17_夏休み旅行④
トレジャーバトルの台の前で話し合っていると、奈々が知らない人とぶつかった。
ドンッ!!
「あっ、すみま…」
「いってぇ~な、姉ちゃん」
ガラの悪い不良のようだ。どうやら三人組でつるんでいる。
「大丈夫ですか、河合さん」
奈々が恐怖に立ちすくんでいると真一と渉がスッと前に出る。
「そっちがぶつかってきたんだろ」
「そうですよ」
河合は小さいサングラスをクイッと上げながら文句を言う。
「なんだと」
「河合さんは激強だぜ、なめんなよ」
河合の連れの坊主が言う。
「ってか、お前らトレジャーバトルしてんのかよ」
河合が、クククと笑う。
「俺たち、『スピード・ドッグ』ってチームなんだけどよ~」
「…聞いたことないな」
俊介も真一の隣に並ぶ。三人が前に出たおかげで紗希と奈々は一歩下がることができた。
「地元じゃ有名なんだぜ」
帽子の男は自信満々だ。
「俺らと勝負しようぜ」
河合が小さいサングラスをクイッと上げる。
「…いいけど、負けたら覚悟しておけよ」
真一は無表情だ。
「河合さん、俺らも勝負したいですよ」
そうだな、河合はクククと笑う。
「3対3でいいよな」
「あぁ、それで構わないよ」
俊介が答え、真一も頷く。
「2勝した方が勝ちってことで始めるぞ」
真一、俊介、渉がトレジャーバトルの台に座る。
「なんだか大変なことになって、すみません!」
青ざめる奈々に渉がフォローする。
「奈々さんは何も悪いことしてないですよ」
「そうだよ、奈々ちゃん」
俊介も続く。
「こんなバトルすぐ終わらすぞ!」
俊介 vs 坊主の男
真一 vs 河合
渉 vs 帽子をかぶった男
『BATTLE START!!』
俊介はダニエルのキャラを選択した。
ダニエルは光が差し込む部屋で一人グランドピアノを弾いている。
風でカーテンが揺れる中、テラスから一人の美女がやってきてダニエルに何かを伝える。ダニエルは立ち上がり、花瓶に挿してあるバラを胸のポケットに差し込む。
対する相手はカールだ。
フィールドはジャングルで、木々がつらなっている。
ダニエルの動きはいい。カールもマシンガンで攻撃を開始する。俊介は相手の出方を待っていた。
カールが攻撃をやめ移動しようとした瞬間、ダニエルはバラを投げる。
ブスッ!
バタッ…
俊介が勝った瞬間、紗希は「お兄ちゃんもなかなかやるじゃん」と思った。
ダニエルとカールはグランドピアノのある場所に移動した。
「祝福の旋律を奏でよう」(ダニエル)
「負けたぜ、俺の完敗だ」(カール)
ダニエルが画面に向かって優雅に歩いてくる。口元のアップになると白い歯を見せ笑う。
そのまま美女が待つピアノの元へ歩く。
『YOU WIN !!』
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YOU WIN !!
ダニエル VS カール
DATE 2008年8月21日
TIME 9:48
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「よしっ、勝ったな」
「真一は、もう終わったのか?」
俊介が隣の席を見ると画面が光っていた。
「当然だろう…」
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YOU WIN !!
フリオ VS ケイト
DATE 2008年8月21日
TIME 5:15
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『簡単に勝っちゃったね~』
『やっぱりトラのマーチは強いのね!』
後ろでコソコソ話す紗希と奈々だ。
「スミマセン、河合さん」
坊主が河合に謝っている。河合もグヌヌ~と奇声を発していた。
「シンヤ、何が何でも勝つんだ!」
河合が帽子をかぶった男に言う。
「それが…」
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YOU WIN !!
