8_赤シャイニーとオンラインバトル
時計の針が9時10分を指している。
紗希と奈々はゲームセンター『GAME☆ユートピア』にいた。
『GAME☆ユートピア』の開店は10時からで現在、お客はいない。大輔はUFOキャッチャーの景品を並べていた。
「昨日、家に帰ったらママがいてさー」
「奈々のとこも?私も帰ったらママがいてビックリした」
「仕事が忙しくてなかなか会えないもんね~」
「そうなんだよね」
紗希も奈々も苦笑いだ。紗希がいつものゲーム機に座ると、奈々は紗希の横に座った。
************************
『トレジャーバトル3』
○ 対戦バトル
○ ストーリーバトル
○ トレジャーバトル掲示板
○ 対戦成績
『あなたに対戦の申し込みが来ています 1件』チカッチカッ
************************
「ママが言うには、赤シャイニーと対決すれば、問題は解決するって」
奈々はパチリと片目をつぶる。
『赤シャイニー とバトルしますか? YES OR NO』
YES、決定
「赤シャイニーと対決すると何が起きるんだろうね…?」
紗希は不思議顔だ。
『フィールドを選んでください』
方向キーを動かして、決定
『キャラクターを選んでください』
シャイニー、決定
ゲームはヒュンといって『Now Loading』が表示された。
同じシャイニーのムービーが二回流れる。
『BATTLE START!!』
紗希が操作する白シャイニーと赤シャイニーは同時に走り出した。今回のフィールドも鉄パイプが多く入り組んだ工場跡地だ。いつも通りの展開にならないように紗希は動いた。
「この前セイラとバトルしたんだけど…よっと…」
「あぁ、変な攻撃してくる人…」
「そうそう!セイラって死角に逃げるのがうまかったんだよね~」
紗希は方向キーを駆使しカメラも120度回転した。そのまま相手がいるであろう場所に正確に進む。
「死角?」
「そう、攻撃が当たらないように逃げるのが上手いって言うか…?」
赤シャイニーが自分の近くに来ていることを読んで警戒している紗希だった。
「私もセイラのその動きを取り入れてみたいと思って…」
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
赤シャイニーの攻撃をよけるため、ダッシュを使って逃げる。その逃げ道を読まれてしまい、赤シャイニーは紗希が操作する白シャイニーの目の前に現れる。
撃たれる…と思ったが赤シャイニーは止まってしまった。驚きながらも紗希は攻撃する。
バンッ!
バタッ…
「…なにこれ?」
紗希が呆然とする中、画面は移動する。
「私の敵じゃないわね!」(白シャイニー)
「負けたわ、あなた強いわね」(赤シャイニー)
シャイニーが画面に向かってカツカツ歩いてくる。アップになると笑顔でウインクする。そのままシャイニーは賑やかな夜の町に姿を消す。
『 YOU WIN !! 』
文字がチカチカしている。
「えっ…あれっ?終わっちゃった??」
*************************************
YOU WIN !!
GAME・ユートピア(野日店) VS 赤シャイニー
DATE 2011年6月5日
TIME 5:01
*あなたの成績*
GAME・ユートピア(野日店)((NON TEAM)) 156勝0敗
*************************************
「奈々~状況についていけないんだけど…」
ゲームが終わってもチャットが盛り上がっている。
(No.18)新宿でGUNが現れたらしーぜ
(No.19)聞いた~。ロンゲの茶髪だって~
(No.20)歌舞伎町のホストらしい
(No.21)やっぱりGAME☆ユートピアでやってるわけじゃないのか
(No.22)たまたまなんじゃないの?
「紗希ちゃん、もう終わったの?」
聡史が紗希の所にやってくる。後ろに大輔もいる。
「赤シャイニーはどうだった?」
「よく分からないんだけど、目の前で止まっちゃって…」
紗希が大輔に説明をしていると奈々の携帯に母親の理恵からメールの着信がある。
ピロピロリ-ン
「ママからだ…」
「理恵さん何だって~?」
奈々に注目が集まる。
「作戦成功!『GAME・ユートピア(野日店)』のIDは、新宿のゲームセンターから発信するように設定を変えたからユートピアに来るGUNの追っかけは新宿に動くはず…」
おぉーと盛り上がる。
「理恵さん、すげー」
「これでまた指定席でゆっくりバトルできるかもね、紗希ちゃん」
「はい、良かったです~」
奈々はまだ携帯を見ていた。
「追伸――死角に動く動きは良かったが、まだまだ改善の余地がある…だって~」
「…赤シャイニーって理恵さんなの?」
「違うと思うよ、ママはパズルゲームしかしないから」
奈々は返信するためか両手で携帯を操作している。
「赤シャイニーが誰か分かんないけど、褒められたんじゃないか?」
大輔が驚いたように紗希に言う。紗希も嬉しそうだ。
「私、もっとオンラインバトルして強くなりたい」
「だな、打倒、赤シャイニーだぜ!」
盛り上がる高校生組みに聡史は時計をチラッと見た。
「そろそろ開店の時間だな」
聡史は入り口の方へ歩き出す。入り口の前のカーテンを開けるとGUNの追っかけなのか、お客が何人か開店を待っていた。紗希はゲーム機に刺さっているカギを横に回して大輔に渡す。
「もうちょっとお客さんが減ってからオンラインは再開するね」
「そうだな、結構な数の客が入ってきたしな」