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第一食 異世界(?)からの朝食、それだけ。(パート2)

 本日二つ目の投稿です。

 後書きに小さな裏話があります。


 それでは、第一食(パート2)です、どうぞ。

 ──ついに、本当に叶っちゃったの!?



「そういうことになりますね。ちなみに補足ですが、呼び出した……つまり『召喚』ですのであちらでは死んだ訳ではありませんよ」


 つまり厳密には『転生』ではなく『転移』と言うことらしいけれど、死なずに異世界に来れちゃうなんてむしろ最高なのでは?

 向こうの世界もすっごく楽しいし大切な人たちがいるから、死んでいないのであれば時々は帰してほしいものだけど。


「そして誠に勝ってなお願いではありますが、あなたにはこの集落を救っていただきたく思っております。と言うのも今この土地は魔獣による被害で農作物が荒らされ、家畜も襲われ、食料が非常に少なくなっていて、要するに美味しい物が全くと言って良いほど食べられないというせって……状況にあります」


 今、設定って言いかけなかった?


 シスターは淡々と話を進めながら、部屋の隅に置かれた小さなテーブルに向かって、ゆっくりと歩いていく。

 想像していた内容よりも規模感とか違う気もするが、大変な状態だと言うことには違いなさそうだ。


「それはもういろいろ大変な事情もあって、ここにはまともに食材を調理できる人もおらず、その所為でせっかく立ち上がった魔獣討伐隊の方々の士気も下がる一方でして」


 大事な話っぽいのに、今結構重要そうな所を端折はしょったでしょこの人……。


 そこで軽やに響かせたていた靴底と床が触れ合う音をめ、フッとしゃがんだと同時にボタンスイッチがバネで押し返されるような音が聞こえてきた。

 音楽が止まった……やっぱりラジカセだったんだ、まさかとは思っていたけどこの世界にもラジカセってあるんだ……。

 なぜだか異世界感が薄まってしまった。


「そ・こ・で、ですね、勝手ではありますが、なんか料理ができそうな人を異世界からチャチャッとお呼びして、美味おいしいもの作ってもらって、危機から救ってもらおうって魂胆こんたんなのですっ!」


 なのですっ! って、んなアホな。


「んなアホなっ」


 思わず関西弁っぽいの出ちゃったよ、何なのその予想の斜め下を突き抜けていく微妙なラインの召喚理由。

 しかも曖昧あいまいな上に、魂胆とか言っちゃってるし。

 いやでも、確かに危機であるのは間違いないだろう、それくらいは私にでも十二分に分かる。

 現実、元の世界でさえ魔獣はいなくても、イノシシやイタチ、ハクビシンにアライグマ……度々ニュースに取り上げられる深刻な問題だ。

 動物たちには悪いけど、ご飯好きな私としても到底許されてはならない事態。


 でもさ、召喚魔法で異世界に人を呼び出すのってもっとこう「勇者として魔獣とか魔王を倒しに行け~」とかそんな流れじゃないの?


 それにそもそも──。


「私、料理なんてほとんどしたことないから、料理スキルなんて全然無いと思うよ? 目玉焼きくらいなら作れるかもしれないけど。あ、カップ麺なら……ってあれは料理じゃないか」


