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行くべきではなかった旅

彼は膝まで肉と骨に沈み込み、背後からは誰かの重い呼吸が響いていた――。

「あの時、一緒に行かなければ…すべては違っていたのかもしれない。」


第1章 ― 本来行くはずのなかった遠足


バスは低く唸りながら、灰色の郊外道路をのろのろと進んでいた。窓の外には同じような木々とまばらな家々が流れていく。車内は、まるで鉄の箱にアリの巣ごと閉じ込めたかのように騒がしかった。


「おい、触るなって!」

後ろの席から怒った声が飛ぶ。

「先にやったのお前だろ!」

続いて笑い声が弾けた。


歴史教師の田中先生は疲れた様子で額を押さえ、振り向いた。


「お前たち、少し静かにしろ! まだ目的地にも着いてないんだぞ。まるで…悪魔みたいだ。」


男子の誰かが吹き出した。


「何みたいだって?」


「忘れろ。」先生は手をひらひらと振った。「つい癖で言っただけだ…」


ユンは窓側に座り、黙ったままだった。いつものことだ。


イヤホンからは音楽も流れていない。ただ、余計な会話を避けるために突っ込んでいるだけ。窓の外で流れる森を眺めながら、そもそも来たくなかったと思っていた。


「遠足でクラスの絆を深めよう」、と校長は言った。

「新鮮な空気、自然、チームワーク」、と教師たちは繰り返した。


だがユンにとってそれはただ一つの意味しかなかった。

──自分の名前すらまともに覚えていない連中と、一週間も一緒に過ごすということ。


「また音楽聞いてるふりして、何も流してないんでしょ。」


隣から小さな声がした。


少しだけ顔を向ける。


アヤが、膝を抱えた姿勢で座っていた。髪はひとつに束ねられ、明るい色のいくつかの毛束が顔にかかっている。まるでユンが何年間も築いてきた壁なんて最初から存在しないような、柔らかな微笑みだった。


「確認でもしてるのか。」ユンは乾いた声で言った。


アヤは遠慮もなく手を伸ばし、彼のイヤホンを片方引き抜いた。

沈黙。音楽は流れていない。


「ほらね。」彼女はうなずいた。「やっぱり偽物。」


ユンは視線を窓へ戻した。


「ただ…静かにしてたかっただけだ。」


「違うでしょ。私のおしゃべりを聞きたいだけ。」

アヤはいたずらっぽく目を細めた。

「私は騒音じゃなくて、BGMだから。」


ユンは小さく頭を振った。返す言葉はなかった。

というより、心のどこかで――彼女の声が続いてほしいと思っていた。


彼は彼女が好きだった。

初めて会った日からでも、運命の瞬間からでもない。ただ、少しずつ、気づかれないほどゆっくりと。鉄を蝕む錆のように。

何気ない「おはよう」。ふとした笑顔。みんなが避けるように彼を遠ざけても、アヤだけはいつも隣に座った。


もちろん、それを誰にも言ったことはない。自分自身にも。


「数学のテストじゃなくて嬉しいでしょ?」

アヤは首をかしげた。

「森に山、焚き火。ロマンチックじゃん?」


「ダニ、蚊、茂みの裏のトイレ。」

ユンは淡々と言い返した。

「それとクラスメイト。」


「説得力あるね、それもう地獄じゃん。」

アヤは笑い出した。


ユンはほんのわずかに身をこわばらせた。

彼女はまだ知らない。どれほど正しいかを。


バスは大通りを外れ、細い道へと入った。森は濃くなり、枝々が道路の上へ覆いかぶさるように伸びている。雲に隠れた太陽――まるで光が弱められたようだった。


「もうすぐ着くぞ。」

運転手がマイクで言った。

「あと十分ほどで基地に到着だ。」


理由もないのに、ユンは胸の奥に小さな不安を覚えた。

試験の直前のような、頭は理解していなくても身体だけが知っているあの感覚。


──普通じゃないことが起きてほしい。

ふと、そんな考えがよぎった。


だが、ここまでとは思っていなかった。


世界がそれを本気で受け取るとは、夢にも思わずに。


ここまで読んでくれてありがとうございます!

次の章ではついに◯◯が登場します。

これからもよろしくお願いします!

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