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22_9月のトラのマーチ交流会③


トラのマーチ交流会、優斗はチームメンバーに声をかけるようにしていた。順番に声をかけていき、真一、渉、俊介にも声をかける。


「こんにちは、今日は遅れてすみませんでした」


いいよ、と言って真一は真面目な顔になる。


「なぁ…優斗が交流会の活動内容を大幅に変更するって前に言ってただろう?」


優斗は先月の交流会で、来年から活動内容を大幅に変更する、とメンバーに伝えてあった。


「それ…来月に聞けるって話しだけど俺は今日知りたい。まだ方針が固まってないって言ってたけど教えてくれないか?」


そうですね…と優斗は考える。


「真一さん達になら…」


どうせ来月に発表することになるのだから、と優斗は思った。


「その変更内容は……トレバトのオンラインバトルをして勝ったら、負けた人のIDを削除する、ということです」


真一はあまりの驚きに目をむく。


「はっ?削除?なに言ってんだよ、優斗…何のために…そんなことするんだよ?」


「…今はまだ言えません」


優斗は下を向く。


「おいおい、もし俺たちが負けたらどうすんだ?」


「負けた場合も同様に削除します」


優斗の強い意志を感じた。


「…フン。おもしれーじゃん」


真一は不敵に笑う。


「聞かせてくれてサンキュー。来月の発表、楽しみにしてるぜ」


真一は納得したようだが、渉は困惑している。

俊介だけは冷静に観察していた。


(広瀬君…とうとう動き出したな…。これは母さんに報告だな)


ヤレヤレと思う俊介であった。


渉はトラのマーチの活動より、ネットでウワサのGUNの方が気になっていた。


「優斗さん…GUNのことはどうするんですか?」


「…近いうちに必ずバトルするよ。勝って僕たちのチームに入ってもらう」


「…GUNは強いですよ」


渉の発言に優斗は何度か頷く。


「そうだね…だけど…僕には考えがあるんだ」


「どんな考えですか?」


「GUNは必ずシャイニーを使うだろう?そして、必ず鉄パイプのフィールドを好む…」


「はい」


「そこに攻略するヒントがあるんだ」


優斗の話を聞いていて、俊介は心配になってくる。

紗希は優斗に勝てるのか、もしかしたら負けるかもな…と心の中でつぶやいた。







優斗は野日へ帰って来た。


(今日は疲れたな…明日もバイトがあるし…)


コンビニが目に入る。思わずコンビニに入って紗希を探してしまった。


(宮永さん…いるわけないか…)


