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52_トレバト本選大会_決勝戦


ステージの舞台裏に待機場所があり『トラのマーチ』は全員で待機している。通路の反対側には対戦相手の『ドッグタグ』のメンバーが打ち合わせしている。


全員男性でイケメン揃いだ。

おそろいのシルバーチェーンをつけている。ドッグタグのチームグッズかもしれない。


ネックレスのようにつける人、ジーパンにチェーンとしてつける人、メンバーによってバラバラだがオシャレだと感じる。




「真一さん、3番手のライアさんですが…」


優斗はドッグタグの3番手には絶対に勝ってほしいとアドバイスを送っている。

作戦会議の日でも、こうすれば勝てると優斗は熱心に説明していた。


何か因縁でもあるのかな、と紗希は不思議に思ってその理由を小林に尋ねてみた。


「うーん…ライア君は優斗と同じ雑誌のモデルさんなんだ…だから阿部君とも仲いいよ」


返答になってない、と紗希は思った。


「宮永さんは覚えてないかな?八王寺の握手会に参加したとき3人の男性と握手しただろう?左から阿部君、優斗、ライア君って並びだったんだけど…」


「えっ…?そうだったんですね…全然気付かなかったです…」


「そうだよね…一瞬だったし分からなくて当然だと思うけど…ライア君って外見は派手に見えるだろう?だけど実際は性格良しセンス良し気遣い良し…ペラペラ…」


「ちょっと小林さん…紗希さんが困ってます」


ペラペラ話している小林の腕を優斗は掴む。


「あぁ、悪い…ライア君のこととなるとつい…」


「もう~これから対戦するのにその相手を褒めてどうするんですか」


「そうだな…よしっ、そろそろ円陣を組もうか?」


小林はメンバーを見る。


「俺達が目指すのは優勝です。あと一勝すればそれが叶う…優勝を…トラのマーチの優勝を見せて下さい!」


「っしゃぁ、やろうぜ!!」


「はいっ!!」


「必ず優勝しましょう!」


メンバーの心は一つになった。小林が掛け声をかける。


「トラのマーチ、行くぞッ!」


『ガオー!!』


気合十分だった。





大会の時間になると音楽が甲高く響いて照明が暗くなる。


『それでは決勝戦を始めます。出場者の皆様はステージにお越しください』



決勝戦――「ドックタグ」VS「トラのマーチ」


不破 虎牙 VS 広瀬 優斗

増田 栄吉 VS 宮永 紗希

鈴木 來亜 VS 倉梯 真一



司会進行のアナウンサーが、一人一人の名前を呼んでステージに上がる。最後にマネージャーが並んで全員と握手する。



優斗は「チャーリー」、紗希は「シャイニー」、真一は「フリオ」を選択する。


司会進行のアナウンサーの号令で対戦が始まる。


『 BATTLE START!! 』



小林はメンバー全員を見る。


決勝戦とは思えない、メンバー全員が実に楽しそうにプレーしている。


一番手の不破と優斗はドンパチ、ドンパチ、銃撃戦をしている。優斗らしくないと小林は思うがチームのリーダーなのだ。信頼して観ていることにした。


二番手の紗希は超積極的かつ超攻撃的なプレーで増田を翻弄している。増田は必死に食らいつくので、紗希は楽しそうだ。増田の戦略にはハマらないでくれよ、と願いつつ小林は信頼して観ていることにした。


三番手の真一とライアの対戦は、王道のプレーを繰り広げている。慎重かつ大胆、仕掛けるところは仕掛けて、守るところは守る、といった対戦だ。



初めに決着がついたのは紗希だ。

どうやったらそんなプレーができるんだ、小林は独り言を漏らす。

技ありショットで増田に勝利する。次いで優斗が勝利した。




紗希と優斗は対戦が終わり真一のゲーム画面を後ろから見ている。


(あいつらが勝って俺が負けるわけにはいかねーよな…!)


真一のテンションが一気に上がると同時に集中力が増した。


(そこだっ!)


バン!バン!バン!

バタッ…


『 YOU WIN !! 』


(っしゃぁー!!)


ゲーム画面がチカチカ光る。


「やりましたね、真一さん。絶対に勝てるって信じてました!」


優斗は非常に喜んでいる。真一はフッーと息を吐いた。熱戦だった。


「…俺だって負けてらんねーよ!」



ワァーーー!!パチパチパチパチ!!!


