16_夏休み旅行③
三日目は、お昼からバーベキューをした。基本的に俊介と真一が焼いている。
「美味し~い」
「真一さんが焼いたお肉、最高ですよ」
簡易テーブルには紗希、奈々、渉が座って食べていた。
「夏はやっぱりバーベキューしないとな」
真一は裏の畑からとれた野菜を追加する。
「この後はゲーセンに行くのか?」
俊介は焼きそばを作りながら真一に確認する。
「だな、行こうぜ」
それを聞いていた紗希は「私も行きたい」と手をあげる。
「せっかくなら皆でプリント写真シールも取りたいです」
真一だけが不服そうだったが、渉と俊介に説得され渋い顔で了承する。
ゲームセンターに着くとまずはプリント写真シールへと向かった。お金は俊介と真一が出してくれるようだ。
機会がしゃべり出すとみんなポーズを取る。位置は女性陣が前で男性陣が後ろだ。その後も色々なポーズでプリント写真シールを撮り終えた。
「シールは三人で分けて」
俊介の言葉に「は~い」と言って紗希はハサミを入れる。
紗希、奈々、渉は楽しくて仕方がなかった。
「この写りいいよ、渉君」
「奈々さんも目がキラキラです」
「初プリって入れれば良かったね~」
三人が盛り上がっていると真一から声がかかる。
「場所を移動するぜ」
真一と俊介が先頭を切って歩き出す。どうやら二階に移動するようだ。
「…何のゲームするの?」
紗希が渉に質問する。
「トレジャーバトルですよ」
その答えに奈々はピンときた。紗希は何も感じずに渉と会話をする。
「へー私も好きだよ、トレジャーバトル」
「紗希さんもトレジャーバトルするんですね」
「…ちょっ、紗希!」
奈々は渉と紗希の会話を中断させ、紗希の腕を引っ張ってコソコソと話す。
「ねぇ、紗希…嫌な予感がする」
「どういうこと…?」
奈々の言いたいことが分からない。コソコソしている奈々と紗希を見て渉が不信に思う。
「どうしたんですか、奈々さん、紗希さん…?」
「何でもないのよ」
そうですか、と渉が前を向いたので、奈々は素早く紗希に耳打ちする。
「とにかくGUNの正体がバレないように行動すること」
「ラジャ…」
言いながら紗希は奈々の不安が分からなかった。
トレジャーバトルで遊べる台に到着する。
「真一さん」
真一と俊介は台の席に座っていた。
「紗希さんもトレジャーバトル好きだそうですよ」
おっ、と言って真一は紗希を振り返る。
「それなら俺と勝負しようぜ?」
ニッと笑う真一だ。
「真一さんと勝負なんて可哀想ですよ」
渉が慌てて真一を止める。
「そうそう。真一は強いのに手加減なしだからさ~」
俊介も紗希と奈々に説明する。
「あの~もしかして…真一さんって……『トラのマーチ』に入ってたりして…?」
ハハハと乾いた笑みを浮かべる奈々に真一は肯定する。
「ああ。奈々もトレジャーバトルに詳しいんだな」
その瞬間、紗希と奈々はバッと顔を見合わせ小声で盛大に驚く。
『えぇぇーー?真一さんってやっぱりトラのマーチの真一さんなの?』
『落ち着いて、落ち着くのよ、紗希!』
パニック状態とはつゆ知らず、渉は自分たちも『トラのマーチ』所属だと話す。
「お、お兄ちゃんもなの?」
紗希は我慢できず、大きな声を出してしまった。
「あぁ、正式には来月から入るけどな」
「へ、へぇー…渉君も強いんだね…?」
奈々が話題を変えようとする。
「いえ、僕なんて真一さんの足元にも及ばないです」
「その真一も最近負けたみたいだけどな」
俊介は笑う。
「まぁーな、GUN…必ずリベンジするぜ」
目を光らせながら闘志を燃やしている。
「真一さん、GUNからメールは来ましたか?」
渉の問いに真一は舌打ちする。
「いや、メールも無視されてんだよな」
真一の態度に紗希が反応する。
『う、うそっ…メールの返信しないと…!!』
『急に返信したらおかしいでしょうが…』
