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サーザンエンド辺境伯戦記  作者: 雑草生産者
第七章 伯領政府
120/249

一一四

 ムールドの有力者たちを招いたレオポルド主催の晩餐会は屋外で催された。

 季節は未だに夏の盛りで、夜になればだいぶ気温も下がって過ごし易く、屋外での宴も趣があって良いとの理由で屋外での開催となったが、実際のところは全部族の代表者や帝国人貴族たちを収容できる会場がなかったというのが本当の理由だ。

 出された料理は毎度お馴染みである数種の羊肉の焼肉、挽肉と野菜の炒め物、焼き飯、豆のスープ、臓物のスープ、鶏のスープ、平焼きパン、数種のチーズ、ヨーグルト、色とりどりの果実。共に供されるのは伝統的なムールドの山羊乳酒の他、葡萄酒などの果実酒。

 乾杯の挨拶の後、レオポルドの元には全ての部族の代表者たちが顔合わせにやってきた。

 自分よりも一回り二回りどころか二倍も三倍も年長の長老たちに頭を傅かれ、頭を下げられるのはレオポルドにとっては居た堪れない気持ちに苛まれ、苦痛と言っても過言ではない。

 とはいえ、それでも横柄に胸を張り、彼らの挨拶を鷹揚に受け「大儀である」とか「貴殿の忠節に期待する」とか偉そうなことを言わなければならないのが今の彼の立場なのである。

「伯にまでなっておいて何だが、俺は人の上に立つ仕事が好きではないのかもしれない」

 挨拶の列を片付けた後、レオポルドは疲れたような顔で傍らに侍るキスカに小声で言った。

「レオポルド様はムールド、サーザンエンドを統べるに相応しき御方です」

 キスカは無表情に言い切った。

「レオポルド様でなければムールドは治まらず、戦乱はより長引き、帝国とムールドの民の融和もより遠い先のこととなったでしょう」

「それは血統という意味でか」

 レオポルドは皮肉めいた言い方をした。彼が今の地位にあるのは確かに血統によるものが大きい。サーザンエンドを一世紀以上に渡って治めてきたフェルゲンハイム家の血の力は無視できないものがある。

「いえ」

 キスカは彼の捻くれた言葉を即座に否定した。

「ムールドに割拠する各勢力の利害を調整し、御自身の利益になるように誘導してきたのは全てレオポルド様の手腕によるものです。各勢力はそれぞれの利害の為に行動しながらも、結果的にレオポルド様に協力し、従属し、その利益の為に働いているのです。誰にでもできることではありません。現にレオポルド様よりも有利な立場にあった男爵方は自身の支配領域を固めることすらできず、レイナルは全てを失っているのです」

「そうかぁ」

 レオポルドは疑わしげな顔をして、手にしたグラスに口を付けたが、中身が空なことに気付いて顔を顰めた。

「旦那様。葡萄酒で宜しいですか」

 いつの間にか傍まで来ていたアイラが持った盆の上には葡萄酒のグラスがある。

「あぁ、ありがとう」

 レオポルドはグラスを手に取り、挨拶で話し過ぎた喉を潤そうと葡萄酒を呷り、顔を顰めた。

 ムールドで飲む葡萄酒は帝都で飲むものよりも数段味が落ちるのだ。南部で葡萄酒を生産しているのは北アーウェンの北部高地地方のみであり、ムールドで手に入る葡萄酒は北アーウェンから陸路で遥々輸送されたものか、或いは帝国本土から輸出され、港町カルガーノに陸揚げされたものである。葡萄酒は熱や光、振動などで劣化し易い為、熱い南部の地を長距離輸送すれば葡萄酒の多くは劣化し、味が格段に落ちてしまうのだ。

