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41_紗希の誕生日会②


買い物の途中、紗希の提案で部屋の飾りつけもしようということになった。


「良かったら大輔君や沖林さんも呼びますか?」


「いいんですか?」


「うん、僕も父さんに連絡しておきます」


お互い携帯電話を取り出してメールした。




優斗の住んでいる家は団地だった。


「さっそく飾りつけを始めます~」


紗希は腕をまくって飾り付けに入る。優斗のほうは料理担当になった。


紗希は折り紙でワッカを作りながらリビングに飾ってある写真を眺める。物が少ないリビングだが、写真がたくさん飾られている。


「トラのマーチの写真が多く飾ってあるんですね…というか…小林さんとのツーショットが多い…?」


「そうですね…小林さんとは長い付き合いなので…必然的に多いと思います」


優斗は鍋の用意をしているようだ。ザクザクと野菜を切っている音がする。

紗希は飾りつけをしながら気になった写真を手に取る。


「この写真…中央の金髪の人…どこかで見たことがあるような…?」


優斗は手を止めて写真を見る。


「あぁ、この金髪の人、雑誌モデルの先輩です。トラのマーチの初期メンバーで…僕のお兄さん的な存在です…」


チームを辞めた今でも仲がいい、と優斗は話す。


「トラのマーチって色々な人が在籍してたんですね」


「そうですね…。あぁ…その金髪の人…今は『ドッグタグ』のリーダーをしているんですよ」


「えぇッ…?ドッグタグのリーダー…?」


『ドッグタグ』とはトレバトの大会で上位入賞を果たす常連のチームだ。情報に疎い紗希でも知っているチームだった。


(そういえば…小林さんはトラのマーチを作る前、ドッグタグに所属していたって言ってたよね…何か関係があるのかな…?)