会場から嬉しい悲鳴、金切り声など様々な声があがる。


「優勝は『トラのマーチ』だ~~!!」


アナウンサーの声に、会場が一体となって一段と盛り上がる。


優斗、真一、紗希がハイタッチしている横で、小林はブルブルと震えていた。


「優勝…?トラのマーチが優勝…?本当に…優勝したのか…?俺が作ったチームが大会で優勝…?」


「小林さん…!!」


優斗が駆け寄って小林を抱きしめる。


「小林さん…優勝ですよ!」


「優斗…」


「…僕をチームに誘ってくれて…本当にありがとうございました」


小林は優勝しても無表情だ。その姿に紗希はなんだか笑えてきた。真一もプッと吹き出す。


「小林さん…優斗も…喜びは後で…まずは整列しないと…」


そうだな、と小林は気を取り直している。



対戦相手と握手してたら、すぐに表彰式に移ります、と運営スタッフに言われる。

舞台から降りずにその場にとどまった。


表彰式はすぐに始まった。


『3位は『青い淡水魚』の皆さんでした~』


パチパチパチパチ~~


司会進行がスムーズに仕切っている。


『続いて2位の表彰です。『ドッグタグ』です~~!!』


4人のメンバーが真ん中に来て表彰状を受け取る。


パチパチパチパチ~~


『それでは、第1位の発表です。初優勝の『トラのマーチ』~!!』


小林を先頭に舞台上の真ん中に移動する。


『表彰、あなた方『トラのマーチ』は、2008年度トレジャーバトル3本選大会において頭書の成績をおさめられましたので、その栄誉を讃えます』


偉い人から優斗は表彰状を受け取る。


「ありがとうございます」


ワァァァァァアアアア~

会場が拍手で包まれる。




『それでは優勝したトラのマーチの皆さんに一言感想を願います』


運営スタッフが一本のマイクを優斗に渡す。


『優勝した皆さんにとってトレジャーバトルとは何ですか?』


優斗は突然のことに少し動揺した。


「僕にとって…トレジャーバトルとは…」


優斗が正面を見ると父親の姿が目に入る。


「尊敬する人が作ったゲームであり、運命の出会い…でした…」


伊織はハンカチで涙をぬぐっている。


「なぁ~に、泣いてんのよ~」


加奈と理恵は笑っている。


「僕は色々な人に支えてもらっているな…と思って…」


「そうねぇ、優斗くんのほうが大人みたい…」


観客席では、加奈たちが笑っていた。



舞台上では真一がマイクを受け取る。真一は里奈をまっすぐに見つめる。


「俺にとってトレジャーバトルは、大切な人とのつながりであり、思い出であり、絆です…」


真一は幼い表情になる。まるで高校生の時の顔つきだなと感じながら里奈は拍手をおくる。


真一は隣に立つ小林にマイクを渡す。


「俺にとってのトレジャーバトルは情熱です」


小林は紗希にマイクを渡す。


「私にとってのトレジャーバトルは…」


紗希は思い出していた。


「たくさんの人との出会いを運んでくれた…――」


(初めてのオンラインバトル、トラのマーチの出会いや優斗さんのこと…)


「かけがえのないものです」


拍手が起こる。


『ありがとうございました~。トラのマーチのみなさんでした~』


紗希はマイクをスタッフに渡す。


『以上となります。本日はありがとうございました。参加者の皆様、大変お疲れさまでした』




観客席もガヤガヤと動き出す。

ひとまず、チームメンバーを一か所に集めると言って小林は行ってしまった。


舞台から降りた優斗、紗希、真一は待ち合わせ場所で待機する。


「優斗さん…私、この大会に参加できて本当に楽しかったです!!」


「僕も楽しかった」


優斗はこれから打ち上げがあると紗希に伝える。


「もし良ければ沖林さんと大輔君を呼んでください。人数が増えても問題ないと環さんから聞いてます」


打ち上げ会場の手配は環の役割だった。


「環さんって…戸矢崎環さんですか…?」


紗希は環に絡まれてから苦手意識があった。


「すでに戸矢崎さんが苦手なんだろう…?分かるぜ、その気持ち…俺も渉も苦手だから…」


紗希と真一が意気投合している。優斗は苦笑交じりだ。


「環さん…あれでも丸くなったんですよ。初期の頃はもっとすごかったです。一番の被害者は小林さんですけどね…」


優斗はあの頃を思い出して懐かしむ。


「あれで丸くなったって…どんだけだよ…?」


紗希も、うんうん、と激しく首をふる。


「それで今日の打ち上げの会場ってどこ…?またホテル…?」


「会場がホテル…?カラオケとかファミレスとかじゃなくてホテルなんですか…?」


紗希は開いた口が塞がらない。


「環さんのご両親が経営しているホテルがあって…そのゲストルームを好きに使っていいということなので…」


「戸矢崎環さんはお嬢様…なんですね…」




三人が話していると、トラのマーチのメンバーが続々と集まる。

そこに渉が奈々と大輔を連れて来た。


紗希は幼馴染のもとへ走る。


「奈々、大輔~!」


「紗希、優勝おめでとう!」


「頑張ったな、紗希!」


「ありがとう~~!!」


元気いっぱいだった。



――終わり――



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