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レビュー執筆日:2020/10/4
●少ない曲数の中で、「アルバムとしての分かりやすいコンセプト」と「バラエティに富んだ楽曲群」という要素を合わせ持った「濃厚」な一作。
【収録曲】
1.Kaonashi
2.Irony
3.Digi Piece
4.Sunny day
5.Kienai
6.Lost
ベストアルバムを経てリリースされたandropのミニアルバム。曲数は6つと少なめですが、20分強という短い時間の中にダークな世界観が凝縮されています。これ以前の彼らの楽曲においてそういう雰囲気のものが無かったわけではありませんが、今作の収録曲においては、『Kaonashi』の「殺したいほど憎んだ」や『Kienai』の「手と手合わせて願ったところで何も救われない」のように、かなり直接的にネガティブな感情が綴られており、これ以前の彼らの作品を全てチェックしてきた私ですら、「一体どうしたんだ?」と驚くくらいでした。
また、今作にはこれまでの彼らのアルバムに数曲はあった「ハイテンポなギターロック」は一切収録されておらず、全体的に曲のテンポがやや遅めになったように感じられますが、そうであっても様々なタイプの楽曲を聴かせてくれます。『Kaonashi』ではバイオリンのようなギターの音色が不穏さを強調させていますし、『Digi Piece』は無機質で冷えた感じのサウンドが印象的。また、『Kienai』や『Lost』ではこれまでのメインソングライターであるボーカルの内澤崇仁以外のメンバーが作詞・作曲に関わっており(『Kienai』はギタリストの佐藤拓也が作曲、『Lost』はベーシストの前田恭介が作詞でドラマーの伊藤彬彦が作曲)、確かにその2曲、特に『Kienai』のメロディラインからはある種の「新鮮さ」を感じられました。
最初聞いた時は驚きましたが、「アルバムとしての分かりやすいコンセプト」と「バラエティに富んだ楽曲群」という二つの要素が見事に両立した「濃厚さ」を感じられる作品となっており、好みは分かれるでしょうが、個人的にはかなり良い出来に思えます。わずか6曲でこれほどの作品を作り上げられる彼らに対して、ある種の「恐ろしさ」すら感じられるアルバムでした。
評価:★★★★★