5分ほど時間をつぶすが、紗希には会えない。諦めてコンビニを出ると着信が鳴る。


「…はい、広瀬です」


『消費者金融の金本です。今月の入金を確認しました』


「はい、来月も25日までに入金します」


感情がない声で優斗は電話の相手と話す。毎月のことだ。


『広瀬さん、順調な返済ですね。期限以内に返済が終わりそうで助かりますよ』


金本がクックックと嫌な笑い方をする。


「…用件が終わったなら切ります」


電源を押して耳から離す。

こんな生活がいつまで続くんだろうと苛立った時、明るい声が響く。


「あっ~~ゆ…広瀬さ~~ん!!」


大きく手を振って走り出した紗希が優斗の前で止まる。


「こんばんは~お久しぶりです!」


元気な紗希の姿に気持ちが前向きになる。


「宮永さん…久しぶりだね…」


微笑む優斗に紗希はドキリとした。


「…あ、あの…広瀬さんは買い物ですか?」


「うん…そうだね…。コーヒーを飲もうかと思って…」


「フードコーナーで飲むんですか?ご一緒してもいいですか?」


「うん…」


コーヒーなど飲むつもりはなかったが、紗希と話して気分を変えたいと思う優斗だった。





コンビニのフードコーナーで優斗はコーヒー、紗希はイチゴミルクのパックジュースを飲んでいた。


「…夏休みも仕事だったんですか?」


「はい…ドラマの撮影もあって…あっという間に夏休みが終わっちゃって…」


「それは大変ですね」


「……お金が…いや、仕事がしたかったので…いいんです」


「でも…お仕事ばっかりで疲れませんか?」


「そうだね。でもあと少しで終わるから」


そう言って優斗は微笑むが、紗希は予想外の話で驚いた。


「お、終わるって…モデルを辞めちゃうんですか?」


「まぁ…」


えぇー?となる紗希だ。


「そんな重要なこと…私なんかに言っちゃっていいんですか?」


「大丈夫だよ。だけど…皆にはまだ秘密でお願いします…」


優斗の個人的なことが聞けて嬉しかった。そして、ずっと聞きたかったことを今なら聞けるのではないかと紗希はジュースをテーブルに置く。


「ひ、広瀬さん、あの…もし良かったら…メアドを教えてもらえませんか?」


「えっ…?メアド?」


勇気を出した紗希だが、恥ずかしくなってきた。


「あっ、あの…ダメならいいんですけど…」


「あ…あぁ…大丈夫です」


携帯を取り赤外線でメアド交換をする。


「何かあれば…気軽にメールして下さい」


「はい、分かりました!」


紗希は飛び跳ねて喜びたかった。もちろん我慢した。





次の日『GAME☆ユートピア』では、紗希と奈々と大輔がテーブル席に座っている。

昨日の優斗との一件を話している紗希だ。


「アドレス交換…?マジかよー」


「スゴイ進歩じゃない!」


盛り上がる三人だ。


「なぁ…紗希は…その…広瀬のことが好き…なのか?」


大輔が思い切って紗希に尋ねる。


「うん!」


紗希があっさり答え、大輔は精神的ショックを受け固まる。奈々は大輔に同情しながら現状を見守っている。


「優斗さまからメールも来たんだよ~~」


ハイテンションの紗希だが、大輔は反応しない。奈々は紗希の話を聞きながら時計を見る。

18時になろうとしていた。


「…紗希、そろそろ時間よ」


紗希も時計を確認して「いっけない…」とトレジャーバトルの台に座る。





大輔はまだ放心していた。


「だぁ~い~す~け」


大輔の目の前で手を上下にする奈々だ。大丈夫?と聞くと大輔は下を向いてしまった。


「オレ…」


「なに、紗希のこと諦めちゃうの?」


「奈々…どうしてそのことを…?」


分かるわよ、と大輔に告げると、そうか、とまた下を向いてしまう。


「…すぐに諦めるのってどうなの?らしくないんじゃない?」


「……。そうだよな…オレはまだ諦めねーよ」


大輔は宣言して、おりゃーとモップをかける。


「…大輔、何を諦めないの?」


紗希は大輔の行動が理解できなかった。


「それより紗希、赤シャイニー」


「そうだね!」



画面を確認する。


白シャイニー VS 赤シャイニー


『BATTLE START!!』



フィールドがいつもの工場跡地ではなかった。


「あれ、なんでフィールドがジャングルなの?」


鉄パイプのフィールドで対戦することが中学生のころからの習慣だった。

奈々も驚いて見ている。


「このフィールドで戦うの慣れてないよ~」


紗希は慌てながらカメラの位置を回転し走り始める。左上の画面を見ながら赤シャイニーがどこにいるのか確認しながら確実に前に進む。


バン!バン!


すぐに攻撃が来た。紗希はジャンプしながら銃弾を避ける。フェイントを駆使しながら動くも紗希の攻撃は当たらなかった。


バン!バン!

バン!バン!


赤シャイニーの攻撃をよけていたら、中央の沼地に誘い出されていた。沼の周りに障害物はなく相手に狙いやすいポイントである。


バン!バン!バン!バン!

バタッ…


あっさり撃たれて負けてしまった。


「私の敵じゃないわね!」(赤シャイニー)

「負けたわ、あなた強いわね…」(白シャイニー)



「どうして今日はフィールドが違ったのかしらね?」


奈々は腕組みをする。


「フィールドを間違えて決定しちゃった…とかかな?」


そんなことないでしょー、と奈々はツッコミを入れた。大輔は一心不乱にモップがけをしている。





数日後、奈々は自宅のパソコンで『トラのマーチ』を調べていた。

リーダーについての情報はないか、何かおかしな動きがないか、どうしても気になっていた。


熱心に検索していたが、母親が帰ってきた音が聞こえた。


「ただいま~~」


奈々はパソコンのディスプレイだけ消して、そのままに玄関へと走る。


「おかえりー」


「デパ地下でいろいろ買ってきたわよ」


スーパーの紙袋を見せる理恵だ。奈々は袋を預かって、そのまま二人はリビングへと向かう。


「ねぇ~ママ。トラのマーチって知ってる?」


奈々はお惣菜を出し、理恵はキッチンで惣菜をお皿に取り分けている。


「知ってるわよ~。最近よく聞く名前ねー」


「何か知ってる情報あったら教えてくれない?」


理恵はそうねーと言って電子レンジに惣菜を入れる。


「トラのマーチについては加奈とも調べてる最中なのよ」


加奈は紗希の母親である。


「ママと加奈さんがー?」


「加奈なんて俊介君をトラのマーチに潜入させたのよ」


「えっ?それ本当なの?」


思わず奈々は乗り出しながら理恵に聞く。


「みんなには秘密にしておいてね!」


「…分かった」


理恵はワインをグラスに注ぎながら奈々を見る。


「…紗希ちゃんは平気なの?」


「うーん…トラのマーチからメールが来たけど無視してる」


ワインを揺らしながら理恵も少し驚く。

俊介がトラのマーチはGUNを狙ってる、と言ってたのはどうやら真実のようだ。


「あと、赤シャイニーが色々なフィールドで対戦するようになった」


「あぁ、紗希ちゃんのことを考えてのことらしいわよ」


「ふ~ん…」


クイッとワインを飲む理恵は、私も動く必要があるみたいね、と一人つぶやいた。






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