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SSSS(プロトタイプ)  作者: 風待月
00 体験入部
16/34

00_110 PM18:46 会敵

検証事項:戦闘描写

動きのある文章というだけでなく、普通は使うことのないオートバイでの戦闘描写……ちゃんと読んで頂ける方に伝わるのでしょうか?


 犯人たちの車のスライドドアが開き、中から黒ずくめの男が半分体を乗り出し、手にした布に包まれた1メートルほどの『なにか』を十路(とおじ)たちに向ける。


『――ヤバっ!』

『きゃぁ!?』


 『なにか』の正体に気付いた十路が、『射線』から逃れるためにハンドルを切り、慌てて樹里が十路の腰にしがみついて。

 重い音と共にアスファルトが爆発した。


『今の、なんですか!?』

『《魔法》だ……』


 幾何学模様が一瞬路面に展開されたのを確認できたから、間違いない。

 威力としては大したことないだろうが、オートバイを吹き飛ばす程度は十分なのは一目瞭然。


『犯人は《魔法使い》だ』

『えぇ!? なんで!?』

『念のため訊くけど、防衛部に関係ある人間か?』

『そんなはずないでしょう!?』


 建前に近いものはあるが、《魔法使い》は犯罪を犯すことはありえない。

 日常生活も国に管理され、《魔法》を使うために必須の《魔法使いの杖(アビスツール)》が高価なため、犯罪を抑止することにもなっている。

 そして今この街で《魔法》を行使できるのは、学校での説明と、十路の常識と照らし合わせれば、都市防衛部の部員だけのはず。

 しかし能力を行使し、犯罪を犯す前代未聞の《魔法使い》が実際に存在する。

 考えられる可能性。それはものすごく低いものだが、それしか考えられない。


『《魔法使い》の犯罪者だが、しかし荒事には慣れてない半端者。俺たち……というより、《|《魔法使い》《きすき》》が追いかけてきたから、パニクって攻撃してきたんだろう』

