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サーザンエンド辺境伯戦記  作者: 雑草生産者
第九章 ハヴィナへ
141/249

一三五

「カウラントの犬どもめっ。よくも私を謀りおったなっ」

 ブレド男爵家の分家であるカウラント家の武装蜂起を受けて急遽開催された枢密院会議の席上でレッケンバルム卿が吠えた。

 カウラント家の予期せぬ武装蜂起は、これまでカウラント家と連絡を取り合っていたレッケンバルム卿の面子を大いに潰すこととなった。

 ブレド男爵家の後継問題が発生した頃から何かと便宜を図ってやり、今後もレオポルドを動かして支援してやるつもりであったカウラント家が何の相談もなくガナトス男爵を頼って武装蜂起という重大な行動を取ったことは彼らがレッケンバルム卿との繋がりを自ら捨て去ったも同然である。言い換えればカウラント家にとってはガナトス男爵の方がレッケンバルム卿よりも利益に繋がると考えたわけだ。

 これが卿の矜持と名誉を傷つけないわけがない。人よりも特に高い矜持を持つレッケンバルム卿が激昂するのも無理からぬことだろう。

「直ちに兵を進め、アーウェン人どもに先んじてハヴィナに入るべきであろう。これ以上、異民族どもにハヴィナを穢されてなるものかっ」

 レッケンバルム卿が声を荒げる。カウラント家に裏切られたことが相当頭にきているらしい。

 とはいえ、カウラント家からすれば身内ながら仇敵であるブレド男爵が負傷し、病に伏したという好機にも関わらず、軍を動かす気配がないレオポルドに不信感を抱いたとしても止むを得ないというものだ。

 しかも、彼らはレッケンバルム卿を通じてレオポルドに内通するという危険を冒していたのだ。勿論、ブレド男爵に露見すればただでは済まない。その危険な状況から一刻も早く逃れたいと考えるのは自然なことだと言える。

 その結果、彼らはレオポルド以外の支援者を求め、それにガナトス男爵が応えたというわけだ。同じサーザンエンドの領主同士なのだから繋がりがあってもおかしくはない。

 テイバリ人であるカウラント家にとっては自らを支援してくれるのが帝国人のレオポルドであってもアーウェン人のガナトス男爵であっても大した違いなどないのだ。

「軍の再編は如何なっているのか」

「既に新兵の補充は終わっておりますが、訓練は未だ途上であります。錬成には今しばらくの時間が必要と考慮します」

 レッケンバルム卿の質問にバレッドール将軍が答える。

 今回の枢密院会議には枢密院の高官たちの他、バレッドール将軍やルゲイラ兵站総監、キスカ、レンターケットといったレオポルドの側近たちも顔を揃えていた。

「それは、つまり、軍事行動は不可能ではないということかね」

「不可能ではありませんが、錬成未熟な為、軍事行動に支障を来す可能性があります」

 卿が更に問いを重ねると将軍は渋い顔で応じる。

「結構。兵というものは戦場でこそ経験を重ねるものと聞く。訓練を一年行った兵と戦場を一度経験した兵では、どちらがより精強かね」

 無論、後者であることは言うまでもない。

 そもそも、十分に訓練された軍隊などこの世に存在しないのだ。これまでのレオポルド軍もムールド諸部族に動員させた兵と金で掻き集めた傭兵で構成され、訓練は十分に行われていたとは言い難い。

