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群青の嘘  作者: 伊田夏生
10/20

運動会と遊園地

 その後、僕とキララはリュウくんのことをかなり心配して数日は様子を見て過ごしていた。しかし、リュウくんは何事もなかったようにいつも通り可愛い笑顔を見せてくれた。僕はその笑顔の奥に何かを隠しているようで怖かった。だからなるべく、


「リュウくん大好きだよ。」


っと伝えるようにした。するとリュウくんに、


「レンくんいままで、ぼくにすきっていってくれたことそんなにないじゃん。きもちわるい。ぼくのクラスの子にあったらはずかしいからやめて。」


っと言われた。僕は、


「でもキララも朝起きる時、リュウくんに大好きって言ってるんでしょう?」


っと聞いた。リュウくんは、


「キララちゃんはおうちにいるときにいってくれるんだよ。レンくんは、おそとでいうじゃん。だからいやなの。」


っと僕にはわからない基準を教えてくれた。僕が首を傾げていると突然、


「そうだ。きょう、だいじなおはなしがあるんだ。キララちゃんがかえったら、おはなしするね。」


っとリュウくんが言った。

 そこからキララが帰るまでの数時間、なんの話かいくら聞いても教えてくれなかった。お友達にいじめられたのかとか、学校の先生に嫌なやつがいるのか。いろんな僕の妄想が頭をよぎった。だからキララが帰るのが待ち遠しかった。

 そしてようやく玄関のドアが開いて、


「ただいま。ちょっとレン…。」


っと声がした。僕は慌てて玄関に向かった。いつもなら、リュウくんの方が先にお出迎えに行くのだが、今日は僕の方が早く玄関に来た。だからキララは唖然としていつもの文句を言わなかった。


「どうしたのレン。なんか怖い。あっ、リュウくんただいま。ご飯食べようね。」


っと言って僕のお出迎えはなかったことにされた。僕は、急いで全員分のご飯の盛り付けをして並べた。今日のメニューは唐揚げとご飯、サラダに味噌汁だ。匂いに連れられて二人とも自分の席に座った。


「いただきます。」


っと挨拶すると二人は勢いよく食べ始めた。

 そうだ。そんなことよりあのことを聞かないと。僕は、


「リュウくん、キララが帰って来たから大事な話聞かせてよ。」


っと言うとキララは、何のことか分からず、きょとんとしていた。リュウくんは、


「そうだった。キララちゃんにはプリントわたしたけどね。さらいしゅうの日よう日、うんどうかいがあるんだ。二人にきてほしい。じつは二人三きゃくがあるんだけどね。おや子で、出ないとだめなんだって。先生がいってた。」


っと話した。キララが、


「もちろん覚えてたよ。日曜日の運動会。キララそのために部活の大会来週にしたんだもん。二人三脚キララが出るよ。一位目指して頑張ろうね。」


っと言った。キララはきっと運動会のことを忘れていた。だって大会の日程は勝手に決められない。リュウくんは騙せるだろうけどキララはたまに嘘が下手になる。それは決まって焦っている時だ。僕も、


「楽しみにしてるよ。頑張って。」


っと言った。しかしリュウくんは浮かない顔をして、


「でも、おや子きょうぎだよ。キララちゃんとレンくんは、ぼくのママとパパではないから出られないよ。」


っと言った。なるほど、リュウくんは困っているから大事な話があるっと言ったのか。キララは、


「確かに、レンとキララはリュウくんのパパとママじゃない。でもね、親子競技は親子じゃないと駄目って決まりはないんだよ。リュウくんが知っている人だったら誰でも出られるんだよ。キララが貰ったプリントに親子競技のルールなんて書いてなかったもん。でも、リュウくんが本当はパパかママと出たいならパパとママにお願いしよう。」


っと言った。僕は全然プリントの内容を覚えていない癖に。っと心の中で突っ込んだ。リュウくんは、


「なら、キララちゃんがいい。ママとパパにはうんどうかい、きてほしくない。」


っと言った。そして僕はこれ以上踏み込んでリュウくんの両親の話をするのは違うと思ったので、


「じゃあ僕はいっぱい写真撮るね。」


っと話題を変えた。リュウくんは僕の言葉に嬉しそうに頷いた。キララは、


「レンの写真の腕前、不安だな。ブレないように上手に撮ってよ。」


っと冷やかした。僕は、


「どうしてそんなこと言うんだよ。任せて。」


っと言った。その日の帰り道、僕はふと初等部の運動会の日のことを思い出した。


 他の学校より少し遅い時期にある運動会。僕も初等部の頃はリュウくんのように運動会を楽しみにしていた。キララもウララちゃんが初等部にいた低学年の頃は楽しみにしてた。しかし、キララは高学年になると運動会が近づく度に毎年暗い顔をした。キララのお父さんとお母さんがウララちゃんが卒業すると急に来なくなったから。そして、ついには小学校最後の運動会の日キララは学校を休んだ。僕はその年の運動会の日、キララの家に会いに行った。彼女はすぐに部屋に入れてくれた。僕は休んだ理由を聞いた。すると彼女は、


「あのね、今日産まれて初めて死にたいって思ったの。今日、パパとお母さんに運動会に来て。仕事に行かないでって言った。そしたら初めてビンタされた。我儘言うなって。キララはいらない子だって。ただキララは幼稚園の頃の優しいパパに戻って欲しかっただけなのに。」


彼女は大声で泣いた。僕は彼女を抱きしめることしか出来なかった。その日からだ。キララが学校を無断で休んだり遅刻をするようになったのは。きっと彼女は気付いたんだと思う。もう、両親に期待しても仕方ないことに。だからこそリュウくんには運動会が嫌な思い出になって欲しくないとキララは思っている。もちろん僕も同じ気持ちだ。正直、リュウくんがやっぱりパパとママに来て欲しいと言ったらどうしようと思っていた。