 そう、何を隠そうこの私、食べるの大好きなのだが料理はからっきし。けれど、「できない」のではなく「手を出さない」が正しい表現になる。

 理由は単純明快で、自分で作るよりも、お母さんや料理上手な人が作った方が美味しくなるだろうからだ。

 私が作ってもし、失敗することなんてあれば食材は勿体無もったいないし、その食材で食べられたであろう美味しいご飯のことを考えると、とても悲しくなってしまう。

 だから料理スキルなんてあるはずがない。

 それこそ漫画やアニメの勇者みたいに、召喚時にすっごいユニークスキルとか与えられていない限り。

 何がどうなって私を召喚するに至ったのだろう……。


「………………ぇあ?」


 マリヤさんが変な声を出すと同時に、教会の中だけ時が止まったかのように静かになった。それまでは少しだけ聞こえていた虫たちの声が鮮明に耳へと届くほどに。


「マリヤ、さん?」


 そーっと様子をのぞき込むと、固まったまま動かなくなってしまった顔には、滝のように汗を流しているのが見えた。


「あの~……?」


 どんどんと顔色が悪くなっていく。例えるとすればアニメとかで目がグルグルになって焦っているあの感じ、あれがまさに今のこの人。

 実際に人間がこうなることってあるんだ。


「嘘でしょ、あれ……そんなことある?」


 発言と表情から察するに、良からぬ問題が発生しているみたいだ。

 見ているだけなのに、私の中にまで不安が軍勢を成して募り始めるのを感じ、生唾を飲み込んだ。


「大丈夫? すっごく顔色悪いよ?」


 しかし、返答はない。

 私の声が聞こえてないのか、故意に聞いてないのか、どちらにせよ無視の方向らしい。


 ふと、何かを思い出したように胸元にぶら下げていた十字架を握り込んだマリヤさんは、日本語にも似た雰囲気だが、耳馴染みのない言語を、ブツブツとその手の中に吹き込み始めた。


『──ホ~ジャラカホイッホイッ』


 ん? いや、よくよく聞くと日本語ではあるのかな? それになんだか妙に楽しくなってくるリズム感だ。

 ここに来て異世界感が再びにじみ出てきたかと思ったのに、またしても遠退いて薄れていってしまう。


「あの、マリヤさん? もしもーし聞こえて──」


「スキル『鑑定─ノゾキミ─』!」


 えっ?

 

 私の声を遮って出した大きな声と同時に、握り締めていた金色の十字架は、ぽわっとデスクライトほどの光を放ち始める。

 光が蓄えられた両手をかざすようにこちらへと向けてくるが、そのまま勢いを付けて迫ってきた。

「いでっ」

 急すぎる謎行動に反応できなかった私は、振り被った重い一撃で、両肩を叩かれることに。

 すると、どう言うわけだか私の額辺りからは、小さな光の玉が、さながたんでもを吐き出すかのようにペッと飛び出ていく。


「何今の…………ってもしなくてもそれって魔法!? すごいすごいどうなってるの!? でもスキル名とかいろいろダサくない?」

 

 何を言おうが、相変わらず返答が来る気配は一向にない。


「えーっと、飯沼灯梨いいぬまあかりさんね。──! ほんとだわ、なんてことなの。この子、料理スキルのレベルが一だわ。それにどうしよう、体力とスタミナ以外が平均より上なくらいで他は全体的にステータスが低いじゃない。最悪補助要員としてでもと思ったけど、これじゃあなんの役にも立たないかも……。それに何? この『特性:明るくて元気/食欲旺盛しょくよくおうせい』ってアホの子みたいなステータス」


 何もない空中を、本でも読むかのように目で追っていくマリヤさん。ゲームで例えるなら、ステータス画面らしきものを見ているのだろうか。

 しかし、今さらっと失礼なワードが聞こえたような気がする、気のせいかな、きっと気のせいだよね。

 残念なことに私に見えていないので、どうなっているのか非常に気になる。


()()なんて使い慣れてないし、詠唱とか間違ってた可能性は充分あり得るわね。そもそも呼ぶ人を誰にするとかなーんにも決めずに、てきとーにやってみたわけだし、当然と言えば当然か……。でもなんでこの子が反応したんだろう、本当にただのジェネリック少女って感じなのに」


「ねぇ何一人で呟いてるの? 気になるんだけど、ねぇえっ!」


「は~~~~、やっぱりもっと考えて使うべきだったわ。急いでたからって勢い任せでやることじゃなかったわね、失敗だわ。また叱られちゃうなぁ……」


 長いため息を混ぜながら呟き続けるマリヤさんは、肩を揺すっても頬を軽く伸ばしてみても全っ然反応がない。

 完全にいないものとして扱われてるよね、これ。

 時計のような時間を知らせてくれる道具が無いこの場所だと、一秒一秒がとても長く感じられて、待てば待つほどにワクワクと緊張と不安が入り乱れた心臓の鼓動が、耳にまで伝わってくる。


「う~~ん仕方ありませんが、決めました!!」


 マリヤさんは吹っ切れたように、一際大きな声を教会内に反響させて手を叩いた。


「決めたって……一体何を?」


 

 ぼそぼそと聞こえていた内容で、なんとなく嫌な予感がするけれど、一応聞くだけ聞いてみることにした。

 次に来る言葉が、想像しているものとは違う可能性があるんじゃないかと、期待値も少しばかり膨らんでいく。

 召還理由は微妙を極めていたけれど、せっかく来ることができた異世界、もっと楽しませてほしいのだ。


「ごめんなさいね。でもこんな平々凡々な人、こちらにいても特に意味が無いのでお帰りいただきます。ッスゥ────魔力解放リベレーション法陣発動アクティベート! 『還元転送─サヨウナラ─』アーンド『幻夢落胆─ナンダユメカ─』!!」


