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39_大輔の頑張りと渉の告白


翌日、紗希は『GAME☆ユートピア』でトレジャーバトルをしていた。


ゲームはヒュンといって『Now Loading』が表示された。

相手は、ダニエルを選んだようだ。ダニエルは顔が見えない美女と美味しくランチを取っている。高級そうな場所だ。そこに給仕がやってきてダニエルに何かを伝えるとダニエルは立ち上がり、花瓶に刺さっているバラを一本取って歩き出した。


続いてシャイニーのムービーが流れる。シャイニーは、バスローブを着ながらクローゼットの前に立っている。ワンピースを着て耳に大きいイヤリングをする。ネックレスをつけてリップをつける。鏡に向かって強気に微笑むとジャケットをバサッと羽織ながら玄関へ向かう。ハイヒールを履いてドアを開ける。


『BATTLE START!!』


フィールドは工場跡地だ。


(よぉ~~~しっ)


紗希は楽しくゲームをしている。


「…なぁ、紗希」


バトルをしていると大輔が話しかけてきた。


「んっ、なに?」


「紗希の誕生日のことだけど…」


紗希はゲーム画面を操作しながら大輔に伝える。


「毎年大輔の家でやってるし、今年もそのつもりで予定してたけど…?」


紗希は対戦に勝ちゲーム画面がチカチカ光っている。


「ダメだった…?」


紗希は顔を上げた。



*************************************

YOU WIN !!

GAME・ユートピア(野日店) VS イルカ 

DATE 2011年12月18日

TIME 7:04


*あなたの成績*

GAME・ユートピア(野日店)((トラのマーチ)) 621勝1敗

*************************************




「ダメじゃないけど…それでいいのかよ?」


大輔の声で奈々がやってきた。


「どうしたのよ?」


「いや、誕生日をオレんちでやるって紗希が言うからさ」


「そうなの?」


「うん、どうして…?」


「せっかく広瀬先輩と仲良くなったんだし、一緒に遊べばいいんじゃない?」


紗希は二人が言いたいことが分かった。


「うーん、そうなんだけど…」


紗希は携帯電話を操作して、二人に受信メールを見せる。


「あのね…優斗さんからメールが来たんだよ」




****************************************

『こんにちは』                2011/12/8 13:11


TO    宮永紗希

FROM  広瀬優斗


昨日はありがとう。

父の退院が22日に決まりました。


****************************************




紗希は嬉しそうに携帯画面をしまう。


「私さ、誕生日を優斗さんと過ごせたら幸せだけど、今はお父さんを大事にしてほしいなって思うんだよね…」


紗希は、優斗の父親が入院していること、二人でお見舞いに行ったことを奈々と大輔に話してあった。


「そういうことだったのね…。分かったわ!広瀬先輩と遊びに行けたらって思ってたけど…仕方ないわね。私たちと一緒に過ごしましょう」


「奈々…ありがとう~」


紗希と奈々が楽しく会話している中、大輔は考えていた。


(本当にこれでいいのか…?)


大輔は納得できなかった。






優斗がメールを送る少し前、父親の伊織に呼ばれて仲野の病院に来ていた。


「父さん、入るよ」


優斗は病室にノックして入ると伊織は起きていた。


「呼び出して悪かったな」


そう言うと伊織は上体を起こす。


「僕も父さんに聞きたいことや言いたいことがあるから…」


優斗はコートを脱いだりカバンを置いたりしていた。お見舞いに持ってきた荷物もあって、椅子の上に置く。


「そうか…。それはちゃんと後で聞く。まずは僕から話していいかな?」


「…うん、いいよ」


「その…理恵から聞いたんだが…僕のせいでお母さんは出て行った…借金もあるって…紗希ちゃんに言ったって本当なのか?」


「…うん、言ったよ…」


下を向きながら答える。


「それは誤解だ!お母さんは…美穂は出て行ってないし、借金もない」


「…母さんは出て行ってない?でも家に帰ってこないし…。それに借金も…消費者金融の人から電話があって…取り立てられるし…」


「本当なのかッ!消費者金融って!?」


父さんはギョッとしている。


「うん、野日金融の金本って人に毎月決まった額を払ってるよ」


「そんなはずはない…もう全額返したはずだ…」


(おかしい…何かがおかしい…)


「その…金本って人の電話番号は分かるのか?教えてほしい」


「うん、このメモに書くね」


「あぁ…。優斗…このことは僕に任せてくれ」


腕を組みながら何かを考え始めた伊織だ。


「うん、分かった…」


「…それから、美穂のことは新年に話すってことでいいかな?」


「…うん、いいよ。そのかわり僕が納得できるまで話してね」


優斗は強い口調になってしまう。母親のことを話してくれることがない伊織に対して疑心暗鬼になっているのだ。


「あぁ…今まで美穂のことを何も話してなくて…悪かったな…」


「ホントだよ、なんで何も言ってくれないんだよ」


「美穂との約束があったんだが、まぁ許してくれるだろう」


「なんだよ、約束って…いつも仕事ばかりで連絡もしてくれないし…家にも帰ってこない

し…一人で家にいるの寂しいんだからね」


急に優斗が甘えるので伊織は驚いてしまった。


「そう…だよな…。寂しい思いをさせてたよな…」


「そこまで寂しくもないけど…たまにだよ…」


優斗は視線を外しながら口をとがらす。


(外見は大人に見えても18なんだよな…)