 実際、この時代の兵士に求められることはそれほど多くはなく、行進と整列、マスケット銃の操作方法さえ覚えていれば、ある程度の役割を果たすことができる。

「しかしながら、糧秣の問題があります」

 発言したのはレオポルド軍の兵站部門を統括するルゲイラ兵站総監である。

「どれほどの糧秣が集まっているのだ。あぁ、細かい数字はよい。例えば、五〇〇〇の兵を動員するとして何ヶ月分の糧秣が確保されている」

「……およそ一ヶ月分といったところですな」

 兵站総監は手許の資料に視線を落としながら答えた。

「それだけではハヴィナに行くまでに半分以上が消費されてしまいます。少なくとも半年分はなければハヴィナを攻略することは難しいでしょう」

 バレッドール将軍が言葉を重ねる。

 つまり、レオポルド軍の運営を担う二人は新たな軍事行動を行いたくないのだ。

 その理由は第一に糧秣の不足である。特に多くの人々の主食である小麦の不足はムールド全体の問題となっていた。伯領政府は様々な施策を講じて小麦の供給確保と価格抑制を試みており、この頃、ようやくその効果が表れ始めていた。ここで軍隊用の小麦を調達すれば抑制されつつあった小麦価格は更に高騰しかねないだろう。

 また、ムールド人の間には断続的に長く続いた戦争に対する厭戦気分が蔓延しつつあった。ムールドの統一を試みたレイナルとの戦い、ブレド男爵のムールド侵攻はムールド諸部族の生命や財産、諸権利を守る為の戦いであったが、ムールドよりも南のハルガニ地方のラジア遠征はムールド人にとっては自分たちとはあまり関係のない戦争であり、レオポルドの為の戦争に大きな犠牲を払ったと考える者も少なくなかった。

 サーザンエンド中部への侵攻となれば、よりムールド諸部族とは関係のない戦争であり、断続的に続く戦争に異議を唱える者も出てくるだろう。

 これらの懸念はバレッドールとルゲイラだけが抱いているものではなく、レオポルドも共有しているものであった。

「糧秣など道すがらの町や村で徴発すればよかろう。サーザンエンド中部の方がムールドよりもまだ豊かな地だ。徴発できる物資もあろう」

 確かにムールドに比べればサーザンエンド中部の方が耕作可能な地は多く、行軍の途上にある町や村で糧秣を買い上げていけば餓えに苦しむことはないかもしれない。勿論、それなりの資金は必要となるが。

「しかし……」

「そもそもっ」

 バレッドール将軍の発言を遮ってレッケンバルム卿が吠える。

「我々がカウラント家を支援し、早期に軍をハヴィナへ進めておれば、ガナトス男爵の介入という厄介な事態を招かずに済んだのではないかっ。私が軍を北上させるべきだと言った時、慎重論を唱えたのは誰かっ」

「いや、しかし、仮に我々が早期に北上していたとしても、ガナトス男爵がそれを大人しく座視していたとは考え難い。どちらにせよ衝突は避け難かったのではないか」

 レッケンバルム卿の主張にシュレーダー卿が反論し、枢密院議長は老総監を睨み、不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「どちらにせよ糧秣が限られているとなると短期に決着させねばなるまいな。少なくとも一ヶ月以内にハヴィナに入城すべきだ。それにはナジカが障害となろう」

 それまで黙っていたジルドレッド将軍が口を開き、バレッドール将軍が慌てて口を挟む。

「お待ち下さい。まだ軍を動かすとは決まっておりません」

「しかし、軍の運営を統括する立場としては仮に軍を動かしたときの状況も考慮しておかねばならん。先の発言は個人的な意見だ」

 ジルドレッド将軍は枢密院会議という公式の場における自身の発言が、仮のものであっても個人的なものであっても議論の行方にどのような影響を与えるか理解していないのだろう。元より将軍はあまり政治的なことに関しては興味もないのだ。

「ナジカか。連中はブレドに忠実なわけではないからな。それなりの利権を保障してやれば大人しく我々に従うであろう」

 バレッドール将軍が議論を止める前にレッケンバルム卿が発言した。

「足の遅い歩兵よりも騎兵を先行させてナジカや周辺の町や村を降伏させ、糧秣を供出させれば問題ないだろ」

 そう言ったのは会議の場ではほとんど発言することなく、暇そうにしていることが多いアルトゥールであった。

「俺に騎兵隊の指揮を任せてくれれば、歩兵はハヴィナまでただ歩くだけで済むようにしてやるぞ」

 アルトゥールは自信ありげに胸を張り、レオポルドを見やる。

「諸卿が軍事行動に慎重なのは理解できる。しかしながら、慎重も過ぎては好機を逸することにもなりかねん。勝利の女神の髪は短いと聞く。手の届くうちにそれを掴むべきであろう」

