表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/53

37_伊織の目覚め②


紗希たちは病室の外のファミレスで食事していた。


「伊織さんが目覚めてよかった~」


美味しくパフェを味わいながら紗希はつぶやく。


「そうね、過労で倒れたから会社からたくさんお金が入ってくるはずよ」


「おい、金の話はするなよ」


「そう?あれだけ仕事をするってことはお金以外に考えられないんだけど…?」


理恵はステーキを一口食べながら考える。


「お金…と言えば…優斗さんが言ってたんですけど…」


優斗の父親が借金を作り母親は出て行った、と紗希は告げる。


「…本当なの?」


加奈は食べていたサンドイッチから手を離した。


「うん…」


紗希も食べる手を止めて深刻な表情になる。


「うそでしょ…伊織が借金なんて…しかも美穂さんが出て行った?」


「美穂さんって…病気があるんじゃなかったっけ…?」


美穂というのは優斗の母親だ。加奈も理恵も面識がありショックを受けた。



プルルルー


加奈の携帯がなる。仕事用の電話のようだ。


「はい、えっ…なんで事前に気づかなかったの?待ってて、今行くから」


加奈は、携帯をしまってコートを羽織る。


「システムエラーでテスト中断。ありえない…ちょっと行って来る…」


「私も後で行くから戻ってこなくていいわよ」


「分かった、また連絡する。聡史も…今日会えて良かったわ」


加奈は慌てて出て行く。休日も仕事なんて大変だな、と母親を見送る。


「…お母さん、大丈夫かな?」


「加奈は優秀なシステム屋だから平気よ」


「修羅場を何度も経験済みだからな」


そうですか、と安心した。パフェを食べようと長いスプーンを手に取る。


「ねぇ、紗希ちゃん。さっきから気になってたんだけどさー」


理恵はニヤニヤしている。


「もしかして…伊織の息子と付き合ってたりする?」


「それ、俺も気になってた…」


「…えっ?いえ…付き合ってないですよ…。ただ私が一方的に好きってだけで…」


紗希はモジモジした。


「そうなの…?紗希ちゃんの片思い…?」


「…さすが…親子だなって感じるよ」


聡史がボソッと言うのを聞き逃さない紗希だ。


「あの…それって、どういう意味ですか…?」


「なっ、何でもないんだ。気にしないでくれ」


「気になりますよ~」


プーとなる紗希だ。聡史が慌ててる状況で理恵は助け舟を出した。


「紗希ちゃん、先に伊織のところに行っててくれる?」


「私は構わないですけど…」


「ごめんさいね。私、別件で聡史と話すことがあるの…後から行くから…」


紗希は立ち上がってコートとバッグを持つ。


「はい、分かりました。先に行ってますね~」


ごちそうさまでした、と深々お辞儀して、紗希はそのまま店を出て行った。





優斗は病室で椅子に座っていた。

どうやら伊織はまた眠りについてしまったようだ。優斗はもう落ち着いている。


「優斗さん、入ります…」


部屋をノックして紗希は伊織の病室に入る。


「…お父さんが目を覚まして良かったですね」


「うん、良かった…本当に…」


優斗は隣に座って下さい、とジェスチャーで紗希を促す。


「あの…優斗さんはお父さんに伝えたいこと…話せたんですか?」


コートを着たまま椅子に座る。


「まだだけど、すぐに退院できるみたいだから…そのときに話すよ」


「すぐに退院できるんですかっ?」


「うん、年内にはできるって言われた」


「良かったですね、優斗さんっ!!」


「ありがとう」


笑う優斗の目は赤かった。


「紗希さん、お腹すいてない?」


時計は15時を回っている。

ずっと病室にいた優斗は何も食べてないのだろうと紗希は思った。


「気分転換に外に出たいし…安心したらお腹すいちゃって…」


「はい…(今パフェ食べてきたけど)お腹すいてます…!」


二人は仲良く並んで病院を後にした。





ファミレスを出た理恵と聡史は病院への道すがら話をしていた。


「加奈が伊織を好きだったことは紗希ちゃんには秘密でしょー」


フーとため息をつく理恵だ。


「過去の話だし、今は京太郎さんと仲良しなんだから、話しても良かったんじゃないか?」


「まぁね。でも加奈は伊織を気にし過ぎるところがあるから…」


「昔からのクセで伊織に対して過剰に反応しちまうってことだろう?」


理恵はジロリと聡史を睨む


「あんたも昔から分かってないわよね、加奈のこと…」


「そ、そんなことないだろう…?」


「いいえ、分かってない、だから振られたのよ…」


ニヤリと笑う理恵に嫌な顔をする聡史だ。


「なっ、余計なお世話だ。離婚の原因はその口の悪さか?」


「私に喧嘩売るつもりー?いいわよ、望むところよ」


どうせ俺の負けだろう、聡史は首をふる。





理恵と聡史は伊織の病室の前に立つ。


ガラガラッ――


「…伊織、入るわよ~?」


部屋に入ると病室には誰もいなかった。


「優斗君も紗希ちゃんもいないな…」


「そうね…」


伊織は布団をかぶって寝ていたが、かすかに眉が動いた。


「…んッ…?」


伊織が目を覚ましたようだ。


「あらっ、お目覚めかしら~?」


理恵は手を振る。聡史も慌てて伊織の様子を伺う。


「伊織、具合はどうだ?」


「理恵…聡史…?」


伊織は二人を認識して、大丈夫だと頷く。


「…見舞いに来てくれたのか、悪いな」


理恵も聡史も椅子を持ってきてベッドの近くに座る。


「今は仕事のこと、全部忘れて休みなさいよ」


「でも…」


「退院したら加奈に文句言われるだろうけど、慣れてるでしょ?」


理恵がウインクする。


「…そうだな」


伊織は口元を緩める。


「なぁ、伊織…ちょっと聞いた話なんだけどさ…」


聡史が口を開く。


「伊織が借金作った。しかも美穂さんが出て行ったって優斗君が言ってたそうだけど…本当なのか?」


「優斗が…言ったって…?」


伊織は真剣な表情になって上体を起こした。


「どういうこと?詳しく説明して」


理恵と聡史は顔を見合わせる。


「今日ね、加奈の娘の紗希ちゃんが来たのよ…」


伊織はトレジャーバトル4の新作発表会のときに会ったことを思い出した。


「優斗君が紗希ちゃんに言ったんだって…それを教えてもらったの」


「…そうか」


「何かの誤解なのよね、伊織?」


伊織は少し考えて答える。


「…あぁ、誤解だ。優斗と話す必要がありそうだな」


「あんまり無茶すんなよ」


聡史は心配そうに伊織を見つめる。


「ありがとう、聡史」


「伊織と話せたし、これで心置きなく会社に戻れるわ」


理恵は立ち上がった。聡史も立つ。


「おれも帰るよ」


「ありがとう。加奈によろしく言っておいてくれ」


「任せてよ、上手く言っておくから」


じゃーね、と言って理恵と聡史は病室から出て行った。


二人が出て行ったあと、伊織は優斗のことを考えた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