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第二十六話 挿入短編:沖奈のひとりごと

 

沖奈爽知は、大隊で死獅の研究の第一人者だ。


人体実験や死獅の解体などで様々な仮説を実証してきた。

その研究の姿を、人は”狂気”と呼ぶ。


沖奈爽知は、五年前に消えた”死獅”をずっと探している。


それは、すごい破壊力をもつ、子どもの個体だった。

それは、大阪が京都を襲撃したときに見たものだった。


冷静に、けれどどこか野性的に。

人も死獅も切り裂き、空をも切り裂くような、黒い刀をもった、”特別な死獅”。


目の前で、真っ赤な血の雨を降らすその死獅を見たとき。

何にも心が動くことのなかった沖奈が、はじめて興味を持ち、心が震えた瞬間だった。


目で追えないほど素早く消えてしまったその個体に、沖奈はずっと恋焦がれていた。

どれだけ研究所の情報を探しても。

見つけられなかった。


知りたくてしょうがない。

どうしようもなかった。


ただ、あの美しい死獅を、一目見たかった。

それだけが、”希望”だった。


研究を続けながら、諜報部門にも所属し、”狐”として情報を集めたとき。

『愛知国にその影あり』

『死獅の悲劇で、そこに紛れ込んだ可能性大』

 という情報を見つけた。


 そのとき、魂が震え、沖奈はもう止まれなかった。


 三年前に、沖奈という愛知国の学生が戦死したため、その人物に成り代わって、沖奈は愛知国にもぐりこんだ。


 そして、戦学に通い、日向の監視をはじめた。

 その日々は幸せだったけれど、どこか気持ちは満たされなかった。


 大阪国が、天下統一と宣言した後。

 沖奈は研究を、より一層深めていった。

 そして、満月の夜。

 死獅の進化を成功させたときに、日向が現れた。


「神の思し召し!!」

 沖奈は、桜屋敷の部下になった日向に近づき、研究する許可を得た。

 その日から、沖奈の人生は、輝いていた。


 この世には、これほど面白い存在はきっといない。

 朝日奈日向は、沖奈の”希望”だった。





 だから、名隊にいたとき。

 桜屋敷が保護するのがどうしてもムカついた。

 

 そして、実験のために赤い液体を量産したいけれど、黒い液体の正体もつかめないで、悩んでいたとき。

「副隊長、ちょっと飲みに行きましょう」

 絶対に渡さないという楓に、沖奈は、そう声をかけた。

 断られる前に、沖奈は、手で狐をつくった。


「コンコン」

 そう言って笑う沖奈に、

「そこまで気づいてるんか、鬱陶しい」

 桜屋敷は、しぶしぶついて行った。


 沖奈は、楓の正体を知っていた。

 大隊の暗殺部隊の”狐”に所属する楓のことをばらしてでも、日向がほしかった。

 ただ、それは愚策だともわかっていたから、我慢した。


 けれど、大隊では、沖奈の方が立場は上だった。

 死獅の研究所長であり、暗殺部隊の”狐”にも所属する沖奈はしっかりと脅した。

「渡さないと、大隊に報告するよ、暗殺されても知らないよ」


 桜屋敷は、沖奈のことを怪しんでいたみたいだけれど、確信に変わって、面倒方が増えた、と思いっきり顔をしかめていた。


 あの顔を思い出して、沖奈はすこしだけ溜飲が下がった。


 とにかく、沖奈には黒い薬の研究が必要で、赤い薬の研究も必要だった。


 沖奈にとって、日向は”希望”だったから。







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