奈々が肘でつつきながら指摘する。紗希と奈々のコソコソ話は男性陣には聞かれていない。
「なぁ…メールって何の話だよ?」
俊介だけが分からない状況だった。
「GUNに負けた日にメール送ってるんだよ」
「確か…交流会にも参加してほしいって内容でしたよね?」
真一と渉の話を聞いてフム、と理解する俊介だ。
「ってことは、一ヶ月ぐらい無視されてるわけだ」
「さっきから痛いとこつくな、俊介」
「悪い、悪い」
「GUNはメール機能を使ってないってウワサもありますからね」
渉が真一のフォローに回る。
「渉ってGUNのこと詳しいよな」
「はい、僕追っかけしてますから」
渉の一言に紗希はさらに驚いた。
『渉君って私の追っかけしてんの~?』
『そういえば、紗希って渉君と対戦したの?』
『ん~…してないと思うけどな~』
相変わらず紗希と奈々はコソコソ話をしている。
「実は僕、一回GUNと対戦してるんです」
『知らない間に対戦してたみたい…。てへへ。』
『さき~~!!』
「10分で負けてたんですが…それからファンになって…」
「ほぉ~~」
俊介はマイペースに聞いていた。そんな時、真一が「あっ…」と声を漏らす。
「携帯…車に忘れてきた」
真一が服の上から手で携帯を探す。
「わりー、ちょっと取りに行って来る」
真一がトレバトの台から立ち上がる。
「僕も行きますよ」
渉も後から続くと俊介もその後に続いた。
三人が行ってしまうと紗希と奈々はトレジャーバトルの台に取り残された。
「まさかの展開…」
紗希はヘタリと椅子に座りこんでしまった。
「あの状況で、頑張って耐えたわね」
よしよし、と背中をさすってあげる奈々だ。
真一の携帯を取りに三人で歩いている。
「なぁ…別に三人で取りに行く必要ないと思うけど?」
「そうですね」
「それなら俺、紗希と奈々ちゃんのところに戻ってるよ」
「そうだな」
俊介は真一に車のカギを渡し来た道を戻る。階段を上がって2階にたどり着くと紗希たちはトレジャーバトルの台に座っていた。
声をかけようとしたが、二人は盛り上がっている。
「…それにしてもさっきはビックリしたわ!」
「うん、GUNが私だって知ったら驚くだろうね、みんな…」
(紗希がGUN…?)
驚いた俊介はとっさに隠れた。隠れた位置からでも紗希と奈々の会話が聞こえてくる。
「ちょっ、紗希!誰が聞いてるか分からないのよ」
「そうだね、ごめん~」
紗希はトレジャーバトルをしながら謝る。
「真一さんたちがトラのマーチだって聞いた瞬間に顔がひきつったわ」
奈々はため息をついている。
「私も叫ぶかと思った~」
(紗希がGUNだったのか…!)
俊介は母親の言葉を思い出した。
――GUNの正体はそのうち分かるわよ
(母さんはGUNが紗希だって知ってたのか…?)
俊介が考えていると、真一と渉が帰って来た。驚いて二人のところまで駆け寄る。
「早かったな~」
「そうでもないだろ、なぁ渉?」
「はい、そうですね」
二人が奥へ通ろうとしたが、俊介は二人を通さないように両腕を広げた。
「わぁ~~ストップ!!」
「どうしたんですか、俊介さん?」
「まだここにいてくれ真一、渉!!」
俊介の行動を不思議に思う真一と渉だ。
「ときどきお前が分かんねーよ」
「俺とここにいてほしいんだ」
真一の両肩を俊介はつかんだ。
「なんだよ、急に」
「俊介さん、新しいギャグですか?」
大混乱の俊介、困惑している真一、分析しようとする渉だった。
「なにやってるの、お兄ちゃん?」
俊介たちの会話が聞こえ紗希と奈々はやってきた。
「あっ、紗希…?」
「大丈夫、お兄ちゃん?」
「あぁ…」
そう言うと真一の肩から手を下ろした。
「変なお兄ちゃん」
(お前のせいだろ…)
疲れを感じる俊介をよそに他のメンバーはトレジャーバトルの台に移動した。




