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サーザンエンド辺境伯戦記  作者: 雑草生産者
第一一章 アーウェン
170/249

一六四

 高らかに軽やかに喇叭の音が鳴り響く。

 見渡す限りに広がる荒野の向こうで数百もの騎兵の群れが動き出す。

 士官の号令、地を掻く蹄の轟き、興奮した馬の嘶きが、風に乗って数マイル離れた小高い丘の上まで聞こえてくる。

 丘の北側にはサーザンエンド辺境伯軍の諸部隊が横長に展開して布陣していた。

 左翼に第一、第四ムールド人歩兵連隊、中央にサーザンエンド・フュージリア連隊、サーザンエンド・ドレイク連隊、右翼に第三、第四サーザンエンド歩兵連隊という二段構えの布陣で、左翼の側面に第一ムールド人軽騎兵連隊、右翼側面に第一サーザンエンド騎兵連隊が配置されている。

 各歩兵連隊の前には急ごしらえながらも低い土塁が築かれ、馬防柵が張られていた。並みの騎兵であれば突撃を躊躇するに違いない。

 左翼の諸部隊を指揮するのはラハリ・ブリ・ルスタム准将。右翼はパウロス・アウグスト・ジルドレッド准将が率い、総司令官カール・アウグスト・ジルドレッド将軍は中央を統率していた。

「あれは槍騎兵か」

 ジルドレッド兄弟の兄にしてサーザンエンド辺境伯軍の司令官であるカール・アウグスト・ジルドレッド将軍は丘の中腹に設けられた本営から荒野を見やって言った。

「いや、あれは軽騎兵のようですな」

「まずは小手調べといったつもりなのでしょうな、うぇっぷっ」

 目を凝らしていたサーザンエンド・フュージリア連隊の指揮官コンラート・ディエップ大佐が答えると、その隣に立ったロバート・ドレイク卿が相変わらずの赤ら顔で言い、酒臭いゲップをした。

「ドレイク卿。酒は程々にされよ」

「いやぁ、酒がないと体が震えるし、息が苦しくなるもんで」

 ディエップ大佐の言葉にドレイク卿が頭を掻きながら答え、将軍たちは顔を顰めて黙り込む。この酔っ払いは指揮官として大丈夫なのか。

「第一列はいつでも撃てるように備え、砲兵隊は砲撃を開始せよ」

 ジルドレッド将軍が指示を出すと直ちに数騎の伝令が駆け出す。

 よく晴れた空に砲声が轟き、数十もの砲弾が風を切り、地を穿ち、土砂を巻き上げた。

 対抗するようにアーウェン軍の陣営からも砲煙が上がり、サーザンエンド軍の陣営の目前に着弾する。

「砲兵隊は何処を狙って撃ってるんだ。敵の軽騎兵よりだいぶ前に着弾しておるぞ」

「今日は風が強く、弾が流されるのでしょう」

 ジルドレッド将軍が不機嫌そうに呟くと、副官が帽子を押さえながら言った。

 風はサーザンエンド軍に向かい風で、時折、酷い砂埃を巻き上げて渦を巻き、兵士たちに細かい砂粒を叩きつけていた。

 サーザンエンド軍にとって向かい風ということは、言うまでもなくアーウェン軍にとっては追い風であり、突撃を仕掛けるには絶好の気象状況と言える。アーウェン軍の指揮官はこれを好機と見て動き始めたようだ。

 まず、動き出したのは五〇〇騎程度のフェリス人軽騎兵であった。これはアーウェン諸侯が雇い入れた傭兵部隊で、フェリス人は帝国本土では優れた騎手としてよく知れた騎馬民族である。

