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サーザンエンド辺境伯戦記  作者: 雑草生産者
第一三章 内憂の年
203/249

一九七

 レオポルドは帝都にフィオリアを連れてこなかったことを後悔していた。

 一時期、有力諸侯であるレイクフューラー辺境伯の屋敷で働いた経験もある彼女は貴族の家政全般に通じ、何よりも帝都で流行する衣装や装身具、化粧、香水といった事柄に極めて敏感で、遠く離れたサーザンエンドの地でもレイクフューラー辺境伯やベルゲン伯夫人から頻繁に手紙をやりとりして、最近の流行り廃りについて情報収集を怠っていなかった。

 社交界において流行遅れ或いは場違いな衣装を着てしまうのは極めて致命的な失敗となりかねない重大事である。

 社交界における様々な場面、例えば宮廷の儀式や式典、祝事や弔事、祭事、各聖人の日など宗教行事、私的な催事、私的な宴席、身内しかいない場、格上の人と会う場、格下の人と会う場、それぞれに相応しい装いというものがあり、これに失敗すると大いに恥をかき、その場のみならず後々まで後ろ指さされることとなる。

 その為、ある程度の貴族の家には衣装担当の使用人が付いているし、諸侯の宮廷には衣装長などの官職があり、高い身分の貴族がその地位に就いていた。

 特にレオポルドは成り上がりの辺境諸侯と見做されており、流行遅れで場違いな衣装などを着ていけば、どれほど田舎者と見下され、底意地の悪い皮肉や陰口が囁かれるだろうか。もっとも、完璧な服装でいれば誰にでも好かれるというわけではないが、わざわざ貶される材料を自ら提供するのは愚かと言えよう。

 レオポルドは自らが纏う衣装の重要性について理解はしていたものの、本心では自らを着飾ることにはあまり興味がなく、清潔であまり派手ではない衣服ならば何でも良いと思っていたし、公式な席では軍服を着て行けばとりあえず問題ないのではと思うような人間であった。

 そこで、もっぱら彼は自らが着る衣服についてはフィオリアに助言を求め、それに従うようにしていた。それどころか、彼の衣装部屋にある衣服の多くは彼女が調達したもので占められている。

 レオポルドは彼女の選んだ衣服ならば間違いないと彼は信じていたし、実際、身に纏う衣装について彼是言われたことはなかった。

 その衣装担当が不在なのだ。持参或いは帝都の邸宅の衣装部屋にある衣服はいずれもフィオリアが調達したものなのだから、それを着れば問題ないとレオポルドは考えていたのだが、それはあまりにも楽観的な考えというものであった。

 衣服の数は上着だけでも数十着、下着、シャツ、ズボン、靴下、帽子、外套などを合わせれば数百という数に及ぶ。

 衣裳部屋にずらりと並ぶ数多の衣服の中から出席する場面に相応しい種類、色のものを選び取り、最適な組み合わせを作るには知識や経験、それと同じくらいにセンスというものが必要なのである。

 レオポルドは今更ながらそのことを痛感していた。

 フィオリアの不在による弊害はそれだけではなく、レオポルドたちが滞在するクロス邸での生活にも深刻な影響を及ぼしていた。

 レオポルドが帝都に来るまでの間も維持管理はされていたものの、主人一行が滞在するとなると、維持管理の方法は一変する。滞在中に使用する各種の消耗品の必要な数、保管方法、適切な調達価格、贔屓にしていた業者などが全く分からず、フィオリアに彼是と手紙で問い合わせをしなければならなかった。

 そのような状況でマドラス公からレオポルドに会う為、邸宅に来訪したいという意向が寄せられた。

 教会と深い繋がりを有する有力諸侯である公とレオポルドは面識がある上、公の庶子はムールド司教の地位にある。

 司教や大司教は通常、聖堂座参事会によって選出され、西方教会の長である総大司教が任命するものであるが、そこに影響力を及ぼす諸侯の意向が反映されるということも少なくない。