 しかし、葡萄酒以外の酒といえば、ムールド伝統の強烈な臭いを発する山羊乳酒がムールドで最も手に入り易い酒だった。

「相変わらず酷い味だ。なんとかしてまともな味の葡萄酒が飲みたいものだな。プログテン山脈の近くに葡萄を植えられないか聞いてみよう」

 レオポルドが不満をタラタラと言っていると、アイラが別の酒を持ってきた。

「こちらは如何ですか」

「山羊乳酒は勘弁だぞ」

 独特で強烈な臭いを発する山羊乳酒は多くの帝国人が苦手としていた。

「ナツメヤシのお酒です」

 アイラが持ってきたのは乾燥した南部でも元気に育つため、非常に重宝されているナツメヤシの果実を原料とした酒だった。

「それは初めて飲むな」

「私は好きですけど、とても甘くて少し癖が強いお酒です」

 グラスに入った酒の色は透明で、飲むと確かに甘く癖が強いが、不味い葡萄酒や臭い山羊乳酒よりは格段にマシだった。

 この機会にムールドの新たな支配者との繋がりをしっかりと固めようと考える者は少なくなく、レオポルドの元にはひっきりなしに人が集まり、事あるごとに「栄えある帝国に」「偉大なる皇帝陛下に」「ムールドの新たな若き指導者に」「聡明なるムールド伯に」「偉大な大地と天空に」「ムールドの末永い安寧に」「ムールドの発展と未来に」「ムールド諸族の忠誠に」「勇敢なる砂漠の戦士に」乾杯をしては杯を空にした。

 帝国人の高位高官や長老たちが退出した後も宴は続き、今度は部族を実質的に指導する幹部クラスや帝国人貴族の中でもレッケンバルム家やジルドレッド家、シュレーダー家といった名家よりはいくらか格下の貴族たちが新たな主君との知己を求めて集まり、レオポルドは彼らの忠勤を称え、変わらぬ忠誠に期待し、働き次第では慣例に囚われず要職に取り立てるという約束を与えた。

 その間にもレオポルドは杯を重ね、ナツメヤシ酒の杯を十ほど空にした頃には顔は真っ赤に染まり、足取りは覚束なくなってきた。

 ナツメヤシ酒は甘いが思ったよりも強く、調子の乗って飲み過ぎると酔い易い酒なのである。

 それでもレオポルドの意識と口調ははっきりしていた為、ひっきりなしに挨拶に訪れる者の応対を続けた。

 心配したキスカはレオポルドに腕を掴んで離れず、アイラも傍に控えていた。

 結局、レオポルドが宴の場を離れたのは日付が翌日に変わって暫くした後で、キスカとアイラにほとんど支えられながら臨時の宿舎としている天幕へと戻った。

 天幕の中はいくつもの燭台が置かれ、仄明るく照らされていた。

 レオポルドは二人の手を借りながらどうにか天幕の端に置かれた寝台に腰を下ろした。

 キスカは警備の兵に指示を与えに行き、アイラは銀の杯に冷たい水を入れてレオポルドに手渡す。

「旦那様。御気分は如何ですか」

「気分はそれほど悪くはない。吐き気はないな。ただ、頭がくらくらする」

 水を一口飲んでからレオポルドは言った。

「御召し物を脱いだ方が良いと思います」

 そう言ってアイラはレオポルドに覆いかぶるような姿勢で、彼の上着に手をかける。

 ふわりとした香水の匂いがレオポルドの鼻をかすめ、彼女の豊かな乳房が体や腕に当たっているのがわかる。

 シャツのボタンを外し、腰に提げたサーベルを取り、靴を脱がせ、革のベルトを抜き去り、ズボンにまで手をかけた。

「おい、ちょっと」

 慌てて声を掛けるとアイラは上目遣いで彼を見上げた。

「もうこんな時間ですもの。お休みになられればよいではありませんか」

「その前にキスカから報告を聞くことになってるんだ」

「またお仕事の話ですか」

 アイラは少し不貞腐れたような顔をした。いつも愛想が良く、穏やかで嫋やかな彼女にしては珍しい表情だ。

「何か不満があるのか」

「勿論です」

 レオポルドの問いに彼女は子供っぽく唇を尖らせて言った。

「旦那様。ムールドでは夫が複数の妻を持つことは珍しくありません。私もムールドの女ですから、そのことは十分に承知していますし、私が二番目、リーゼロッテ様がいらっしゃれば三番目の妻であることにも納得しています」

