第二十一話 逢いたいが情
あの日から、三回の夜を越えた後。
名古屋城の最上階で、日向は遊虎と向き合った。
「遊虎、決めた」
遊虎の計画は、三つ。
一つ目に、子孫の仲間を増やすこと。
関東州と協定をむすんで、”情報”を手に入れることはできた。
いは、黒菊軍は、
九州の迦楼羅 遊虎。
中部州の朝日奈 日向。
関東州の汐見 綴華。
三名が加盟し、実質、三つの州が『黒菊軍』に所属している状態だ。
二つ目に、緋毀を殺して大阪を倒すこと。
三つ目に、天下を統一すること。
尚且つ、日向の”記憶”を戻すことが、遊虎にはできる。
三つの計画を実行し、記憶を手に入れて、本来の力を取り戻すために、日向がすることは。
「おれと一生の契りを交わして、おれのものになること。そして、一緒に天下統一をすること」
楓のいないいま、日向には、もう一生の伴侶のことなど、どうでもよかった。
「龍ちゃん……」
遊虎は、日向の前に立ち、その目じりのあざをなでた。
「もう決めたの。遊虎。きみと一生の契りを交わすよ。そして、大阪を潰して、天下を統一をする」
大窓から、一陣の風が、勢いよく吹き込む。
まるで、この世界を変えゆくための、一新した風が。
日向と遊虎の髪を舞い上げた。
遊虎の目が、ゆっくりと細められていく。
「龍ちゃん、きみを一生幸せにするよ」
遊虎が、日向の髪を愛おしげに耳にかけて。
そのくちびるに、ゆっくりと接吻をした。
「これで、きみは、おれのものだ」
城下町を歩き、昔使っていた戦学制のときの寮へ戻る。
薄暗い部屋で、電気もつけず、うずくまった。
明日、日向の”記憶”と”力”をもとに戻す儀式を行うことが決まった。
日向の心は、もう揺らがなかった。
大阪国の王、凰煌 緋毀を殺すための力が手に入り、殺すための軍もある。
あとは、大阪国を潰して、楓の敵を討って。
それから……。
「それから……」
熱くなったひとみを、ぐっと閉じる。
「楓……もう、どうすればいいのか、わかんないよ」
いまはただ、復讐を考えることだけが、正気を保つ唯一の方法だった。
「楓……」
コツコツ
ふいに、窓から音がした。
顔を上げると、窓の枠に、一羽の鳩がとまっていた。
「え……つかくん!」
本当に久しぶりに見た、司専用の有能な伝書鳩のつかくんだ。
駆け寄れば、その足に短い手紙が巻きついていた。
慎重に手紙をとり、それをゆっくりと開く。
そこ書かれた文字に、息をのんだ。
日向へ
もうすぐ帰る。
各地で、白い軍服を着た謎の軍が勢力を伸ばしてる。
”時”は近い。
どうか、おれが戻るまで、絶対に生きてくれ。
神守 司