 僕は日曜日に備えて僕の両親からカメラを借りた。それからプログラムやプリントを見てリュウくんが出る競技を確認した。前日の場所取りもしっかりやった。気分はリュウくんのお父さんだ。これで事前の準備は完璧だ。

 こうして迎えた運動会の日、リュウくんは楽しそうに競技に参加した。キララ譲りの運動神経でリレーでは一番だった。そしてキララとの二人三脚でも一位を取った。僕もその瞬間を二つとも見事に写真で残すことに成功した。きっとリュウくんの活躍のお陰だろう。リュウくんの青組は見事に優勝した。

 僕はキララの家に帰るとリュウくんを沢山褒めて抱きしめた。そしてご飯もリュウくんが好きなオムライスを作った。リュウくんは帰ってからずっと嬉しそうな顔をしていた。

 

 リュウくんの運動会が無事に終わった次の日。今日は月曜日だ。しかし、僕はキララが学校を休むことを予測した。何故なら、日曜日の運動会の振替休日は僕が小学生の頃から次の日の月曜日だったから。にも関わらず、リュウくんを僕の両親に預かって貰うよう頼んでいなかった。だから、僕は学校に行ったように見せかけてキララの家に向かった。その途中で携帯電話の電源を切った。僕の居場所がバレてしまったらキララと一緒にいたことや今日僕が考えた計画が台無しになってしまう。僕が学校をさぼるのは初めてのことだ。きっと帰ったら先生や両親に怒られるだろう。でもそれはどうでも良かった。学校に行くより今は輝星とリュウくんの側にいたかったから。二人を支えたいから。

 僕は玄関のチャイムを鳴らした。パジャマ姿のリュウくんが出た。


「あれ、レンくんどうしたの。きょう中学校も休みだってキララちゃんいってたよ。なのにどうしてせいふくをきているの。」


っと不思議そうに僕を見つめた。


「間違えちゃたんだ。それよりウララちゃん居ないよね。家入れてくれない?」


っとお願いすると、


「おねえちゃんいないよ。入っていいよ。キララちゃんまだねてるけど。」


っと言った。ウララちゃんは最近彼氏の家にずっと泊まっているため家には何日も帰っていないらしい。あらかじめキララから聞いている。でも、一様念のため確認した。僕はリビングに入ると制服から私服に着替えた。そうして僕はリュウくんに、


「リュウくん、キララを起こしてくれたら昨日のご褒美に遊園地に連れて行ってあげる。」


っと言うと、


「ほんとうに?やったー!まかせて!!」


っと目を輝かせた。そして無理矢理起こされた輝星は、


「レンが来てる訳ないでしょ。リュウくんもう少し寝かせてよ。」


っと寝ぼけながらリビングに来た。そして僕の顔を見て、


「何でいるの?」


っとお化けでも見たように、目を丸くして言った。僕は、


「ごめん、リュウくんと遊園地行く約束しちゃった。気分転換にキララも行こう。」


っと話すと、


「仕方ないな。何で学校の鞄?あっ、レンお母さんに内緒で来たでしょう。怒られても知らないからね。用意するからちょっと待ってよ。」


っと言うと思いの外嬉しそうだった。僕が、


「そうだ。どうせキララは寝てるかなと思ってコンビニで二人の分のおにぎり買ったから食べてね。」


っと差し出した。

 こうしてやっと二人の支度が終わった九時頃に家を出た。そして電車に乗るために僕は切符を買った。本当はICカードも持っていたが、使用履歴を調べられる機能が有るかも知れないと不安になったからだ。後にやはり調べられることを知ったので僕の判断は正しかった。そして常にリスクを背負いながら遊園地に向かった。その電車の中でリュウくんが、


「ぼく、ゆうえんちにいくのはじめてなんだ。だからすごくたのしみ。」


っと言った。キララは、


「久しぶりだからキララも楽しみ。」


っと言ってスマホを出して遊園地のホームページを開いた。リュウくんと、どの乗り物に乗るか話すためだ。

 皆んなで話しているとあっという間に遊園地まで辿り着いた。今日は平日ということもあってか遊園地は空いていた。僕はなるべく大人っぽい服を選んだが平日の昼間ということもありチケットを買う時は緊張した。しかし、なんとか疑われずに済んだ。そしてキララとリュウくんが乗りたがった、メリーゴーランドや空中ブランコ、ヒーローショーなどを観て楽しんだ。お昼ご飯の代わりに乗り物の待ち時間にポップコーンやチェロスを買って食べた。三人でお揃いのキーホルダーも買った。でも僕は今日遊園地に行ったことを両親に隠すためそのキーホルダーをこっそり輝星に預かって貰った。そして、買った物のレシートも全て捨てた。隠蔽するにはそのくらい僕が本気を出さないといけないと考えたからだ。

 最後に乗った観覧車でリュウくんが、


「きょうはとってもたのしかった。また三人でこようね。」


っと言った。すると、キララが、


「キララも楽しかった。でもリュウくん、ごめんね。リュウくんは本当は、パパとお母さんと皆んなで来たかったよね。キララの家族が仲良しじゃないのはキララのせいなの。」


っと言った。僕は、


「違う、キララのせいじゃない。全部悪いのはあの時の犯人だ。」


っとあの時から正しいと信じていることを言った。リュウくんは、


「なんのこと?ぼくが、しらないおはなしなの?なら、ききたい。かくしごとはぜったいしないでよ。おしえて。」


っと言った。キララは、


「本当はもっと早くリュウくんに話すべきだった。これから話すのは、リュウくんが産まれる前のお話。」


っとこの話をする覚悟を決めたようだ。

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