 ムールド司教の場合、ムールド伯レオポルドの要望によって新たに設けられたもので、聖堂座参事会すら組織されていなかった為、様々な利害関係や思惑が絡み合う参事会を説得する必要がなく、目当ての人物を司教に据えることは比較的容易い。

 我が子を司教に据えたい公にとっては司教の席が一つ増えるということは大変好都合であったから、レオポルドには恩義を感じており、以前に手紙で礼を述べていたが、面と向かって改めて礼を言いたいというのが来訪の理由であった。

 名門の有力諸侯であるマドラス公との関係が深まることはレオポルドとしても歓迎すべきことであったが、帝都にあるレオポルドの屋敷はとても客人を迎えられるような状況ではなかった。

 何せ帝都に着いてから一週間経っても、サーザンエンドから持ち込んだ荷物も整理できず、広間どころか庭先にまで積んであるような有様なのである。

 ウェンシュタイン邸の状況は更に悪い。元より帝都に駐在していた者たちに加え、侍従長ライテンベルガー卿や外務長官ハルトマイヤー卿、彼らの部下や側仕えの者たちが居住しているので、どの部屋にも人や物がひしめき合っていた。しかも、裏庭では駱駝が呑気に植木を齧ったりしている。当初は帝都郊外に厩舎を借りるつもりだったが、元々その厩舎に入っていた馬が見慣れない駱駝の姿に混乱して暴れたりしたので、場所に困った果てに一時的に裏庭に繋いでいるのだ。

 何処かに空き家なり倉庫なり厩舎なりを借りられれば良かったのだが、帝国会議開催の為、帝都には帝国各地から諸侯、貴族から集結しており、目ぼしい物件はどこも先に借りられているのだ。実際、護衛の将兵や人夫を泊める宿を探すにも大変な苦労で、帝都到着から数日の間、彼らはウェンシュタイン邸の庭先に天幕を張って野営しなければならない程だった。

 とにかく、レオポルド一行の大半は初めて帝都に来るか、今回が二度目の帝都行という者ばかりで全く帝都に不慣れなのだ。帝都駐在の家来たちも辺境伯一行を出迎えるのは初めての経験であったから、下準備も何もかも十分にこなせているとはとても言えなかった。それで宿や厩舎を借りたり、数十人が一月二月くらい暮らすのに必要な食料や生活雑貨といった消耗品を調達、備蓄、管理するというような初歩的な仕事ですら完璧とは程遠い有様なのであった。

 家政一切に通じ、使用人たちの指揮監督にも慣れたフィオリアがいたならば、現状のような混沌を許したはずはなく、クロス邸の全ての部屋の隅から隅まで隈なく整理整頓清掃し、高貴な客人を迎え入れて歓待するくらいのことはできたに違いない。

 そのようなわけで、マドラス公の来訪は遠慮せざるを得なかったものの、公との関係は良好に保ち、より深化させたいというものである。

 そこでレオポルドは、わざわ来訪頂くようなご足労をかけるのは恐縮であるから、自身が公の屋敷まで足を運びますと返事を送った。これならば、関係を深める好機を逃すことなく、それほど礼を失することもない。

 申し出をマドラス公は快く受け入れ、数日後、レオポルドは衣装室を半日引っ掻き回してどうにか引っ張り出してきた光沢のある灰色の上着に青色の膝下丈のズボン、薄茶色のブーツという装いに身を包み、三角帽子を被って二頭立ての馬車に乗り込んだ。レンターケットが随行し、近衛騎兵連隊長のファイマン大佐が指揮する八騎の騎兵が警護に就き、荷物持ちの人夫が数人付き従う。

 マドラス公の屋敷はレイクフューラー辺境伯の大邸宅に勝るとも劣らぬ大きさで、前庭はクロス邸を四軒か五軒は建てられそうな程に広い。

 馬車から降りたレオポルドは我が家の三倍くらい高い屋敷を思わず見上げそうになったが、ぐっと堪え、胸を張って平然とした面持ちで邸宅に入った。後ろからレンターケットとファイマン大佐、荷物を持った人夫が続く。

