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日ノ二乗  作者: 手鞠縫衣
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片割れ 1


片割れ 1






 突然ですが、変な世界にトリップしました。

 はい、意味が分からないですよね?大丈夫、私も同じだったから。

 ではまずは自己紹介から。私の名前は日ノ出屋 陽実――この異世界では適当に一応ごまかしてヨミと言う名前で呼ばれている。と言っても向こうの世界でのあだ名だけれども。

 この世界に来たきっかけは、よく覚えていない。リビングにいたような気もするけれど、部屋にいたような気もする。つまり、この世界にきたキッカケというものを覚えていない。

 まあ、こうなってしまったんだから原因なんてそんな対して事ない思っている。

 とりあえず約二ヶ月の間に色々と得た知識や情報をまとめてみる事にした。


 その一、私の今置かれている状況。

 目が覚めた時、周りは見たこともない謎の荒野でパニックになっていた私に優しく声をかけてくれたのは見た目小奇麗な男性だった。

 だが、私の第六感がこいつはやばい!と直感したため全速力で逃げ出したが、もちろん追いかけられる。

 誰かーと心の中で叫びながら走るが残念ながら向こうは男、圧倒的不利に追い込まれ結局腕を掴まれてしまい、ぐへへとか嫌な効果音がつきそうな悪そうな顔で私を見下していた。

 力の差は歴然で今度体を鍛えよう。と誓ったが今度あるのかどうかわからない。と考えていたら突如掴まれた腕が緩んだ。

 何が起きたかわからなかったが、どうやら倒れた男の後ろにいた人によって助けられたらしく、その時私は安堵してしまい気が抜けて、そのまま気絶してしまった。

 今にして思い出すと結構恥ずかしい。

 目が覚めるとベッドの中でぼんやりとした頭のまま、えーとかうーとか呻いていると部屋の扉が開かれた。一瞬体が強ばってしまったが現れた人を見て力を抜く、さすがに子供への警戒心は低かった。

 しかもそれがお人形みたく可愛い子だったら尚更だ。銀色の髪が綺麗だった。残念なことに男の子か女の子か判断が微妙につかないというくらいだ。

 その子は私が起きていることにびっくりして、しばらく硬直した後「おきたよー」と叫びながら出ていってしまい私は起き上がっているのが億劫でベッドに倒れ込んだ。

 そして、その時一人残された私は、もう一回寝たらダメかなぁと考えていた。

 その後、すぐに現れた男性は、私を助けてくれた人らしい。らしいっていうのは、助けられた時逆光で顔がよく見えなかったからだ。

 それで、私が捕まりそうになったのは人攫いだったと聞かされてぞっとした。

 昔、音楽の時間で聞いた、馬が売られていく歌を思い出したのはきっと気のせいなんかじゃない。

 それからその男性――ゴシュナイトさんに聞いた話によると、この世界は私といた世界ではない事にはっきりと気がついてしまった。

 気がつきたくなかった。むしろ夢だと思いたかった。だが現実はそうじゃない。

 色々説明してくれたが、ショックのほうが大きすぎて半分以上聞き流してしまっていたりする。

 私の様子にどうやら勝手に人攫いの上ひどい目にあってしまい、記憶が混乱か欠落していると勘違いしてくれたのでそのまま通す事にした。

 「色々と大変だったな」なんて優しくされてしまえば、誰も知らないこの世界ではコロリと甘んじてしまう。

 真っ青になっていく私の顔を見て、心配してくれたのだろう、色々と自分の事を話してくれた。

 しかも私より十歳も年上とか聞かされた時は驚いてしまい「え!?」と声を上げてしまって慌てて弁解した。だって、もっと若いとか思ってたんだから。それに初めはさん付けだったのに呼び捨てでいいよ。とか言われるし。

 さすがにそれは遠慮したが。私の第六感は正しかった。この人本当にいい人だ。


 その二、この世界について

 この異世界であり、私が厄介になっているこの国『ジュルサイド』についてはぶっちゃけまだよくわかっていないことが多い。

 むしろ多すぎてどこから手をつけていいのかわからなかったし、そもそもこの国以外行ったこともなければ見たこともないからだ。

 とりあえず、その時は窓から見える景色だけの感想で言うと、写真やテレビ何かでよく見るヨーロッパとか風景みたいだった。

 今いる場所はゴシュナイトさんの家で、仕事で忙しい時は宿舎で寝泊りをしているとか。

 そういえばと格好を見ればなんだが戦う男って感じだ。たぶん騎士とかそっちのほうだろう。

 言葉はわかるが、字が読めない書けないと正直に言うと、またもやうっすらと涙を浮かべて「そうか……苦労した生活だったんだな」と妄想している。

 うーん。これは正直に言うべきだろうかと悩んだが、その時の私はある意味極限状態でどうにかしないと思っていたので、使えるものは使わないと損だという事でそのままにした。

