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サーザンエンド辺境伯戦記  作者: 雑草生産者
第一章 サーザンエンドへ
11/249

一一

 大蛇の峠を通りグレハンダム山脈を越えるとアーウェン地方に入る。

 ここから先は帝国南部と呼ばれる帝国本土とは一線を画した地域である。ここでは帝国人は少なく、多くが異民族であり異教徒である。帝国政府の力は十分に及ばず、一応は帝国に従属してはいるが、ほとんど自立した異民族の諸侯が支配する地域が大半であった。

 アーウェン地方は実質的には帝国の一部であるが、法律上は独立した王国とされている。

 かつて帝国が南部に侵攻した際、激しく抵抗した後に降伏した結果、王国の存続が許され、神聖皇帝が国王に推戴される同君連合の形式となっているのだ。

 その為、アーウェン人には帝国の一部という意識はほとんどなく、自らを誇り高きアーウェン王国の人間と考えている。

 特にアーウェンにおいては士族という一種の貴族階級が権力を握っており、彼らによる国民大会議によって物事の多くが決められていた。未だに形式上皇帝が替わる度に国民大会議によって次の皇帝をアーウェン王として選出しており、帝国の命令も国民大会議によって認められなければ通用しない有様である。

 士族の中でも特に力の強い四大貴族はそれぞれ侯として諸侯に列し、十数人の伯や子爵、男爵、百人近い帝国騎士も多くがアーウェン士族である。元々の国王が統治していたアーウェン王冠領には二つの司教領が成立している。

 当然のことながら、形式上の支配者である神聖帝国には非協力的どころか反抗的で、その命令に素直に従ったことはほとんどなく、帝国がいよいよ武力行使も辞さぬという態度を示すと、渋々と従順な態度を取る程度の連中である。

 南部における帝国の名代のような立場であるサーザンエンド辺境伯に対しても反抗的であった。歴代の辺境伯は自領の北を位置し、帝国との連絡線を分断するアーウェン諸侯との関係に苦心させられてきたものである。ただでさえ、帝国本土とかなりの距離があるというのに、その間に横たわるアーウェン諸侯が敵に回るとなればサーザンエンド辺境伯は完全に孤立無援の状況に追い込まれてしまう。

 この南北アーウェン地方を北から南へ縦断するには徒歩で一ヶ月を要する。北アーウェンを越え、南アーウェン地方を過ぎれば、その地はついにサーザンエンドである。


 グレハンダム山脈を越えた先にはグラペスという都市があり、レオポルド一行は、そこで一泊し、山越えの疲れを癒していた。

「良いことを考えた」

 その日の夜、食堂で干からびたような肉の塊が浮いているシチューを突きながらレオポルドが言った。

「何さ」

 宿の食堂で出された糞不味いシチューと乾燥しきってボロボロに砕けるパンに辟易としていたフィオリアが不機嫌そうに尋ねる。パンを砕いてシチューに沈める作業に没頭していたキスカも顔を上げて、レオポルドを見つめた。

「いや、これからの方策について色々と考えていてな」

 レオポルドは食べる気もないシチューを押し退けながら言った。

「俺の最終的な目標は、勿論、サーザンエンド辺境伯の座に就くことだが、今の情勢を見るにかなり難しい。このまま、サーザンエンドに行ってもすんなり事が運ぶとは思えない」

 キスカ曰くにはサーザンエンド辺境伯の家柄であるフェルゲンハイム家の血筋は尽く断絶しており、今やその血統に最も近いのはレオポルドであるという。

 とはいえ、そのフェルゲンハイム家に成り代わってサーザンエンドを支配しようという有力勢力はいくつもあるようで、すんなりフェルゲンハイム家の当主に収まることができたとしてもサーザンエンドを支配できるとは限らないのである。配下の貴族や領主、部族が反旗を翻して辺境伯位を強奪しに来るかもしれない。

「そうなったとき、俺の指示で動く兵力がいくらいるかは分からないが、どう考えても大した数にはなるまい」

 フェルゲンハイム家に忠実な家来や帝国寄りのキスカの部族などを糾合して、対抗できる兵力になるかどうか疑わしいところである。まだサーザンエンドに入ってもいないレオポルドには想像しかできないところだが、あまり期待はしない方がいいものである。未来の予測は悲観的であるべきだと彼は思っていた。

