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群青の嘘  作者: 伊田夏生
14/20

すれ違い

 次の日、キララは何もなかったように学校に行った。昨日の期待を信じて。その日は遅刻しないように、少し早めにリュウくんと家を出た。教室に入ると、ココミやフウカ、クラスメイト達に昨日、休んだ理由を聞かれた。その度に体調不良と伝えたが、皆んなに疑われた。だから、誤魔化すのが大変だった。

 そして放課後、先生と昨日の話し合いをした。先生は、


「昨日、矢沢くんから聞いた話を他の先生方にも話して教育委員会に相談したい。吉川さんや弟さんの将来を考えるとそうするべきだと思う。」


っと言った。キララは、


「それは嫌だよ。だってキララは四月から高校生だよ。未成年だけどアルバイトだって出来るようになる。世の中には中学校を卒業して進学をしないで働く人もいる。それにね、家族が今よりバラバラになったら、ママが悲しむ。」


っと言った。

 先生は、


「吉川さんの気持ちはわかった。でも、先生として今の状況を見過ごすことは出来ない。君は生徒だ。高校生になったって、成人したって、僕の大切な教え子ということは変わらない。先生をもっと頼ってよ。明後日の職員会議で話す。大丈夫、先生はずっと君達の味方だ。約束する。」


っと言った。先生は去年まで赤の他人だったキララを、心配してくれている。言葉に出来ないほど嬉しかった。

 しかし、先生と別れた、下校中のことだった。学校を出て、いつもの道を歩いていると、背後から車がキララを追い越した。その車は、キララの目の前に止まった。見たことのある車だった。

 運転席の窓から、


「キララ、乗りなさい。」


っと見たことのある顔が言った。パパだった。キララは、


「嫌だ。どういうつもり?」


っと聞いた。パパは、


「早くしなさい。」


っと言うと、車を降りて無理矢理に、キララを車に乗せた。キララは流石に、大人の力には敵わなかった。キララは、


「何の用?早く家に帰りたいんだけど。」


っと言うと、パパは車を動かし始めた。


 そして、


「お前、ここ三年で金をいくら使った?部下にお前の行動を調べさせた。父親の金で、随分好きなように過ごしているみたいだな。今日も部活帰りか?どうせ、卓球の才能もないんだから辞めろ。前も言っただろう。検定も受けるな。成績も学年二位の癖に。受ける価値がない。」


っと鼻につく声で言った。

 キララの部活での成績知らない癖に。勉強だって学年二位は、充分凄いだろう。腹が立った。だからキララは、


「高校生になったらアルバイトします。親として、最低限の生活費と学費以外は迷惑かけません。これで良いですか?」


っと言い返した。

 パパは、


「随分と生意気になったな。アルバイトをするなら、俺の目の届かない所でしなさい。吉川グループの娘だと言うことは、絶対に気付かれないように。まぁ、世間知らずのお前が、社会に通ずるとは思わないけど。」


っと、また嫌味を言った。

 キララは、これ以上、言い返すだけ無駄だと思い、無視をした。すると、パパは、


「図星か?やっぱり自覚があったのか、お前は厄介人だからな。早く高校を卒業して家を出て行ってくれ。龍生に余計なこと教えるなよ。お前みたいな馬鹿にならないように。後、学校の先生や友達に余計なこと言うなよ。首にするのも、退学にするのも簡単だからな。ほら、家に着いたぞ。降りなさい。」


っと言った。

 どうやら今日は、キララに嫌味を言うために学校から家まで送ったそうだ。しかし、降ろされた時は、余り腹が立たなかった。もう少し我慢すれば大丈夫。和田先生が、キララを助けてくれる。パパの脅しは効かない。

 だって、他の先生達も和田先生の話を聞くと、助けてくれる。キララは、そう信じているから。

 職員会議があった翌日、和田先生に呼び出された。この日は、部活があったため、昼休みに話をした。先生は予想外のことを言った。


「吉川さん、ごめん。他の先生方に話をしたのだけど、信じてもらえなかった。でも、次はどうにかするから、大丈夫。そうだ、証拠があれば良いんだ。吉川さん何か証拠持ってない?」


