剣のつかに手をかけた。

そして、シャンッという耳障りな金属音を響かせる。


「ないのに。」


そう言い切ると、彼女は自ら剣を自分の首に持っていった。

冷たい刃を首に突きつけて、力を込める。


「終わりだ。これで全て…終わるのだ。」


ついに刃を入れようとした時だった。

ポタリ、と何かが剣に落ちた。

水、だ。


「雨…か?」


突然の出来事に、少女は手を止めて、上を見上げる。

何しろ、もう何年も同じ空が続いて、雨などここ一年降っていない。

けれども、見上げた空はいつもと変わらぬままだった。

ならば、この水は一体。


「泣いて…いたのか。」


彼女はやっと頬に触れる事で理解する。

そう、彼女の涙…だった。


「臆病だな。『私』は。」


少女はカランと剣を落とした。

そして、そのまま座り込む。

次から次へとあふれる涙をそのままに。


「私は…私は…死にたくない。まだ、生きていたかった。」


その姿は少し前の彼女とは違った。

ただ、死に怯えるか弱き乙女。


「私のせいだってわかってる。目の前でいなくなって行く人たちを助ける事が出来なかった。ただ、見送ることしか出来なかった。」


彼女は泣いた。

大声でいつまでも泣いていた。

やがて、その場に再び静寂が戻った時、少女の姿はそこには無かった。

かわりにあったのは、荒れ果てた世界でもなお、咲いた青いバラ。

さて、少女はどうなったのでしょう。

そして、この世界はどうなっていくのでしょう。

これが「青いバラ」のお話。

私たちの知らない世界でおこった、遠い遠いお話。

初めての作品ですので、お見苦しいとは思いますが、あたたかい目で見てやってください。

アドバイス等、お待ちしております。

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