「あ、あぁ、うん」

 カルマン族でも一番の器量良しと名高く、ムールドでも指折りの美女を三番目の妻として迎えている贅沢な男であるところのレオポルドはきまり悪そうに頬を指で掻く。

「ムールドでは複数の妻を持つ夫は必ず全ての妻を平等に愛さなければなりません。旦那様もそうなさるべきだと私は思います」

「その通りだ」

 アイラの言葉にレオポルドは何度も首を縦に振る。今は逆らわず言うことに従っておいた方がいい。

「それならっ」

 レオポルドが首肯したのを見たアイラは彼に詰め寄る。

「キスカお姉さまを愛したように私のことも愛して頂けないのは不公平です」

 どうやらアイラはキスカが妊娠して、自分がしていないのはレオポルドの注ぐ愛情が不公平だからだと考えているらしい。

「いや、私は二人を平等に愛している」

「いいえ、違います」

 レオポルドの言葉を彼女はきっぱりと否定した。

「私と一緒に夜を過ごしてくれるよりもキスカお姉さまと一緒にいられる方が多いですもの」

「そんなことはないと思うが……」

「そんなことあります。帝都にいたときもムールドに戻ってからも、お仕事で私の傍にいて下さらないことが多々ありましたわ」

 言われてみれば、確かにレオポルドは帝都滞在中も南部に戻ってからも多忙な日々を過ごしており、アイラとゆっくりと過ごす機会は少なかったように思われる。その間も妻でありながら副官でもあるキスカは常に傍にあった。

「キスカは私の副官で近衛隊の指揮官でもあるから、傍にいる機会が多いだけだ」

「では、お尋ねしますけれども、お仕事でキスカお姉さまと一緒にいらっしゃる間、休憩や一休みの合間に愛し合うことはなかったのですか」

「……………」

 レオポルドは黙り込んだ。

 アイラは一層不機嫌そうな顔をして、唇を尖らせる。

「過ぎたことをこれ以上言うつもりはありません」

 もう十分言っているじゃないか。とはレオポルドは言わなかった。彼は自ら墓穴を掘らないくらいには賢明な男なのだ。

「ですから、今まで不十分だった分をこれから埋め合わせて頂ければ私は結構です。希望としては今宵から埋め始めて頂ければ」

 そう言ってアイラはレオポルドの胸にしな垂れかかる。

「……ナツメヤシの酒を勧めたのはこの為か」

「旦那様はお酒に強いのですね。理性がなくなるくらい酔って頂ければ宜しかったのに」

 レオポルドの問いにアイラはにっこりと微笑んで応え、首を伸ばし、顎を上げ、瞼を閉じた。

 ここまで言われて拒めるわけがない。レオポルドは彼女の紅色の唇に口付けた。アイラの長い腕が伸びてきて、抱き締められ、接吻はより強く密着したものになる。

 キスカが入ってきたのは、ちょうどその時だった。

 レオポルドは慌てて唇を離そうとしたがアイラに抱き付かれているせいで、上手くいかない。

 一瞬唖然とした表情を浮かべたキスカはすぐに氷のような無表情になって二人の様子を睨みつけていたが、いつまで経っても接吻が終わらないのを見て、不機嫌そうに咳払いした。