 応接間でマドラス公に出迎えられ、形式通りの挨拶を交わした後、レオポルドは人夫たちが運んできた荷を開けさせた。中身は公への贈り物である。ムールド名産の絨毯、翡翠の装身具、南洋諸島から手に入れた香木など。

「これはこれは、大層な物を頂き痛み入る」

 マドラス公は丁重に礼を述べ、レオポルドに椅子を勧めた。

 荷運びの人夫は下がり、レンターケット、ファイマン大佐、マドラス公の側近は別室に移る。

「今日はわざわざご足労頂き痛み入る」

「いえ、公の邸宅を拝見できる機会を頂き感謝いたします。また、突然の来訪にも関わらず暖かく迎えて頂き重ねて御礼申し上げます」

 レオポルドは慇懃に礼を述べる。同じ帝国諸侯とはいえ、何代も歴史を重ねた気高き血統の名門にして王侯に肩を並べる大貴族であるマドラス公とつい数年前まで帝国騎士でしかない帝国辺境の諸侯の一人に過ぎないレオポルドとでは立場に大きな違いがある。言葉遣いや態度に大きな差が生じるのは当然と言えよう。

「フランツの件については、ご苦労をおかけした。改めて御礼申し上げる」

 フランツはレオポルドの尽力によってムールド司教の地位に就いたマドラス公の庶子である。

「滅相もございません。ムールドに司教座を設けることができ、当地の教化にも弾みが付き、こちらこそ感謝申し上げるべきことです」

 と言ったものの、ムールドにおける西方教会の布教は遅々として進んでいなかった。レオポルドは言葉とは裏腹に西方教会の布教には熱心ではなかったから、ムールド司教には定期的に金を寄進する以外にはほとんど協力していなかった。

 そもそも、帝都に生まれ育ち、聖職者としても大都市の大きな教会でしか勤務したことがない、いわば温室育ちの御曹司であるムールド司教フランツは過酷な環境に身を置き、異教徒を改宗させようなどという熱意を持ち合わせていないようだった。ムールドの厳しい酷暑、異民族に囲まれ、砂漠の只中に孤立しているような環境、帝都の大聖堂に比べれば粗末としか言いようがない教会、その他諸々に辟易としてほぼ毎日教会の自室に籠っているという。

「しかしだな。せっかく骨折って頂いたのだが、教会の方では何やら人事異動の話が出ておるようでな。それにムールドの教化は容易ではない。フランツのような若輩では力不足ではないかとも思う」

 若い司教は自らの職場の不満を何度も父親に訴えているらしく、その噂はレオポルドの耳にも入っている。

 もっとも、手を回して司教に据えてくれたレオポルドを憚ってか、赴任以来、マドラス公からフランツを異動させるとか司教の環境を改善させるとかいう話を持ち出してきたことはない。

 とはいえ、やる気がないフランツをムールド司教に据えたままにしておくというのも考えもので、何かしらの理由を付けて異動させたいと考えていたようだ。

 わざわざ面会を求めてきたのはその理由ができたからだとレオポルドは思い至った。

「フランツ様はムールドに司教座を設け、当地の教化の道筋をお示しになられました。この後はその手腕を更に発揮される地位にお移りになることも当然かと存じます」

 マドラス公はレオポルドの返答に満足げに頷く。

 任地の環境に不満があったから異動したというのでは、当人の評価や父親である公の評判に差し障りがある。ムールドでの司教の働きぶりを知っていて、教会上層部や帝都に繋がりを有しているのは教会関係者以外ではレオポルドくらいのもので、彼が黙ってさえいれば、フランツの評価に傷が付くことはないのだ。

