初めての晩餐(1)
「失礼致します。旦那様、奥様をお連れしました。」
「ああ、席に座ってくれ。」
(うわ…なんか緊張してきた…)
私は緊張で少し手が震えてしまう。
「奥様、大丈夫です。何かあったら私をお呼びください。」
小声でミサはセシリアに伝えた。
セシリアはコクンと頷きアーヴィンに近づく。
「お呼び頂きありがとうございます。」
「…挨拶はいい。」
相変わらずアーヴィンは冷酷な態度。
(うっ…何だか気まずい。なんで私呼ばれたんだろう…。)
椅子に座り目の前に豪華な食事を眺める。主に肉料理が多くセシリアにとってその食事もこの空気も全てが重く感じる。
(消化の良さそうなものがあんまりない…どうしよう。)
「気にせずに好きなものを食べろ。」
「あ、ありがとうございます。旦那様。」
セシリアが野菜ばかり食べているとその光景を見たアーヴィンは肉料理を渡す。
「ファネット嬢、貴方は痩せすぎている。もっと肉料理を食べなければ。」
「あ…はい。お気遣いありがとうございます。」
(うわぁ……胃痛にならないようにだけ願うしかない!)
セシリアは頑張って肉料理を頬張った。
食べている様子を凝視しているアーヴィン。
「旦那様どうしましたか…?もしかして…私の顔に何かついてますか?」
「いや、食べている姿が…その、なんというか…」
「??」
「奥様が小動物に見えたんでしょうね。」
「そうだろうな。」
壁側で待機していたソクラテスとミサはコソコソと小声で話す。
ゴホンと咳払いをするアーヴィン。
「いや、なんでもない。料理はどうだ、美味しいか?」
「あ、はい。美味しいです。久しぶりの食事ですし…パンも柔らかくて温かいです。」
「………。」
部屋の中が静まり返ったような気がした。
「あれ…?私何か失礼な事申し上げましたか…?」
「久しぶりの食事…?」
「はい。4日間程食べていなかったので。」
アーヴィンとソクラテスはビックリした表情でセシリアを見た。
アーヴィンはガタンと椅子から立ち上がりセシリアを見る。
「あ、あの…ごめんなさ…」
怒られていると思ったセシリアは顔が真っ青になり叩かれると思い怯えながら咄嗟に自分の手で体を守った。
「………。」
その体勢を見てアーヴィンもソクラテスも目の前にいる女の子が毎日執拗に叩かれている事を察した。
アーヴィンはセシリアの所へと近寄る。
セシリアはアーヴィンが自分に近づく度に手の震えが大きくなる。
ギュッと目を瞑りながら身を守っていた。
「奥様…!」
ミサはセシリアの所へ行こうとするがソクラテスはミサを止める。
「大丈夫。旦那様に任せましょう。」
「…分かった。」
2人はアーヴィンとセシリアを見守っていた。




