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23_トラのマーチの活動変更


9月に入ったが、まだまだ夏服の紗希と奈々だ。学校が終わり私服に着替えた二人は立ノ川のサガに遊びに来ていた。


「こんにちは~」


「紗希さん、奈々さん、こっちです」


渉が手を振る。


真一と渉はトレジャーバトルの近くの丸テーブルに座っていた。飲み物を飲んで話していたようだ。


「こんにちは、渉君、真一さん」


紗希と奈々は挨拶し、テーブル席に着く。


「久しぶりだな。飲み物、買って来るけど何がいい?」


真一が立ち上がる。


「えっ、いいんですか?」


「写真のお礼だ。たいした金額でもないけど…」


紗希はイチゴミルク、奈々は紅茶と言うので、ちょっと待ってろよ、と真一は歩き出す。


「…真一さんって怖い顔してるけど本当は優しい人だよね~」


「失礼だよ、紗希」


そうだね、と謝る紗希だ。


「僕は真一さんに憧れてトラのマーチに入ったんです」


「そんな感じするする」


奈々は相槌を打ちながら、渉にそれとなく探りを入れる。


「…この前はトラのマーチの交流会に行けなくてごめんね。本当はすごく行きたかったんだけど…」


「いえ、今月はギャラリーも多かったので、来なくて正解だったと思いますよ」


「そっか…。だけど…トラのマーチが活動を大幅に変更するってネットの記事に書いてあったから少し気になって…」


「…詳しいんだな、奈々」


真一がなにやら買い込んで帰って来た。


「真一さん、たくさん買って来ましたね」


真一の手には二人の飲み物とお菓子を何個か持っていた。いちごポッキー、アーモンドチョコレート、ポテトチップスである。


「お菓子の自販もあったからついでにな…」


「真一さん、いちごポッキーが食べたいです」


紗希はお礼を言いつつポッキーを受け取る。

お菓子を広げながらの賑やかな会話になった。


「奈々…さっきの話に戻るけど、トラのマーチの活動が大幅に変更するってなんのこと?」


「それが私にも分からなくて…せっかく真一さんや渉君と知り合いになれたし、これからの活動について何か知っているなら教えてほしいなって思います~」


奈々は軽い調子で聞いてみたが、真一と渉が顔を見合わせる。奈々はもう一息で情報が聞き出せるかもしれない、と思った。


「…私も紗希もトレバトが好きですし、トラのマーチの交流会にも遊びに行きたいと考えています。だけど…何かあるなら早いうちに教えてもらった方が私たちも安心かなって思うんです」


「真一さん…」


渉は何か言いたそうだ。

紗希は、ポッキーを食べながら、何の話か未だに分かっていない。


「そうだな…。まだ決定じゃないけど…後で心配させるより先に話した方がいいかもしれないな…」


そうですね、と渉も続く。


「来年から活動内容が変わるって話しで、まだ確定してないが…俺たち『トラのマーチ』とトレバト対戦して、もし相手が負けたらトレバトのIDを俺たちが奪う…ってことだよな?」


「そうですね…だいたいそんな感じです。来年からそういう活動を行いますってリーダーの意向で…」


真一と渉が説明する。


「…何のために?」


紗希が聞くと真一と渉がお互いの顔を見合わす。


「僕たちにもまだ言えないって言われました…」


「アイツにも考えがあると思うんだけどな」


「あの~それで…真一さんたちもその条件で活動するんですか?」


今度は奈々が質問する。


「僕はしません。リーダーの考えには納得してないんです」


「まぁ…俺も実際のところ考え中なんだよな」


話を聞いていた紗希はわなわなと身を震わせる。


「…そのリーダーって人、トレジャーバトルがキライなんですか?」


「ちょっと、紗希…」


「許せないよ、奈々!だって負けたからって自分のIDを渡せなんて酷過ぎるよ!」


「紗希さん…」


「悔しいよ…そんなのやる人…サイテーだよ」


「紗希…」


奈々が紗希をなだめる。


「どうしたんだよ、紗希」


渉も真一も急に怒り出した紗希に戸惑っていた。


「あっ、私…トレジャーバトルが好きだから…つい…」


すいません~と身を小さくする紗希に、渉は気持ちが分かります、と続く。


「僕も納得できてませんし、本当にそんな活動をするなら、僕はトラのマーチを辞めます!」


「渉君…」


「渉、まだ決まったことじゃない。先のことはまだ分からないだろう…?ゆ…リーダーの話をちゃんと聞くまで待ってみようぜ?」


「…分かりました…」


紗希と渉が縮こまっているので、真一は話題を変えようとする。


「…少し暗い話しになったな」


「そうですね…。話題を変えましょうか?最近、面白かったことってあります?」


奈々はポテトチップスを真一に渡しながら聞く。


「そうだな~。GUNは紗希かもって話しをしたよな?」


紗希は飲んでいるジュースを吹き出しそうになった。


「はは、そうですね。初めは奈々さんかと思ったんですが…」


「そっ、その話し…面白いデスネ~?」


顔が引きつる奈々だ。紗希の方は挙動不振でポッキーを早食いしている。


「お~い、なにしてんだ?」


「お兄ちゃん!?」


俊介がテーブル席に来た。


「なんだよ、今日はサガの本社に行くとか言ってなかったか?」


俊介は到着すると真一が飲んでいたコーヒーを取って飲んだ。


「行ってきたよ~疲れた!」


「お疲れ様です、俊介さん」


「で、何の話ししてんの~?」


ゴクゴクとコーヒーを飲みながら俊介が聞いた。


「ん?紗希がGUNって話しか~?」


ブゥゥゥーと飲んでいるコーヒーを吐き出してみんなのヒンシュクを買った俊介だ。


「紗希…?」


「勘違いだったんですよ、俊介さん」


「お兄ちゃん、汚い!!」


「…悪い。拭くものもらって来る」


フラフラと歩き出した俊介だった。





立ノ川のサガからの帰り、夕映えの街路樹が並ぶ道路を歩く。


「ねぇ、奈々」


「なに~?」


「私さ、トラのマーチのリーダーと対戦したい」


「…紗希」


「勝ったら、私の言うことを聞いてもらう条件で対戦したい」


「…負けたらチームに入らなきゃいけないんだよ?」


立ち止まる奈々だ。紗希もその場で止まった。


「大丈夫。絶対勝つよ!」


「…いつ対戦するの?」


「明日にはメールする」


強いまなざしの紗希だ。


「そうね。早い方がいいかもね」


「奈々なら分かってくれるって思った~」


また二人は歩き出す。


「それはそうと、GUNが紗希だって感づかれてるじゃないのー」


「あ~あれ、ビックリした~!」


「ビックリしたのはこっちよ…。気をつけないと本当にバレるわよ?」


「分かってる…けど真一さんたちは何で私がGUNだって思ったんだろう」


んーナゾ、と紗希は首をかしげる。


「まぁ、いいや!そんなことより、トラのマーチのリーダーだよ」


「そうね!絶対に勝つのよ」


「分かってるって」


紗希は奈々にいつものピースをした。







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