「ちゅ、ぷぁ、あら、キスカお姉さま」

 アイラはわざとらしく今気付いたとでもいうような感じで言って、レオポルドから少し離れた。

「レオポルド様。御報告したいことがありますが宜しいでしょうか。睦事をなさる前に聞いておいた方が宜しいかと思います」

 キスカの声には棘がある。

「あ、あぁ、うん。それだ。よし。聞こう」

 レオポルドは無理矢理表情を引き締める。

「それは明朝では不都合なのですか」

「不都合です」

 アイラの不満げな声にキスカが瞬時に言い切る。

 アイラはそれでも不満そうにレオポルドを見つめ、仕方なく彼は小声で

「後で」

 と言い、ようやく彼女は微笑んだ。

「それで、キスカ。報告なんだが」

「……レオポルド様の御指示通り、宴の会場の各所に配した警備の兵、給仕、その他、我々の手の者から長老たちの会話を聞き取りました」

 キスカは仏頂面で報告を始めた。

 レオポルドは宴の会場の各所に部下を配置して、長老たちの世間話を聞きとらせていた。その目的は長老たちの反応を読み取る為である。

「議会の発足は概ね好評のようですが、七長老会議派の長老たちは不満を持っている様子だったようです。一貫してレオポルド様に味方してきた自分たちとレオポルド様に反抗を続けた部族では貢献度や忠誠度が違い、同列に扱われるのは不満だと思っている者が多いようです」

「まぁ、そうだろうな」

 キスカの報告にレオポルドは頷く。

 彼の横にぴったりとくっついて座ったアイラは甲斐甲斐しく扇で主を煽いだりしていた。

「では、何故、彼らを優遇せず、反抗的だった部族と同列に扱うのですか」

「連中を増長させない為だ」

 現在、ムールド諸部族の主導権を握っているのは早くからレオポルドに従い、その軍隊に参加していた七長老会議派と北東部のサルザン族ら北部諸族である。彼らはレオポルドとの協力関係によって優位性を保っている。

 しかし、それはレオポルドの命運を彼らが握っているとも言えるのだ。

 北部諸族の有力者たちはレオポルドの政府で要職を占めており、軍の将兵の多くがムールド北部の出身である。

「連中の協力によって今の私の地位が保証されているとも言える。それを利用した連中の意向で行動を制限されるのは避けたい。今は蜜月だが、その関係が恒久に続くとも限らんし、北部ばかりを優遇していては他の部族や貴族諸卿や教会が反発するかもしれん」

 レオポルドには自身の優位性を保ちながらも、その優位性の担保である北部諸族の影響力を削ぎつつ、他の勢力をより確実に服従させるという複雑で難しい舵取りが要求されているのだ。

「その為に議会を置いて、全部族に等しく一議席を配り、反帝国だった部族も味方に取り込もうっていうわけだ。南部の有力な部族であるクラトゥン族やムラト族にも重要な立場を任せてバランスを取りたい」

 全部族が等しく一議席を有することによって、これまで反帝国派であった部族や規模の小さな部族にも一定の発言力が保証され、不満や要望を議会で訴えることができ、部族間での紛争の防止にも繋がるだろう。

 また、全部族が参加する議会の設置によって、七長老会議は自然に反発なく解散させることができる。

 七長老会議は親帝国派諸部族の連絡会議であり、彼らとの調整に便利な場であったが、全ての部族が等しくレオポルドの傘下に収まった今となってはあまり必要性がないどころか、レオポルドに強い影響を及ぼす諸部族が結束し、協調する場となりかねない。

 レオポルドは有害になる可能性のあるものは芽のうちに摘む主義なのだ。

「しかし、それでは北部諸部族がレオポルド様から離れていってしまうのではありませんか」

 自身の部族の影響力を減らそうというレオポルドの企みを聞いても、キスカは顔色も変えずに言った。彼女は既に自身の部族よりもレオポルドの利益を優先する立場なのである。彼を裏切った親族を粛清した夜からそうなっている。

「そこは政府や軍の人事で優遇する。北部諸部族を要職に置いて差別化する。勿論、クラトゥンとムラトにも配慮するが、いくらか差を付けたい。北部諸部族はある程度満足するだろうし、クラトゥンとムラトは反抗を続けた負い目があるから不満は少ないだろう」