 レッケンバルム卿も同じようにレオポルドに視線を向けた。

 黙って議論の行方を見守っていたムールドの長老たちの視線もレオポルドに集まる。

 レオポルドの真意としては軍事行動は避けたいところであった。その理由はバレッドール将軍やルゲイラ兵站総監が述べた通りである。というよりも、彼らはレオポルドの代わりにその意向を口にしていた。

 しかし、サーザンエンドの情勢は静観を許せない段階になりつつある。ブレド男爵が病に伏し、カウラント家が離反した状況でブレド・ウォーゼンフィールド両男爵の同盟はアーウェン諸侯に支援されたガナトス男爵軍を押し返せるのか。そもそも、同盟は維持されるのか。

 どちらにせよ、サーザンエンドの勢力圏が大きく変わる可能性がある。それを黙って座視することは果たして得策と言えるだろうか。

 レオポルドはその場を見回すとゆっくりと口を開いた。

「来月中に軍を発し、秋までにはハヴィナに入城する」

 続いてレオポルドはジルドレッド将軍とバレッドール将軍に軍の再編成、行軍路の策定を、ルゲイラ兵站総監には糧秣や物資の輸送体制を整備するように命令した。新たな糧秣の調達は命じなかった。これ以上、ムールドから糧秣を徴発することは難しいと考えたからだ。

 また、伯領総監には軍資金の用意と伯領議会に開戦の決議をさせるよう指示する。議会に開戦を決議させるのはムールド人が多数議席を持つ議会の同意を取り付けることによってハヴィナ攻略に正当性を持たせ、ムールド人の厭戦を払拭させようと意図してのことである。

 レオポルドの言葉に臣下の面々は黙って頭を下げる。


 ムールド軍の再編成はその月の終わりまでには完了された。

 新たに徴兵されたムールド兵の多くは損耗が大きかった第一及び第二ムールド人歩兵連隊とムールド人軽騎兵連隊に編入され、更にクラトゥン族とムラト族、ハルガニ人から第三ムールド人歩兵連隊が編成された。このうち、第二及び第三ムールド人歩兵連隊はジルドレッド准将の指揮下に置かれてラジアに駐屯し、ムールド伯領に編入されたばかりのハルガニ地方に睨みを利かせる。

 ハヴィナ攻略の主力となるのはレッケンバルム准将が指揮するサーザンエンド旅団が中心となる。サーザンエンド・フュージリア連隊、サーザンエンド歩兵連隊、サーザンエンド騎兵連隊、傭兵によって編成されているドレイク連隊、そこに再編成された第一ムールド人歩兵連隊とムールド人軽騎兵連隊と近衛大隊と砲兵隊が加わる。

 各連隊はほぼ定員を満たしており、歩兵は五五〇〇余、騎兵が一五〇〇余、総兵力は砲兵や輜重要員を合わせると八〇〇〇を超え、レオポルドの軍勢としては過去最大規模であった。

 レオポルド自らが出陣し、バレッドール少将が総指揮を執り、騎兵の指揮はアルトゥール・フェルゲンハイム少将に任されることとなった。歩兵はレッケンバルム准将の隷下に置かれる。

 糧秣は一ヶ月分が用意されたが、これはハヴィナまでの平時の行軍であれば持つと思われる程度の量でしかない。途中のナジカ、その他の町や村を攻略し、敵軍と戦い、ハヴィナを攻囲すると仮定すると全く足りない量であった。