 左翼に陣取る二〇〇〇余の歩兵はアーウェン人の農民兵で、右翼にはガナトス男爵軍の残兵と傭兵から成る二〇〇〇程度の歩兵が配置されている。

 アーウェン軍の主力たる三〇〇〇騎のアーウェン人槍騎兵は中央に控えていた。

 その戦力は合計八〇〇〇程度といったところ。

 抜群の打撃力、突破力を誇る槍騎兵の突撃により、サーザンエンド軍中央を分断し、その戦列を瓦解せしめようという目論見なのだろう。

 とはいえ、サーザンエンド軍も簡易とはいえ前面に障害物を設け、丘を背にして布陣しており、突撃を防ぐには適切な布陣と言える。

 その上、兵力、大砲の数、銃火器の性能といった火力では優位に立っており、ジルドレッド将軍は十分に勝算があると見ていた。

 アーウェン軍の先陣を切ったフェリス人軽騎兵部隊は砲撃をものともせず前進を続ける。

 彼らは広く散開した陣形のまま、ゆったりとした速度で馬を走らせている。散開した陣形は突撃の際の打撃力を大幅に損なうものの、銃撃や砲撃による損害を最小限に止めることができる。

 通常、騎兵は敵戦列に接近するにつれて、密集し、速度を増すものである。高速で突進してくる密集した騎兵部隊を阻むことができる兵は少ない。

 しかし、フェリス人軽騎兵部隊は味方との距離を詰める気配はなく、速度を上げることもなく、薄く散開した陣形を保ったまま、散歩するような速度で前進を続ける。貴婦人でももう少しマシな速さで馬を駆けさせると思える程に遅い。

「奴らめ、我々を挑発しておるのか」

 フェリス人軽騎兵の動きを眺めるジルドレッド将軍は苛立たしげに呟く。

 その挑発に乗って動くことは自軍を危険に晒す。アーウェン槍騎兵という抜群の機動力と打撃力を持つ敵を前にして防御的な構えを崩すことは極めて危険な行為であると言えよう。

「ドレイク連隊より伝令っ。敵騎兵がマスケット銃の射程内に迫りつつありますっ」

「迎え撃つのだっ」

 前線より駆けてきた伝令に将軍は怒鳴り返す。

「構えぇっ」

 士官の号令で歩兵連隊は一斉に銃剣を着けたマスケット銃を構えた。

「狙えぇっ」

 サーザンエンド兵の前にはゆっくりと馬を進めるフェリス人軽騎兵の姿が見える。

 騎兵は背が高く幅も広い為、歩兵よりは被弾する確率が数倍高いが、それでも著しく命中率が低いマスケット銃で長距離からの狙撃を成功させられる可能性はかなり低い。

 その極めて命中性能の低いマスケット銃で敵を倒す為、歩兵は横一線に戦列を組み、同時に数百発の銃弾を撃つことによって敵に多くの損害を与えるのだが、的となる騎兵が散開しているとなると、やはり命中率は低くなる。

「撃てぇっ」

 士官の号令に兵たちは一斉に引き金を引く。銃声が轟き、白煙が立ち込める。

 鉛玉に貫かれたフェリス人軽騎兵がバタバタと馬上から転げ落ち、馬が苦しげに嘶きながら転倒する。

 やはり、その数はそれほど多くないが、彼らは前進を止めた。

 指揮官の合図で喇叭兵が短く喇叭が吹き鳴らすと、数騎が手にしていた槍を地面に突き立ててから踵を返した。

 後には銃弾に倒れた不幸な兵馬と地面に突き立てられた数本の槍が残る。

「フェリス人はこちらの射程を計る為の生贄だったわけだな。御苦労なことだ」

 前線で一連の動きを見ていたドレイク卿は赤ら顔で呟く。

 突撃を図らんとする騎兵は散開した状態でゆっくりと進み始め、徐々に速度を上げていきながら、味方との距離を狭めて密集し、最終的には隣を進む同僚と触れ合う程に密集した状態で、最高速に上げて敵の戦列に突っ込むのが理想とされる。これが最も騎兵の打撃力を効果的に発揮することができる戦術なのだ。密集して全速力で向かって来る騎兵を阻むことは極めて難しい。

 もっとも、突撃に至るまでの間、騎兵には砲撃や銃撃といった攻撃が加えられることは言うまでもなく、突撃の直前に速度と陣形を最高の状態に持っていくことも簡単なことではない。

