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阿修羅螺 ーわたしは生きるために「ぼく」として生き残る-  作者: 朱崎
第二章 狂瀾怒濤 名隊五番隊
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第〇話 臥薪嘗胆 大阪国の少年



【改国】から十九年が経った、一八七二年。

各州では州都を争う戦争が相次いでいた。

そんな不安定な世界をもっと深刻化するかのように、大阪国の後押しで、

【大日本大陸憲法】が発布された。


 第十一条

    第一章 国家ハ総師権ヲ有ス

 第二章 敵国カラノ侵略ノ防衛ハ戦争ヲ有ス

 第三章 国家民ノ権利ハ国家ニ有リ


 憲法十一条の発布により、各国の戦争は正当化した。

 そして国民の権利を握った国家は、一二歳から二二歳までの学生に、軍事養成機関、『戦士育成学制式教育学校』略して『戦学』に入る義務を負わせた。


 時代は総動員戦争時代となった。




 一九〇〇年 四月

 たった一ヶ月の戦争を経て、関西州の大阪国は、四国・中国州に勝利した。

 州都山口国の下関にて、四国・中国州が大阪国に併合され、実質の植民地となる『下関条約』が結ばれた。

この他国の植民地化は憲法が発行された大日本大陸では初の事例だった。


 大阪国は初の侵略国家として恐れられるとともに全国から非難の目を向けられた。

 そしてその『下関条約』の締結と同時に、

 全国に『大阪国家天下統一』が声明された。


【我々大阪国家は、未開拓地を除く六つの全州を大阪国家の配下におくことを宣言する。これに逆らう州は武力にて制圧する。】


この宣言は全州を巻き込む、『第二次戦国時代』の始まりとなった。



   ◆



「黙祷ーっ」


 大阪国州都大阪城の前に一〇〇〇を超える兵士、戦学制が集まり、目を閉じていた。

『下関条約』締結後、兵士たちは戦死した兵士への追悼式を行っていた。


「豪さん……」

 城下を埋め尽くす隊員の中、紅の燃えるような髪をした少年が唇を噛みしめて拳を固く握った。

 先の戦で空いた席を埋めるように、再編成された『大隊』。


 その日、大阪国に最年少の隊長が生まれた。

 少年の名前は火神暁。

 一六歳の戦学高等部四年生で、燃えるような紅の髪に夕焼けの瞳をした少年。

 小柄な体で大きな双剣を操る。


 暁は二年前に大阪国の裏切り者に殺された『大隊』戦闘部四番隊長の芹沢の愛弟子で、いままでは『大隊』にすら所属していなかった。

 『大隊』に所属せずにそのまま隊長になるのは初の事例で、周囲からは批判の声が相次いだ。


 跪く暁の前には『大隊』戦闘部一番隊長であり大阪国の王が立っている。

 その手には紅の隊長用軍衣。

 袖口には金色の七本の線が引かれている。

 七番隊長の証だ。肩章には金糸で、戦闘部を表す牡丹の花が二つ刺繍されている。


「ここに、火神暁の『大阪本部直属部隊』戦闘部七番隊長就任を証明する」

 王が暁の肩に軍衣をかける。


(二年前、あなたが死んでから、この二年、死ぬ気で生き抜いた)

 軍衣をぐっと握った。


「必ず、仇をとります」


 その日は、一人の少年が復讐を再決意した日となった。

 




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