神話
全世界に伝わる共通の伝説があった。
昔、世界には創世を行った一柱の神と三種類の人間が居た。一つは、自然の中でたゆたうように溶け込み自然を育む精霊。一つは、理を理解しそれに沿って道具を作り文明を発展させる機構人。最後の一つは、意識で理に沿って現象を起こすことのできる法力人。
精霊人を守るのが機構人、育むのが法力人。そして、機構人と法力人は互いに強化することができた。
― 中略―
機構人の側に居れば、法力人の魔法は強化され、法力人が側に居れば機構人の作った機械はその効果を増した。それが、不幸の始まりだった。
切っ掛けは、何だったかわからない。機構人と法力人が互いに互いを道具扱いを始めた。威力の強い魔法を使い為に、機構人を奴隷にする法力人。機械から最大効率を出すために法力人を部品のように組み込む機構人。
そうして、最後には、世界を滅ぼす戦争へと発展した。
その戦争によって、自然を育む精霊達が大量に死んでいった。それを見つめていた創世の神は、その身を九つに割り、世界を三つに分けた。
一つは、精霊達の暮らす世界。法力人や機構人が決してたどり着けぬよう、世界全体に障壁を張り保護をした。
残り二つは、法力人と機構人を完全に分け隔てた。しかし、神は自分が作った命にわずかながらの希望と期待を持っていた。この二つの世界は、繋ぐことができるようにと一つのゲートを残し、九つに分けた己の身を封印とした。機構人の世界には一つ、法力人の元には四つ、精霊達の元には残りの四つ。
世界が安定したとき、ゲートは半分に分かれ、アーチの形をとって世界に現れた。
いつか、また平和に機構人と法力人が手を取り合い過ごせる世界が来るようにと、神の期待をその輝きに湛えながら。
―――― 『創世神話』より抜粋