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神之樹  作者: Uyu
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第二話ー荒廃都市ー

 翌朝、私達が野営に使っていた廃墟が大きく揺れた。

「何!?」

 目を覚まして外に出ると豚型の異形、豚人(オーク)達が暴れていた。

 まったく、こんな強烈な目覚ましセットした覚えないんだけど。

 なんでこの建物をピンポイントで引き当てるかな。

 異形に見つからないようにわざわざ三階以上ある建物探したのに。

 結局こうなるのか。

「分散させて一匹ずつ仕留めるよ。天鬼は左、右のは私が引き受けるから瑠奈は残りの一匹を牽制、可能なら仕留めて」

 「「了解」」

 私は陽葵の指示通り左の豚人に切り掛かった。

 豚人は鬼妖ほどの戦闘力は無いけどその分肉が分厚くて防御力が高い。

 腹部は脂肪が多過ぎて攻撃しても大したダメージにはならないから狙うべきは首から上。

 でも豚人は鬼妖と同様に体が大きいから首を斬るならただ間合いの内に入るだけじゃ足りない。

 となればまずは足元を崩す。

 赫式単刀術――『彼岸花』

 刀から生じさせた斬撃で豚人の脚の肉を斬る。

 斬撃を飛ばす技だから威力は落ちるけど豚人に傷を与えるのには十分だね。

 豚人はいきなり脚を斬られて理解が追い付いてない様子。

 両脚を斬られてその場で膝から崩れ落ちて地面に手をついた。

 よし、この体勢なら首を飛ばせる。

 赫式単刀術――『緋扇』

 ちゃんと仕留めたのを確認してすぐに加勢しようと二人のもとへと戻ると既に討伐した後だった。

 陽葵の手には輝く薙刀が握られていたが豚人の残骸を一瞥するとその手から消えてしまった。

 瑠奈が相手していた豚人は腹部に大きな穴が開いていた。

「なんだ、せっかく加勢しようと思ったのに」

「豚人一匹くらいならどうってことないわよ」

「私だってちゃんと訓練してるしね」

 これは非常に頼もしい。

 全員無事だったことだし朝食の時間にしたいところだけど、その前に豚人の残骸を調べなくちゃね。

 未だ解明されてない部分の多いナーテルの生態系を調べるために討伐した異形の残骸を解体して記録を残すのも私達の任務の一部。

 これまでの調査で異形は残骸がそのままその場に残る個体と息が途絶えた瞬間に消えて無くなってしまう個体が確認されているが、流石に消えた異形は調査できないから残骸として残る個体でしか調べることができない。

