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残したと思いたいだけ

作者: 白萩アキラ

一人で生きている気になってみる

電話を掛けようとする手を止めてみる

今日僕に起こった全ての出来事が

無意味へと変わっていく


前に傘を忘れてしまったから

二本目を買いに走っている

いつでも余っている気分でいるのに

全てがワンセットしかないはずなのに


面白い映画を観た後に

ついつい独り言を呟いた

帰り道に同じ映画を観た人の

感想の言い合いに聞き耳を立てた


今が終わっていく

人知れず終わっていく

僕を取り巻く全てのことは僕にしか

僕一人にだけに意味があることだ


今が消えてしまう

感動も激情も消えてしまう

誰かと共有することで残したと

誰かの心に刻んだと思いたいだけだ

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