 かくして、フランツはムールドでの仕事を満足に終え、新たな仕事の為に転任するという格好が付き、それに疑問を唱える者は現れないということになる。

 ムールド司教の仕事に興味のないレオポルドにとっては黙っているだけでマドラス公に恩を売れるのだから願ってもない話と言えよう。

「フランツの後任なのだが、君はバルタ・シュヴァルツェルト博士をご存知か」

「不勉強ながら存じ上げません」

「いや、知らないことは良いことだ。博士は帝国中央学院で神学の教鞭を執っているのだが、些か原理主義的な主張をしている人物でな」

「原理主義的と言いますと聖典回帰主義に近いのでしょうか」

 レオポルドの問いにマドラス公が渋い顔で頷く。

「シュヴァルツェルトは聖典回帰主義の教祖のようなものだ」

 西方教会において聖典は主の教えを記したものであり、最も神聖にして権威ある書とされ、西方教会の教えの根本となる教説が記述されている。聖典は全ての信徒の信仰の最も中心に位置するものであり、事あるごとに読まれ、聞かれ、引用され、常に学ばれ、一字一句の解釈が議論される。

 一〇〇〇年と数百年も前に西方教会が創立されて以来、聖典の字句はほとんど変わりなく読み継がれているものの、そっくりそのまま今も同じように教説とされているかといえば、そういうわけではない。

 幾度もの公会議の議論を経て、時代の変遷と共に読み解き方や解釈は変化し、教会や総大司教をはじめとする聖職者たちが示す布告には聖典の記述と見比べると違和感が生じるものも少なくない。中には明らかに矛盾する布告が平然と為されることすらある。

 そもそも、教会という組織自体が聖典に記述されているものではないにも関わらず、聖典を解釈する権限を独占し、主の代理人の如く振る舞うのは不適切ではないかという疑問や批判は古くから云われており、教会はそのような主張を異端として排除してきたものの、時代を経ても教会の在り方に疑問を唱える声が止むことはない。

 聖典回帰主義はその一つと言える。その主張は極めて単純明快であり、主の教えの根本となる聖典を今一度読み返し、原始の教えに立ち返るべきだというものだ。

 この主張は印刷技術の発展により従来と比べ聖典がより安く手軽に手に入るようになった頃から現れ始め、ほとんど聖職者しか読めなかった神聖文字ではなく、各国の言語に翻訳された聖典が出回るようになって勢いを増し始めた。

 これまで教会が独占して聖典を読み解き教え説いてきたことに対する不満や反発、更には信仰に生き、清貧清廉であるべきにも関わらず公然と妻帯し、贅沢を欲しいままにする一部の腐敗した聖職者たちへの反感などもあって、聖典回帰主義への支持は少なからぬものがあった。

 帝国中央学院に籍を置く神学者であるシュヴァルツェルト博士は清貧な生活ぶりと温厚な人柄ながら聖典回帰主義を強く唱え、神学部の学生だけでなく帝都市民からも大きな支持を得ており、支持者には少なからず帝都貴族も含まれているという。

 今のところ、博士は教会組織そのものを否定しているわけではなかったが、一部に見られる腐敗を強く批判するに止まらず、教会内部の縁故主義、形骸化した華美な式典や儀式、不合理な教条主義、世俗権力と密着した関係などに対し、強い不満や疑問を投げかけていた。

 つまり、教会から見れば極めて危険な人物というわけだ。

 とはいえ、安易に破門や弾劾をしようものならば市民からの強い反発は避け難く、講義や論文といった言論によって教会を批判しているだけなので、何らかの罪に問うわけにもいかない。

