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46_伊織の反撃と巻き込まれる幼馴染


聡史は理恵に呼ばれた住所でタバコを吸って待っていた。奈々に言われた通り、スーツに身を包んでいる。


「聡史、早かったのねー」


理恵は伊織と一緒の登場だ。


「なんだよ…急にどうしたんだ…?」


聡史は息を吐き出す。


「危なくなったら私達を守ってもらおうと思ってねー」


「僕より聡史の方がケンカは強かっただろう…?」


「ケンカ…って何十年前の話してんだよ。今はタダのおっさんだよ」


三人が話しているのは雑居ビルの前だ。


「とっとと終わらせるわよ、伊織」


「あぁ、そうだな…」


二人は歩いて行く。


「おい、おい、オレには説明なしか?」


聡史はタバコをポケット灰皿に入れてしまいこむ。


「ただ横にいてくれればいいわ。いざとなったら聡史を盾に逃げるから」


「理恵~。オレ、お前に何かしたか?」


理恵はニヤリと笑い聡史の後ろを歩く。

先頭は伊織だ。ためらいもなく雑居ビルに入って行きエレベータに乗り込む。


「聡史、急に呼び出して悪いな。すぐに終わらせるから」


「なんだかお前、怒ってねーか?」


「自分自身に怒っているのよね、伊織は…」


エレベータから出ると、部屋の前には何も書かれていないドアがある。

そのドアを迷いなく伊織は開けた。


「…なんだよ、お前らー?」


入ると男性数人がソファに座ったり携帯を操作していたりしている。汚い雑居ビルのわりに部屋の中は整えてある。


「お前達が詐欺グループなのは分かってる。素直に自首しろ…」


「はぁ~なに言ってんの?」


一番権力がありそうな太った男が伊織の前に立ちはだかる。


「不法侵入で自首すんのはお前等のほうだぜ…おい…」


鉄パイプを持った二人の男がニヤニヤしている。

状況が全く分からないが、ここは俺の出番か、と聡史は一歩前に出る。


「オレが相手になってやるよ」


「おっさん無理すんなよ」


若い男がゲラゲラ笑う。



ウ~、ウ~、ウ~


伊織が窓から外をのぞくとパトカーが到着したようだ。警察官がゾロゾロと車から出てくる。


伊織は聡史の肩に手を置いて隣に並ぶ。


「ねぇ、誰が金本さん…?」


伊織は四人を見る。


「俺だけど…」


金本はビクリとしながら答えた。


「そう…。君とは徹底的に戦うから覚悟しておいて」


伊織が言うと警察が入ってきた。


「高野京谷、以下四名を詐欺容疑及び恐喝・窃盗で逮捕する」


逮捕状を見せる警察に男たちは抵抗する意志をなくしたようだ。

金本も警察に連行されていく。


伊織はその姿を見て、張りつめていた緊張を解き放つ。


「ふぅー。すっきりしたよ、ありがとう理恵、聡史…」


伊織はいつもの顔に戻った。


「無事に事件は解決…ね?」


理恵も安心したようだ。聡史だけが不可解な顔をしていた。


「おい…話が全く見えてこないんだけど…」


「これから伊織の奢りで飲みに行くから…そのとき説明してあげるわよ」


理恵がちゃっかり伊織の奢りにしてしまった。

僕の奢りか、と思う伊織だが、せっかく三人が集まったのだから加奈も呼ぼうと提案する。


「そうね、加奈も呼んで、久しぶりに地元で飲みたいわ」


「オレ、静かに飲めて肴がうまい店知ってるぜ?」


聡史が飲み屋の提案をする。


「よしっ、そこに行きましょう」


店も決まり、行こうかと話していると、警察官に呼び止められる。


「すみません、まだ帰らないでください。詳しい話を署の方で聞かせてください」


三人は顔を見合わす。


「…悪いな」


「いや、いいよ…。パトカーなんて人生初だし…」


そうね、これも人生経験ね、と三人はパトカーに乗り込む。






警察署で事情聴取を受けた三人は、早々に飲み屋に移動する。

加奈が仕事を終わらせて到着した時には、ほぼ全員が出来上がっていた。


「加奈ーお疲れー」


「どうしたのよ、急に同窓会するってなに…?」


加奈は空いている席に座る。


「とりあえず乾杯するわよ」


加奈が空のグラスを持つと伊織がビールを注ぐ。


「僕の用件が片付いたお祝いなんだ」


「用件が片付いた…?仕事の話…?」


「加奈も意味分かんねーだろ、オレなんかずっとだぜ…?」


聡史がブツブツ言っているが理恵はグラスを持って乾杯の音頭をとった。


「今日は伊織の事件が無事に解決したということで…一件落着に乾杯!」


『かんぱ~い』


加奈と聡史だけ頭にクエスチョンマークが飛んでいた。


「適当に頼んで、伊織の話を聞こうぜ」


聡史は店員を呼んでいくつか注文した。


「それで、何があったのよ?」


「借金があるって優斗が言い出したのが、ことの発端なんだけど…」


「優斗君に借金?なんのこと?」


加奈は初耳である。


「僕にも分からなくて…それで理恵に協力してもらって調べたんだ」


理恵が頷いて話を続ける。


「上司に相談したら特別に口を利いてもらって、専門家の意見を聞くことができたの。あとはコネを使って会社の法務部と話したり顧問弁護士と会ったり…色々とね…」


人脈をフル活用し、理恵は詐欺グループを特定したという話だ。


「そんで、詐欺グループのアジトに乗り込んだってことか…?」


すげーな、とドン引きの聡史だ。


「はっ?聡史、乗り込んだの?ますます意味が分かんない…」


加奈は頭を押さえる。


「僕達三人で乗り込んで…穏やかに話し合いができればと思ってたんだけど…」


「まぁ、普通に考えて詐欺グループが話し合いなんて応じないわよね…?」


加奈は信じられないという顔だ。


「あんたたち…何やってんのよ…もう若くないのよ…?」


反省してます、警察署でもさんざん怒られました、と三人は口にする。

そんな中、注文していた料理が運ばれる。これ幸い、と理恵は話題を変えた。


「そもそも、優斗君が詐欺に遭ったのは伊織が家に帰らず仕事ばかりしてたせいでしょー」


「まぁ…そういうことになる…かな…?」


「優斗君が気の毒…」


「しかも借金を返すためにモデル活動してたらしいし、詐欺グループに支払った額なんてすごい大金だったのよ」


「おい、伊織~。お前なにやってんだよ、酔いがさめる…」


「だよね…僕も一緒に裁判所で裁かれるべきかも…」


伊織はひどく落ち込む。


「それよりも毎日家に帰ってあげるほうが優斗君は嬉しいんじゃないの…?」


「…そうだな…。優斗とも約束したしな」


「んー。でも…私も伊織のことをそんなに責められないかも…」


加奈は肩を落とす。


「私も仕事ばっかりで家に帰らないし、料理もしないからさ~」


理恵も続く。


「それなら私も夜遅く帰ることが多いし、料理に関してもデパ地下の惣菜と高級食材でごまかしてるし…」


「何だよ…。だったら俺もだよ…。自分がしたいことして家族に迷惑かけてる…」


「どうしたんだよ、急に反省会みたいになってるよ」


反省会へと発展した飲み会は夜遅くまで続いた。





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