扇情的なタイトルしかない本屋【1000文字未満】
本屋に寄った。新書の棚から強烈な文字列が輝いている。
「死ね、○○政権」
「低学歴が人権のいらないゴミである理由」
「なぜ○○総理の体は臭そうなのか」
「ネットのクズ共の殺し方」
「見た目がカスな奴は首を吊れ」
いつものことだ。流石に侮辱罪だと思うのだが。しかし、最近はここまでしないと売れないようだ。実際「炎上商法を否定するのはハゲのニート」なる新書もあった。帯にはテレビのご意見番が腕を組んで睨んでいる。
文芸の棚へ向かう。単行本が整列している。背表紙の文章が、己が個性を撒き散らす。
「人を殺せるぐらい熱い金閣寺」
「素晴らしいかどうかよく分からん新世界」
「渚からパンジャンドラム走らせる」
「四季でも式でも指揮でもない史記」
「すごく賢い蒸気機関」
文学作品なんだろうか。ノウハウ本のようにも見える。活字離れが叫ばれる昨今、二文字三文字のタイトルでは弱いのだろう。
漫画を見てみる。最近はライトノベル原作のものが多いためか、開き直って漫画とラノベがセットで売られている。タイトルは凄まじい。
「主人公オレオレの最強無敵な超ヤバイ冒険をした後スローライフしていつの間にか内政と外交しているけど惑星支配して神様になる!〜ヒロイン達が最強のオレオレにメロメロですが、他の人を祝福するためにも彼女達は幸せにするし、恋は応援します。無敵なので痴話喧嘩もへっちゃら! いつか転生して地球にも行ってみたいなぁ〜」
帯には「原作を無視し、編集部が書いた文学史に残る傑作!」と銘打っている。いったい誰に向けた広告なのか。悪ノリしすぎて意味不明となっている。棚の上には企業広告。「編集部は悪くない」「作家を大事に」自虐なのか本音なのか。ここだけ異様な空気をまとっている。
結局、文庫本を一つ買って帰った。タイトルはこうだ。
「○○『かなりすごいねコレ』本がズバッ! 東大卒の小説家も絶賛の速読法!」
こういうタイトルしかないのだ。