 あと分かったのは、国の中心にデカイお城があるくらいだったが、この世界はなんだかよくあるファンタジーというわけでもないようだ。

 よくあるRPGに出てくる魔物はいないし、魔法や魔術も存在しない。

 その方が実力重視って感じでいいかなとは思う。ほら、素質とかなんとかって言われても持って生まれた物はどうにもなんないだろうし。鍛えれば強くなるとか単純明快でわかりやすい。

 他にも色々横文字が飛び出してきたが、専門用語はわかりません。という事で名前も聞いたけど必要ないと判断したものはスッパリ忘れました。きっと関係がないだろうし、と思っていたせいだろう。

 私たちの世界では高級食材みたいなもので、見つかりにくいし、数も少ないと言われてる……らしい。

 昔テレビで見た豚がトリュフを探し出す感じかと適当に納得した。


 その三、そして現在の話

 結局、あれからゴタゴタあったが現在私はゴシュナイトさんの元に居させてもらっている。

 本当にありがたい。これも何かの縁だろうと言ってくれた事に感動さえ覚えた。

 周りには私の事を遠縁の娘だと言ってくれていたおかげで、隣人や街の人たちとは今では結構仲がいい。

 仕事が忙しいのか、家に帰ってくるのが遅いが、それでも帰ってきてくれた時はお土産を持って来てくれる。

 それに一人じゃなかった。あの時姿を現した子供はベリルという男の子だった。

 八歳になったばかりだと聞いたが、ひたすら可愛くて仕方がない。

 ゴシュナイトさんの教育のおかげか素直で優しい子である。年は離れているが弟ような感覚だ。

 私が来る前は、学校から帰ってきたら近くのおばさんに世話になっていたが、今は私がいるのでそんな事もなく、そのおかげでより仲良くなっていくのに時間はかからなかった。

 まるで一つの家族のようで、嬉しくもあり、時々胸が苦しくなる。

 ふと、あの子は今、どうしてるかなぁ……と見上げる先にある建物を見つめる事が多々あって時々心配させてしまう。

 これは誰にも言ってはいないが、私には双子の姉がいる。けれど、今は傍にはいない。

 居場所は知っているが、けれど簡単に会うことはできない。

 だってあの子、今頃お姫様気分でルンルンのはずだから。


 この世界に飛ばされたのは私だけではなかったようで、姉の夕奈も来ていた。

 しかし、何故か別々に飛ばされていたらしい。なんで?

 しかも風の噂ではなんと、どういうわけか姉は王族に保護されたらしい。

 なんという超展開。人攫いにあいかけた私とは天と地の差だ。まあ、この生活が大好きだから別にいいんだけどね!

 初めは、何かの間違いかと思ったがその名前が『ユーナ』と言う事を聞いてああ、と納得するしかなかった。

 双子と言っても似ているのは顔くらいだ。私は黒髪で長髪だし、夕奈は髪を染めていてセミロングで結構明るめの茶髪だ。

 向こうの世界でも、私はいつか一人暮らしがしたいから高校卒業と同時に働き始めたけれど、夕奈はまだ働きたくないし、遊び足りないらしくどこかの大学へと進学した。

 大学のキャンパスライフのおかげか髪の色を染めてきた日は少し驚いてしまったが、本人がいいなら別に何もいわない。

 人付き合いが変われば、それに合わせて自分も順応しようと変化していくものだろう。

 私はは染めないの?かと言われた事もあるが社会人は色々厳しいんだよ。と答えておいた。

 夕奈は昔から人付き合いも世渡りも上手だった。

 高校時代は私はお金がほしくてバイトだってしたけれど、夕奈は甘えるのが上手でよく親にお金をもらっていたみたいだった。

 まあ、夕奈は夕奈、私は私だ。私も好きでやっているんだから、別にどうこう言うつもりもない。

 せいぜい、姉が王族の一員になっているとしたら、お金に目が眩んで高慢で高飛車な悪女になっていない事を願うばかりだ。

 だって、国が大変な事になったら困るのはゴシュナイトさんだし、やっぱりそんなの嫌だ。

 なので、もしそんな事になったら突撃しようと心に決めている。

 夕奈とは喧嘩する事はあるが、私が負けた事は一度もない。ただ、すぐ親に泣きつくので、たとえ私が悪くても夕奈が悪くても結局私のせいにされていた。

 別にいいんだけどね。でも泣くは下手だったなぁ。それが夕奈の唯一の欠点かな?

 まあ、今の所そんな様子はなさそうなのでホッとしているが、やはり血の繋がった姉が迷惑かけると思うと気が気ではない。


 なので、王国通信の毎日チェックだけは欠かせない。

 今日も一日、平和でありますように。






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