先生は焦っているようだった。パパが車の中で言ってた"クビ"と言う言葉が頭によぎった。パパはしょうもない権力で先生を追い込むかもしれない。だから、キララは、


「先生、それがね、パパ謝ってくれたんだ。今までのこと。パパ昨日、体調を崩して夜、家に居たんだけどね、キララとリュウくんで看病したら泣いて喜んでくれたの。それで家族、皆んなで旅行に行く約束したんだ。先生にも、お土産買ってあげるね。だから、もう大丈夫。先生、ありがとう。」


っと言った。先生は、


「本当に?良かった。でも、また何かあれば相談してね。」


っと嬉しそうに笑った。キララは、誰かに包丁で刺された位、心が痛かった。いつからだろう嘘でバリアを貼るようになったのは。更に心が痛くなった。先生に嘘を吐いたと言うことは、レンにも嘘を吐かないといけないということだから。完璧な嘘を吐くことで、大切な人達を守りたい。例え、キララが嫌われてしまっても…。

 その日の夜、キララはレンに、


「レン、もうキララの家に来ないで。もう、ご飯作らなくて良いから。」


っと伝えた。するとレンは、


「急にどうしたの?何かあった?」


っと聞いてきた。リュウくんも、


「キララちゃん、なんでそんなこというの?レンくんこないのぼくいやだ。」


っと言った。キララは、


「リュウくん、我儘言わないで。もう二年生になるんだから、レンに頼ってばかりでは駄目。レン、今までありがとう。」


っと伝えた。レンは、


「どういうこと?あっ、和田先生に何か言われたんでしょう?」


っと言った。キララは、


「違う。キララが一人で決めた。先生は関係ない。もう、キララに関わらないで。」


っと言った。リュウくんは、


「レンくんにいじわるしないで。キララちゃんのばか!だいっきらい!!」


っと泣きながら怒っていた。キララは、


「キララの言うことが聞けないなら、明日からパパの所に行きなさい!もうリュウくんの面倒は見れないわ。」


っと言った。リュウくんは、


「キララちゃんにいわれなくてもそうする!」


っと泣き崩れるように言った。レンはリュウくんを抱きしめながら、


「キララ、そんな言い方しなくても良いだろう!いい加減にしろ!リュウくんが可哀想だろう。」


っと怒鳴った。キララは、


「レンは他人なんだから、口出ししないでよ。気分悪いわ。これからは学校でも話しかけないで。あっ、リュウくんにも話しかけないでよね。」


っと言い返すと、


「わかった。キララがこんなに最低な奴だと思わなかった。」


っと言って、家を出て行った。

 それからリュウくんにとどめを刺すために、


「いつまで泣くつもり?うるさいんだけど。赤ちゃんと同じじゃん。明日の準備早くしなさい。」


っと、


"これで良い大丈夫"


そう、何度も自分に言い聞かせながら、言った。昼間に学校で感じた心の傷が、広がるようだった。泣きたいけど泣き方を忘れていた。リュウくんは、キララを一度睨んで、明日の学校の準備と出て行く準備を始めた。

 そして、リュウくんが寝た後、キララはパパに電話をした。でもパパは、一度や二度では電話に出てくれなかった。だから、何度もうざがられる位電話をした。すると、


「何だ?忙しいんだけど。」


っと苛立ちながらも電話に出てくれた。キララは、


「忙しい時にすみません。明日、リュウくんがパパの所に行くので暫く面倒見てください。キララはもうリュウくんとは関わらないので。キララの新しい家の手配をして下さい。」


っと告げると、パパは、


「つまり、僕ら家族と龍生と縁を切るっと言うことだな。よく言った。家を手配しよう。安心しろ、高校卒業までは、家賃も光熱費も学費も全て、僕が出す。」


っと明るい口調で言った。キララは、


「ありがとうございます。」


っと言い電話を切った。

 パパは、その数日後には、キララの新しい家を手配してくれた。なので一週間ほどで、リュウくんはパパの会社から、あの家に帰って来たようだ。どうやら、リュウくんのために専属の家政婦さんと料理人それに運転手を付けたそうだ。

 これで良い。キララが悪者を演じるのが一番良い。全ては、二人の幸せになってもらうためだ。曲がった愛情かも知れない。キララの自己満足かも知れない。

 でも、キララが知っているこの世界は、世間体が全てだ。だから、仕方ないんだ。


 これで良い、これで良い、、これで良い、、、大丈夫。もう、こうするしかない…。


 さぁ、最後の締めくくりにかかろう。

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