シュガーボーロと青い顔
記憶をもったまま転生して年下だった人と出会うと、自分の方が年下って、どんな感覚なんでしょうね。
ある種の「ウラシマ効果」かなぁ。あ、でも自分じゃなくなってるか。
私と弟の希望とサウエルバッハ家からの了承もあり、事前に私達姉弟とサラ・サウエルバッハの顔合わせお茶会が行われる運びとなった。
「本日は、お招き下さってありがとうございます。サウエルバッハ伯爵家のサラです」
懐かしい……当たり前の話だが、妹は12年で大きく育っていた。昔の私そっくりだ。私が知っているサラは、今7歳の弟アルフレッドと同じだったのだから。無理もない話だけれども。
「サラ君。今日は来てくれてありがとう。娘と息子との相性も見ておきたくてね」
「サウエルバッハ嬢、久しぶりね。お姉様のことは残念だったわ、私の目の前で階段から転落して」
「姉が他界して10年以上が経ちます、もうその話はよろしくてよ。ロベリア様も10年前と変わらず、お美しいですわ」
そういえば、生きていたころ私と一緒に、サラはロベリアと会ったこともあるんだっけ。
「10年経過して、私が劣化したから、貴方の側室話が出たのだけどね」
ふんすっとロベリアの鼻息が荒い。切り替えのお早いことで、そもそも私を殺したのはアンタだしね。え?何?カワイイ妹にマウンティング開始?
「そう言うなよ。ロベリア、子供達と一緒にいてくれる母親が必要だって話だろう。さぁ、アルフレッドとマルグリット、自己紹介をしなさい」
父にそう言われて、私は自己紹介を行う。
「僕ね~。アルフレッド・フレスベルグ。よろしくね~♪」
私のせいで、弟は口調が軽いんだよなぁ。王族なのに。
「マルグリット・フレスベルグです。よろしくお願いします。それにしても、母の後ろにいる方にそっくりで、驚きました」
もちろん、そんな人はいない。
「マルグリットったら、またおかしなことを……」
あせる母。
「へぇ、ロベリア様の後ろに、私そっくりな人がいるんだ」
「うん、『レラ』って人、お話もできるよ。『サラ……立派になって』って言ってる」
「そう、姉さんが見えるのね。幽霊になってそこにいるのね」
「うん。色々話したそう」
もちろん幽霊なんていないけど。私自身が、元レラなだけだし。
母の顔色がみるみる青くなっている。
「マルグリット。言っていい冗談と、悪い冗談があるわよ」
「そうだね。普通の人は見えないものね。ママ、ごめんなさい。あっ、『サラは、シュガーボーロが好きだから、少し分けてあげて。昔、従兄弟に食べられてしまって大泣きしたんだから』って言ってる。いいかな?アルフレッド」
そうして、私は、弟の皿にあるシュガーボーロをサラに分けようとすると……
「やだい、僕んだい」
と抵抗された。大泣きの歴史を繰り返すところだった。
「だ、大丈夫よ。私も小さい頃は好物だったけれども、最近は食べていないもの」
「……そうなの。よかったね、アルフレッド」
「うんっ」
小さかった妹が、立派になって、お姉ちゃん感激っ!
と、いうのも束の間。
母の顔色はますます青くなり、サラも凄く戸惑っていた。
「か、顔合わせは終わったし、アルフレッドもシュガーボーロを食べ終えたみたいだから、貴方達は、部屋に戻っていなさい。セバスチャン!頼んだわよっ!」
「ははっ、御意」
弟と私は、母が呼んだ執事のセバスチャンに誘導され、お茶会を後にする。
「もっと、新しいお母さんと、お話したかったなぁ」
「少し待てば、たっぷりできますよ。お嬢様……」
「うん。楽しみ」
「それでは、魔法の先生が待っておられますので、お勉強を」
「は~い」
私と弟は、お茶会から席を外した。
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そうして、魔法の勉強がはじまる。
「お、王女様。そのような魔法は……ひぎゃ」
若手の王城魔導士が腰をひく。
「キャッホー♪びりびりソード」
面白半分で開発した私の魔法。手のひらを防御魔法で覆い、その上に雷魔法を乗せる。すると、剣に電撃が流れて相手がしびれて面白い。
すると、年配の王城魔導士が笑いながらやってきた。
「さすが、王女様ですな。掴み魔法ですか」
「お料理にも使えるんだよ♪挽き肉を掴んで炎魔法出すとハンバーグになるし、飲み物も氷魔法で冷やせるし」
「はっはっは。王城の料理長が聞くと、涙を流して悔しがりそうですね。王女様が自身で料理する必要もありますまい」
そうして、今日の魔法の勉強時間は終わったのだった。
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勉強を終えて弟と遊ぼうと王城内を歩いていると、お茶会を終え帰り道のサラがいた。
「サラ様?えーと、お義母様?と言った方た良いのかしら」
「あら、マルグリット様は気が早いのね。でも、もうすぐよ」
「そうなんだ。楽しみね」
「いいのかしら、本当の母親じゃなくてよ」
「どうせ、ママは忙しいもの。私や弟と接する時間が少ないの」
「そう。姉さんと同じで、私のカラダ目当ての結婚話と思っていたけど、他にも意味があそうね」
「……カラダ目当て?」
「小さい子は、知らなくていいわ。そうだ、今度会ったら、レラ姉さんの話をゆっくり教えてもらおうかしら」
「いいよ」
「それじゃぁ、またね。ごきげんよう」
「ごきげんよう」
妹は、立派に挨拶もできるようになって、王城を後にしていったのである。
お姉ちゃん、感激。
格闘技だと、打撃系の人と、投げ技・寝技・関節技・絞め技等の組技系の人で、どっちが強いか論がよくありますねぇ。
当事者感覚として、どっちも強かったですねぇ。さて、魔法使いはどうなんでしょ。
私の別作品「おっぱいホームズ」シリーズのワトソンさんは、ちゃきちゃきの打撃系だったりします。