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26_GUNの正体①


サガ本社の昼下がり――

紗希の母親の加奈はパソコン画面を見つめながら仕事をしていた。デスクの上には写真立てが飾ってある。写っているのは宮永家だ。


「一息つかない?」


コーヒーを二つ持って来たのは沖林理恵、奈々の母親である。


「待ってたのよ~」


加奈はパソコン画面をロックし、フラフラと理恵のもとへ向かう。理恵は近くの休憩スペースにコーヒーを置いて座った。


「はぁ~癒されるぅ~~最高ね~」


一口コーヒーを飲んでくつろぐ加奈とは対照的に理恵の表情は良くない。


「お楽しみ中に悪いけど…緊急事態よ」


「なによ~怖い顔しちゃって~。今の状態より酷い話なんて無いでしょう~?」


加奈は寝不足のようだ。目の下のクマが酷い。コンシーラーでも隠せてないと理恵は思う。


「落ち着いて聞いてよ?昨日ね、紗希ちゃんが負けたんだって…」


「紗希が…?なにに…?」


「トレジャーのオンラインバトル」


真面目な顔で話す理恵にエッ…?と驚く加奈だ。


「ちょっと…うそでしょ…相手は?」


「それが…伊織の息子らしいわよ」


信じられない、という顔の加奈だ。


「昨日…家に帰ったら奈々が血相を変えて教えてくれたのよ…」


奈々は冷静さがなく感情的になっているように理恵には見えた。


「紗希ちゃんがトラのマーチのリーダーと対戦して負けたって。あんな取り乱してる奈々を見たのは久しぶりで…とりあえず加奈に話しておくからって心配しないでって慰めたけど…」


理恵は首を傾ける。


「そう…分かったわ。今日は仕事を切り上げて家に帰らなくちゃね」


加奈は視線を落としてコーヒーを飲む。


「伊織の方は…何か動きがあったの…?」


伊織とは広瀬優斗の父親だ。加奈と同じ職場で働いている。


「それがさ~、伊織に話しかけに行ったら…」


――悪い。話している暇ない


「…とか言われちゃったのよね~」


もぅ~伊織のやつ、と嫌な顔をする加奈だ。反対に理恵は伊織のことが心配だった。


「最近の伊織って何個もプロジェクト抱えているのよ…」


「ウワサで聞いてた程度だったけど…本当のことなの…?」


忙しい加奈は伊織がどんな仕事をしているのか分かっていない。


「私も調べて驚いたのよ…名前だけ載ってるプロジェクトばかりだと思ってたら、会議や打ち合わせにも参加してるって聞いて…もしかしたら長い間、家に帰ってないのかもしれない…」


理恵はコーヒーを最後まで飲んでしまった。


「そっか…。どうして急に仕事人間になったんだろうね…?」


加奈もだんだん伊織のことが心配になってきた。


「また何かあったら情報回して、それじゃ!」


理恵はさっさと立ち上がり、システム部から出て行った。




加奈は携帯を取り出して電話をする。相手は息子の俊介だった。


「もしもし、今日は早く帰るから…うん、よろしくね~」


携帯の電源を消してフーと大きくため息をついた。


(紗希が負けるなんてね…そんなに広瀬優斗は強いのかしら?)


しばらく加奈は考え事をしながら最後の一口を味わっていると携帯が鳴った。


「はい、もしもし」


『…俺だけど』


大輔の父親の聡史だった。


「聡史~どうしたのよ?」


『紗希ちゃん、今日は店に来てないぜ』


「あら、そうなの…?まぁ、事情は理恵から聞いてるけど…」


『そうか…。当分は赤シャイニーと対戦しないかもな…』


「分かったわ。電話ありがとう!」


(娘の一大事ってことね)


加奈はコーヒーカップを持つが、コーヒーが入っていなかった。





ゲームセンター『GAME☆ユートピア』には、奈々と大輔がテーブル席に座っていた。


「紗希のやつ、元気なかったな」


「かなりショック受けてたもの。顔色もずっと悪いし心配だわ…」


そうだな、と大輔が話を続ける。


「途中までは紗希が勝てそうだったのに…」


「そうね…。真一さんたちが悪い訳じゃないけど…」


間が悪かっただけで、と奈々は苦しい表情だった。


「あれから真一さんたちには連絡した?」


「うん。当たり障りのないメールを送ったけど…逆に心配されちゃって…もっと上手く言い訳すれば良かった…」


奈々が携帯の画面を操作している。トレジャーバトルの掲示板を見ていた。



****************************************

(NO.744)昨日、YOU vs GUNが対戦したらしいぜ

(NO.745)YOUの圧勝だったんだろう?

(NO.746)違うよ、僅差でYOUの勝ちだったんだよ!