 その目安として、敵の射程距離や一斉射撃を行う地点を把握することは極めて重要と言える。フェリス人軽騎兵はそれを調べる為の犠牲として差し向けられたのだろう。

 両軍の砲兵隊は絶えず砲撃を繰り返し、互いの陣営に砲弾を撃ち込み続ける中、アーウェン軍の陣営では再び高らかに喇叭が吹き鳴らされた。

 後退したフェリス人軽騎兵に代わって前へと出たのは巨大な羽飾りを背負い、金色の兜と胸甲を煌めかせ、長大な槍を抱えたアーウェン人槍騎兵たちである。

「勇猛なるアーウェンの兄弟たちよっ。いざっ、前へっ。主よっ。御照覧あれっ。不逞なるサーザンエンドの愚か者どもを蹴散らさんっ」

 アーウェン槍騎兵を率いるサバロフ将軍が腰のサーベルを引き抜いて怒鳴り、アーウェン士族たちは鬨の声を上げ、馬腹に蹴りを入れる。

 再び高らかに喇叭が吹き鳴らされ、アーウェンを象徴する紅白旗と赤地に白い竜を描いた王国旗が掲げられた。白竜は黄金の冠を被り、その脚は剣を掴んでいる。

 中央のアーウェン槍騎兵と共に両翼の歩兵も前進を始め、これを見たサーザンエンド軍の砲兵隊は仕事を再開する。

 砲声が響き渡り、砲煙がサーザンエンド軍が陣取る丘に立ち込め、砲弾がアーウェン軍の隊列に飛び込んだ。

「進め進めっ。アーウェンの勇者たちよっ。臆する者は男子ではないぞっ」

 サバロフ将軍の号令に槍騎兵たちは揃って同意の声を上げ、誰一人怯むことなく前進を続ける。

 音よりも速く飛び、空気を切り裂き、人も馬も血肉の塊にしてしまう恐ろしき鉄の塊が何十個と降り注ぐ中、アーウェン槍騎兵三〇〇〇騎は先のフェリス人軽騎兵と同じように、馬としてはゆっくりとした速度で散開陣形を保ち、サーザンエンド軍が陣取る丘へと突き進む。

 ある程度まで進むと指揮官は号令を発し、鋭く喇叭が吹き鳴らされ、アーウェン槍騎兵たちは馬の歩みを少し速め、同僚との距離をいくらか詰める。

 それは彼我の距離が縮まるにつれ、間隔を短くして繰り返されていく。このようにして徐々に部隊の密度と行軍速度を増していき、敵と衝突する瞬間に密度と速度を最高に持って行くことが騎兵突撃の理想である。

 というのも、かつての騎士程ではないとはいえ、甲冑や諸々の装備を身に纏う騎兵を乗せて走る騎馬の負担は極めて大きく、最高速度で疾走できる期間は極めて限られているのである。

 また、突撃せんとする騎兵は敵の砲撃と射撃に晒され続ける為、この損害を軽減するには兵と兵の間隔を広げた散開陣形が有効なのである。

 故に突撃せんとする騎兵部隊は敵との衝突の直前まで散開陣形を取り、馬の体力を可能な限り温存し、打撃力と突破力を最大に発揮する必要がある突撃の瞬間に密度と速度を最高に引き上げねばならない。