伊織は優斗を見ながら思った。






翌日、学校帰りに紗希と奈々と大輔は三人で歩いていた。


「悪い、今日は用事あるから先に帰っててくれよ…」


「うん…分かった」


大輔が途中で駅の方に向かう。その行為に、紗希と奈々は不思議に思う。


「…どうしたんだろうね」


「そうね…珍しいわよね…」


大輔はゲームセンターの手伝いを毎日欠かさなかった。紗希も奈々も口には出さないが、頑張ってるな、えらいな、と思っていたのだ。



大輔は駅に着くと改札口のところで誰かを待っているようだ。

16時から20時まで待ってみたが、大輔が会いたいと思っている人に会うことはできなかった。



「今日も用事あるからさ」


翌日も大輔は学校帰り、途中で駅のほうへ行ってしまった。


「どうしたんだろうね、大輔…」


「…紗希、私も今日は用事があるのよねー」


「そうなの?じゃあ~今日は大人しくテレビでも見るかな~」


紗希と奈々はいつもの場所で別れた。

奈々は家に着くと私服に着替えて駅まで歩く。本当は用事などなく、大輔のことが気になっていたのだ。



奈々は駅に来るとキョロキョロと大輔を探す。大輔は改札前にいるようだ。大輔に見つからないように奈々は柱の影に隠れた。


(誰か待っているのかしら…?)


奈々が到着してから30分が過ぎた。


(うーん…相手の人、遅れてる…?)


奈々はさりげなく大輔を見ている。駅からは色々な人が出てくる。そこにちょうど渉がやってきた。


「あっ、奈々さん!」


渉は大輔には気づかなかったが、奈々には気が付いた。


「…渉君?」


「どうしたんですか、こんなところで…」


渉は学校帰りのようだ。

どうしよう、と思っていると大輔がこちらを見た気がした。


「わ、渉君…」


思わず奈々は渉を抱き寄せてしまった。そのまま柱に隠れる。そのまま数十秒、渉と至近距離のままお互い見つめ合う。


「…奈々さん…」


急に奈々に抱き寄せられた渉は緊張のあまり倒れそうになった。


「ごめん渉君、ちょっと…このままで…」


奈々がそっと柱からのぞくと大輔が誰かと話している声が聞こえた。


大輔と話しているのは優斗だ。奈々は話が聞こえるように少し近づいた。渉は動けず、ずっと放心している。


「…だから22日は紗希の誕生日なんです」


大輔の声が聞こえる。


「紗希さんの誕生日…?」


優斗の声も聞こえる。


「はい…。オレが言うのも変な話ですが…もし良かったらメールだけでもしてあげてください…。紗希…きっと喜ぶと思うんです…お願いします」


大輔は一生懸命に自分の気持ちを優斗に伝える。


「分かりました。教えてくれてありがとう。22日、紗希さんに連絡してみます」


そのまま優斗は電車に乗って行ってしまった。




大輔は優斗を見送ったあと、明るく歩き出す。


「大輔のヤツ…やるじゃない…」


奈々は自分の事のように嬉しそうだ。


「22日は紗希さんの誕生日なんですか…?」


渉がやっと口を開く。


「えぇ、そうなの」


隠れることがなくなったので、渉も奈々も柱の影から出る。


「大輔は紗希さんのことになると…いつも一生懸命ですね…」


「そうね…それが大輔のいいところよ」


「奈々さんはそれでいいんですか…?」


「それは…どういう…」


「大輔のこと、好きなんですよね…?」


見てれば分かります、と渉は言う。奈々はそっか、と髪の毛を触る。


「うん…大輔に片思いしてるの。ずっと昔からさー」


「…ずっと昔から…紗希さんに一生懸命な大輔の姿を見ていたんですか?」


「渉君…」


「そのたびに傷ついているんですか、奈々さん…?」


渉は真剣だ。奈々は動揺した。


「別に…勝手に恋してるだけだし、大輔には関係な…」


「僕なら…僕なら、奈々さんを傷つけるような真似はしません!」


渉はそれだけ言うと、大輔のほうへ走っていく。


「えっ…渉君…?ちょっと待って…!」


奈々は慌てて追いかけるが、渉の走る速さについていけない。早々に距離ができてしまった。




「大輔ー」


コンビニが近くにある道路で渉は大輔を呼び止める。


「おぉ、渉じゃん。どうしたんだよ…?」


大輔は呼び止められて振り返った。


「大輔に…話したいことがあって…来たんだ…」


来た、というより走ってきた、という方が正確だ。渉は呼吸を乱している。


「…なんだよ、話しって?」


「僕…僕は…奈々さんのことが好きなんだっ!」


渉は大輔に宣言した。やっと奈々が追いついた。


「渉くーん」


奈々はハァハァと息が切れている。体力があまりない奈々だが、これでも必死に走ってきた。


「奈々のことが…好き…?」


大輔は渉に聞き返す。


「はい、大輔に…言っておこうと思って…」


「…別にオレに言う必要ないよ…」


驚く大輔だが、少しは動揺しているようだ。


「分かった。僕は本気だからね」


「…あぁ。じゃーな」


大輔はそれだけ言うと歩き出す。


「渉君…」


「奈々さん、僕は奈々さんが好きです」


「えっ…?」


「初めて会ったときからずっと素敵な人だなって思ってました」


渉は、いつもの弟キャラではなく一人の男として奈々の前に立っている。


「僕を好きになってください、奈々さん」


「渉君…」


奈々はどうしたらいいのか分からず立ち尽くしてしまった。


「返事はいつでもいいです」


困っている奈々に渉は笑顔を向ける。奈々を困らせたいわけではないのだ。


「考えてみてください」


それだけ言うと渉は駅までの道に戻る。


「渉君…」






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