アーヴィンの過去(2)
「子供の頃のアーヴィン様は、とても辛くて寂しかったんですね。本当はお母様に愛されたかったし、お父様にも素直になってお母様に優しく愛して欲しかったんでしょ?」
アーヴィンは少し恥ずかしくなり目を逸らす。
「……頭を撫でられるのは初めてだ。」
「嫌…でした…?私はアーヴィン様に頭を撫でられるの大好きですけど…」
「そうだな…悪くないな。」
「ふふっ…不器用な愛し方が似てるかもしれませんがアーヴィン様のお父様はお父様。アーヴィン様はアーヴィン様です。私はアーヴィン様に沢山救われましたし、アーヴィン様が困っていたら今度は私が助けたいです。」
「セシリア…君は本当に優しいな…俺と出会ってくれてありがとう。本当に大好きだ。」
「私も…大好きです!」
「だが…ソクラテスとは2人にならないで欲しい。ソクラテスだけじゃなく他の男性でもそうだ。」
「大丈夫です!私はアーヴィン様にしか目に入ってませんから。不安になるのなら私は何度でも言いますね。」
「ありがとう。俺とセシリアが不安にならないように女性とは近い距離でいないようにしよう。」
「あ、ありがとうございます。…でもアーヴィン様は立場上そうもいかない時もあると思います。その…ミサにも嫉妬しませんから!」
(今考えたら私なんであんなに不安になってしまったのか…恥ずかしい…)
「ミサとは幼い頃からの知り合いなんだ。ソクラテスもそうだ。彼等の家が没落しかけた所を父が支援をしたのがきっかけだった。それ以来この家を守るようにと彼らは教育されてきた。表向きはメイドや執務補佐をやってきているが本来の役目はヴェリエール家を狙う者を殺すよう、暗殺者や情報屋として雇われている。」
「あ、暗殺者…2人がですか?」
「そうだ。彼らが暗殺者だと知っている人間は殆どいないが…。父が病気で亡くなってからこの家を狙う人達が増えてきていた。」
「そうだったんですね…。」
「怖いか…?」
「い、いえ!怖いなんて…お二人はとても優しい方達で、なんというか……お2人共なんでも出来てカッコいいです!」
アーヴィンはポカンとした表情でセシリアを見た後に声に出して笑い出した。
「そんな事を言われると思わなかったよ。2人共嫌われるだろうと思ってセシリアにはひた隠しにしようとしていたのだが…」
「嫌うだなんて!!こんな私にも優しくしてもらっているのに…人はそれぞれ色んな思いを抱えてますし…絶対にありえないです!」
「ありがとう。本人達にも言ってあげてくれ。」
「その前に!アーヴィン様はソクラテスと仲直りしに行きましょう!」
「え?あ、ああそうだな。」
セシリアはアーヴィンの手を取り引っ張りながら部屋を出た。




