ヴェリエール侯爵(1)
ーーーーガタガタと揺れる馬車の中ーーーー
「ん……」
目が覚めるセシリア。
「ここは…痛…っ!」
身体中に痛みが伴い、手を動かした拍子に何かとぶつかった。
「救急箱…?」
(誰が救急箱を用意してくれたのかな…ありがたく使わせて貰おう。…ここは馬車の中?という事は、私はやっぱりお義姉さまの代わりに嫁ぐことなってしまったのね…偽ってヴェリエール家の方々にバレてしまったらきっと生きて帰る事は出来ないかもしれない…その前に逃げる…?いや、それも無理な話よね)
セシリアはハァとため息を吐き、怪我した所を消毒していた。
◇
◇
◇
ガタンッと馬車が止まった。
「もう着いたの…?」
あれから2日程でヴェリエール侯爵家に着いていた。
自然が沢山あり、とても穏やかな場所に大きな家。
ディミトリア伯爵家とは比べ物にならないくらい大きい。
馬車から出ると侍従が1人だけ外で待っていた。
「お待ちしておりました。ファネット・ディミトリア様。私はこの侯爵家の侍従、ソクラテスと申します。ご案内致しますので中へどうぞ。」
(そうだった…私はお義姉様として来たのだから名前もお義姉様の名前で呼ばれるんだ。)
「は、はい。ありがとうございます。」
ソクラテスはニコリともせず無表情で淡々と話す。
その表情を見て何となく察するセシリア。
(ここでも私の存在は歓迎されないのね…)
「…荷物はそれだけですか?」
「え?」
馬車の中を覗いているソクラテスにつられセシリアも馬車の中を見る。
救急箱が1つ。
(そうだ…気を失ってる間に馬車に乗せられたから何も持って来ていないんだった)
「あ、あのスミマセン!急だったものですから後から荷物が送られてくると思います。今はこれだけです…。」
「…そうですか。ではそちらの荷物は私が持ちます。」
ソクラテスは血の跡がついてある救急箱を少し見つめた。
「………。では屋敷をご案内します。」
「は、はい!」
セシリアはソクラテスの後ろをついていった。
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