 キスカは納得したようだった。

「もっとも、私が色々と企んでバランスを取っていることは長老方も理解しているだろうな」

 それでも彼らが表向きはそれを受け入れ、宴の席で酒に酔ってぶちぶちと不満を漏らす程度でいるのは、彼の布告がムールド人たちにとっても悪い話ではないからだ。一方的に支配、搾取されるよりは自分たちの意向や意見を反映させることが認められる制度の方が好ましいのは言うまでもない。

「レオポルド様の現在の力であれば、それほど各勢力に気を配らなくてもよいのではありませんか」

 キスカの問いも尤もというものだ。

 言うまでもなく、今のムールドにレオポルド以上の軍事力と発言力、財力を持つ存在はなく、彼が突出した権限を握っていることは明らかである。

 それでも彼が各勢力のバランスに苦心し、配慮と調整を欠かさないのは統治の仕組みを確固としたものにする為である。

「私の責務は、私がいなくなっても私の後継者がムールドを安定的に統治できる仕組みを作ることだ」

 彼は大きな敵を倒せばそれでお終いという気楽な立場ではない。敵を倒した後、その地域を支配し、統治し、安定させ、その地位と権力を後継者に受け継いでいかなければならない。それが支配者というものである。一代限りの栄華など彼にとって大した価値ではないのだ。フェルゲンハイム・クロス家が恒久にムールドを支配していける地盤と仕組みを築くのがレオポルド・ウェンシュタイン・フェルゲンハイム・クロスの役目なのだ。

 長期で安定的な政権が続くことは地域の安定と経済発展にも繋がる。その点はレオポルドもムールドの長老たちも帝国人貴族たちも十分に理解している。そして、その安定的な政権が一方的な支配関係では長続きしないことも理解しているのだ。三者が意思疎通を行う場を設け、協調し、妥協し合うことによってムールドの地は安定し、長期的な利益に繋がるというものだ。

「成る程。仰る通りです」

 キスカは納得した様子で言った。

「それに、まぁ、ムールドは私たちの後継者に遺す地だからな」

「……レオポルド様とリーゼロッテ様の御子の間違いではありませんか」

 帝国法では妻は一人しか認められておらず、後継足り得るのは嫡子に限られることくらいキスカも知っている。

「何を言ってるんだ。ムールドは君のものだろう」

 レオポルドが言うとキスカはきょとんとした顔をした。

「婚儀にあたって君に譲渡したじゃないか」

 ムールドの伝統では花婿の家は花嫁に結納の品を送るしきたりである。

 しかし、レオポルドがキスカと婚礼を挙げるとき、彼にはほとんど財産がなく、譲渡できる財産がなかった。

 そこで将来手に入るであろうムールドの支配権を結納の品という形でキスカに譲渡したのだ。夫婦の財産は共有するものだから二人が夫婦である間はレオポルドがムールド伯でムールドの支配権を持っていても何も問題はないが、彼が亡くなった後は、ムールドの支配権はレオポルドとキスカの間の子に相続されるということになっているのだ。

 キスカは唖然とした顔で何かを言おうとしたが、その前にレオポルドの横にぴたりと付いたアイラが口を開く。

「あら、じゃあ、ファディは私のものですか」

「そうだとも」

 アイラの言葉にレオポルドは頷く。

 レオポルドはアイラとの婚礼でも同じ手を使い、ファディの支配権を結納の品に代えたのだ。故にファディの支配権はアイラとの間の子に相続されるだろう。

「まぁ、こんな立派になさった町を頂いては申し訳ありませんわ」

「代わりに私は君を貰っているじゃないか。お釣りがもらえるくらいだ」

「まぁっ」

 レオポルドの言葉にアイラは微笑んで彼に抱き付き、唇を合わせた。

 抱き合って寝台に倒れ込んだ二人を見て、キスカは憮然とした顔で天幕を出て、無意味に警備の兵を睨みつけて怯えさせてからフィオリアとソフィーネが寝泊りしている別の天幕に行くことにした。

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