(NO.747)見たかった

****************************************



「真一さんたちに紗希がGUNってバレたかも…」


「どのみちトラのマーチには知られることだろ…?」


「そうだね…」


奈々のほうも気持ちの整理ができた。



奈々と大輔が話しているテーブルに聡史がノソノソやってきた。


「紗希ちゃんが来てないって加奈に話してきたぜ~」


「聡史おじさん、さすがですー」


聡史と奈々の会話の意味が大輔に分からなかった。


「…何で加奈さんにそんなこと話すんだよ?」


まだ大輔は赤シャイニーの正体が加奈だということに気がついていない。


「…お前さ~~」


聡史が息子に呆れていると奈々がフォローに回った。


「大輔のいいところですよ、聡史おじさん!」


「何だよ、二人して~」


ムキーと怒り出す大輔だった。





立ノ川のサガでは、真一と渉がテーブル席で話していた。


「昨日の紗希…どうしたんだろうな?」


真一が奈々からのメールを読みながら渉に質問する。渉はトレジャーバトルの画面を確認していた。


「…真一さん、昨日優斗さんがGUNと対戦して勝ちましたよ」


「はっ?マジかよー!優斗すげぇーじゃん!!」


真一は興奮気味だ。


「どうやら僕らが『GAME☆ユートピア』に行ったときに対戦してたみたいです」


「その対戦は見たかったな」


冷静な態度をとる渉の姿に真一は違和感を覚える。


「…どうしたんだよ、渉?」


「それが…紗希さんが放心状態になっていた時間…GUNが負けた時間と…同じなんです」


「なにっ?ってことは、まさか紗希がGUN…?」


真一は愕然となる。


「断定はできません。僕たちが画面を見る前に奈々さんが操作してましたし…」


「まさか…?うそだろ…?」


真一は昨日のことを思い出した。その時、携帯電話がなる。取り出して受信メールをチェックすると優斗からだった。


****************************************

『10月の交流会』               2008/9/22 16:31


TO    倉梯真一

FROM  広瀬優斗


昨日、GUNと対戦して勝ちました。

GUNを10月の交流会に呼んで正式なメンバーにしようと考えています。


****************************************



渉にも同じメールが来たようだ。


「渉…紗希がGUNだとしても、次の交流会には正体が分かるぜ…?」


「…そうですね」


「紗希から連絡あるまでは、そっとしておくか…」


「はい…!」





夜、加奈は急いで家に帰った。

妻の帰宅にいち早く気が付いた紗希の父親の京太郎が玄関まで迎えに行く。


「おかえり、紗希はソファにいるよ」


京太郎は加奈の鞄を持つ。


「ありがとう~キョータ」


京太郎にお礼を言うと加奈はそのままソファに直行する。


「紗希~」


「あっ!お母さん、お帰り~。今日は早いね~」


紗希はクッションを持ちながらテレビを見ていた。俊介は母親の姿を見て、テーブル席からソファまでやってくる。


「…何でお兄ちゃんまで来るの?」


「私が三人で話したいからなの」


いい?と聞く加奈に紗希はコクリと頷いた。


「さっそく本題に入るんだけど、トレジャーバトルで負けたって本当?」


「な、なんで、お母さんが知ってるの?」


ギョッとした紗希に俊介も驚く。


「はぁ?負けたのかよ…?」


「うん、負けた…」


加奈は話を続ける。


「負けた相手はトラのマーチのリーダーで間違えない?」


「うん…」


「えぇぇーーー!?」


「お兄ちゃん、うるさい…」


「だって、負けたらトラのマーチのメンバーになるんだろう…?」


「何でお兄ちゃんが知ってるの…?」


首を傾げる紗希だ。


「何でって…」


俊介が母親に助けを求める。


「私が教えたの、GUNが紗希だってこと…。それに理恵から色々と話は聞いたのよ」


「理恵さんから…そっかぁ~」


クッションをギュッと抱きしめる紗希だ。


「ねぇ、紗希…どうして対戦で負けたの?そんなに強い相手だった?」


加奈は不可解な顔になる。


「強いと思ったけど…勝てると思った…。でも、一瞬よそ見して…それが原因で負けちゃった…」


「そうだったの…」


「うん、絶対に勝つって思ってたのに…負けるなんて…」


クッションに顔をうずめてしまう紗希だ。


「…俊介、紗希のカタキを討ちなさい!」


「いや、おれもトラのマーチだからさ~」


困ってしまう俊介に加奈は強気だ。


「関係ないわよ!」


「おれの立場はどうなるの~?」


加奈と俊介の言い争いが始まって紗希はクッションから顔を上げた。加奈の強気な顔と俊介の困っている顔を見るとつい笑ってしまう。




「お茶を入れたから休憩しませんか~?」


京太郎が人数分のお茶をテーブルの上に用意していた。


三人がテーブル席へと移動し席に座る。


「俊介をトラのマーチに潜入させといて良かったわ」


加奈は中央に置いてあるせんべいの袋を開ける。


「えっ、お兄ちゃんってトラのマーチに潜入してるの?」


紗希はようかんを口に入れようとして驚く。


「母さんとの交換条件でな~」


ズゥーと言いながらお茶をすする。


「何のために潜入してるの?」


「私が個人的に調べたくてね」


加奈はようかんにも口をつける。


「…とりあえずトラのマーチに入ってみれば…?」


お茶をすすりながら俊介は紗希に提案する。


「…入ってどうするの?」


「直接リーダーに思っていることを話せばいいだろう~?」


俊介は空のコップを父親に渡し、おかわりを要求している。


「そうよ、紗希!何かあったら俊介のせいにして逃げなさい」


「かあさ~ん、ヒドイよ…」


何かと長男の扱いに厳しい加奈だ。


「そうだね…私、リーダーと会って、直接話してみたくなってきた!」


紗希が決意したような表情を浮かべる。


「その意気よ、紗希ファイト~!」


加奈と紗希は楽しそうに話しを始める。


俊介はそんな二人を見ながらあることに気が付いた。


(そういえば、優斗と紗希って顔見知りなんだっけ…?)


まぁ~いずれは分かることだろう、俊介はお茶をすすった。






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