飾りつけの手が止まってしまう紗希だ。


「今度、トラのマーチの交流会に『ドッグタグ』のメンバーが遊びに来ます。多分、ハル兄も…来てくれるんじゃないかな…?」


ハル兄とは、金髪の人の名前らしい。


「もし来たら紗希さんに紹介しますね…。今は金髪じゃなくて黒髪ですけど…」


紗希はとても興味を惹かれた。


「あの…ドッグタグのリーダーなら…優斗さんみたいに強いんですか…?」


「うん…めちゃくちゃ強いよ…」


紗希はワクワクした。もう一度、写真を眺めて、元の場所に戻した。





紗希と優斗は話が尽きない。色々と話していると、家のチャイムが鳴る。

奈々と大輔が到着したようだ。


「こんにちは~広瀬先輩」


「お邪魔します」


「狭いところですが、どうぞ…」


優斗が対応する。


「これ、つまらないものですけど…」


奈々と大輔は持ってきたものを優斗に渡す。


「美味しそうだね、ありがとうございます」


優斗は受け取って冷蔵庫にしまう。紗希はリビングからひょっこり顔を出す。


「今ね、優斗さんがお鍋を作ってくれてるの」


「そっか、じゃあ、私は紗希と一緒に部屋の飾りつけする」


「オレは料理の方を手伝います」


奈々と大輔はテキパキと動く。


「こういうとき女の子が料理で男の子が部屋の飾り付けだよね~」


「確かに…」


「僕は小さい頃から料理してたから…」


「オレもです。親父もお袋も仕事ばっかりで…」


お互い大変だね、と優斗と大輔が話していると、優斗の携帯電話がなる。


「…父さん、もうすぐ駅に着くらしいです。僕、心配なので、駅まで迎えに行って来ます」


優斗はバタバタとコートを羽織る。


「あの…私も一緒にいいですか?」


紗希が立ち上がる。


「はい、一緒に行きましょうか?」


紗希と優斗は仲良く出て行った。






残された二人はしばし沈黙した。


「…広瀬さんっていい奴だよな」


大輔は優斗の代わりに包丁を持って豆腐を切る。


「なによ、改まってー」


「いや、小さい頃から一人でここに住んでて、親父さんもなかなか帰ってこない状況でさ、我慢してきたことってたくさんあると思うんだ」


「……」


「紗希が惚れるのも分かる気がするんだよ」


「大輔…」


大輔は手を止めて奈々を見る。その顔はどこかすがすがしい。


「だからさ、俺は紗希のこと応援していきたいって思う」


「…うん、いいんじゃない?」


奈々は視線を外す。


「サンキュー」


そう言ってまた大輔は料理に戻った。そのまま調子よく話し始める。


「ちょっとだけ…広瀬さんのこと勘違いしてた…」


「…どんな勘違い?」


「ん~。人を見下してる感じってーの?」


「広瀬先輩が人を見下してるー?」


「だから勘違いだよ。今は男として尊敬できる…渉もいい奴だと思うぜ?」


奈々の方は飾りつけが終わった。


「渉君のことは…大輔に関係ないでしょ」


「気になるんだよ~奈々にも幸せになってほしいからさ」


「…そんなことサラッと言わないでよね」


奈々はどんな顔をしていいのか分からなかった。




しばらくして、優斗と優斗の父親の伊織と紗希が帰ってきた。


「こんにちは、お邪魔してますー」


「ちわっす!」


奈々と大輔が挨拶すると、理恵と加奈まで入ってきた。


「あれ…ママ…?加奈さんも…?」


広瀬家の玄関はパンパンになった。とりあえずリビングに移動したが、7人はさすがに多いと感じた。


「優斗…飾りつけしてくれたのか?」


「紗希さんと沖林さんと大輔君がやってくれたんだよ」


伊織は奈々と大輔を見つめる。


「理恵の娘と聡史の息子…なんだよな…?」


「そーよ、私たちもそんな歳になったってことよ」


理恵は持参したワインをあけている。


「あの…せっかくなら親父も呼びましょうか?」


大輔の提案で聡史も来ることになった。大人数で座るには無理があるが、なんとか座ることができた。


「僕、こんな大人数で鍋を食べるの初めてだよ」


「オレも初めてです」


大輔が優斗に同意する。紗希と奈々は鍋を食べてホクホクしていた。


「優斗さんと大輔が作ったお鍋おいしい~」


「お鍋一台しかないからすぐになくなっちゃうね」





加奈たち、大人チームは多少のアルコールが入って賑やかに話し込んでいた。


「こうやって4人が集まるのも久しぶりねー」


理恵がワインをグビグビ飲んでいる。


「3人とも仕事のし過ぎだろう」


聡史は缶ビール片手にほろ酔いだ。


「違うわよ、いつも集まろうって計画するのに伊織が来ないから」


加奈はイチゴを食べている。


「会社入って、伊織が一番ノリ悪くなったもんな」


「僕にも事情があって…それより久しぶりにゲームしない?」


伊織が分かりやすく動揺し、話題を変える。


「秘密主義にもなったわよねー」


「前は何でも話してくれてたのに~」


「誰かに告白されたとか、こういう時どうすればいいの、とかな~」


伊織は隣の部屋でスーパーファミゴンの設定をしていた。


「今日は僕の快気祝いでしょ?」


3人が伊織のことを茶化すので、伊織も反撃した。


「ボンバーボーイズやる人?」


そこで加奈たちは動く。


「なに?スーファミ??」


「うそーまだあったの?」


大人組はテレビのある部屋に移動する。そこからボンバーボーイズ大会へと発展していった。


「ねぇ~あっちの部屋でお母さん達が盛り上がってない?」


紗希は隣の部屋を見る。


「その前に、紗希…せーの」


『誕生日おめでとう』


優斗がケーキを持ってくる。拍手がおき紗希は少し感動した。


「えっ…ウソ…?ありがとう、うれしい~」


「これ、私からのプレゼントよ」


「これは、オレから」


奈々からはハンカチで、大輔からはイチゴのストラップが付いたシャープペンシルだった。


「カワイイ!さっそく明日から使うね~」


奈々も大輔も紗希が喜んでくれたことが嬉しい。


「紗希さん、僕からも…」


優斗からのプレゼントに、うそー、と紗希は倒れそうになる。


優斗から受け取ったプレゼントは、可愛らしくラッピングされている。包みを開けるとレースのリボンの髪留めが入っていた。


「こういうの好きかなって思って…」


紗希は編み込みしているゴムを取って、リボンをつける。


「どうですか…?」


「うん、似合ってる」


笑顔になる優斗だ。


「良かったわね、紗希」


「うんっ!!」


紗希も笑顔になる。


「それじゃ、大人たちのところに行くか…」


大輔が親指をクイッと奥に向ける。


「…さっきから異様な盛り上がりよねー」



その後、ボンバーボーイズを深夜近くまで行うこととなった。





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