 しかし、私の期待というものは何ともはかないもので、嫌な予感のほうが的中する。

 再び十字架を両手で握り込み、なにやらかっこよさげなことを言ったかと思えば、今度はピシッと指を突き出して見せた。

 次の瞬間、私の足元には大きな魔方陣のようなものが展開され、私の身体は先ほど見たスキルの光とは比べ物にならない強い光を煌々(こうこう)と放ち、荒々しく風をまとい始める。

 

「何これ! ってあれ、動けない!! どうなってるの!?」

 視界が徐々に白くに染まっていく中、私の周りには透明の壁が形成されたようで、身動きが取れなくなってしまった。

 どうすることもできずに慌てふためいていると、突如として足の裏に感じていた床が、一尋ひとひろ分ほどの直径で丸くぽっかりと消え去り。




 私は落ちた。




「えええええぇ!? なんなのもおおおおおお!!」


 取りえず大声で叫んではみたものの、この状況ではもう抵抗することも到底できず、ただひたすらに落ちていく。

 最後に聞いた魔法の名前、『さようなら』と言うことは、案の定帰宅することになったらしい。

 さよなら異世界……夢を見させてくれてありがとう。


 なんて言うとでも!?


「ついに異世界に来れたと思ったのにいいいいぃぃ!! もう終わりなのおおおおおおおおおお!? もっとなんか無いの? 魔王倒すとかさああああああっ!!」


 ひたすら嘆くように叫んでいると、少しずつ暗転していく白い世界で、底のない穴に永遠と深く落ちていく中、遠くの方にひょっこりと顔を覗かせるマリヤさんが見えた。


「そんな物騒なものいないで~~す、もう来ないでくださいね~~~~っ!」


「ぃいや勝手に呼び出したのそっちじゃああああああああああああああああん────!!」

 

 何もない世界に私史上最大の大声を響かせた辺りで、ついに視界は暗闇へと移り変わり、夢の異世界転生は再び夢へと戻されて、現実に引き戻されていく。

 光も音も、自分の声さえも聞こえない空間へといざなわれていく中、意識は遠く無くなっていった。

 若干無能でめんどくさがりなマリヤさんは一旦ここで出番終了となり、次話(パート3)からは灯梨が生きる現実世界での物語が始まるようです。



    ◇


 本編で語られる予定はないでここでお話しますが、マリヤさんは向こうの世界でも特異な存在で、ヒトではありません。

 見た目には完全にヒトのそれですが、その正体は神の遣いの部下、まぁ要するに下っ端みたいなものですね。

「また叱られる」と呟いていたのも、そういうことです。

そして、『スキル』とは別に『魔法』が使えたりするのも、ヒトよりも上位の存在だからだったりします。

 この世界のスキルと魔法の違いについては、スキルが「使用者の周囲に小さな範囲で影響を及ぼす力」なのに対し、魔法は「使用者は直接世界の理に干渉して大きく影響を及ぼす奇跡の力」といったところです。


 ちなみに、今回は自分の役に集中していたので問題なかったのですが、あらすじのように時々メタ発言をしたり第四の壁を越えてくることがあるので、お気を付けください。


 あの子はどうも自己主張が激しいので、もしかすると本編でこの話をし始めるかもしれませんが、そのときは、この一連の後書きは削除させていただきます。

 迷惑なので、できれば話さないで欲しいところですが……。


「ねぇ、なんか私のことバカにしてません? 読者さんたちもさっきの聞きましたよね、無能とかひどくないですか?」


 あぁ……言った傍からめんどくさいことに……。

 はい、と言うことで今回はこれにて終了です! 本編含め、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 後書きが長ったらしいのは、今回だけだと思います。



  次話(パート3)は「本日、午後八時頃」の投稿を予定しておりますので、是非続きもお楽しみください!



「あっ──ちょっと、まだ私の話し終わってないんですけど!? って言うかめんどくさいってなんですかめんどくさいって、それを言うなら作者さんも充分めんどくさい人ですよね? 本編に関係ないことをだらだらと後書きで書き連ねて、しかもその内容が私の秘密の暴露だし。読者さんも見てないでなんか言ってくださ

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