フリオ VS チャーリー
DATE 2008年8月21日
TIME 11:33
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「なんだよ、コイツら…」
「俺らが…簡単に負けるなんて…」
『スピード・ドッグ』は呆然としていた。
「やりましたよ、奈々さん」
渉も勝った。
「すごいよ、渉君!」
「うん、3勝だね~!!」
テンションが上がる紗希と奈々だ。
河合たちは体をフルフルと震わせる。
「お、お前達はいったい何者なんだ!?」
「俺たちは…」
真一はチーム名を明かそうとしたがやめた。マネージャーに怒られるかもしれないと考えたからだ。
「…名乗るものじゃないが…そんなことより、さっきの子に謝ってもらおうか?」
「スミマセンでしたー!」
三人は素早く奈々に謝るとどこかに行ってしまった。
「逃げ足は早いな…」
「まさにスピードドッグなんじゃない?」
勝利した男性陣は気分が良かった。
「あの、助けてくれてありがとうございました」
奈々はお辞儀する。
「当たり前だろう」
「そうですよ、気にしないで下さい」
「はい…」
「気分変えるために…場所変えるか?」
「それなら、花火しませんか?」
渉が提案して、紗希と奈々はやりたい、と賛成を示す。
「帰りに買って帰るか?」
「そうだな、軽く夕飯も食べれば暗くなるだろう…」
俊介と真一が相談し、ゲームセンターを後にした。
豪邸に到着し、大量に買った花火で遊んでいた。紗希と奈々はキャーと言いながら楽しんでいた。
「昼間は怖かったね~」
奈々は花火を持ちながら頷く。
「俊介さんたちが簡単に勝っちゃうから気持ち良かった!」
「真一さんなんて5分で勝ってたもんね~」
「紗希でも勝てた相手だぜ」
真一と俊介は線香花火を地味にしていた。
「私、チームバトルって初めて見ました」
紗希が言うと渉が説明する。
「チームバトルは大会もありますし、普通のことですよ」
「あぁ、交流会のときも他のチームを呼んでよく対戦するしな」
「大会もあるんですか?」
紗希は線香花火を持って俊介と真一の側まで行く。いつの間にか渉と奈々も線香花火を持って五人で囲んで線香花火大会になった。
「そーいや、トラのマーチって大会に出てんの?」
俊介の問いに真一が答える。
「あぁ、積極的に大会に出場してるぜ。本来なら今月末も出場予定だったんだが…」
話を濁す真一に渉は仕方ないですよ、とつぶやく。
「トレバト夏季本選大会の予定でしたがリーダー命令で…今回は辞退したんです…」
「えっ…?どうして…?」
「まだ僕たちも詳細は分からないんです…月末に臨時の交流会を開くことになったので、そこで理由が聞けます」
「リーダーの考えが何かあるんだろうけど…」
真一と渉は浮かない顔だ。なんとなく沈んだ空気の中、奈々が口を開く。
「あの…トラのマーチのリーダーって誰なんですか?どういう人ですか?」
奈々はリーダーが誰なのか気になっていた。
「それは…リーダーって芸能人だから名前が出せないんです」
渉が申し訳なさそうに答える。
「リーダーが芸能人ってカッコイイ…」
いち早く紗希が反応する。すると、ポタッと一人だけ線香花火が終わってしまった。
「実際にカッコ良くてカリスマがあるリーダーですよ」
「そうだな、俺もいまだに勝てねーし」
「そのリーダーがGUNに目をつけてるんです」
「だな、あいつが積極的にGUNをチームに入れたがってる」
『奈々…リーダーに目をつけられてるって、ヤバくない?』
『確かに…そうねぇ…』
紗希と奈々はコソコソと話す。
「…そのぉ~GUNって誰か分かってるんですか?」
奈々は男性陣に質問する。
「誰も正体を知らないんだ…」
だけど、と真一は話を続ける。
「そういえばさ…俺と対戦するとき、対戦の申し込みして待ってたんだよな…」
「…というと?」
俊介が質問し、渉が答える。
「普通、メールで対戦の予約をするじゃないですか?」
「お互い、都合のいい日時を決めるためにな」
「でも、GUNは対戦相手を指定して待ってたんです」
紗希と奈々はまたコソコソと話しを始める。
『確かに…15分くらい待ってたかな…』
『対戦したかったらメールを送るのが普通なのよ』
『…知らなかった』
「メールしなくても対戦の申し込みはできるけどな」
真一が言うと、花火が落ちた。続いて渉の線香花火も落ちてしまった。
「普通は無視されるのが落ちですよね」
『そうなんだ~~』
『さき~~』
真一は花火をバケツに入れる。
「あぁ、たまたま気がついたから良かったけど」
「なぁ、GUNってオンラインに詳しくないんじゃなの?」
「そういう考えもできますね…」
渉がなるほど~と言うと俊介の花火が落ちた。
最後に花火が残っているのは奈々一人だ。
「や…やったぁ~私の勝ちですね!」
無理矢理キャッキャッする奈々だ。紗希のほうはドキドキしていた。
次の日は、のんびり起き出して帰る支度をする。
「忘れ物してないか~」
俊介の呼びかけに「はーい」と紗希と奈々は答える。車の中には、五人が着席していた。
運転手は俊介で、助手席には真一が座っている。後部座席には奈々、紗希、渉の順番で座っていた。
「デジカメで撮った写真は俊介さんに渡しておけばいいですか?」
「それなら僕が取りに行きます」
奈々の問いかけに渉が答える。
「僕と真一さん、よく立ノ川のサガでトレジャーバトルしてるんです」
「そうなんですか?」
「あぁ、会おうと思えばいつでも会えるな」
車の中で写真を渡しに行く約束をした。




