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豚に奏でる物語  作者: あいだしのぶ
第一章 ライチェ村で冒険!
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第七話 ときめけあたし(4/5)

 ライガードとの秘密特訓を終えてウゴウゴで休憩していると、ポークが帰ってきた。


「ライガード、勝負しようぜー」


 遊ぼうぜ、くらいの気軽な言い方だ。

 肩をぶんぶん回している。木こりの仕事で疲れているはずなのに、そんなこと微塵も感じさせない。

 店内で在庫整理をしているポニータが「家で待ってるわよ」と伝えると、回れ右して出ていった。

 騒がしい豚だ。


「それにしても、ココロまで冒険者にねぇ」

「別にポークの真似したわけじゃないから!」


 宝石ハンターになりたいという夢をポニータに伝えると、とても嬉しそうにしてくれた。

 声が弾んでいる。


「ココロなら絶対一流の冒険者になれるわ。前々から思ってたのよ。二人とも優秀なんだから、早く夢を見つけてくれないかなーって」

「優秀って、ポークも?」

「ええ。親の贔屓目もあるかもしれないけど、ポークだって同じ年齢の子どもの中ではとびきり大人びてるのよ。六歳なのにすらすら本を読んじゃうし、仕事熱心で努力の大切さも知ってるわ。村にはあなたたちしか子どもがいないから、当たり前に思えるけどね。二人とも村の外に出ればとっても優秀な子よ」

「ポークが本を読めるのは、あたしの教え方が良かったおかげだね」

「そうね、ありがとう。でもココロが賢く育ったのはお父さんお母さんのおかげなんだからね。感謝しなきゃいけないよ」

「うん。おばあちゃんもね!」


 話はどんどん盛り上がり、ポニータが子どもの頃どれだけやんちゃだったかを笑いながら話していると、外で訓練が始まった。

 ブヒィとかブヒャアとか、ポークが一方的にやられている声がする。

 気になって窓の外に目を向けた。


「見てみる?」


 ポニータの提案に乗って裏口から外に出た。

 ポークが放つ連続パンチを地面にどっかり座ったライガードが手のひらで受け流している。

 ポークの身長はライガードの腰にも満たないため仕方がないのだが、なんだか戯れているようにしか見えない。

 時折、ライガードが手刀で脇の下を突くと「ブヒィ」と鳴く。

「ブヒィ」「ブヒィ」「アヒィ」ときて体力が尽きたのか、ポークは膝に手をついて動かなくなった。


「うわー、ポーク弱い……」

「ライガードさんが相手だもん。大人がかかっていっても子ども扱いされるでしょうね。ポークが弱いわけじゃないわ」


 我が子をフォローするポニータ。

 言われてみればポークのパンチはココロの腕の骨にひびを入れたのだ。

 それを飛んできた蝿でも避けるかのように捌くライガードが異常なのだ。


 ココロはふと浮かんだ疑問を口にした。


「ポニーさんならライガードに勝てる?」


 ポニータは笑顔のまま表情を凍らせると、少し間を空けて答えた。


「条件によるわ。それこそ不意打ちならなんとかなるでしょうけど。私もライガードさんも、対魔物を想定して訓練しているから想像できないのよ。人間相手に強いのは、それこそ軍人でしょうね」

「でも、訓練自体は人間相手にやっていたんでしょ?」

「それは、まぁ、冒険者になる前はね。ちなみに私はドリアン第一魔学舎の出身よ。二人が受けるところとは別の魔学舎ね」

「ええっ! ポニーさん魔学舎出てたの?」

「ふふふ。強制入学みたいなもので、試験なんてなかったけどね」

「どうして」

「第一魔学舎は王族と特に身分の高い貴族のみが入学を許された、特別な学校なのよ。ドリアン王国最高の教育機関とされているけど、実際は貴族の社交場でしかないわ。弁は立つけど実力が伴わない人ばかり。彼は例外だったけどね」

「彼?」

「ポークのお父さんよ。桁違いにイケメンだったわ」


 思いがけずポニータとフォクスの馴れ初めを聞いてしまった。

 それにしても、貴族の出だとは聞いていたが、王子様と同じ学校に通えるほど高い位だとは知らなかった。

 日々こなす雑務の手勢の良さや、どんな客とも仲良くなれる社交術などは貴族として培った能力なのかもしれない。


「なるほど、あたしも学校に行ったらイケメンに会えるのか」

「行ってみてからのお楽しみね。第四は能力主義だから、外見や身分はともかく強い人はいるわ」

「ライガードみたいな?」

「あー……先生にならいるかもね」


 さすがにライガードは生徒のレベルではないらしい。

 となると、彼に一撃入れるのは相当に難しい気がしてきた。


「ねぇポニーさん。お手本みせて」

「お手本?」

「どうやってライガードに攻撃を当てるか知りたいの」


 ポニータがまた笑顔を凍りつかせた。

 ポニーさんにもできないのか、だとしたら努力したところであたしにできるはずもない、ライガードに騙された、ぼこぼこにしてやる、でも攻撃当たらないんだよなぁ、と思考が一回転したところで、ポニータが近くに積んである木の棒を手にとった。

 ココロが松明作りに使っているものである。


「わかった。でも参考になるかわからないわよ」


 そう言ってすたすたとライガードのところへ歩いていった。

 ライガードに棒を見せながら何かを話している。

 隣で話を聞いていたポークが驚いた顔でこちらを見るので、ココロも三人のところへ歩み寄った。


「姉ちゃんも魔学舎いくのか!」


 どうやらばれてしまったようだ。

 ポークは鼻息を荒くしている。


「ライガードがお金出してくれるって言うから。前から村を出たいって思ってたし。別にあんたについていくわけじゃ……こらっ、くっつくな」

「オレ嬉しいよ、すっげー嬉しい」


 人間離れした怪力で服を掴んでくるので、引き倒されそうになった。

 反撃でポークの脇の下を突くと「アヒィ」と手を放して倒れる。

 ライガードに突かれたせいでまだ痛いらしい。

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