 そこで、教会は彼をムールド司教に任じ、帝都から追い出そうと画策したらしい。

 ムールド司教の異動はフランツをより良い任地に異動させるだけでなく、帝都に居る危険人物を辺境に追放するという二つの意味があるようだ。

 レオポルドにはムールド司教バルタ・シュヴァルツェルトの首輪をしっかりと掴んでおく役割が求められている。

「なるほど。心得ました」

 レオポルドの言葉にマドラス公は再び満足そうに頷いた。

 ムールド司教に関する一連の話し合いが済んだ後、レオポルドは口を開く。

「ところで、帝国議会の進捗は如何なのでしょうか」

「臨時税のことかね。既に存じておるかと思うが、此度はアクセンブリナ北伐に係る臨時税であるからな。教会としても異教の蛮族を討伐する戦には反対すまい。法服派やらは未だに彼是と言っているが、まぁ、時間の問題であろう。もう間もなく議会は開催の運びとなろう」

 教会が賛成するとなれば、教会に近しい貴族たちの領袖であるマドラス公も反対するわけにはいくまい。

「……これは内々の話なのだが」

 そう言ってマドラス公は声を落とす。

「帝国議会議長に推挙されておるのだ」

「なんとっ」

「いや、まだ内々の話でな。決まったことではない」

 思わず声を上げたレオポルドにマドラス公が慌てた様子で付け足す。

 とはいえ、開催間近な時期にそのような話をするということは、ほぼ既定事項なのだろう。

 このような本来は外部に漏らすべきではない内密な事柄を教えてくれるということは、マドラス公はレオポルドをかなり信頼してくれているのかもしれない。

 しかし、これはレオポルドにとっては好ましくない事態と言えよう

 議長の選定まで話が進んでいるということは、帝国議会の開催はもうかなり間近に迫っているに違いない。臨時税を阻もうにも帝国議会が開催され、議案が提出されてしまった段階ではもう手遅れなのだ。なんとかそれより前に何かしらの手を打たねばならない。

 とにかくレオポルドは時間を稼ぎたいのだ。

「……帝国議会議長の任に就かれるのは、些か拙いかと思います」

「ほう。君はそう思うか」

 レオポルドの言葉にマドラス公は機嫌を損ねる様子もなく、また意外そうでもなく淡々とした調子で言った。

「此度の帝国議会の主題は臨時税に関する議論となりますが、これに異議や不満を持つ諸侯、貴族は少なくありません。異教の蛮族を討つ聖戦でございますが、戦乱による政情不安定を嫌う者や北伐を陛下の権威付けの為の示威行動と見做す者も少なくありません」

 レオポルドの説明を公は思案顔で黙って聞いている。

「実は東部の有力なある諸侯も今の時期の北伐には反対の意向を持っていると聞いております」

 名前こそ出していないものの誰の意向を説明しているかは理解されるだろう。公はレオポルドとレイクフューラー辺境伯が昵懇の仲であることをよく知っている。下手にその存在を隠すよりも率直に彼女の意向を伝えた方が得策だとレオポルドは考えた。

「議会議長となれば、議論を進める為に様々なお働きをせねばなりますまい。それが臨時税を可決させる為の働きと見做されかねません」

「つまり、議長は臨時税反対派から反感を買うと」

「さようです」

「何やら脅されているように感じるの」

「まさかっ、滅相もございません。ただ、私は公が議長となれば諸侯、貴族の反感の的になりかねないと危惧しているのです」

「ふむ。ご助言感謝いたそう」

 マドラス公は思案顔のままそう言った。

 その後の話し合いは差し障りのない世間話に終始し、夕食前にはマドラス公邸を退出した。その際には贈り物の返礼として見事な造りの美しいサーベル一振りと聖人を描いた絵画、それにマドラス公の領地の特産だという麦酒を一〇樽も贈られた。

 帰りの馬車の中でレオポルドは自分は何か失態を犯したのではないかと不安に駆られたが、最早どうしようもないことであった。


 数日後、レオポルドは伯父ベルゲン伯から帝国議会議長に内定しかけていたマドラス公が喉の具合が悪いので議事進行に支障を来す為、議長の任を辞退したと知らされた。

 どうやらマドラス公はレオポルドのこれまでの恩に報いてくれたらしい。


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