「そこでだ。そうなったとき、援軍を派遣してくる味方を作っておく。援軍を送るまではしてくれなくても、頼めば支援や敵の牽制くらいはしてくれる勢力をだ」

「そんなことできるの。ていうか、そんな味方になってくれそうな人なんているのかしら」

 レオポルドの策にフィオリアは疑問を呈す。小首を傾げて少し考えてから、ふと思いつきを口にする。

「それって、レイクフューラー辺境伯のこと」

「いや、違う。辺境伯はおそらく俺を支援してくれるが、あまりにも遠すぎて、直接的な支援にはならん。せいぜい、資金や武器を援助してくれるくらいだろう」

 もしも、レオポルドが窮地に追い込まれたとき、支援の急使を発しても、レイクフューラー辺境伯の許に使者が辿り着く頃には既にレオポルドは息絶えていることだろう。それくらい遠くては話にならない。

「アーウェン諸侯を味方にするのですか」

 キスカが怪訝な顔つきで尋ねた。

 帝国本土から隔絶された南部にあって、サーザンエンドに直接的影響力を及ぼせる勢力といえば、まず浮かぶのはアーウェン諸侯である。

「しかし、彼らは北部のアーウェン系領主に味方するでしょう」

 中でもアーウェン人のガナトス男爵は勢い盛んで、サーザンエンド辺境伯位も狙っているという。同族の男爵を差し置いて帝国系のフェルゲンハイム家を支援してくれるとはとてもじゃないが思えない。サーザンエンド辺境伯をアーウェン系にしてしまえば、アーウェン人は最早南部では恐い者なしなのだから。

「まぁ、多くのアーウェン諸侯はそうだろうな」

 レオポルドは思わせぶりなことを言い、フィオリアとキスカは顔を見合わせる。

「しかし、中にはアーウェン人辺境伯の誕生を阻止したいと思っている奴もいるだろう。これ以上異民族色を強くしたくない。アーウェン人を増長させたくないと思っている連中がな」

 彼のこの言葉で二人はその存在に思い至った。理解した途端に何とも言えぬ苦々しい顔をした。

 というのも、彼が言わんとする勢力とは、つまり、

「西方教会だ」

 レオポルドの言った結論にフィオリアはあからさまに嫌そうな顔をして、完全に食べる気の失せたシチューを押し退け、キスカは気まずぞうに顔を伏せた。

「もっと具体的に言うなれば、レガンス司教とクロヴェンティ司教だ」

 レガンス、クロヴェンティ両司教はアーウェン地方に領地を持つ有力な司教である。

 帝国では諸侯と呼ばれる領邦君主は貴族だけではない。中には大司教や司教、大修道院長といった上級聖職者も含まれる。彼らも広大な領地を保有し、統治している。こういった聖職者の領邦君主を聖界諸侯と呼ぶ。

「確かに聖界諸侯ならばアーウェン人の伸長は望むところではないでしょう」

 キスカは納得する。

 異民族であるアーウェン人の伸長を防ぐ為にレオポルドたちの味方に回る可能性は十分にあり得る。

 アーウェン人は正教徒ではあるが、帝国や西方諸国で信仰される正統主義派とは違うラプニン派を信仰している。同じ神を信じ、同じ聖典を読むが、教義において相容れない部分が多くあるのだ。その第一としてラプニン派は教会という聖職者組織を認めていないことである。これは西方教会にとって受け入れ難いことは言うまでもない。

 故に大陸ではラプニン教徒は見つかり次第、異端審問にかけられ、拷問の末に処刑されることが常であり、帝国本土においてはほぼ駆逐されている。

 西方教会はアーウェン人の改宗を図っているが上手くいっていないのが実情のようで、両者は対立関係にあり、レオポルドの支援を請け負ってくれる可能性は低くない。

 問題はフィオリアが教会に嫌悪感を抱いており、キスカも異教徒であって、教会に良い感情を抱いていないことである。言うなればそれだけである。二人が我慢すればいいだけのことなのだ。

「そういうわけで、俺たちはレガンス司教領とクロヴェンティ司教領に寄ってからサーザンエンドに向かうことにする」

 レオポルドの出した結論にフィオリアは不満を隠そうとしなかったし、キスカは戸惑っているようだったが、彼はあえてそれを無視した。


 山脈南のグラペスから一週間南へ歩くとクロヴェンティ司教領に入る。その首都はオコロブという町で、その中心部にある広場に面した館に司教が住んでいる。

 とはいえ、居場所がわかっていても、司教本人に面会するのは非常に難しい。

 というのも、司教ほどの上級聖職者の身分は公伯と並ぶほどの高位者である。レオポルド程度の帝国騎士身分では全く釣り合わない存在である。

 司教のすぐ下に位置する副司教、司教座聖堂参事会長レベルでも面会してくれるとは思えない。レオポルドに相応な相手となると司祭か聖堂参事会員程度の下級幹部クラスだろう。

