コント#1.5『自動車教習所』
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「コント#2『自動車教習所』」
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とある自動車教習所。椅子に座ったツッコミが、名前を呼ばれるのを待っている。
ツッコミ「ああ、今日は高速教習か。不安だけど、本免を取るためにはがんばんなきゃな」
そこに赤い服を着たボケがやってくる。
ボケ「○○(ツッコミ)さんですか。本日高速教習を受け持ちます△△(ボケ)と申します」
ツッコミ「はい。よろしくお願いします」
ボケ「早速なんですけど、今までに乗ったことはありますか?」
ツッコミ「ないですよ。まだ仮免なんですから」
ボケ「いえ、高速じゃなくて、調子に」
ツッコミ「そっちもないですよ。ちゃんと地に足つけて生きてますから」
ボケ「今日の高速教習なんですけど、あいにく中央道が渋滞していまして。代わりにシミュレーターを使って、教習をしていただきます」
ツッコミ「そんなのがあるんですか」
ボケ「はい。なのでお時間まで、あと一〇時間ほどお待ちいただけますか」
ツッコミ「長すぎるでしょ。なんで今呼んだんですか」
教習室に入室する二人。中には座席とハンドルが備え付けられたシミュレータがあった。
ボケ「今日はどちらまで行かれますか?」
ツッコミ「え? 選べるんですか?」
ボケ「はい、永福、幡ヶ谷、末代の三つですけど」
ツッコミ「初台ですよね。僕、祟られるんですか。一番近い永福でお願いします」
ボケ「分かりました。住民の目が半開きの街、永福ですね。どうぞお座りください」
ツッコミ「そんなことはないと思いますけどね」
椅子に座るツッコミ。シートベルトを締め、発進の準備をする。ボケが「じゃあ、まずは高速に乗るところから始めましょうか」と言ったので、ゆっくりとアクセルを踏んで出発する。
ボケ「では、今回はECCレーンから高速に乗りましょうか」
ツッコミ「英語教室ですか」
習った通りにETCを通過するツッコミ。ボケはすかさず拍手をする。
ボケ「偉い! よっ、世界一! 天才!」
ツッコミ「そんなに褒めます?」
画面は合流車線に変わっていく。
ボケ「アクセルを思いっきり踏んで加速して! 嫌いな奴の顔を踏んづけるように!」
ツッコミ「いないですけど、はい!」
ボケ「右ウィンカー出して! 5回点滅!」
ツッコミ「してる時間ないですけど、はい!」
ボケ「前の白い車にスピード合わせましょう! あのボンボンが運転してそうな車!」
ツッコミ「違うと思いますけど、はい!」
ボケ「ほら、ハンドルを右に切って! 合! 流!」
ツッコミはなんとか合流に成功する。
ボケ「よっ、生まれながらの走り屋! サラブレッド! 千年に一人の逸材!」
ツッコミ「褒めすぎでかえって嬉しくないけど、ありがとうございます」
シミュレーションを続けるツッコミ。相変わらず白い車が前にいる。
ボケ「あのボンボンが運転してる車、当てつけみたいに遅いですね。ちょっと追い越しましょうか。車線変更の練習にもなりますし」
ツッコミ「分かりました」
ボケ「では、あのノロマ野郎を追い越しましょう。後ろから車が来ていないことを確認して、小馬鹿にするように右ウィンカーを出してください」
ツッコミ「口悪いですね」
言われた通りに右ウィンカーを出すツッコミ。白い車を追い越すと車線を変更して、走行車線に戻る。「スピードを緩めてください」とボケの指示に従う。
ツッコミ「それじゃ、ハザードランプを三回点滅させましょうか」
疑問に思いながらも、言う通りにするツッコミ。三回点滅したのを確認して、ハザードランプを消す。
ツッコミ「今のは何のサインですか?」
ボケ「『うんこ』です」
ツッコミ「いや、小学生ですか。めっちゃ失礼じゃないですか」
ボケ「『ちんこ』の方がよかったですか?」
ツッコミ「そういう問題じゃないでしょ。あおり倒してるじゃないですか」
ボケ「看板が見えてきましたよ。エイブルまであと500メートルです」
ツッコミ「永福ですよね。僕、部屋探してないですよ」
出口車線に入り、ツッコミはアクセルから足を離して、減速させる。
ボケ「じゃあ、UCCをさっきと同じ要領で通過してください」
ツッコミ「それ、コーヒーですよね」
ETCレーンを通過したツッコミは、そのまま少し道路を走らせる。少し道幅が広くなったところで、ボケに言われた通り、路肩に車を停める。
ボケ「以上で、高速教習を終わります。どうでしたか? シミュレーターを使っての教習でしたけど」
ツッコミ「気になるところはたくさんあったんですけど、でもシミュレーターとはいえ、高速を疑似体験できたので良かったです」
ボケ「○○さんの運転も安全で、的確でしたから自信持ってください」
ツッコミ「ありがとうございます。本免試験がんばります」
ツッコミがそう言うと、ボケは指笛を吹いて、胸のポケットからイエローカードを取り出した。
ツッコミ「え、何でですか? 僕、間違ったことしてないですよね」
ボケ「これは警告です。シミュレーターぐらいで、調子に乗っている○○さんへの」
ツッコミ「そっちがおだててきたんじゃないですか。もういいですよ」
どうもありがとうございました。