 アーウェン槍騎兵はこの突撃戦術に熟達しており、どのような戦況でも難なく数千騎単位で敢行することができる。これこそが彼らを大陸最強としているのである。

 彼らは慣れた様子で、騎兵教本に見本として描きたくなる程、徐々に部隊の密度を高め、速度を増していく。

「来るぞーっ。構えぇーっ。狙えぇーっ」

 サーザンエンド軍中央前衛を担うサーザンエンド・ドレイク連隊の士官が怒鳴り、歩兵は一斉に銃剣を着けたマスケット銃を構える。

 フェリス人軽騎兵が地面に突き立てていった槍を目前にして、アーウェン槍騎兵の先頭を進む指揮官が号令を発し、甲高く喇叭が吹き鳴らされる。

 槍騎兵は馬腹を蹴飛ばし、隣を進む同僚との距離を詰めた。この時点では間にもう一騎分入るくらいの間隔を空けている。

「撃てぇっ」

 猛然と土煙を上げて迫り来る槍騎兵の群れを睨み付け、サーザンエンド・ドレイク連隊の歩兵は士官の号令に従って引き金を引く。

 地響きとも言えるほどに轟く馬蹄が地面を蹴る音を掻き消すように銃声が響き渡り、アーウェン槍騎兵の目前に白煙の壁が立ち込める。幾多の鉛玉が兜や胸甲を突き破り、肉を切り裂き、骨を砕く。

 少なくない数の槍騎兵が煌びやかな軍服を赤く染めながら馬から転げ落ち、それ以上の数の馬が身を抉られ、悲鳴を上げながら倒れ込む。

 狂ったように突撃喇叭が吹き鳴らされ、アーウェン槍騎兵は哀れな脱落者を飛び越え踏み越え、その隙間を素早く埋め、隣を行く同僚と膝や鐙が擦れ合う程に密集し、馬が出せるギリギリとも言うべき全速でサーザンエンド歩兵の戦列に向かって突進する。その前には低い土塁と馬防柵が立ちはだかるが、そんなものに怯む者は一人としていない。

「銃剣を構えよっ。断じて戦列を崩すなっ。敵に背を向けた者から先に死ぬぞっ」

 ドレイク連隊の士官たちが怒鳴り、サーザンエンド歩兵は鈍く光る銃剣を着けたマスケット銃をずらりと並べ、今や金と銀と紅白の壁とも言うべき密度を成して迫り来るアーウェン槍騎兵を待ち構える。その高さは自らの倍以上はあり、呆れる程に長い槍は真っ直ぐにこちらを差し、その刃は不気味に煌めく。

 猛然と迫り来る騎兵の群れは、それだけで歩兵に甚大な恐怖心を与え、士気や練度の低い兵は耐え切れずに背を向けて逃げ出すことも少なくない。幾度もの戦いを経験したドレイク連隊の兵はどうにかその恐怖に打ち勝ち、突撃を受ける前に背を向けて逃げるような兵はなく、彼らは十分に職務を全うしたと言えるだろう。

 しかし、不幸にも相手は大陸最強を謳われるアーウェン槍騎兵であった。

「主よっ。我らを導き給えっ」

 アーウェン槍騎兵は一斉に喊声を上げ、紅白旗と背中の羽飾りを翻し、長大な槍をずらりと並べ、恐るべき勢いと速さでドレイク連隊の戦列に突っ込んでいく。

 最高速で疾走してきた数十数百もの馬体に衝突された馬防柵の結び目は千切れ、丸太は圧し折れ、呆気なく打ち破られてしまう。土塁は瞬く間に難なく飛び越えられ、歩兵がずらりと揃えた銃剣よりもアーウェン槍騎兵の槍は長かった。

 アーウェン槍騎兵が使う槍は敵に突き刺さると、先がすぐに折れる構造になっており、騎兵はその槍をすぐに手放し、そのまま直進していく。彼らの槍は使い捨てなのだ。

 槍騎兵の突撃はサーザンエンド・ドレイク連隊の戦列を容易く食い破り、一撃でズタズタに引き裂いてしまった。

 サーザンエンド兵を串刺しにしたアーウェン槍騎兵はサーベルを抜き放ち、逃げ惑う歩兵を斬りつけながら左右に展開し、まだ槍を持つ後続に道を譲り、自陣へと後退していく。そこで従者から新たな槍を受け取り、再度の突撃に備えるのだ。