 それでもいいとレオポルドは思っていた。大事なのは細くてもいいからパイプを作っておくことだ。下級幹部でもいいから、内部に顔を合わせた人物がいることに意義がある。今はまだ没落した帝国騎士に過ぎないが、近い未来に辺境伯候補として名が出る程度になったとき、自分と会ったことがあり、名前を知っている人物が司教領にいるということが重要なのだ。

 そういうわけで、レオポルドは司教の館に挨拶と称して訪問した。帝国騎士程度の身分があれば無碍に追い払われるようなことはなく、丁重に一室へ案内された。

 ちなみに、身分を証明するものとは、ずばり服装である。高級な衣服は非常に高価であり、一般庶民には手に入れることもできない代物であった。故に見るからに高価な衣服に身を包んでいる人物はそれだけで高貴な身であるとの証明になったのである。

 レオポルドは家が破産した結果、衣服の多くも売却していたので衣服は簡素なものしか所持していなかったが、フィオリアが思わぬ大金を手にしていたので、これを使って高貴な身分に相応しい衣服を揃えていた。

 細いシルエットの丈の長い赤い上着に、その下には絹の白いシャツを着込む。首元にはリネンのクラヴァットを飾っていた。下は濃紺の長ズボンに革の短ブーツ。それに加え、羽飾りの付いたつばの広い帽子があるが、屋内では脱いでいた。これだけ揃えるのに、金貨が一枚消えてしまった。貴重な資金を衣装代に費やしてしまったことを浪費と捉えるか投資と捉えるかは後々わかることだろう。

 ちなみに、今回の訪問にフィオリアとキスカは同行しておらず、宿に留まっていた。フィオリアは教会に対する不信ゆえであるのは言うまでもなく。キスカについては異民族を同行させることにはメリットがないどころか、デメリットが大であると判断した。

 一人正装に身を包んだレオポルドが待機していると、金色の縁取りが為された白い聖服に身を包んだ年老いた聖職者がやって来た。小柄で柔和な顔つきの人の良さそうな老人である。後ろには部下らしき簡素な聖服の若い聖職者が従っている。

 レオポルドは起立して恭しく頭を下げ、挨拶と自己紹介をした。

「これはどうも。クロヴェンティの司教を務めておりますトマス・カラブラです」

 老人が名乗り、レオポルドは緊張に身を固くした。まさかまさか、司教様ご本人が出てくるとは思いもしなかった。表情も一瞬凍りついたが、すぐに気を取り直して笑顔を取り繕って右手を差し出す。

「お会い出来て光栄です。司教猊下」

 司教はにこにこと微笑みながらレオポルドの右手を細い皺だらけの枯れ木のような手で握り返した。

「こちらこそ、クロス卿。まぁ、お座りになって」

 二人が座ると、それまで控えていた若い聖職者が二人の前にお茶の入ったティーカップを置き、部屋を出て行った。

 きちんとした正装に身を包んでいるとはいえ、初対面の輩相手に部屋で二人きりになるとは警戒心がないのか余裕なのか。

「まま、お茶でもどうぞ。一応、神に仕える者の家ですからね。お酒を出せないのは残念ですが」

「いえいえ、ありがとうございます。頂きます」

 レオポルドは恐縮して勧められるがままにティーカップに口を付ける。

「さて、ところで、クロス卿はアレですかな。サーザンエンドへ向かわれる途中なのですかな」

 同じようにティーカップを傾けていた司教がカップを置きながら尋ねる。

「はい、その通りです」

 どこでそれを知ったのか。というか、何をどこまで知っているのか全くわからなかったが、ここで否定してもしょうがないので、レオポルドは正直に答えた。

「ふむ。なるほど。それで私のところに参ったのは、まぁ、神に祈りにとかではないでしょうねぇ」

「いえいえ、こちらの聖堂には今朝方、礼拝に行かせて頂きました。大変素晴らしい聖堂です」

 これも嘘ではない。彼は今朝方、きちんと聖堂に礼拝に行って、少なくない額の寄付もして来た。そうしておくことで教会関係者の目に留まるようにしておき、少しでも心証を良くしておこうとの打算ゆえではあったが。