「うーん、やっぱり基本的な構造は普通の動物とあまり変わらないね」

 内臓から骨の構成、筋肉の付き方までとても神樹から生まれたものだとは思えない。

 二足歩行の異形に至ってはほとんど人間と構造が変わらないものになっていた。

「さて、記録はこのくらいにしてご飯にしましょうか」

 調査中のご飯は基本的に保存が効くものが中心になっていて美味しさよりもエネルギーになるようなものが多い。

 だから休みの日は美味しいものを食べるのが楽しみなんだよね。

「それじゃあ調査始めますかー」

 今日は最終調査日。

 いつも通り街の惨状や不審な点がないかの調査と街にいる異形の生態調査を並行して執り行う。

 ここで得た情報を元に神樹について研究する。

 と言っても最近は新しく手掛かりになりそうなこともなくなってきてるんだよね。

 人に使われなくなって劣化した建物。

 人工物は異形によって破壊され原型を留めていないものすらある。

 配管はむき出しになって道に飛び出し、植物による侵食も進み都市が徐々に緑に包まれていく。

「今日で外郭区域の調査は終わりなんだよね」

「そう、次からは中央区域の調査になるでしょうね」

 私達はこれまでナーテルの外郭区域を調査してきたけど、今日でそれも終わる。

 残るは神樹から最も近くに位置する中央区域の調査のみ。

「というか、なんで今までは外郭区域の調査しかなかったの?」

 これまでの調査で私達が中央区域に足を踏み入れたことはただの一度もなかった。

 それは他の部隊も同様でここ数年間の調査はずっと外郭区域が対象になっていた。

「外郭区域以上に謎が多過ぎるから本部も警戒してるのよ。調査できるアジャスタの数も限られてるし、仕方ないでしょ」

『二人共、戦闘準備。十一時の方向に鬼妖が五体、こっちに向かってきてる。多分こっちに気付いてるね』

 廃墟伝いに索敵していた瑠奈から『念話』で報告が入った。

「鬼妖五体か、真正面から戦うのは流石に分が悪いわね」

 鬼妖一体仕留めるのに私達は二人がかりで対処することが多い。

 そんな鬼妖が五体、数だけ見れば圧倒的に不利だけどそこまで焦りは感じていない。

 知能の低い異形との戦闘なら数の不利なんて戦略次第でいくらでもひっくり返せる。

 今回はこの前と違って二人もいるし。

 正直なんの不安要素も感じてない。

「瑠奈はその場で援護、状況を見て私達に指示を出して。一体ずつ引き剥がして仕留めるよ」

 「「了解」」

 そうしているうちに瑠奈が見つけた鬼妖達を目視で確認した。

 報告通り五体の鬼妖、うち一体は腕が刀の形に変形していた。

 異形は何の装備も持たないのが普通だけど、たまに神樹から発せられる魔素に当てられてああいった変異種が出てくる。

 体の一部が何らかの形に変化した戦闘特化型の異形、普通種よりも戦闘力が大幅に高くなる。

『瑠奈、鬼妖の中に変異種がいた。そいつの動きには特に目を光らせておいて』

「まずは周りの普通種の処理からかな。私はいつも通り前衛に出るから陽葵は援護よろしくね」

「わかったわ」

 こうして私達は各自臨戦体勢をとる。

 変異種が咆哮を上げ、それと共に取り巻き達が私達に向かってくる。

 すかさず瑠奈が炸裂弾で壊れかけの廃墟の柱を撃ち砕き崩落を起こす。

 この崩落によって生じた瓦礫の山のおかげで鬼妖が二手に分断された。

 土煙に巻かれて鬼妖が私達を見失った隙に『気配探知』で切り込む。

 『気配探知』では位置情報しかわからないからピンポイントで急所は狙えない。

 それならばと私は重心を落とした。

 赫式単刀術――『桜嵐』。

 下から振り上げられた炎の軌跡と共にその巨体が真っ二つに分断された。

 この攻撃で私の気配を感じ取ったのか近くにいたもう一体の鬼妖が私に向けて拳を振り上げた。

 かろうじてその攻撃を刀身で受けたが上空に飛ばされてしまう。

『天鬼、足場作るよ。『女神の加護』』

 陽葵が私の飛ばされた先に光のシールドを生成した。

 私は空中で身体を半回転させて体勢を整え、シールドを思い切り蹴った。

 重力を利用して鬼妖に向けて急降下しながら刀を構える。

 赫式単刀術――『花雫』

 下降の勢いから流れるように刀を添えて鬼妖の首を落とす。

「天鬼、伏せて! 『裁きの槍』」

 陽葵の声と共に私の背後にいた一体の胸部に光の槍が突き刺さり鬼妖はその場で吐血した。

 私は間髪入れずにその槍を押し込み日輪の炎で焼き殺した。

『天鬼、七時の方向に一体足止めしてある。長くは持たないからすぐに向かって』

『合点!』

 指示された方に向かうとそこには下半身が凍りついた鬼妖がいた。

 今は身動きが取れないみたいだけど、そのまま大人しくしているはずもなく鬼妖は下半身の氷を砕こうとしていた。

 赫式単刀術――『緋扇』。

 動きを封じていてくれたおかげで楽に首を刎ねられた。

「さてと、あとは変異種(あいつ)だけか」

「最後まで油断しないようにね」

 いい感じに体温も上がってきたし、一気に堕とす。

 果敢に攻め込むが流石変異種と言ったところか、中々間合いの内側に入れず致命傷を与えられない。

 その巨体に見合わず動きが素早いのに加えて普通種にある無鉄砲さがなく知性が高い。

 相変わらず厄介だな。

「加勢するよ」

 陽葵が薙刀を持って前衛に上がってきた。

 二人がかりで変異種に切ってかかる。

 片方が変異種の攻撃を受け止め、その度スイッチして徐々にダメージを与える。

 加えて瑠奈が後方から氷結弾で援護射撃を行い動きの鈍化を図る。

 確実にダメージは蓄積されているはずだけど、決定打にはまだ足らない。

『二人とも、氷結弾の威力を上げる。次で決めて』

 瑠奈からの念話を聞いて私達は開けた場所へと変異種を誘き出し、瑠奈の射線を通した。

 大きな狙撃音と共に瑠奈の氷結弾を使った狙撃が着弾し変異種の動きが止まった。

 それと同時に私は後退してきた陽葵が振るう薙刀を足場に一気に変異種との間合いを詰めた。

 赫式単刀術――『枝垂れ桜』

 討伐完了、と思った矢先背後から気配を感じる。

 ――『裁きの槍』

 振り返るといつの間にか立ち上がっていた変異種の心臓部に光の槍が刺さっていた。

 どうやら仕留め切れてなかったみたいだね。

 陽葵の槍を受けて今度こそ変異種から命の息吹が潰えた。

「まったく、天鬼はいつも詰めが甘いんだから」

「ごめんごめん、助かったよ」

 手を抜いたつもりはないんだけど、ついうっかりね。

 しっかり者が仲間にいると気が緩んじゃうのかな。

『周辺に敵影なし、殲滅完了だよ』

『ありがとう瑠奈。こっちに戻ってきて、そろそろ本部に戻りましょう』

「一通り調査事項は片付けたし、残った業務は長官への報告だけね」

 長官への報告か。

 私は若干の不安を覚えつつ本部への帰路についた。


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