「ドレイク連隊が戦列を破られましたっ」

「見ればわかるっ」

 伝令から悲鳴のような報告を受けたジルドレッド将軍が手にした望遠鏡を地面に叩きつけながら怒鳴り返す。

 丘の中腹にある本営からは自軍の戦列が、チーズをナイフで切るかの如く簡単に切り裂かれた様が望遠鏡を使うまでもなく見ることができたのだ。

 アーウェン槍騎兵は丘の麓に迫り、そこに陣取るサーザンエンド・フュージリア連隊は一斉射撃を見舞い、白煙が視界を覆う。

「将軍っ。フュージリア連隊といえど防ぎきることができるとは思えません。このままではっ」

 取り乱した様子の副官に苛立ちながらジルドレッド将軍は両翼に視線を向ける。

 両翼では両軍の歩兵が銃撃を交わし始めたところで、未だ優劣が付く段階ではない。

「ドレイク連隊は直ちに後退っ。第四サーザンエンド歩兵連隊と第四ムールド人歩兵連隊を中央に呼び寄せ、フュージリア連隊を支援しろっ。騎兵は敵の側面に進出して錯乱させろっ」

 ジルドレッド将軍が怒声を飛ばし、慌てて数人の伝令が馬を駆けさせていく。

「砲兵隊や輜重隊は直ちに撤収だっ。運びきれない砲は破壊し、荷には火を放てっ」

 指示を出し終えた将軍は苦々しげに顔を歪め、再び視線を麓へと向ける。

 眼下ではフュージリア連隊が二度目の一斉射撃を槍騎兵に見舞い、手痛い反撃を食らっていた。二つ目の馬防柵も難なく押し倒され、アーウェン槍騎兵の喊声がフュージリア連隊の只中に突き刺さっていく。

 サーザンエンド軍において最も戦歴を重ね、精強と名高きサーザンエンド・フュージリア連隊は突撃を受けても必死に抵抗し、どうにかこうにか戦列を維持しようと苦心したものの、結局、紅白旗は連隊の後方にまで達した。

 そこへ右翼から移動してきた第四サーザンエンド歩兵連隊の先遣隊が展開し、側面からアーウェン槍騎兵の銃撃を開始した。

 同じく左翼からは第四ムールド人歩兵連隊が展開しつつあり、両側面を脅かされたサバロフ将軍は一時後退の指示を出し、後退を知らせる喇叭の音色と共に槍騎兵は素早く後方へと下がっていった。

 しかし、大幅に兵を引き抜いたことによって両翼への圧力は大きく高まり、ジルドレッド将軍は両翼で敵を押し止めている第一ムールド人歩兵連隊と第三サーザンエンド歩兵連隊に後退を許可した。両連隊の後退は側面に展開した騎兵連隊が敵を攪乱することによって支援する。

 一時的にアーウェン槍騎兵を後退させたサーザンエンド軍であったが、サーザンエンド・フュージリア連隊及びサーザンエンド・ドレイク連隊は戦列をズタズタに引き裂かれ、大きな損害を受けていた。

 また、二度目の突撃を両連隊の残余と第四サーザンエンド歩兵連隊と第四ムールド人歩兵連隊で防ぐことができるかは甚だ不安であった為、ジルドレッド将軍は全軍の後退を下令し、第四サーザンエンド歩兵連隊と第四ムールド人歩兵連隊に後退する諸隊を支援させることとした。

 丘を越えて南へと逃げ出したサーザンエンド軍を易々と見逃してくれるわけもなく、アーウェン槍騎兵は再度の突撃を敢行し、後退する部隊を支援し、盾代わりとなった第四サーザンエンド歩兵連隊と第四ムールド人歩兵連隊の抵抗を粉砕し、サーザンエンド軍を全面的な潰走へと追い込んだ。

 追撃は夜まで続いたものの、サーザンエンドへの侵攻が目的ではないアーウェン軍はガナトス男爵領に留まり、その槍から逃れたサーザンエンド軍の将兵は命からがらコレステルケに逃げ込んだ。

 サーザンエンド軍は合わせて一〇〇〇名以上の損失を被り、五〇門近い砲と大量の物資が失われた。

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