「いや、帝都から来られた方には恥ずかしい限りの小さな聖堂ですがね」

 確かに聖堂は小さかった。金や銀で飾り立てられてもおらず、絢爛豪華といった帝都の大聖堂とは比べ物にならない。

 しかし、建物は小さいながらも洗練されていてセンスが良く、内部もシンプルにして調和のとれた静かな雰囲気に満ちており、レオポルドとしてはこちらの方が神の家に相応しいのではないかと思っていた。

「まぁ、それはさておき、クロス卿が参られたのは辺境伯位を巡るサーザンエンドでの出来事で、我々に何かしらの助けを求めて、ということではありませんかな」

 司教はずばり核心に触れてきた。

 レオポルドの存在とその目的を知っていれば、彼が自分たちに何を求めてくるかは容易に推察できるだろう。

「その通りです」

 レオポルドはここでも正直に頷く。

「私はこれからサーザンエンドに赴き、願わくば辺境伯に就任し、かの地で起きている騒乱を鎮めたいと思っています。その為の援助を司教猊下に期待して参りました」

 彼はきっぱりと目的を全面的に表に出して言い切る。これだけ相手に自分の意図がバレているのでは隠すことなど何もあるまい。逆にオブラートに包んだ妙な言い回しをして相手を不愉快にさせる方が利益を損なう可能性がある。あとはこちらの利益と相手の利益が共通のものであると説得し、相手の温情に縋るのみだ。

「宜しいでしょう。我々は貴殿を支持し、可能な限り支援しましょう」

 あまりにも呆気なく、司教の口から支援を約束する言葉が出てきて、レオポルドは呆気にとられた。口約束とはいえ、あまりにも簡単に事が進んでしまった。

「我々もサーザンエンドの行く末には危機感を抱いておるのですよ。帝国に従順な神の僕が辺境伯が就任するのならばそれに越したことはありません。その為の支援は惜しまないつもりです」

 レオポルドが共通の利益を訴えるよりも先に司教は既にその点について、十分承知しているようであった。

「帝国や教会に仇なす者がサーザンエンド辺境伯に着くことになれば南部は神の敵が支配することになるでしょう」

 今でさえ、反帝国的な諸侯が跋扈している南部において、最大の帝国系大諸侯のサーザンエンド辺境伯まで反帝国に回れば、両者の拮抗していたバランスは崩れ、南部は一気に反帝国の機運が高まることが予想される。分離独立を目指す動きになる可能性も否定できない。

「そうなれば、我々にとっても民にとっても不幸なことです。というのも、南部が反帝国を目指せば、帝国は南部に兵を派遣し、この地は今までにない戦乱に巻き込まれることでしょう。そうなったとき、最も被害を受けるのは貧しき民なのです」

 それを避ける為には帝国に従順な者が辺境伯になるべきであると司教は考えているらしい。それ故に司教はレオポルドを支援するという。

「ただし、我々にもできる範囲があります」

 というのも、あまりに教会勢力がレオポルドを支援すると、ただでさえ帝国系のレオポルドに、反帝国的で異教徒でもある異民族から反発を買う可能性がある。

 また、アーウェンの聖界諸侯がレオポルドを支援することによって、他のアーウェン諸侯がサーザンエンドに介入する口実を与えることになるかもしれない。それ故に教会勢力からの支援は陰に陰に行うべきだというのが司教の考えである。

 レオポルドもその点には同意した。その上で司教による支援の意向に感謝の意を表明して、その場を辞した。

 全ては口約束であり口頭での確認のみである。具体的な支援内容も定まってはいない。

 しかし、まだサーザンエンドに到着してもいないレオポルドが具体的な支援の確約を求める立場にはない。まずは彼がサーザンエンドに到着して、辺境伯位を狙える位置にいってからの話である。レイクフューラー辺境伯との約束と同じである。何にしても実績のない相手など誰も完全には信用してくれないのだ。

「さて、どうなることやら」

 クロヴェンティ司教の館から退出したレオポルドは帽子を深く被りながら呟いた。

『聖界諸侯』

 神聖帝国及び西方大陸の各所に存在する大司教領や司教領、大修道院領、修道院領、教会騎士団領といった封建領土を支配する聖職者の諸侯を指す。

 世俗諸侯と同じように独立した行政府と軍隊、徴税権、裁判権を有し、ほぼ同じように領地を統治している。その領地は教区と一致する場合が多い。

 ただし、全ての大司教・司教が領地を有している場合ではなく、聖界諸侯と呼ばれるのは、あくまで支配領地を有する聖職者に限られる。

 教会の頭である総大司教も独自の領地を有しているが、総大司教は皇帝と同格とされる為、聖界諸侯とは呼ばれない。

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