幕間 世界の隙間での話 2
向こうに初めて渡ったときの、最初の感想は、「ファンタジーだ!」と興奮する。
そして何度か、向こうに行っているうちに「なんか違う」になり、最後は、「イメージしていたファンタジーと違う!」となりテンションがだだ下がる。
「以上『異文化交流あるある』でした~~。」
最近の人の行き来の状況などを報告する集まりで、成人もまだ迎えていない外見の少女が自分で拍手しながら、アンケート発表とばかりに放った言葉に、他の四人がうんうんと頷き、それをさらに別の四人の異形が不思議そうに眺めていた。
「もう、両方の世界の文明をすりあわせるの本当に大変だったのに、この感想。酷くない?
交流が始まったときに、どちらかが一方的に搾取されないようにって、歴代が頑張ったのに!」
「そうだな。でもまあ、落ち着け。」
ぷりぷりと、怒る少女の頭を赤い巻き毛の女性が軽くポンポンと叩きながら、落ち着かせようとする。
「『思っていたのと違う』で、ショックを受けて、浮かれるのが治まるならいいじゃないか。」
「変な期待されて、勝手に絶望されるのは迷惑ですしね。」
今日、そちらに遊びに行きますね。と付け加えた、ピュアリアの制服を着た銀髪の女性が、その言葉に同調する。その彼女の膝の上には、黒髪で病的に青白い肌をして、肩まである黒髪が右目を隠している十歳ぐらいの子供が横向に腰をかけていた。少年の左目の上には、瞳と同じ石の付いた髪飾りが付いている。よく見ると、その石には虹彩が現れていた。
「そそ。でも、今のところはそういった、期待外れからくる悪感情は殆ど無いみたいだけどさ。」
手渡されたお菓子を齧りながらその子供はそんな事を伝える。彼の左目の動きに合わせて額飾りの石の虹彩も動いている。
「そのあたりの意識改革は、本当に頑張りました。」
「ああそうだね。向こうの世界の人は、大切な隣人。それは、忘れてはいけない、思い出せってね。」
金と銀の髪の双子の兄と妹は、顔を見合わせて、ねー、と言います。
「まぁ、洗脳ではないし、創世の頃の記憶を呼び起こしただけであるから、何ら問題は無い。それより、我らの器は?」
ピュアリアの制服を着た金髪の男性とそのすぐ隣の黒髪の女性が、言葉を続ける。
黒髪の女性は、黒髪の少年と同じような額飾りを身に付けていた。最後の言葉は、少女に向けた言葉だ。
「只今、誠意作成中です! もう。四人分まとめてだし、それも調整しながらなんだから!時間かかるの!」
頬を膨らます勢いで、少女が返事をすると、
「そこだけ、時間進めようか?」
灰色の体毛をした、六臂の少年が声をかける。彼の額には三対の複眼がある。
彼の言葉に、少女は脱力する。
「ダメ。進めすぎたら、失敗になってまた最初からになるから。向こうでは、時間は戻せないし……。」
「むー……」
今度は灰色の少年が口を尖らせる。もう一人鈍色の長い髪をして、両足の踝にそれぞれ一対の翼を持つ少女がなだめた。
「まあまあ、また会えるのですからそんなに急かさなくても。」
彼女の言葉に、黒髪の女性が異議を唱える。
「そなた等はよい。そうしていつでもそばにつける故。我ら二人は、その者がここに居らねば近づく事すらできぬのだ。急かして何が悪い。一日千秋の思いです待っているのだぞ。」
妬み全開で、鈍色の少女に喰ってかかるが、それに対して誰も咎めない。子供ぽいとも言わなかった、
「だから、私がいなくても側について触れられるようにって、器を造ってるんじゃない。もうしばらく待って。できたら、こっちに呼ぶから。」
あーもうっ!と、堪らず少女は、大きな声でそう叫ぶのだった。
これで、『司』は九人そろいました。
光・闇、陽・陰、風・火・地・水。創破。
陰陽は、精神に関する属性です。希望と絶望/活性と停滞、みたいな感じです。
創破とは、創造と破壊、矛盾と理、世界の根元を司っているので、九人の中で最強です。
『創破の司』が居ることで、両極にある光・闇・陽・陰の属性が触れあえるようになるのです。