 なお、軍の部隊の多くが動員される中、ファディの守備は退役したムールド兵たちによって編成されたムールド人予備歩兵連隊によって担われる。


 軍の再編成は順調に進んだものの、伯領議会の審議は順調とは言い難かった。

 枢密院ほど伯領議会は物分かりが良いわけではなかったのだ。

「我々はもう二年以上も戦いを続けているっ」

 そう言ったベイザリ族の族長マスカル・ワヒド・ガニの言葉に多くの賛同の声が上がる。

「レイナルと戦い、ブレド男爵の侵略と戦い、レイナルが逃げ込んだハルガニ地方でも我が部族の戦士たちは勇敢に戦った。二年に及ぶ戦いの中で既に一〇〇人以上ものベイザリの戦士が死んでいる。この二年間のムールドの戦死者は三〇〇〇人を超えるだろう。その上で、また新たな若者を軍隊に入れ、戦争を続けようというのかっ」

 マスカルの演説にムールド人議員たちが次々と賛成の声を上げる。

「勘違いされては困るがムールドの戦士に臆病者はいない。外敵が我々に仇なすつもりならば、このムールドの地に侵入しようものならば、臆すことなく最後の一兵まで勇敢に戦うことに疑問の余地はない。実際、我々の戦士達はレオポルド閣下の指揮に従い、この二年の間、多くの敵と刃を交え、閣下をお守りし、その偉業を支えてきたのである。全ては彼らの優れた勇気と並はずれた忠義によるものである。戦死した勇者たちもムールドの地と家族、そして、閣下をお守りできたことを誇りとしているであろう」

 ムールドの戦士の象徴である腰の短剣を握り絞め、彼は誇らしげに言い切り、ムールド人議員たちから拍手喝采が浴びせられる。

「しかしながら、我々の生命や家族、財産を危険に晒す侵略者ならばまだしも、今回の戦はそうではない。避けられない戦いではないのだ。無益な戦いによってムールドの若者たちの命が散りゆくことは族長として看過できるものではなかろうっ」

 マスカルは厳めしい顔つきで拳を振り上げながら、流暢な帝国語で力強く断言し、ムールド人議員の拍手喝采はより大きなものとなる。

「我々はレオポルド閣下には深く感謝しています。残虐なレイナルを敗北させ、ブレド男爵の侵略を阻み、ハルガニを平定し、新たな産業を興して、ムールドの地は過去に類を見ない繁栄を迎えております。それはいと尊き閣下の御裁量によるものと理解しております。我々は閣下の統治を歓迎し、その権威には最大の敬意を払い、全ての部族は反抗することなく服従しています」

 彼はその青い瞳でレオポルドを見つめながら言葉を続ける。

「ムールドの戦士たちは主君の為に命を捨てることを厭わぬでしょう。閣下が戦えと言えば彼らは戦うのです。死ねと言えば彼らは死ぬのです。御命令とあれば彼らは躊躇わず戦場へと進むでしょう。それは彼らが閣下を想い、信じているからです。慈悲深き閣下は彼らの無比の忠誠をただただ浪費するおつもりですか」

 レオポルドはマスカルの演説に内心舌を巻く思いだった。彼はただ開戦に反対するだけでなく、ムールドの戦士たちの勇気と忠誠を議場の人々に思い起こさせ、レオポルドに対する忠誠を強調し、その上で、これまでの二年間、レオポルドの為に戦い、死んできたムールドの戦士たちを、それでもまだ戦場に送るというのか。と訴えているのだ。

 帝国人貴族たちもこれには黙り込んでしまう。実際、レオポルドの戦いを支えてきたのは圧倒的多数のムールド兵たちであり、多くの血を流してきたのもムールド兵たちなのだ。彼らは非常に勇敢に忠実に戦って死んできたと言えるだろう。彼らの勇気や忠誠を疑えるものか。