『なんでそんな人がいるんですかぁ!』

『俺が知るわけない――っと!』

『きゃっ!?』


 また《魔法》による射撃をかわしたことで、アスファルトの破片が飛び散り、オートバイの傍らを過ぎ去っていく。

 それを冷静にかわしながらも、内心十路は首をひねる。

 あまりにも攻撃が単調すぎる。この程度の小さな《魔法》も連射されれば、十路たちの追跡を振り切るには十分なはずなのに。

 あるいは威力が小さすぎる。相手が使っているのは《地槍》などと呼ばれる物質形状変化での攻撃だろうが、アスファルトを破壊する程度に抑える理由がない。

 十路たちの油断を誘っているという考え方もできるが、そうするとコゼットの誘拐時に使わなかった理由がない――


『……制圧するぞ』

『え?』


 それに思い立った時、またも突然の十路の変化。スイッチが切り替わった。


『アイツの《魔法使いの杖(アビスツール)》は不調だ! 今のうちに叩く!』

『なんでいきなりやる気になってるんですかぁ!?』

『あぁいう|《魔法使い》《バカ》は大っ嫌いなんでな!』


 アクセル全開。あっと言う間に車に肉薄し、並走するようにスピードを維持。


『借りるぞ!』

『え?』


 樹里の長杖を強引に借り受けて。


『えぇぇぇぇ!?』


 80km/hで走行するオートバイのタンク部に、十路は立ち上がった。


 正気を疑う行動だが、十路は全く恐れず、高い場所の物を取るために、座っていた椅子に上がるような気安さで立っている。

 《魔法使いの杖(アビスツール)》は個人専用にものだから、十路に樹里のそれを扱う事はできない。

 だからただの白兵武器として、その体勢のまま十路は長杖を繰り出す。


『――!?』


 軽い金属音。

 誘拐犯である《魔法使い》でも、さすがに十路の行動に驚いたようだが、突き出された長杖の先端を抱えた金属塊で払いのけた。

 十路はそのまま、連続して長杖を繰り出す。あわよくばそのまま車に乗り込んでやろうと、不安定な足場の上で2mの長さを利して一方的に攻め立てる。

 だから《魔法使い》の誘拐犯は、防戦一方。


 不意に反撃、ハンドルを握る誘拐犯が気を利かせたのか、オートバイをはね飛ばそうと、車が急接近してきた。


『木次! 落ちるなよ!』

『ひゃぁ!』


 十路が足でアクセルを吹かし、はね飛ばそうとする車を急加速で避けた。


『堤さん……! これ、訊いちゃいけないってわかってますけど……!』


 急加速で無人のドライバーシートにへばりついていた樹里が、恐る恐る身を起こし、十路の背中を見上げる。

 危険なスタントを人前で見せるバイクパフォーマーも真っ青な度胸と平衡感覚。

 十路も同じ人種だとはいえ、自分の『杖』を使わず《魔法使い》に生身で挑むなど、普通は考えない。

 常人には奇跡に思える能力を使う《魔法使い》でも、こんな別の意味で人間離れしたことはできない。

 だから樹里は混乱する。


『堤さんって何者ですか!?』

『昨日までは学生! 今日から住所不定無職!』

『そうじゃなくてぇぇぇぇぇ!』

『つーかやりづらいなぁぁぁ!』


 樹里と一緒に絶叫し、十路がオートバイのメーター部分を軽く蹴った。その途端。


『――っとぉ!?』


 足場にしているオートバイがバランスを崩しかけ、左右に揺れたので、慌てて足でハンドルを押さえて挙動を安定させる。


『ハンドル頼む! コイツ扱いづらい!』

『無茶言わないでくださいよぉ!? ってゆーか私、無免許ですよ!?』

『今更だろ!』


 文句を言いながらも樹里が座る位置を前にずらし、なんとかハンドルを掴んだの確認。


『悪い!』


 樹里をジャンプで跳び越して、十路はリアシートに移り、位置を譲る。


『こんな人間離れしたこと、慣れてるみたいですね……!』

『前の学校で慣れた!』

『だからどんな学校ですかぁぁぁぁぁ!!』

『それより来るぞ! かわせ!』

『――!』


 泣きそうになりながらも、樹里はハンドルを軽く切り、体重移動で横にかわす。

 直後、後方の車から放たれた《魔法》によって、走る予定だった場所のアスファルトが砕ける。


『アクセルを緩めろ……ラインをもうちょい右……もう少し……そこだ。しっかり掴まっておけよ?』

『え……と?』


 よくわからないながらも、大して難しいことではないので、十路の指示通り動かす。

 20メートルほど後方を走る車を位置関係を調整。目標は車の横から乗り出して、《魔法使いの杖(アビスツール)》を突き出している《魔法使い》の誘拐犯。

 そして十路がオートバイの上で跳び、着地の衝撃で後部のサスペンションを縮める。


『前輪フルロック!』


 サスペンションが反動で伸びるタイミングと合わせて、樹里にハンドブレーキを目いっぱい引かせた途端、オートバイの後部が高く跳ね上がる。

 ストッピー。前輪だけで走るバイクテクニック。

 急制動の減速で、車のサイドミラーをふっ飛ばしながら、すれ違いざまに相対速度を車体重量を武器として、車外に身を乗り出していた《魔法使い》の誘拐犯の顔面に後輪で強襲する。


「――ッ!?」


 普通の人間なら考えたとしても実行できない攻撃方法。驚愕の目線と鈍い感触を残して、誘拐犯は車内後部に吹っ飛んだ。


『ダメだったか……!』


 体重をかけて後輪を接地させ、車の後方で追跡を再開したオートバイの上で、十路は内心舌打ちする。

 これで厄介な《魔法使い》の誘拐犯が、車から落ちて確実に戦線離脱することを願っていたが、そこまでは望めなかった。


『ひぃぃぃ……!』


 ちなみ樹里は半泣き。

 二人乗り(タンデム)ライダーとしてオートバイ自体には慣れていても、こんな走り方に慣れているはずはない。


『木次、怖いか?』


 そんな樹里に、十路は冷静に訊ねる。


『怖いに決まってますよぉ……!』

『だけどな、《魔法使い》同士の戦闘で、こんなの序の口だからな』


 普通の女子高生相手に酷なことを言ってるのは、十路自身も理解している。

 しかし、あえて気を遣うことをしなかった。


ルビを振った固有名詞が多すぎでしょうか?

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