 仕方なくライテンベルガー議長は休会を宣言した。この状況では採決などできるわけがない。


「困りましたな。あの演説でムールド人議員はほぼ反対で固まってしまいましたぞ」

 議会の休会後、レオポルドの執務室に入った院内総務ブラウンフェルス卿が噴き出る汗を拭いながら唸る。

 如何にムールド人の間に厭戦気分が蔓延していると言っても、ムールド人は一つにまとまることがほとんどない民族である為、いくつかの友好的な部族に根回しをしておけば、開戦の決議に賛成多数を得ることは難しくないとレオポルドたちは考えていた。

 しかし、マスカルの演説によって旧七長老会議派から南部諸部族までムールド人議員はほぼ反対で固まってしまっただろう。賛成するのはレオポルドが実質的に族長を務めているネルサイ・カルマン族くらいか。

 一方、帝国人議員たちの多くはハヴィナ貴族であり、彼らにとってハヴィナへの帰還は悲願である。こちらは賛成で固まるだろう。

 伯領議会は帝国人貴族と聖職者が合わせて二五議席。ムールド人が二四議席という構成であるから、賛成多数で開戦を決議することは不可能ではない。

「しかし、それではレオポルド様がムールド人の反対を押し切って無理矢理開戦したという印象になってしまいますなぁ。それは良くありません。議会に諮った意味が失われてしまいます」

 レンターケットの言う通りであった。ムールド人議員の反対を押し切って強行採決するくらいなら専制政治という批判を浴びることを覚悟し、議会に諮らず軍事行動に踏み切った方がマシというものだ。

「なんとか、マスカルを説得できないか」

 レオポルドの言葉に側近たちは顔を見合わせる。

 キスカに視線を向けると、彼女は無表情のまま口を開く。

「ベイザリ族は北東六部族の中でもレオポルド様への協力に積極的な部族です。族長のマスカルは大変な勉強家で、帝国や東方の書物を収集するのが趣味だとか。兄のマスラドはサーザンエンド騎兵連隊の中佐です」

 彼女の説明はベイザリ族とマスカルについて理解を深める一助にはなったが、彼を説得する糸口を掴めるようなものではなかった。

 レオポルドは顎を擦りながら考え込む。

「ベイザリ族は遊牧民だったな」

「そうです。北東六部族は塩の町に住むサルザン族以外は遊牧の民です」

「ということは、遊牧と交易で生活しているわけか。サーザンエンド中部が勢力圏に入ればハヴィナやナジカといった市場が手に入るし、帝国への流通路の安全性が確保され、交易面での利点も大きいのだが、そんなことは理解しているだろうな」

 ハヴィナ攻略によってムールドにも大きな利益が齎されると分かれば、住民感情はともかく指導者層は賛成に回る可能性もある。指導者たちの同意さえ取り付ければ、住民の説得は彼らが行ってくれるだろう。

 ハヴィナ攻略に伴う利益を理解していながら賛成していないのは、その利益と住民感情を天秤にかけた結果、それほど利益が大きいとは判断されなかった為に違いない。より大きな利点を説明できなければ説得は難しい。

「アルトゥールが騎兵指揮官に転出して空席になる伯領副総監の席にマスカルを据えて、兄のマスラドを連隊長に昇進させるというのはどうだ」

「彼らがその地位を望むかどうかさておき、地位に目が眩んで賛成に回ったと知れれば、ベイザリ族の名誉は大いに傷つくでしょう。そんな分かり切った餌に飛び付く程、愚かとは思えません」

 レオポルドの提案にキスカが冷静に反論する。

「利益によっても地位によっても賛成が得られないとなれば、はてさて、どうしたものかな」

 彼は首を傾げて呟いてから想い付く。

「そうだ。ムールド人は義理堅い部族だったな」

「勿論です」

 キスカが頷くのを見て、レオポルドは口の端を吊り上げる。

「レッケンバルム卿を呼んでくれ。卿に一働きして頂こう」

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